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PLAY16 オヴリヴィオン⑥

 アキにぃやキョウヤさん。そしてマティリーナさんは大丈夫か……。そんな心配な気持ちで私は来た道を見た。


 あれから私達は霊廟に入って、ダンジョン内をくまなく探した。


 探しているそれはもちろん――この暴動を引き起こした首謀者。


 一階と地下一階。そして地下二階と、部屋の隅々まで探した。


 でもあるのは頭蓋骨と古ぼけた布を着た骸骨。骸骨。骸骨。たまにゾンビ。骸骨。骸骨、骸骨……。


 殆どアキにぃが大嫌いだと断言しそうな骸骨まみれで、人と言う存在が全くいない中……、私達は首謀者を探した。


 けど……、全然いない。


 でも、それでも諦めずヘルナイトさんと一緒に探しながら、私達は最後の下層――ライジンがいるその場所へと走っていた。


 もしかすると最下層にいるかもしれないことを頭の片隅に入れながら……。


 でもそんな中でも私には一つの心配事があり、それを思った瞬間、走っていた足を止めてしまい、後ろを向いてしまった。


 無言でそのことを思いながら……。


 すると……。


「ハンナ――どうした?」

「!」


 後ろを向いて足を止めしまった私に気付いたのか、ヘルナイトさんは私を呼ぶ。


 私はそれを聞いてはっと現実に戻って、ヘルナイトさんを見ると、ヘルナイトさんは私に近付きながら……。


「……三人が心配なのか?」と聞いてきた。


 それを聞いた私は、少し黙ってしまったけどこくりと頷く。


 ヘルナイトさんはそんな私の頭に手を置いて、そしてしゃがんで私の顔を見て、凛とした声で言う。


「心配するな。あの三人なら大丈夫だろう」

「……………………………」

「私達には、やるべきことがある。そして、それを成し遂げると信じてくれた。その気持ちに応えることも必要だ」

「………そう、ですね」


 私は意を決して、前を向いて頷く。


 ヘルナイトさんは私の頭から手を離して、そして立ち上がると同時に……。


 そっと手を差し出す。


「?」


 私はそれを見てヘルナイトさんを見上げると……、ヘルナイトさんは平然とこう言った。


「ここは足場が悪い。長年整備されていない。私の手を掴め。ここで転んで怪我などしたくないだろう?」

「わ、うん」


 そう言って、私はおずおずとヘルナイトさんの手を掴んで握る。


 握ったことでヘルナイトさんも私の手を優しく握り返して、「走るぞ」と言って優しく手を引きながら走る。


 と言うか……。


 なんで横抱きにしないで手を繋いでなんだろう……。


 なんで手繋ぎ?


 そうもやもやとなんだか変にドクドクしているもしゃもしゃを感じながら、ダンジョンの最下層に向かって階段を下って行く。


 そして、階段を下り終えて、目の前にあった古ぼけたドアを、ヘルナイトさんが勢いよく開けた瞬間だった。


「っ! 隠れろっ!」

「へ?」


 ヘルナイトさんが大剣を持って、私の手を離して、私を背中に隠した瞬間だった。


 ばちぃっと、ヘルナイトさんの目の前が光り出す。そしてびりびりと、何か電気みたいな音が聞こえた。


 ヘルナイトさんはこういったことがあるから、わざわざ横抱きにしないで、背中に隠しやすいように手を繋ぐと言ったんだ……。


 納得した反面、驚きも大きかったけど……。うぬぬ。


 私はそっと顔を出して見ると……、その部屋にいたのは、一人の男性と……。


「…………っ」


 私は、驚いてしまった。


 斬首霊廟は確かに処刑場と言う名にふさわしいような、薄暗い世界に広がる棺と墓、そして処刑台。主に斬首刑のそれだ。何個か拷問器具のようなそれもあったけど……。とにかく薄暗くて、そしてところどころに乾いた血が付着している場所だらけだったけど、ここだけは違った。


 近未来で言うところの、円柱の強化ガラスの中にいる大きな大きな人。


 その人は良く日本でいう雷神に似ていて、手には撥を握り締め、筋骨隆々の顎髭を生やしたこわもての人。髪の毛は白髪で長くしたそれを頭の上で縛っている。頭には雷を模したような冠に、胡坐をかいたところには大きな太鼓が三つ並んでいた。その大きな人の周りには、電気の柱がバリバリと出ている。


 それを見るからに、それは雷様(かみなりさま)という感じでもあった。だから私はそれが誰なのか、すぐにわかった。



「ウォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」



 大きな大きな叫びと共に、両手に持った(バチ)を一気に振り上げて、足にある太鼓に目がけて、ドォンっと大きな太鼓の音を出した瞬間。電気の柱がより一層大きく、太くなり、バリバリッと音を立てて落ちた。


 強化ガラスでもぶるぶる震えるほどの威力。


 それを見た私は……、わかってしまった。


 これが……ライジンだと。


「っち! なんだこりゃ……」

「「!?」」


 そのライジンの強化ガラスの前に、一人の男がいた。


 黒い服に金髪の独特な髪形をしている男の人で、アキにぃと同じくらいの人が、ライジンが入っているガラスを見て、男は苛立った音色で言った。


「……ライジンを手中に入れようと思ったらこうだし、計画が完全に狂いまくってやがる。国王もお城にはいなかった。おまけに住人も広場にいない。どうなってんだ……? どこで計画が狂ったんだ……?」


 この男が言っていることを聞いて、私はそれが一体なんなのか、察してしまった。というか……わかってしまった。


 そう、この男は、アムスノームをこんな風にした張本人――!


 ふつふつと、アムスノームをこんな風にした張本人であるその男の人に、私は言いようがない何かを感じた。


 ヘルナイトさんもぐっと大剣を握る力を強めた気がした。


 すると……。


「そうか……」


 と男は言って、ふっと振り向いた。


 ううん。振り向き様に手に持っていなかった電気の剣を私達に向けて……。


「お前らのせいかぁ!」


 と叫んで、投擲した。


 まるで苦無でも投げるように、その剣は私達に向かってくる。


 ヘルナイトさんはそれを見て、大剣で軽くはじく。


 がぁんっと、金属と金属が弾き合う音が聞こえ、遠いところで剣が落ちる音が聞こえた。



 ヘルナイトさんは私達の方を見た男から目を離さないで、そこにいた。


 男は私達を見て、苛立った表情で私達を睨んでこう言った。


 顔は、アキにぃよりもかっこいい。整っているけど苛立ったその表情でその顔は台無しだ。


「お前らか……。あの疑心暗鬼王にこのことを伝えたのは……?」

「え? 疑心暗鬼……王?」

「アムスノーム国王のことだろう」

「あ……」


 ヘルナイトさんの言葉に私は思い出す。そして男は私達を見たまま、手をすっとかざして言う。


属性剣技(エレメントウェポン・)魔法(スペル)――『極光(ライガ・)纏剣(エレメントソード)』ッ!」


 ぴかっと光り出したと同時に、男の手には光を纏った剣が現れた。


 それを見て、ヘルナイトさんは私を見降ろし……。


「下がっていてくれ。君を巻き込むわけには」

「っ! ヘルナイトさんっ!」

「っ!?」


 でも、話を終える前に、男はヘルナイトさんの隙をついて斬りかかろうと、上から縦に斬る体制になって襲い掛かる。


 ヘルナイトさんは大剣でそれを受け止めて、そして『ギリギリ』と音を立てる拮抗の中、男を見て言った。


「……っ! まだ近くにいるのだが……?」

「そんな関係ねえよ! てか、お前だろう? お前があのくそ国王に入れ知恵して、こんなことをしたんだろう!?」

「違う。私はそんなこと、国王には話していない。私も驚いているんだ」

「じゃあなんでここに来てんだ? コンピューター」

「っ」


 男がヘルナイトさんのことに対してコンピューターと言った瞬間、私はむっとしてしまう。


 それは単に、ヘルナイトさんは生きていると言いたかっただけなのだけど……。


 ……なぜヘルナイトさんのことになると、私はむきになるんだろう……?


 そう思っていると……。


「コンピューターさんは、お背中がお留守なんですねっっ!」

「っ!」

「?」


 突然男は私に向けて、手に持っていた光の剣を投げた。それを見て、一瞬何がどうなっているのかと思っていたけど、私はすぐにてをかざして『閃光盾(ライラ・シェルラ)』を発動しようとした。


 その時だった。


 またガァンッと言う音が聞こえて、その音と同時に聞こえた鐘の音。光を纏った剣はすぐに光を失い、折れた状態で床に落ちてしまう。


 私はそれを見て、驚いたまま固まってしまう。


 すると――


「ごめんねぇ。驚かせちゃったぁ?」


 どこかで聞いたことがある音色。声。


 その声は上から聞こえたので私はすぐに上を見上げる。ヘルナイトさんも、男もだ。


 上を見たと同時にふっと降りてきたのは、妖艶な女性だった。


 私は驚いたままその人を見上げていた。ヘルナイトさんも驚きながらも男からも目を離さずにいた。


 でも男はその女性を見た瞬間、苛立ちを更に加速させるように静かに、そしてぎりっと歯軋りをしながらこう言った。


「そうか……、そう言うことだったんだなぁ……? お前、何でこんなことをしたんだ……?」


 そう、私を助けて、そしてその男の前に現れた、男の仲間の一人……の、女性。


()()()()()ッッッ!」


 ロフィーゼさんは両手に鐘の武器――殴鐘を持った状態で、私とヘルナイトさんに間でくすっと微笑んだ声を零した。

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