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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第101話 帰り道

 ライラネートへの帰り道。

 俺は馬車に揺られながら、分解をしていた。

 分解は手に持ったカードが重なっていく。

 今までは多いときでも4枚程度だから何も思わなかったけど、10枚を越えたころから厚みを感じ始めた。

 100枚程度なら大丈夫だけど、それ以上増えたらちょっとした衝撃でもこぼしてしまいそうだ。

 ……もし途中で手放したらどうなるんだろう?


「分解済みのカードは片付けて構わないけど、本体のカードは終わるまでは持っててね。じゃないと……」


 ナビ子はその先を教えてくれなかった。

 これは……知らないんだな。

 ったく。知らないなら知らないと言えばいいのに。


 ――試してみるか?

 いや、ないとは思うが、中断することによって、途中でカードが無くなるとかになったら目も当てられない。

 今度4枚分解の時にでも試してみよう。


「それにしても、まとめての分解が終わったと思ったら、次は個別の分解だろ。本当に面倒だよなぁ」


「分解がなかったら、もっと面倒だったんだから、わがまま言わないの」


 そうだけどさ……


「それに、分解が終わったら、楽しい合成の時間なんだから、そう考えたら全然嫌じゃないでしょ」


 そう。

 分解が終わったら、次は合成だ。

 星4以上が解禁になったってことは、制限なく合成が出来るってことだ。


 古参には、既に合成相手を考えるように言ってあるから、今頃カードの中で考えていることだろう。


 俺的には妖精女王が気になる。

 やっぱり例のあのお方かな?


 それからモンスターだけでなく、スキルも楽しみだ。

 今回はスキルを持っていないゴブリン以外は全てスキル分解にしようと思っている。

 おそらくかなりのスキルが手にはいるはずだ。

 そうしたらようやく本腰を入れて、スキルの研究をやろう。

 そういえばアザレアさんがスキルの研究をしていたんだよな。

 研究データを見せてもらえないかな?


 魔法は……一応作るけど、これ以上強力な魔法ができても使い道がないよなぁ。

 どちらかといえば、星1とか2を充実させたい。


 うん、やる気が出てきた。

 帰りの間に分解を終わらせて、ライラネートでゆっくりと合成を楽しむんだ。


 だが、ひとつだけ懸念事項もある。


「さてナビ子。このままライラネートに戻ったらどうなると思う?」


「間違いなくアザレアに怒られるね」


「だよなぁ……」


 出発する時はキングの魔石欲しさに目が眩んでいたから、アザレアさんのことを全く気にしなかった。

 けど……冷静になって考えると、絶対にヤバイよなぁ。


 ギルドで別れたときは、まだ気づかれた様子はなかった。

 だけど、ポーションを受け取って、尚且つ俺が不在だと分かれば、流石に気づかれると思う。


 ――しらばっくれるか?


「言っとくけど、アタイは嘘がつけないからね」


 ってことで、ナビ子に尋ねられたら終わりだ。


「それに……冒険者カードがあるから、どうしようもないでしょ」


 俺は冒険者カードを確認する。

 作ったばかりの冒険者カードのレベルは既に20になっていた。

 カードモンスターは俺のスキルだから、カードモンスター達が倒したモンスターの経験値も俺に入るのは分かる。

 だからレベル10くらいは覚悟していたけど、20とは……すでに中堅冒険者の折返しじゃないか。


「何故だ? レベルが上がると経験値が入りにくくなるんじゃなかったのか?」


 レベル5くらいまで上がれば、ゴブリンの経験値なんて1くらいしか貰えないんじゃないのか?


「そりゃあレベルが上ってたらゴブリンの経験値なんてたかが知れてるだろうけど、もしレベルが1の時に大量に敵を倒したらどうなると思う? しかもゴブリンだけじゃなくホブゴブリンとか星3ゴブリンとか。多分すごく経験値が高いでしょうね」


「……そうか。あの奇襲か」


 あれでゴブリンが100体以上死んだ。

 それにあの時死んだ中にはホブゴブリンや星3ゴブリンもいたらしい。

 あの時点ではまだレベル1だから、仮にゴブリンの経験値が10だとしたら、それだけで1000ってことだ。

 いや、俺はサマナーだから前衛職よりも取得経験値は多い。

 ホーンラビットがレベル1で5の経験値を貰えるとなると、ゴブリンは15くらい貰えたのかもしれない。

 そしてホブゴブリンは中堅冒険者クラスだと言っていた。

 なら中堅冒険者でもそれなりの経験値が貰えるとして、レベル1なら100くらい貰えたかもしれない。

 だったらホブゴブリン以上の上位種は300……いや、それ以上だったかもしれない。

 そう考えると、奇襲の時点でレベル10以上になっていたかもしれない。


 流石にそこからゴブリンを倒しても経験値は入らないだろうが、ホブゴブリンや星3はまだ多少の経験値は貰えるだろう。

 星4に至ってはベテラン冒険者レベルだろうから、レベル10以上の状態でも多めに経験値は貰えるだろうから……そう考えると20って数字も間違ってはないか。


 たった数日でこんだけレベルが上がってしまったら、言い訳のしようがない。

 レベルの部分を偽装で誤魔化すことも考えたが、観察眼ですぐに見破られるし、実際のレベルが低くなるわけでもないので、ギルドに確認を取られたらおしまいだ。


「まっ、しっかり怒られることだね」


 ナビ子が他人事のように言う。


「……言っておくが、ナビ子も共犯だからな」


 ひとりだけ難を逃れようとしても無駄だ。


「ええっ!? アタイは関係ないよ。今回はシュートがひとりで勝手に決めたことじゃん」


「いや、俺を止められなかったってことで共犯だ」


「アタイは止めたもん。シュートが聞かなかっただけだもん」


 ……止められたっけ?

 仕方ないから従うとは言われた気がするけど……あんまり覚えてないや。


「まぁなんと言おうが、ナビ子は俺から離れられないんだから、一緒に怒られる運命だ」


「ふふ~ん。はたしてそうかな~?」


 だがそこでナビ子が勝ち誇った顔をする。


「言っとくけど、旅のしおりに戻るのは駄目だぞ」


 もし戻っても、強制的に呼び出してやる。


「ふふん。そんなことしないよ! だってする必要がないからね」


 する必要がない?

 どういうことだ?


「今教えたら対策を立てられちゃうからね。教えないよ~」


 くっ、さっぱり分からない。

 もしかしてアザレアさんと何か裏取引でもしていたのか?


「さてと、アタイはユニコと遊んでこよ~っと」


 ナビ子はユニコーンの方へ行き、俺ひとり馬車に残された。

 俺はひとり寂しく分解をしながら、なんとか怒られないですむ方法を考え続けた。

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