表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/449

第11話 拒否

本日2話目の投稿です。

 次の日……結局一晩経っても日本に戻ることはなかった。

 実は夢だった……って可能性も僅かにあると思ったんだけどな。


 ちなみに朝起きるとナビ子の姿がなかった。

 慌てて探し始めたら『旅のしおり』が光ってナビ子が飛び出した。

 どうやらナビ子は眠るときは『旅のしおり』に戻るようだ。

 一回ナビゲーションをONにすると、任意で出入りが出来るようになるらしい。


 やっぱりナビ子がいないと……一人は寂しいもんな。



 ****


「さて、今日は家の外に出てみようと思う」


 家中の物をカードにしてもスキルのレベルは上がらなかった。

 ナビ子の話によると、レベルを2にする為には、レア度のあるカードを100種類図鑑に登録しなくてはならない。


 現在は素材と魔法カード計10種類だけ。


 まぁ図鑑登録には含まれなかったが、異界シリーズをカードにすることによって、変化(チェンジ)の使い方は随分と慣れた。

 なので今日は家の外に出て、異界シリーズ以外のアイテムをカードにする。

 目標は図鑑100種類登録。

 そして【カード化】スキルをレベル2に上げる。


「あっじゃあカード状態でも構わないから『旅のしおり』は絶対に持って行ってね。じゃないとアタイが一緒に行けなくなっちゃう」


 『旅のしおり』が擬人化したナビ子は、本体から50m以上離れることが出来ないらしい。

 もし50m以上離れてしまうと擬人化が解け、しおりの中へと戻ってしまうのだそうだ。


 しおりから離れさえしなければ、カード状態でもナビ子は居続けることが出来るらしいので、カード状態にして俺が肌身離さず持っていればいいらしい。

 今回は『旅のしおり』をアイテム図鑑に入れておく。

 どのみち森でカードにすれば、その都度図鑑に登録して内容を確認するのだ。

 図鑑も手放せない。


 図鑑も嵩張る為カードにしておく。

 そして昨日の探索で見つけたウエストポーチの中に入れて持ち歩くことにした。

 ポーチの中には図鑑のカードとは別に、図鑑には挟まず、すぐに取り出せる場所に4枚のカードを準備していた。


 1枚目は昨日の探索で見つけた鉈だ。

 ――――

 鉈【武器】レア度:なし


 異界の刃物。

 主に薪割りや雑草刈りに利用する。

 ――――


 極々ありふれた鉈のようだが、現時点で唯一武器として使えそうな刃物だ。

 森の中にはモンスターもいる。

 その為、いつでも戦闘が出来る準備はしなくてはならない。


 同じ理由で2枚目はベレッタ。

 おそらく戦闘ではこちらを使うことになるだろう。


 それからファイアとヒールの魔法カード。

 使い捨てで1枚しかないから、可能な限り使いたくはない。

 が、命に関わるようなことがあれば惜しまずに使うつもりだ。


 まぁ今日に関してはモンスターに遭遇するようならすぐに逃げる。

 戦うのはもう少しこの世界に慣れた……せめてベレッタの扱いに慣れてからにしたいと思う。



 ****


 玄関の扉を開けて家の外に出る。

 見渡す限り木しかない。


「ねぇシュートぉ。一体何をカードにするの?」


「そりゃあ目に見えるものを片っ端からカードにしていくのさ」


「目に見えるものって……木しかないけど?」


「ならその木をカードにするまでだ」


 俺は手近な木を触る。


変化(チェンジ)


 まずはこの木を……と思ったが、スキルが発動しない。


「はっ? 何でだ?」


 昨日はスキルが発動しないことは一回もなかったのに……


「あのね。その木がカードになることを拒否してるの」


「……拒否?」


「うん。植物や動物……生き物はカードになるのを拒むの。誰だってカードよりも自由の方がいいでしょ」


 確かにその通りだが……


「えっ!? じゃあ植物はカードに出来ないのか?」


 えっ? それじゃあ昨日話していたリンゴの木の話はどうなるんだ?

 普通にカードに出来るんじゃなかったのかよ。


「う~んと、地面に根をはった状態じゃ無理だけど、切り落とした木や、刈り取った草ならカードに出来るはずだよ」


「なるほど……つまり弱った状態ならカードに出来ると言うわけだな。しかしそうなると少し可哀想になるな」


「どうして?」


「どうしてって……弱っているのをカードにって……嫌がっているのを無理やりカードにするってことだろ」


 そう考えるとカードにしにくくなる。


「う~ん。アタイは電子妖精だから可哀想って感情は良くわからないけど、要は薬草を摘んだり、木の枝を切り落としたりするのとおんなじだよ。人間はいつも可哀想って思いながら薬草を摘んでるの?」


「いや……」


 確かにそんなこと考えたことはないと思う。


「ねっ。何でも可哀想って言ってたら何も出来なくなっちゃうよ」


 ナビ子の言うとおりだ。

 第一、植物で悩んでいたらモンスター図鑑はどうなる。


「って!? モンスター図鑑は? どうやってカードにするんだ?」


 俺はモンスターに触ってスキルを使えばカードになると思っていた。

 例え嫌がっても触って変化(チェンジ)と唱えれば勝ちだと……


 しかし、モンスターが拒否するなら話は変わって来る。


「モンスターをカードにするには2種類の方法があるんだ。ひとつはモンスターがカードになることを許可すること。もうひとつは……魔石を使う方法」


 一つ目は分かる。

 まぁそんな奇特なモンスターがいるか分からないけど。

 命乞いするくらいに追い詰めないと許可しそうもない。


 そして二つ目……


「魔石を? どうやるんだ?」


 『グローリークエスト』ではモンスターを退治すると手に入るドロップアイテムだった。

 用途は換金くらいしかなかったが……


「うん。モンスターには魔石があってね。そのモンスターの魂と言っていいんだ。だから魔石を変化(チェンジ)させると、そのモンスターが図鑑に登録されるの」


「それって……死んだ状態じゃないのか? ってことは、モンスターは図鑑登録しか出来ないのか?」


 解放(リリース)してモンスターを使役することが出来るんじゃなかったのか?

 もしかして使役するには生きている状態じゃないと駄目で、死んだ状態だと登録しか出来ない……なんてことじゃないだろうな?


「もちろん図鑑に登録されたら解放(リリース)で呼び出されるよ。でもそれは捕まえたモンスターじゃなくて魔石から情報を読み取ったモンスター。つまりクローンって言えば分かりやすいかな。クローンモンスターはカードの所有者……つまりシュートに忠誠を誓うから何でも命令を聞いてくれるよ」


 何てこった。

 まさかモンスターを仲間にするんじゃなく、モンスターを殺してクローンを作るのかよ!?


「シュートのイメージと違った?」


「ああ……」


 気分はテイマーのつもりだったが、これではネクロマンサーだ。


「じゃあモンスターは殺したくない。植物は可哀想だから取らない。それでいいの?」


「……いや、そうは言わないよ」


 元々冒険者になればモンスターを退治する依頼もあるんだ。

 泣き言は言ってたら生きていけない。


「そっか。じゃあ改めてしゅっぱーつ!!」


 何だか微妙な感じになってしまったが、ナビ子に促されるように俺は森の中へと入った。

明日も間に合えば昼と夜の2話投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ