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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第3章 ライラネートでの日常
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第110話 武器合成

 武具屋の2階は防具コーナー。


 防具に関しては、革製品と鉄製品が中心。

 革製品は金貨1枚前後。

 鉄製品が金貨3~5枚前後で販売されていた。


 こちらもやはりありふれた防具ばかり。

 特殊な効果を持つ防具は一切なかった。


 そして3階……は存在しなかった。

 ようするにこの店は1階のフリーズブレード以外はほぼ初期装備レベルのものしか置かれてなかった。

 他に強い武器はないのか?


 俺は1階に戻り店員に聞いてみた。


「この店は駆け出しと初心者冒険者の御用達の店ですから、高価な武具は置いてませんよ」


 なるほど。

 そういうことだったのか。


「でも、それって冒険者支援ギルドと競合しない?」


 確か冒険者支援ギルドは鍛冶師から売り物にならない武具を引き取って、初心者冒険者に格安で取引をしていたと思うが。


「あちらは基本的にレンタルですから、自分の装備が欲しい方はこちらで購入します」


 あっ、あっちはレンタルだったか。

 なら競合の心配はないのか。


「じゃあ高価な武具を売っている店もあるの?」


 店員に別の店を尋ねるなんて失礼極まりないと思うが、店員は特に気にした様子ではなかった。


「それなら鍛冶ギルドでしょう」


 店員が即答する。

 この街には鍛冶工房がいくつもあり、それをまとめているのが鍛冶ギルド。

 鍛冶師は完成した武具をギルドに卸し、ギルドがそれを販売する。

 その際に鍛冶ギルドで取り扱わない初心者用の武具がこの店で販売されるのだそうだ。


 鍛冶ギルドでは銀製品やプラチナなどの非鉄金属が中心で、中には特別な効果のある魔武具も置いてあるそうだ。

 鍛冶ギルドで売られている武具は最安値で金貨10枚。

 魔武具は金貨100枚や500枚以上するものも存在するらしい。


 中堅や上級の冒険者は鍛冶ギルドで武具を購入。

 その際に気に入った武具があれば、製作者の工房と直接契約する。

 冒険者はオーダーメイドで専用の装備を作ってもらえるし、鍛冶師の方もその冒険者が活躍すれば、更に客も増えるってわけだ。


 この街の上級冒険者で鍛冶師と直接契約をしていない冒険者はいないらしい。


 オーダーメイドでは冒険者が素材を集めて鍛冶師が作る。

 中には市場では手に入らない素材もあるので、鍛冶ギルドでも買えない名剣が作られることもあるそうだ。


「魔武具が欲しいのでしたら、鍛冶師との契約は必須だと思いますよ」


 確かに図鑑コンプのためには、腕の確かな鍛冶師との契約は必須かもしれない。

 まぁそれは追々でいいだろう。

 それより今の俺に必要なのは、名剣よりも鍛冶ギルドで売られているような量産型魔剣だ。


「あの壁にあるフリーズブレードは魔剣?」


「ええ。ですが、あれはオーダーメイドのような名剣ではなく、鍛冶ギルドで普通に販売してる魔剣ですけど」


 やっぱりこの剣が量産型魔剣のようだ。


 普通ならこの店では販売しない代物らしいのだが、初心者冒険者はあれを買えるくらいの冒険者を目指せ。

 そういう願いを込めて壁に掛かっているのだそうだ。

 もし初心者冒険者がフリーズブレードを購入したら、また鍛冶ギルドから1本だけ仕入れるのだそうだ。


「ですので、この店よりも高価な武具をお求めでしたら、鍛冶ギルドに行ってみるのがよろしいかと」


 興味はあるけど、別に武具を買うために行くわけではない。

 今回の俺の目的はあくまで仕入れと売却だ。

 格安で武器を仕入れて、合成で魔武具にして売却する。

 仕入れはワンコインコーナーの武具でいいだろう。

 金貨1枚が金貨100枚に早変わり。

 まさに錬金術だな。


「この店では魔武具の買取はやらないの?」


 むしろここで買取できるのなら、鍛冶ギルドに行く必要すらなくなる。


「魔武具に限らず買取は行っていません」


 この店では買取はやってないのか。


「鍛冶ギルドなら買取をしてくれるかな?」


「鍛冶ギルドも加入している鍛冶工房からしか買取はしません」


 ありゃ。鍛冶ギルドも買取してくれないのか。

 鍛冶ギルドに加入すれば……って、多分冒険者になるより大変そう。

 どこも買取してくれないなら、仕入れできないな。


「じゃあどこなら買取してくれるかな?」


「普通に考えると冒険者支援ギルドでしょうか」


 やっぱりそうなるか。

 でもアザレアにバレたくないからなぁ。


「あとは……ファーレン商会でしょうか」


「ファーレン商会?」


 聞くところによると、武具だけでなく、食品や生活用品、食事処もあるこの街で一番巨大な商会らしい。

 イメージ的にはショッピングモールに近そうだ。


「ファーレン商会も基本的に販売だけでしょうが、物によっては取引できるかもしれません」


 わずか数年でこの街一番にのし上がった商会だから、柔軟な対応をしてくれる可能性があるとのこと。


 そこに賭けるしかないか。


 俺はスキルの練習用に壊れてもいい武具が欲しいと、ワンコイン武具をいくつか購入した。

 店内でカード化スキルを使えないから、背負って帰れる程度しか購入できない。

 どうやら似たような用途で買う冒険者は多いらしく、店員からも特に変な目で見られることもなかった。



 ****


 一旦宿に戻った俺は、さっき買ったワンコイン武具を魔法を使って魔武具にする。


 魔武具にする方法は2種類ある。

 その剣に魔法を使える能力を付与させるだけならセット。

 この鉄の剣からファイアの魔法を飛ばしたいのならセットでいいけど、それだとファイアが出るだけの普通の鉄の剣と変わらない。


 別の武器にしたいんだったら合成(リボーン)

 鉄の剣とは別の剣になるが、その剣がファイアを使えるかといったらそうではない。

 確か鉄の剣とファイアの魔法でバーニングソードが出来るって前にナビ子が言ってたっけ?


 どうせ鉄の剣でファイアが使えても大したことがないんだから、合成一択だな。


 ――――

 火の剣【武器】レア度:☆☆☆


 火属性の鉄剣。

 この剣で斬られると、傷口が火傷する。

 再生持ちのモンスターの再生能力をある程度抑える。

 ――――


 鉄の剣とファイアの魔法で出来たのは火の剣だった。


「……バーニングソードじゃなかった」


 斬った傷口が燃えるとかじゃなくて、火傷するだけ。

 これなら実際に燃えるファイアを使えるほうが良くね?

 俺は非難するような目でナビ子を見た。


「アタイはちゃんと例えばって言ったもんね」


 ……そうだったっけ?

 バーニングソードって単語のイメージは覚えていたんだけどな。


「それに合成の結果がランダムで、他の結果もあるかもしれないよ」


 そうかもしれない。

 とにかく色々試してみるしかないか。

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