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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第3章 ライラネートでの日常
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第106話 依頼確認

 俺は応接室を出て、依頼ボードを確認することにした。


「……ろくな依頼はないな」


 あるのはほとんどが採取とモンスターの討伐。

 俺が持っていないモンスターの名前もあるが、討伐証明として魔石が回収される。


「討伐と採取は論外だな」


 提出するくらいならカードにする。

 たとえ金欠でも、それは変わらない。


 でも残りは他の街への護衛依頼くらいだ。

 だが、基本一人では護衛は受けれない。

 そもそも受ける気がない。


 残っているのは……この街の下水道掃除?


「雑用系の仕事は無くなったんじゃなかったっけ?」


 魔道具の普及により、冒険者の仕事はモンスター退治がメインの依頼だけになったはずだ。


「シュート。これ、下水道掃除ついでに害虫駆除も書いてあるよ」


 ナビ子の言葉に、もう一度しっかりと依頼内容を確認する。

 ……確かに掃除のついでにワイルドラッドなど、下水モンスターの駆除と書かれてある。

 つまりこれはメインがモンスター退治ってことか。


「なら依頼の名前を下水モンスターの駆除にするべきじゃね?」


 これじゃあどっちがメインだか分からない。


「下水モンスターは、下水道の汚れている場所に隠れているので、掃除する必要があるんですよ」


 俺の疑問に後ろから声がかかる。

 受付に立っていたギルド職員だ。

 話したことはないが、アザレアと一緒に立っているのを何度か見かけたことがある。

 俺がずっと依頼と向き合っていたから、声を掛けてくれたんだろう。


 ……何だか最初の時とデジャブるな。

 この人は観察眼とか持ってないよね?


「その依頼、掃除は面倒ですし、範囲も広く、弱いですがモンスターも多い。何より下水の臭いを嫌がって、人気がないんですよ」


 ……だろうなぁ。

 俺だって今の説明を聞いたら受けたくなくなる。


「でも、その分、報酬は破格なんです」


 報酬は金貨2枚。しかも倒したモンスターの魔石で追加報酬もある。

 追加報酬がなくてもスイート4日分だ。

 他の依頼は銀貨や銅貨ばかりなので、確かに破格の金額だと思う。


「普段は人気がなくても、報酬目当てで受けてくれる人がいるんですが、今回は先日のゴブリン残党処理の依頼があったので、誰も受けようとしないんですよ」


 あ~、ゴブリン残党処理の依頼も破格の金額だったもんな。

 あれを受けた冒険者は、しばらくお金に困ることがないから、面倒な依頼は受けないってことか。


「ですから……受けてみません?」


「そうだなぁ」


 下水モンスターの魔石は手に入れて損はないし、金額的には受けてもいいけど……


「アタイはぜぇーったい反対だかんね! 受けるならシュートひとりで受けてよね!」


 珍しくナビ子が猛反対する。

 別にそこまで嫌なら無理して受けることはしない。

 ラッドの魔石ならすぐに手に入るだろうし、お金だって別の方法を考えればそれでいい。

 それに俺だって面倒な掃除は嫌だし、臭いのは勘弁してほしい。


「ってことで、申し訳ないけど、相棒が嫌がってるから……」


「そうですか。サマナーさんならもしかしたらと思ったんですが……」


「ん? それ、どういう意味?」


 もしかして不遇なサマナーなら、嫌な依頼を押し付けてもいいと?

 それなら少し不快だな。


「あっ、別に他意はないです。サマナーならスライムを召喚できないかなと思っただけですから」


「はっ? スライム?」


 スライムって、あの定番中の定番モンスターのスライム?

 そういえばまだお目にかかってないなぁ。

 でもそれと依頼に何の関係が?


「ええ。スライムは何でも食べますから、下水の掃除にピッタリなんですよ」


 スライムは雑魚モンスターのイメージしかなかったけど、実は使い方次第では、とても便利なモンスターなのだそうだ。

 燃えるゴミに生ゴミ、不燃物まで何でも食べて消化してくれる。

 その上、床の埃やシミ、汚れなどもキレイに拭き取ってくれるそうだ。

 さらに軟体の体で、隙間までキレイに掃除してくれる。


 今回の依頼の場合は、下水にスライムを放てば、勝手に掃除をしてくれて、さらに下水モンスターも退治してくれるとのこと。

 テイマーならスライムに命令しておけば、魔石消化せずに回収することも可能だそうだ。


「今回のように、初心者冒険者が受けなかった場合、代わりに中堅冒険者のテイマーさんがスライムを使って簡単に掃除をしてくれるんですが……」


 この依頼は面倒だが、依頼難易度は低いため、基本的には初心者冒険者以下が優先的に受ける依頼なのだそうだ。

 だから、誰も受けない場合だけ、その中堅冒険者のテイマーが受ける。

 この人の場合、スライムを放つだけで金貨2枚が手に入るのだから楽なものだ。

 そのテイマーが別の依頼で今は不在らしい。


 そこでサマナーの俺なら、スライムを召喚して同じことが出来るかもと思ったそうだ。


「残念ながらスライムを持ってない」


「そうですか……」


 彼女は残念そうに俯く。


「でもさ、別にテイマーやサマナーじゃなくでも、野生のスライムを放り投げとけばいいんじゃね?」


 勝手に掃除してくれるなら、放置しとけばいいだけじゃないか。

 それで下水道はいつもキレイってことだ。


「駄目ですよ。ちゃんと管理したスライムじゃないと、増殖しちゃって大変なことになっちゃいます」


 管理してないスライムだと、食べた分だけスライムが増えて、今度はスライムの討伐が必要になる。

 そうなれば下水道掃除以上の難易度の依頼になるらしい。

 いいアイデアだと思ったのにな。


 しかし……スライムか。

 俺の場合はゴミの処理も掃除もカードで簡単にできるから、別に便利さは関係ないが、ゴブリンと並んで超有名なモンスターだから、コレクションとしては是非とも手に入れたい。


「スライムって普段はどこにいるんだ?」


「野生のスライムですと、水辺にいることが多いようです。この辺りですと、森の奥にある沼か下水道……」


「すでに下水道にいるのかよ」


 さっきの増殖って話はどうなるんだ?


「いるって言っても、最下級のグリーンスライムですよ。食べるよりも、食べられる存在です」


 よく分からないけど、スライムにも種族や強さがあるのか。

 弱すぎて、他の下水モンスターの餌になるレベルで増えることがないってことか。


 俺の場合は……どれだけ弱くても、合成して強くすれば問題ないか。

 でも、下水道掃除をするためのスライムを捕まえるために下水道掃除する。

 うん、訳がわからない。


 ……とりあえず保留だな。


「あとは、街にスライム屋があるので、そこで手に入るかもしれません」


「はっ? スライム屋? スライムを売ってるの?」


「ええ、先ほども言いましたが、スライムはゴミを食べますし、掃除もしてくれますから便利なんですよ」


 まるでペット感覚だ。

 ……すごく興味がある。


「ありがとう。すごく為になったよ」


「あっはい。お力になれたのなら良かったです」


 良かったと言いながら、この子に元気がない。

 やっぱり依頼を受けなかったからかなぁ。

 ……もしスライムが手に入ったら、依頼を受けてやることにしよう。



 ****


「なぁナビ子。なんであんなに依頼を嫌がったんだ?」


 帰る途中、気になったからナビ子に訪ねてみた。


「アタイは精密機械だかんね。不衛生な場所に行ったら壊れちゃうよ」


 ……今までも森の中とかゴブリンの集落とか、不衛生な場所はたくさんあったと思うのだが。


「特に臭いは駄目ね。アタイは優秀だから、匂いセンサーもあるの。だから臭いところは本当に嫌!」


 だからゴブリンの集落は……もしかして、あの時の作戦は単に近づきたくなかったからか?


「でも、あの子ちょっと可哀想だったじゃないか」


 もし誰も依頼を受けなかったらどうなるんだろう?

 あの子が責任取るわけではないと思うけど……。


「あっまたアタイのせいにする~。どうせシュートだって受ける気なかったんでしょ」


「俺はスライムを手に入れたら受けてもいいと思ってるぞ」


「じゃあそれでいいじゃない。それに、あの子が悲しそうにしていたのは、別の理由だよ」


「別の理由?」


 はて? 他に何かあったっけ?


「あの子ね。シュートにちょっとだけ負い目があるの」


「負い目? なんでだ?」


 全く心当たりがない。

 というか、今日初めて話したのに、負い目も何もあるはずがない。


「あのね。あの子がシュートとアザレアの噂を流したの」


「噂っていうと……あれか」


 氷の女帝とか恋人だとかのやつだ。


「あの子、そんな風には見えなかったけど」


 人の噂を勝手に流すような人には見えなかった。


「詳しくは分からないけど、不可抗力だったみたい」


 不可抗力か。まぁ噂なんて一人歩きするものだから、誰かに話したのが大げさに広まったとかそんなもんだろう。

 それよりも、もっと気になることがある。


「あの……ナビ子さんはどうしてそれをご存じで?」


「アザレアに聞いたの。シュートのことを知ってるのはあの子だけだったのに、噂が広まったって。まぁアザレアも彼女に悪意があるとは思ってないし、気にしてないみたい」


「いつその話を聞いたんだ?」


 ナビ子が俺と離れていたのは試験の時だけ。

 あの時は氷の女帝の話を知らなかったから、その後ってことになる。

 しかし、その後はアザレアと話す時間なんてなかったはずだ。


「女子会の時にちょっと」


「じょ、女子会? いつ?」


「えっとね。一昨日かな。サフランとアザレアとフェアリーとピクシーと5人で」


 フェアリーとピクシーまで!?

 そっか。代理人スキルで呼び出したんだな。


「俺は何も聞いてないぞ」


「ちゃんと言ったよ。でもシュート、コレクションを見てニヤニヤしてたから聞こえてなかったんじゃない?」


 ……確かに一昨日だとコレクションに集中していたので、たとえナビ子が何か言ったとしても、聞いてなかった可能性はある。

 というか、だからさっきアザレアがニヤニヤしてとか知ってたのか。


「一体どんなことを話したんだ?」


 非常に気になるんだが。


「シュート。女子会の内容を聞くのはマナー違反だよ」


 やっぱり話してくれそうにない。

 なんかさ、俺よりもナビ子の方がこの世界を満喫してない?

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