PLAY15 計画④
あの後……、マティリーナさんからあの事――つまりは暗殺の件について聞くと、マティリーナさんもガーディさんと同じような言葉だった。と言うか同じ内容で、あまりいい情報が得られなかった。
当たり前な話だけどそうそう核心に迫る様なことは起きないし、それに私はそんなすごい探偵でもない。情報が少なすぎることもそうだけど、結局はあのおじいさんに踊らされているのかな……?
そんな推理を巡らせていると……、アキにぃ達は私の不審な行動 (?)を見て疑念を抱いたのか私に近付いて「いったい何を聞いているんだ?」とアキにぃは聞いてきた。
私はそれを聞いて、一人で考えてもあまりいいことが思い浮かばない。
そう思った私は意を決して二人におじいさんが言ったことを話した……。
そして――
□ □
「うーん……」
「どしたアキ?」
「アキにぃ?」
夜。
その日の宿はマティリーナさんの言葉に甘える形で(有料だけど)、ギルドの宿で休む事になった私達。
今日は色んな事があったから、私の体は休みを欲しているかのように、吸い込まれるように部屋のベッドにダイブしてしまったくらい……色んな事がありすぎて、色々と考えてしまった。
ガーディさんに出会い、マティリーナさんに出会って、アークティクファクトを作ってもらって。
王様に出会ったけど結局何もできず。
ロフィーゼさんに出会って、なんだか変な気持ちになって……。
なんだか……。
なんだかすっきりしない。
そんなことを思いながらその気持ちを宥めるためにギルドの窓を見て、私はそっと下を覗く。
そこには、ヘルナイトさんが見張りをするようにきょろきょろと周りを見ていた。
はたから見れば心強いけど……。
中に入っても、罰は当たらない気がする……。
ちなみに、私達の部屋は一つで、ベッドも三つ。
つまり三人一緒の部屋ということになる。
そのことについてキョウヤさんとアキにぃは、マティリーナさんに詰め寄って、慌てながら何かを言っていたのだけど、マティリーナさんは「はん」と鼻で笑って――
「なんだい? 自信がないのかい? それならなおさらだ。夜は厄介な奴も多いからね。あんた達男がしっかりと女の子を守る。それが男として生まれた。あんた達の永遠の使命なんだからね」
と言っていたけど……、少し大袈裟な気がする……。うん。
そう思っていると、キョウヤさんはアキにぃに「何唸ってんだよ」と、ベッドの上で胡坐をかきながら(もちろん靴は脱いでいる)聞いた。
それに対してアキにぃははっとして私達を見ると、アキにぃは私達に向かってこう言った。
「いやね……、ちょっと考え事」
「考えごとぉ……? それって、ロフィーゼって人のこと?」
そうキョウヤさんが聞くと、アキにぃは「いや。そうじゃない」と首を横に振って、ベッドの上で腕を組んでいた姿勢を正して、そして私達を見てアキにぃは聞いた。
「あのさ……、二人は覚えている? 前国王様のこと」
「? ああ」
「それって、砂の国の兵士に……」
「そう」
キョウヤさんが一瞬思い出す仕草をして、すぐに思い出したのか頷いた。私はアキにぃにそのことを言うと頷く。
そして――
「ハンナの言葉も然りだけど、どうも違和感なんてものは一切ない気がするんだよなー」
「う」
アキにぃの言葉に、私は唸ってからすぐにしょんぼりとして項垂れてしまう。
それを見てか、キョウヤさんは呆れた顔をして胡坐をかきながら「いやいやっ。そこまでしょぼくれることかよ……っ!」と、呆れた音色で言うと、それを見て、聞いていたアキにぃははっとして私に向かって「わーっ! わーっ! わーっ! ごめんごめんっ! 違うから! 違うからぁ! そう言う意味で言ったわけじゃないから!」と、大慌てになりながらアキにぃは慌てて私に向かって叫ぶと、それを聞いていたキョウヤさんはアキにぃのことを見て私と同様に呆れた音色を上げながら――
「お前本当にシスコンだな……」と、溜息交じりに言った。
それを聞いて、私はそっと顔を上げながらアキにぃのことを見て、こう聞いた。だんだんとだけど、私の思い違いかな? とか……、私が考えすぎた結果かな……? と思いながら私はアキにぃに向かって聞いた。
「…………やっぱり、考えすぎかな?」
その言葉を聞いてか、キョウヤさんはうーんっと腕を組んで胡坐をかきながら「いや」と言って、私のほうを見てこう言う。
「考えすぎっっていうか、そう思うのは至極当然かもしれねーぜ? だっておじいさんも王様もマティリーナさんもガーディさんも『前国王は暗殺された』。そう言っていたじゃねえか。絵本の題材にもなっているんだし、そもそもあの老人完全にオレ達のことおちょくっていただろ……」
尻尾触ってきたし……。
キョウヤさんは明後日の方向を向きながら小さな声で言っていたけど、ごめんなさい。私聞こえていました……。私はそんなキョウヤさんの低い音色を聞きながら冷や汗を流していた……。
「まぁそうだといいけど……。でもハンナ、なんでおじいさんのその言葉を聞いてその裏を解こうと思ったの? もしかして『お前さんの抜けている頭でどこまで解明できるかはわからんがな』って言われてむかついて、その言葉を反論で返すことを誓ったから?」
「手前聞いてたんじゃねえかっ」
アキにぃは私のことを見ながら疑念を聞いてきたけど、その言葉を聞いた瞬間、キョウヤさんは驚きと怒りが含まれた顔で突っ込みを繰り出す。
聞かれた私は内心――聞いていたんだ。と驚きもあって驚いた目をしてアキにぃのことを見ると、アキにぃはそんな私の顔を見て、真剣だけど優しく、私の言葉を待つ体制になっていた。
それを見て、そして聞いた私は、ベッドの上で首を傾げながら「えっと……」と言って――続けてこう言った。
「なんだろう……。おじいさんが、そう語りかけた……、から?」
「「は?」」
そんな私の言葉を聞いてか、アキにぃとキョウヤさんは素っ頓狂な声を上げて私の顔を覗き込むようにして見る。そんな『何を言っているんだ?』と言う顔を見た私は、自分でもあまり理解ができないような顔をして首を傾げてから、言葉を整理しながらぽつり、ぽつりと言った。
「えっと……、あの時、おじいさんは確かに嫌味ばかり言って来る人で、すごく嫌な印象があったかもしれないけど、でも、何だろう……。なんとなく、直感だけど、おじいさんは私に――私達に何かをしてほしいような、そんな気持ちを乗せて私達に語り掛けてきたのかもしれない……。と思う」
「なんだそりゃ。怒って躍起になっているわけじゃねえんだ。よかった」
私の言葉を聞いたキョウヤさんは、私のことを見て首を捻りながら安堵のそれも吐きながら言うと、私はわたわたとしながらキョウヤさんに向かってこう言った。
「何かと言うかその……、おじいさんは私にすごく詳しく事件のことについて詳しく言ってくれたんです。守れなかったから追放されたとか……、そんなことを言っていました」
「うーん。話を聞いてて思ったけど……、結構詳しく話してくれたな。おじいさん。普通の冒険者ならそんな話しねえだろうか……、よくもまぁべらべらと話したな」
「ゲームだから普通だろう? ほら――よくある長い長い回想を口頭で話すシーン。あれだって」
「……オレは大体聞き流すパターンだな……。恥ずかしい話」
「話は聞こう。大事なイベントなんだぞ?」
「まぁそうなんだけど……、なぁ?」
私の話を聞いてか、キョウヤさんとアキにぃは互いの顔を見ながら話している。私はその話を聞きながら首を傾げて長考する。二人の話を聞きながら、私は長い思考の海に浸かる。おじいさんの言葉――抜けている頭でできるだけ思考を巡らせる。
どっぷりと……、浸かる。
おじいさんは私に事件の裏のことについて仄めかしていた。
ガーディさんやマティリーナさん、そしてガーディさんがその話を聞いた男性にも聞いたけど、おじいさんが言っていたことと同じ……、じゃない……。
おじいさんは暗殺のことについてこう言っていた。
傍にいた兵士が身を挺したが、目元を抉られ、左足を斬られ、国王は殺された。即死だった。
兵士はおじいさんでいいとしてでも……、なんだろう。違和感がある……。違和感、違和感…………、うーん。違和感……。
おじいさん=兵士。
言葉を聞く限りはおじいさんの目と足が切られてしまい、そして王様は殺されて……、暗殺されて……………。
「あ」
私は声を上げて顔を上げた。
アキにぃ達はそんな私の声に驚いたのか、私のことを見ながら目を点にして「ど、どうしたの……?」と言う声を上げながらアキにぃは素っ頓狂な声で聞く。
それを聞いた私は今現在思いついたことについて、アキにぃ達の顔を見ながら言った。
「わかった……、気がする……」
「…………なにがだよ」
と、キョウヤさんは意味が分からないような顔をして言うと、それを聞いた私は二人のことを見ながら胸の前に拳を振り上げながらこう言った。
なんとなくだけど――おじいさんが言いたいこと、その心意がなんとなくだけどわかったような顔で私は言った。
「この国で起こった事件のこと、少しだけどわかった気がするんです」
「マジか!」
「え? わかったって……、えぇっ!?」
驚いた目をして私に向かって身を乗り出す二人。そんな二人を見ながら、私は首を横に振りながら――
「ま、まだ確実じゃないんです。現国王様にもこのことについて聞こうと思うんです」
「……………それは叶わねぇんじゃねえか? だってあの疑心暗鬼の王様だぜ?」
「…………多分ですけど、大丈夫だと思います」
「「?」」
私の言葉を聞いた二人は、首を傾げながら私のことを見ていた。
私はそんな二人の顔を見ながら、控えめに微笑んで言う。
「――多分ですけど、話を聞いてくれると思いますよ」
多分だけど現国王様は聞いてくれる。この事件を話に出せば――私達が出せば、きっと聞いてくれる。あとになるか、先になるかはわからないけど、それでも聞いてくれるだろう。
だって――この事件は繋がっていたのだから。
…………………と思う。
そう思った瞬間だった。
――ドォオオオオオオンンッ!!
「「「「「うわあああああああああああっっっっ!」」」」」
「「「「「きゃあああああああああああっっっっ!」」」」」
「「「!?」」」
突然の爆音に、突然の悲鳴。
それは、ギルドの部屋にいる私達にも聞こえて、外を窓越しで見た私は、目を疑った。
紅かった。
青黒い夜空が一変して赤い世界になっている。ところどころが赤と黄色になっているところがある。
それを見た私はすぐに窓のドアを開けた。
窓の外を見た瞬間……言葉を失った。
アムスノームの夜の世界が赤い世界と化して……、ところどころから黒煙が、赤い炎が出て最悪の世界となっていた。
まるで漫画のような世界を見て、私は言葉を失って呆然としていた。
「なんだこりゃっっ!?」
「いったい……なにが……っ!?」
キョウヤさんとアキにぃが窓の外を見て愕然として見ていると……。
――バンッ!
「「「っ!?」」」
突然部屋のドアが開いた音がして、私達はすぐに後ろを振り返ると……。
「あんた達! 急いできてほしいんだっ!」
「ま、マティリーナ……さん」
私は震える声で、一体何がどうなっているのか……。そんな混乱を押し殺しながらも私はマティリーナさんを見て聞く。
それを見たマティリーナさんは冷静な思考が定まっていないのか私達に向かってこう叫んだ。
一日しか会っていないけど、初めて慌てた様子でマティリーナさんは叫んだ。
「テロが起こっているんだっ! すぐに来てほしいっ! このままだと……、アムスノームは崩壊するっっ!」