第10話 探索結果
本日1話目の投稿です。
間に合えば夜にもう1話投稿します。
「いやぁ思ったよりカードがあったな」
一仕事終えた達成感と、右手には冷蔵庫の中に入っていたビール。
そして床に拡げたカード。
俺は今、非常に満足していた。
「まったくもぅ……呆れた。シュート……アンタ、本当に隠されたカードを全部見つけちゃったのね」
ナビ子が溜息交じりに呟く。
どうやら無事にチュートリアルで手に入るカードは全て手に入れたようだ。
しかしナビ子が呆れるのも無理はない。
中には本当に見つけるのが困難なカードもあったからだ。
机の引き出しが二重底になっていたり、タンスの引き出しを外して、更に奥に張り付けてあったり。
未使用のポケットティッシュの中に隠されていた時は、運営の底意地の悪さを再確認した。
しかし……ナビ子が全部って言わなかったら、まだどこかに隠された可能性を考えないといけない所だった。
「ナビ子、ありがとな。ナビ子が全部って言ってくれたお陰で、これ以上探す必要が無くなったよ」
「アンタ……あれだけ探してこれ以上どこを探すつもりだったのよ」
「そりゃあ天井裏とか排水管の中とか……最悪壁を破壊して確認するくらいは……探すところは幾らでもあるだろ?」
「ないからっ!! 流石にそこまで意地悪じゃないよ!?」
いやぁ……十分意地悪だったと思うけどな。
まぁ今の俺は気分が良いからこれ以上は何も言うまい。
それに確かに運営は意地悪なだけではない。
俺は手に持っていた缶ビールを一気に飲む。
「くぁ~。やっぱり、ひと仕事した後の一杯は最高だな」
冷蔵庫に冷えたビールがあったのは運営の心遣いだろう。
素直に嬉しい。
「シュート……今のアンタは16歳なんだから、あんまりオッサン臭い態度は取らないでよ」
「中身は30手前のオッサンなんだから仕方ないだろ」
見た目は変わっても中身までは変わりない。
「それよりもナビ子も飲まないか?」
せっかくだからこのまま宴会といきたいのだが……まぁ食材はあっても料理はないけどね。
「アタイは『たびのしおり』が擬人化した電子妖精だよ? だから飲めないし、食べれないよ」
あ~そういえばそうだったな。
全くAIっぽくないし、もう普通の妖精と思って接していたよ。
「そっか。一緒に飲めたら楽しいと思ったんだが……」
食事は一人よりも二人の方がいい。
というか、俺だけ飲んでてナビ子は見てるだけってのは非常に飲みづらい。
「アタイのことは気にせずに飲んでいいよ!」
そう言われて気にしない人はいないと思うが……飲まなかったら逆にナビ子が気を使うだろう。
まっ、そのうち慣れるだろうし、そのまま飲み続けることにした。
「……なぁナビ子。このビールを半分飲んでカードにしたらさ。時間が経てば元通りにならないのか?」
俺は残り少なくなった缶ビールを眺めながら聞いてみる。
そうすれば在庫を気にせずにいくらでも飲むのだが……
「壊れた物は元に戻るけど、流石に消耗品は無理だよ」
「ですよねー」
流石に無理らしい。
まぁ消耗品が無制限に使い続けられたら、それこそこの家で一生暮らせるもんな。
……ん? 待てよ?
「じゃあ何でベレッタの弾は戻るんだ?」
銃の弾も消耗品だろ?
「あっごめん。消耗品でも一部のジャンルの消耗品が再生しないの」
その一部とは【素材】、【食材】、【飲料】、【料理】、【薬品】の五つらしい。
例えばベレッタは【武器】だから弾が再生する。
タンスや机は【家具】だから壊れても再生する。
だけどビールは【飲料】だから再生しない。
そういうことらしい。
ちなみにティッシュや石鹸、シャンプーなどは【生活用品】のジャンルだから再生する。
ただしもちろん使い切れば無くなってしまう。
だから【生活用品】は常にカード状態にして、使う度に解放と返還を心がけなくてはならない。
「あっ、一応補足だけど……【食材】以外のジャンルの食材は再生が可能だから」
【食材】以外のジャンルの食材?
そんなものあるの……あっ!
「それってカード化したモンスターの肉を食うってこと?」
モンスターは死んでも次の日には復活するんだから……でも流石に嫌すぎる。
「違うよ!! なんて残酷なことを考えるのさ!!」
ナビ子が信じられないといった表情で俺を見る。
いや、俺だって嫌だけど、他に思い浮かばない。
「えっとね、例えば植物……リンゴ単体じゃ再生しないけど、リンゴが実っている木ごとカードにすれば、リンゴを採っても再生するんだよ」
あ~そういうことね。
リンゴの木をカードにすれば、そのジャンルはおそらく【植物】になるはずだ。
【植物】は再生しないジャンルには入っていない。
「ただ同じリンゴの木でも、実ってない状態でカードにしてもダメなんだ。カードってのは現状を維持するからね。カード中は育たないんだよ」
カード化は現状を保存するらしいので、育つことはない……か。
だから実っている状態でカードにすれば、リンゴを採ってもその状態を維持しようとして実った状態に戻るってことか。
まぁ勝手に成長されても困るからな。
苗木をカードにして放置していたら大木になっていたは嫌だ。
そして現状維持ってことは食材も腐ることがない。
さっきの探索で、食材はかなりの量が見つかった。
おそらくこのまま何も仕入れなくても半年は暮らせるだろう。
カードにしていれば安心ってことだ。
ただ状態を維持するだけなので、ビールなどは冷やした状態でカードにするか、冷蔵庫に入れて冷蔵庫をカードにするかした方が良いようだ。
同様に食材を料理にしてカードにすれば出来立ての料理を保存できる。
まぁ料理は本当に簡単なのしか出来ないから……
「この食材達を合成したら料理が完成しないかな?」
多分できると思うが……どうなんだろ?
「むふふ。レベル2の合成はカード2枚の合成しか出来ないから、2枚しか使わない料理なら作れるかもしれないね」
随分と意味深な言い方だな。
でも聞いてもきっと教えてくれないんだろうな。
「そういえば結構な数をカードにしたけど、レベルは上がってないのか?」
この家の物は全てカードにして図鑑に登録させた。
だがレベルが上がった様子はない。
「流石にまだかな。まずは図鑑を100種類くらい埋めないと……」
それなら既にこの家の物だけで既に100種類は集まっているはずだが……もしかして全図鑑100種類?
いやいや、それは無理ゲーだ。
まだスキルや魔法のカードをどうやって集めていいか分かってない。
むしろそれらは合成が出来るようになってから集まると思っている。
それを考えても合わせて100種類でいいはず。
ってことは……
「……それってレア度ありの登録がってことか?」
「そうだよ!」
やはりそうか。
つまり異界シリーズは対象外と。
この家にあった物は食材も込みで全て異界シリーズのみ。
つまり図鑑に名前は載るだけという訳か。
「ってことは現時点の登録種類は10種類」
アイテムじゃなくて、この家の中に隠されていたカード。
最初の部屋にあった火、水、合成の特殊カード以外に見つかったカードはレア度があった。
そのカードは素材カードと魔法カード。
枚数はそれなりにあったけど、種類は全10種類。
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鉄【素材】レア度:☆
武器や防具に使われる鉱石。
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鉄は合成でよく使うのだろう。
とりあえず鉄だけで最多の10枚見つかった。
素材に関しては他に糸や布、瓶の計4種の素材カードがレア度星1で見つかった。
そして残り6種が魔法カード。
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ファイア【火属性】レア度:☆
火属性の初級魔法。
目の前に炎を召喚する。
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アクア【水属性】レア度:☆
水属性の初級魔法。
水の塊を召喚する。
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ウインド【風属性】レア度:☆
風属性の初級魔法。
風を巻き起こす。
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ストーン【土属性】レア度:☆
土属性の初級魔法。
石を召喚する。
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ヒール【光属性】レア度:☆
光属性の初級魔法。
怪我を治療する。
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ブラインド【闇属性】レア度:☆
闇属性の初級魔法。
対象を一定時間盲目にする。
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この世界の魔法は火、水、風、土、雷の5属性と光、闇、無の3属性の計8属性が存在する。
今回は雷と無以外の6属性の初級魔法が1枚ずつ手に入った。
どうせなら雷と無もあればいいのに……ナビ子が全部集めたって言わなかったらこの2属性を延々に探していた所だぞ。
現時点では俺がこれらの魔法を覚えても、魔法が使えるスキルがないから使えない。
解放すれば使えるが……それだと使い捨て。
おいそれと使えない。
もし今後、複数手に入れることがあれば使用も考えることにしよう。
現時点で図鑑登録数は10種類。
レベル2まではあと90種類……先は遠いが楽しみでもあるな。
俺はビールを飲み干すと、今日は休むことにした。




