第6話 「六道輪大師」
ーーーーこの腰抜け野党の名前はホイポイ…コイツは
元々貴族の家で雇われていた護衛兵士だったらしい。
王様が変わって法律も変わり下流貴族は全て潰され
中流と上流貴族の一部の貴族も家を潰されてしまい
職を失った者達がこうして野党に成り下がってるそうだ。
前王は貴族にも民衆にも慕われる方だったようだが
第1皇妃様が婿を迎え…代替わりしてからの帝国は
新王が暴君の様になっているとか……
とんだ独裁者が誕生したもんだ
俺のいた世界でもそうだが
こういう国が滅ぶのは時間の問題かもな。
ピョンッピョンッピョンッピョンッ…
「キョ〜 其奴も食っていいの?」
「ウワッ! なんだソフィか…ビックリしたぁ……
ん? ソフィ何で口に血がついてるんだ??」
「あぁコレ? キョウを襲ってきた人間の血だよ」
さっきの逃げていった奴らソフィの餌食に…
でも人間を襲うのはダメだ しっかり注意しなきゃな
「ソフィこれからは人間を襲ってはダメだよ」
「悪い奴だとしてもダメだッ! いいね?」
「………わかった………もう襲わない」
よしよしっ!とりあえず俺の言う事をソフィが
聞いてくれるみたいで良かった。
「そそそっソフィ様ッ!!!?」
「えっ?何?ホイポイ…ソフィの事知ってんの?」
「はっはい…確か5年程前にまだ私がお屋敷で働いていた頃、街でお見かけした程度ですが…亡くなられたと噂に聞いていましたが生きていたのですか?」
「いや死んでるよ…キョンシーだし」
「ええぇぇぇぇッッ!!!」
驚くホイポイにソフィの事情を説明して
俺が道士だという事もついでに告げると…
「道士様ッ!!? それであんなにお強かったのですね」
いやいやアレはスキル的なやつなんだが……
説明しても理解出来ないだろうからスルーした。
「…道士様ッ! どうか私を弟子にして下さいッ!」
え?
「私はまたどうにか身を立てたいのです!」
えぇぇぇ…
弟子っつったって 俺はスキル使ってるだけだしなぁ
「雑用でも何でも誠心誠意致します!お願いです」
まっすぐに見詰めてくるホイポイを俺は何故か
放っとけず渋々了承した。
「ありがとうございます 先生ッ!」
「うっ…うん」
先生か…いい響きだ……調子に乗りそう………
「…でこれからの事だが…都には俺と同じような道士を生業としている人はいるのか?」
「いえっそんな仙人様や道士様は山奥の義荘にお住まいと聞きますので都にはおられないかと…」
義荘か…確か土地及びその運営をする事だっけ?
映画なんかで道士が死体安置してる家だよな…
そりゃ都には造らないわなぁ。
だが弟子も連れる事になって金はいるし
家だっているからな義荘を都に造れないだろうか…
そういえばこの世界の道士の宗派って色々あるのかな?
その宗派に入れば何とかなるんじゃないか?
「ホイポイよ こちらの国の道教宗派はいくつある?」
「宗派ですか? すみません 宗教には疎いもので…」
「そうか…」
「キョウ…宗派知りたい?」
「ソフィ知ってるのか?」
生前皇女様だった頃に国の事を学ばされていたソフィ
によるとこの国に道教宗派は2つあり〝神仙教〟
と〝陰陽教〟ってのがあるそうだ。
神仙教は五行思想を組み合わせ、主としており
五行の変化を観察して災厄等を判断し
精霊の力を借りて法術を施す流派であり…
陰陽教は自然界の万物は陰と陽の二気から生ずるとする
陰陽思想を主して天文学を取り入れ、占術で災厄等を
判断し陰陽の力を駆使して法術を施す流派らしい。
しかしこの二つの宗派はその昔ひとつだったという
説があり、開祖の六道輪大師という方は元々
二つの思想をひとつにまとめていたのではないかと
一部の学者が論文を発表しているそうだ。
だが六道輪大師がいたのは4000年も昔の話で
その資料も僅かしか見つかっていない為…
真実は闇の中だと言う———。
「んー難しい話だな しかし二つの思想をひとつにか…」
ファン質問があるんだが…
〝ハイッ! マスターなんでしょう?〟
俺の異世界法術って宗派や流派ってあるの?
〝ハイッ! マスターの異世界法術は六道輪大師という異世界人が創り出した法術です〟
なッ!! マジ!? 六道輪が苗字で大師って名前?
〝ハイッ! そのように記録されています、流派は陰陽五行ですが宗派は不明です〟
そりゃ宗派はその人が創り出した後に
出来たんだろうから無いわな…
えっと…それって……凄くないッ!?ーー