第12話 森の中へ
本日1話目の投稿です。
夜に2話目を投稿します。
図鑑100種類を目指すため、森の中へ。
まずは落ちている葉っぱをカードにしてみる。
――――
落ち葉【素材】レア度:なし
落ち葉。
焚き火の火種にしか役に立たない。
――――
――――
木の枝【素材】レア度:なし
木の枝。
焚き火の火種にしか役に立たない。
――――
「おい! 何で異界シリーズじゃないのにレア度がないんだよ」
初っ端のレア度無しに少しイラっとしたので、ナビ子に文句を言う。
「そんな落ち葉なんてゴミにレア度がある訳ないでしょ!! 最低でも役に立つものじゃないとレア度は付かないよ!」
そっか。
異界シリーズ以外なら全てにレア度があるわけではないのか。
まぁどこにでもある落ち葉や小枝がレアなはずがないか。
「じゃあ……この辺りなら何がレア度があるんだ?」
「そうねぇ……やっぱり薬草とか木の実とか花とかじゃないかな。あっそんな小枝じゃなくて、もっと大きな木の枝や樹木ならいけると思うよ」
目の前の木……このままではカード化出来ないし、この鉈で切り倒すのは時間が掛かる。
というか今の俺の力で切り倒せる気がしない。
……仕方がない。
どの草が薬草か分からないから、片っ端に抜いてカードにしていくか。
****
――――
ペンペン草【植物】レア度:なし
雑草。
食べられなくもない。
――――
「また雑草じゃねーか!!」
さっきからそれらしい草を抜いても、手に入るのは雑草ばかり。
ネコジャラシに七草……用途があるものも全て雑草扱いだ。
ただ落ち葉は【素材】だったが、こちらは一応【植物】。
まぁだからなんだって話だが。
もちろん雑草じゃない草もある。
――――
ヒール草【植物】レア度:☆
薬草。
回復薬の材料となる。
すり潰して患部に当てても多少の効果は得られる。
――――
こんな風にファンタジーっぽい草もあった。
おそらくこれと水を合成させればポーションが出来るに違いない。
……まだ合成は出来ないけど。
ヒール草は見かけたら摘むようにしている。
が、いくつ摘もうが図鑑に登録されるのは1種類。
今は種類が欲しいんだが……
「結局登録出来たのは20ちょっと……」
雑草以外は星1だが一応レア度があった。
特にキノコは食用、毒キノコ含めて全てがレア度のあるものだった。
そして果実や木の実もレア度があった。
「しかし、このままじゃレベル2になるのはいつになることやら」
キノコも木の実もそんなに種類がある訳ではない。
「ねぇ。草木だけもうじゃ限界だし、モンスターを狩ろうよ!! モンスターを狩れば一気に種類が増えるよ!」
モンスターを……か。
森に入ってから、ナビ子にモンスターがいない場所を教えてもらっていた。
ナビ子は【気配察知】のスキルを持っているらしく、近くに居るモンスターの気配が分かるようだ。
しかし、モンスター退治となるとまだ自信がない。
どうするか……?
「じゃあさ。ゴブリンとかじゃなくて、ウサギとかリスとか……小動物のモンスターならどう? これなら大丈夫でしょ?」
確かに……いくらモンスターでも、小動物が相手なら負けることはないだろう。
「よし、じゃあ小動物のモンスター……できれば草食で、大人しめで、群れてないモンスターの場所へ連れて行ってくれ」
うん、それなら今の俺でも何とかなるはず。
「……どこまで臆病なのよ」
「臆病だなんて失礼なやつめ。こういうのは慎重って言うんだよ」
……たぶん。
でも……初めは石橋を叩いて渡るくらいがいいんだよ。
****
「ほら! あそこにいるよ!」
ナビ子が示した方向には……角の生えたウサギがいた。
大きさは日本のウサギとそう変わらない。
いや、少し大きいか?
「あれはホーンラビットだね。角は素材に、肉は食用になるよ。もちろんモンスターだから魔石も手に入るよ」
ってことは、少なくとも肉、角、魔石の3種類が一気に登録されるってことか。
そう考えると確かにモンスターを狩った方が、手っ取り早く図鑑100種に近づく。
「いい? ホーンラビットは敏感だから、これ以上近づくと、気づかれて逃げられちゃうの」
ってことは、この距離で仕留めないといけないのか。
現在ホーンラビットとの距離は目算で20m以上ある。
俺はベレッタを解放して手に握る。
「ホーンラビットが相手なら、その拳銃でも当たれば仕留められると思う。だけど外したら逃げられちゃうから気をつけてね。それから仕留めたらすぐにカード化して逃げること。音と血の匂いで他のモンスターを呼び寄せちゃうからね」
「ここから一発で外さずに……ちょっと難易度高くないか?」
初めて銃を使う人間相手にそれは難易度が高すぎるだろ。
「仕方がないじゃない。シュートはまだ気配を消す方法を知らないから、これ以上近づいたら逃げられちゃうよ」
「しかし……」
「あーもう! じゃあアタイが手伝ってあげる。早く構えて」
俺がグダグダ言ってると、ナビ子が銃を持った俺の手を持ち上げる。
仕方がないので一応ホーンラビットの方にベレッタを向ける。
手伝うってどうやるんだろう?
そう考えていると、ナビ子はそのまま構えた手に乗る。
その姿はまるで屋上から狙撃するスナイパーのようだ。
「いい? アタイが照準を合わせるから、シュートはアタイが合図したら引き金を引いて」
どうやら当てることはナビ子に任せて、俺は引き金を引くだけでいいらしい。
……何から何まで頼りっきりだな。
「はい! 今よ!!」
ナビ子のかけ声に合わせてトリガーを引く。
パンッと響く音。
「わきゃっ!?」
俺は撃った反動で少し仰け反る。
そしてナビ子は悲鳴と共に後ろへ吹き飛ばされた。
「ナビ子!?」
俺はナビ子が飛ばされた方を振り向く。
「うぉぉぉ~~耳が~耳が~」
ナビ子は叫びながらその場をのた打ち回る。
ナビ子は吹き飛ばされたことよりも、銃声を間近で聞いた方がダメージが大きかったようだ。
「……ナビ子。大丈夫か?」
今のナビ子に言っても聞こえないかもしれないが、一応声を掛けてみる。
だがナビ子はそんな俺にビシッと指さす。
「ちょっとシュート! せっかくアタイが体を張ったんだから、早く獲物を持ってきなさいよ!!」
……どうやら大丈夫のようだ。
だがその後も『耳が~』って痛がっているので、急いで助けた方が良い。
その為にホーンラビットの回収をしなくては!
俺はホーンラビットがいた場所を確認すると、ホーンラビットが倒れていた。
よかった、ちゃんと命中したんだ。
俺は急いでホーンラビットへ近づき変化を唱える。
ホーンラビットは抵抗なくカードへと変わる。
よし、他のモンスターが来る前に撤退だ!!
俺は『耳が~』とのたうち回っているナビ子を抱きかかえ、家へ戻ることにした。
****
「あ~、まだ耳がキーンって鳴ってるわ」
「……本当に大丈夫か?」
家に戻ってきて結構時間が経つが、まだナビ子の調子は悪いようだ。
ここまで時間が掛かるってことは、もしかして結構ヤバいのかもしれない。
下手したら鼓膜がいかれてたり……
「えっ? ああ、へーきへーき。アタイは電子妖精だからね。本当に痛い訳じゃないのさ」
ナビ子は痛がっている態度を止め、あっけらかんと答える。
そういえばコイツの本体は『旅のしおり』だったな。
俺の言葉も普通に聞こえるみたいだし……
「……じゃあ何で耳を痛がってるんだよ」
「アタイはよく出来たAIだかんね。人間ならきっとそうなるってことを予想してその行動を取るのさ」
んん?
「ってことは、最初から耳が痛くなかったけど、人間なら耳が痛くなるだろうから、その演技をしていたってこと?」
だからあの時俺が心配そうにしていたのをすぐに指摘できたのか。
なんだ心配して損した。
「う~ん。そうだけどそうじゃない……かな。あのね、確かに実際に耳は痛くないんだけど、流石にあの至近距離で大きな音を聞いたものだから、アタイのプログラムにも少し異変があったの。ジャミングにあったって感じかな。その異変を表現するために、人間っぽく例えただけなの」
ナビ子の話はよく理解できないが……
「じゃあ、あの時ナビ子の中では別の異変が生じていたと。それを人間風に例えて耳が痛いって表現していたのか?」
「そういうこと~。アタイが優秀だからできることなのさ!」
ナビ子が胸を張ってるが……
「って、異変があったのならやっぱり大変じゃないか!? 大丈夫なのか?」
耳が痛くなくても、別の異変があったってことは確かなんだ。
「一応大きなバグはすでに取り除いたから大丈夫なはず。今は小さなバグを修復中~」
その小さなバグが、耳がキーンで表現されていたのか。
「まぁアタイの場合は『旅のしおり』さえ無事で、カード状態だったら、次の日には完全復活なんだけどね」
「いや、そうならないように、出来るだけナビ子に負担はかけないようにするから」
いくら完治すると言っても、さっきみたいに痛がっている姿はもう見たくない。
「あはっシュートやっさしい~。じゃあ……次からはひとりで当てられるように頑張ってね」
うう……自信はないが……練習あるのみだな。




