PLAY14 アムスノーム③
ガーディさんがお風呂に入っている間に、マティリーナさんは私が渡した瘴輝石を見て鑑定していた。
「ほう……、『スコープ』に『肉体強化』あとは『空の収納』三つと、『入っている収納』が一つで」
一つ一つ丁寧に、緑色の眼鏡を通して見ているマティリーナさん。それを見ていた私は見てわかるんだなぁと思いながら観察していた。
すると……、マティリーナさんは私の視線に気付いて……、私の方を見て聞いた。
「なんだい? こんな地味な作業見てて面白いかい?」
物好きだね。
そうマティリーナさんは言うけど、私は首を横に振りながら「面白いとかじゃないんです。ただ、すごいって思ってだけで……」と言うと、マティリーナさんはふぅんっと言って……。
「まぁ、こう言ったもんは特殊な奴にしかわからんもんだ」と言った。
「特殊……?」
「……その浄化の旅をしている内に、わかる」
と言って、マティリーナさんは作業を続けた。
エディレスの瘴輝石を手に取ってみると……、はっと目を見開いて驚きと歓喜、そして緩んでしまった笑みが零れてマティリーナさんは言った。
「こいつは……、イグニッションクラスの瘴輝石か……。とんでもないね。使用回数は三回か……」
「? ??」
マティリーナさん。一体何を言っているんだろう……。
そう思っていると、アキにぃ達も気になったのか、そっと近付きながら聞いた。
「なんですか? その……イグニッションクラスとか……、使用回数とか……」
「ん? ああ、冒険者は知らないね」
と言って、マティリーナさんはエディレスの瘴輝石を見ながら、その石を見せながら説明する。
「この瘴輝石を使うところを見たかい?」
「……見ました」
そうアキにぃは答える。
私も頷いて、キョウヤさんも頷く。
それは、ネクロマンサー達が使っているところを何度も見ているし、使い方はダンゲルさんにアバウトだったけど、見た。
それを言うと、マティリーナさんはハァッと溜息を吐いて……。
「ならわかると思うけど……、この石はあんた達で言うところの、『スキル』ってやつと似ている。スキルは『エクリション』、『エンチャント』、『エリクシル』と言ったものがあり、『ポケット』だけは収納しかできない。そしてエクリション級の上を行くのが……、あんた達で言うところの『詠唱』……、『イグニッション』ってところさ」
「必殺技ってことか」
「その通り」
キョウヤさんの言葉に、マティリーナさんは答える。
「その必殺技を使うことができるのが、このイグニッションクラスの瘴輝石」
マティリーナさんはそれを見ながら言う。エディレスの瘴輝石を見ながら……。
「それも、かなり複雑だけど、かなりの力を持っている瘴輝石だ。これは希少価値があると言っても過言じゃない」
「……売りません」
「真に受けるんじゃないよ。これはあたしがちゃんと整えておくから……」
と言った瞬間だった。
――がちゃ。
「おーおーおー! 上がったぞー!」
体を洗っていたガーディさんが陽気に手を振ってやってきた。でも……。その服装を見た私は、そっとアキにぃの後ろに隠れた……。なぜなら……。
「おっさ……、おっさん……」
「んあ?」
キョウヤさんは返事をしようとしたのだけど、すぐに真剣だけど、それでいて怒りを含んだ音色になって、ガーディさんに言った。
そしてすぐに……。
「――半裸はやめとけ」
「ふしだらです。早く服に着替えてください」
アキにぃも真剣に言って、私を背に隠しながら言う。それを聞いてか、ガーディさんははははっと笑いながら――
「何言ってんだ? 俺今やばい格好になってないだろう? 俺一応ズボン穿く主義で」
「「「いいから上も着ろ」」」
今度は、マティリーナさんも加わって冷たい声がガーディさんに向かってダイレクトに突き刺さった。
それを感じて、ガーディさんは渋々綺麗で臭わない服を着た。
「そんな凄んで言わなくても……」
小さく、ガーディさんの声が聞こえた気がした……。
そしてガーディさんは大きなリュックに手を突っ込んで、ごそごそと探しながら私を見ないで――
「いやねー。防具って言っても、かわいいのあるかなー? アクセサリーとかあるけど、女の子なんだし、防具の方がいいよねー? しかもアークティクファクトを付けることができるそれで。男衆はアクセの方がかっこいいし、そっちの方がいよねー?」
「あ、はぁ……」
ごそごそと探しながら、しまいにはリュックに頭を突っ込んでいうガーディさん。それを見て、私は驚きながら頷く。曖昧に……。
「てか……、あの中どうなってんだ……?」
「まさかと思うけど……、ねぇ」
アキにぃとキョウヤさんは小さい声で話していると、ガーディさんは「ぃよっと!」と大きな声を上げて、ガーディさんはスポンッと頭を出して、そして私達の方を振り返って、聞く。
「それじゃ……、アクセや防具確認していいかな?」
それに見合ったもので合わせたいと思うし。と、陽気に言って、ガーディさんはすとんっと近くの椅子に座って、そしてリュックを横に置いてから、私達を見て手招きする。
それを見て、最初に動いたのは……。
「オレいいすか?」
キョウヤさんだった。
「いいのか?」
「キョウヤさん……」
私達兄妹はそれを見て不安そうに見る。
キョウヤさんは「いやいや」と手を横に振って、からからと笑いながら私達にこう言った。
「別に処刑に行くんじゃねえんだぞ? ただどんな防具やアクセがいいかって言うだけで……、そんな心配すんなって」
と言いながら、キョウヤさんはガーディさんの近くに来て、近くにあった椅子に座って頭を下げる。
「お願いします」
「うん!」
ガーディさんは頷いて、そしてキョウヤさんの体中を品定めするように、顎に手を当てて撫でながら見る。じっと……見る。
キョウヤさんは背筋をピンっとしながら待っていると……、ガーディさんはこう言った。
「ふむ……。武器は『ドラゴンランス:アーク』か……。かなり希少な武器を持っている。そしてかなり使い慣れているな」
「いや……」
キョウヤさんは照れながら頭を掻くと、ガーディさんは再度キョウヤさんをじっと見ると……、続けてこう言った。
「他はボロボ空中都市で人気の『ハイランドシリーズ』装備……。案外普通の防具か、モルグの硬力は5か6だろう?」
「へ? えっと」
キョウヤさんは唐突にモルグのことを聞かれて、自分の懐に入っている冒険者免許を取り出してみると、肩を震わせながら大きな声で「うぉ! すげえ! おっさんの言うとおり、オレ硬力6の601だ!」と驚いていた。それを聞いたガーディさんは、腕を組んでキョウヤさんを見ながらこう言った。
「ということは、あんまり防御力と、魔法攻撃力には自信がないんだろ?」
「!」
その言葉に、キョウヤさんは驚いてガーディさんを見て、そして少しの間無言になったけど、口を開いて……。
「そう、っすね……」
視線をそらしながら、肯定の声を上げた。
確かに……、キョウヤさんはカンストは二つあるのに対して、あんまり魔法攻撃をしているところを見たことがない。そして、エレンさんがキョウヤさんの冒険者免許を見たときに聞いた。
キョウヤさんは、硬力と知力が低い。
それを見ただけで見抜いたガーディさん。
私はそれを聞いて、やっぱり随一の魔技師なんだな……。と、驚いて見てしまった。
「しかしそうなると、防具はあまり着飾らない方がいいだろう。蜥蜴人は動きやすい方がいい。ということで」と言って、リュックの中から取り出したのは……。赤い小さなベルト……。違う。あれは。
チョーカーだ。
チョーカーと言っても、その中央には三つの空洞がある。金色の丸いフレームで、三角形のようになっているそれだった。
チョーカーを見たキョウヤさんは、それをじっと見てから、指をさしてガーディさんに聞いた。
「これ……アクセ?」
「そうだ! アークティクファクトのアクセサリーだ」
ガーディさんは陽気にそれを指さして、それについて説明した。
「この丸い穴が開いているところに、瘴輝石を入れて使うことができる仕組みでな、唱えるだけで使うことができる。まぁ、アークティクファクトなら、そんなの簡単なんだが……、しかもこれを付けると……、硬力と知力が1アップするんだ!」
「1ってことは……、モルグの数値がってことっすよね?」
「ああそうだ」
「うーん……」
キョウヤさんは腕を組んで考える。
それを見たガーディさんは「他にも色々あるぜ?」と陽気に言うけど、マティリーナさんは苛立った音色で少し声を張って「早くしなよ。こっちだって暇じゃないんだ」と言った。
それを聞いて、私はキョウヤさんを心配そうに見る。
心配そうに見ると言っても、余計なおせっかいになってしまうかもしれないし、それに心配なんてしなくてもいいことだと思う。それでも、究極の選択のように強いられているキョウヤさんを見て、私はぎゅっと、自分の胸の位置に手を添えて、絡めるようにして握る。
まるで自分がその究極の選択をしているかのような、そんな雰囲気だったから……。
キョウヤさんは「よし」と言って――
「それじゃ。それで」と、はっきりと言った。
「え? まだいっぱいあるんだよ?」
ガーディさんが少し拍子抜けのようにして言うと、キョウヤさんはそれを聞いてもなお、肩を竦めて「いや、それでいいっすよ。色合いとかいいし、それに……、おすすめならそれでいいと俺は思うんで」そう言って笑うキョウヤさん。
それを見て、私はくすっと微笑んでしまう。
結局、杞憂に似たそれだったのだろう。そう私は思い、そして余計なおせっかいだったなと、反省する。
ガーディさんはそれを聞いて、少ししょげながら「そうか……まだいっぱいあったんだがな……」と言いながら席を立って、そのチョーカーをマティリーナさんに手渡す。
それを見て、マティリーナさんはキョウヤさんを見て――
「それじゃ、こいつに『肉体強化』の石を埋め込むよ」
いいかい? と聞いた。
それを聞いて、キョウヤさんはマティリーナさんに聞いた。
「その『肉体強化』って、どんなもんなんですか?」
「あ、ああ……、単純に身体能力が上がるだけのそれさ。あんた達で言うところの攻撃力や素早さが上がるようなそれでね。で? いいのかい?」
そうマティリーナさんは説明を簡単に終えて、再度キョウヤさんに聞く。
キョウヤさんはそれを聞いて、慌てて「あぁっ。はい」と頷く。
マティリーナさんはそれを聞くと同時に、流れるように石を特別な装具でカットする。
カンカンッと、削りながら。
それを見ていると、「ふぃー。なんか緊張した」とキョウヤさんは戻ってきた。私はそれを見て「おかえりなさい」と控えめに微笑む。すると……、ガーディさんはアキにぃを見て手招きをする。
アキにぃはそれを見て、少し警戒しながら椅子に座った。
ガーディさんはアキにぃを凝視した後……、ガーディさんは「単刀直入で言う」と言って、アキにぃをじっと見た。アキにぃはごくりと生唾を呑む音を立てる。
私達はその張り詰める緊張感を感じながら、次の言葉をじっと待った。
ガーディさんは……、ゆっくりとした動作で、指をそっとあげて、とあるところを指さした。
「――そのライフル銃……、ちょいと見せてほしいんだ」
「はい?」
「「へ?」」
さっきの緊張感とは裏腹の陽気で、興味津々の声に、私達は素っ頓狂な声を上げて、アキにぃも驚いてそれを聞いて首を傾げながら、懐にあるライフル銃を手に取って「はい」と見せた瞬間……。
「のぉおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!」
ソプラノ? と言わんばかりの半音高い声を上げながら、ガーディさんはぐあっとアキにぃに襲い掛かってきた。
それを見たアキにぃは、手に持っていたライフル銃を構えて銃口をガーディさんに向けた。
それは無意識と言うか、正当防衛だと思うけど、キョウヤさんはダッと駆け出そうとして、私も手をかざしてスキルを発動しようとしたとき……。
ガーディさんはその銃口にも怯えず、そのままがっと掴んで……。
「こ、これ……『グレンヘレーナ』だろうっ!?」
「へ?」
ガーディさんはその銃の名前だろう……。そうアキにぃに聞いて、アキにぃはそれを聞いて驚きながら頷く……。それを見たガーディさんはまた叫んで、そしてその叫びが気に食わなかったのか、マティリーナさんに「うるさい」と叱られるけど、それでさえも聞いてない様子で、興奮しながらアキにぃのライフル銃を触りながら興奮気味の独り言を言った。
「さっきからもてて思っていたけど、そうだった! いやぁ! 長く生きてきたけど、数百年前に造られたアークティクファクトは初めて見たよっ! ああ、生きててよかったってこう言うことなんだなぁ……っ! しかもかなり使っている。愛用しているんだなぁ……。俺感動したよ……っ! うぅ……! まぁ、俺が作ったあの爆弾アークティクファクトより古いから……、こんな風に実物を見るのは初めてだ……っ!」
ガーディさんは目元を腕で隠しながら泣いてしまう。
私達はぽかんっと、それを見ることしかできなかった……。
いったい何がどうなっているのやら……。
……ん?
というか……、爆弾アークティクファクト……?
その言葉を聞いた私は、ガーディさんに近付いて聞いた。
「あ、あの……、もしかして『腐敗樹』ギルドで、その……、筒状の爆弾を売っていました?」
そう聞くと、ガーディさんは『ん?』と、興奮していた感情をいったん落ち着かせて、私の話を聞いてガーディさんは……。
「ああ、売ったよ」と陽気に答えた。
それを聞いたキョウヤさんは、「へ?」とまた素っ頓狂な声を上げて、そして「ま、まさか……」と、きっと私の思っていることが分かったようで、ガーディさんの話を聞いた。
「いやなー。冒険者って奇抜な道具とかを好むだろう? それに乗りかかろうと俺も持っていたその……、なんとかねーど? っていうもんを改造して、瘴輝石はつけていないが七千Lで売ったんだ。でも誰も来なくてさ……、するとなんだ? 突然赤い魔法使いの女の子が来て、その爆弾アークティクファクトをくれって言い出して、すんなりとお金を出したんだ! いやー、流行に乗っかるのもいいことなんだなー」
「いや……、それ流行じゃなくて! それは個人の趣味ですっっ! おかげでオレ達ひどい目に……、あ」
キョウヤさんは一気に突っ込もうとしたけど、私を見てはっと口元を手で隠した。アキにぃはじろっとアキにぃを睨む。
それを聞いて、見た私は……。控えめに微笑んで言った。
「……大丈夫ですよ。きっと、大丈夫です」
そう言うと、キョウヤさんは申し訳なさそうに「なんか、ごめんな……。裂くような真似をしちまって……」という。それをきいた私は首を横に振った。
そう。そのアークティクファクトを買ったのは……みゅんみゅんちゃんだ。
そのグレネードのアークティクファクトを売ったのがガーディさんで、ガーディさんの話を聞いて、もしかしたらと思って聞いてみたら、当たっていただけ。
キョウヤさんとアキにぃの気持ちもわかるけど、私は信じているから大丈夫。
みゅんみゅんちゃんは、生きているって。
それを聞いていたガーディさんは「あれま? お友達なの?」と私を見て聞くと、私はそれに対して「はい」と頷く。
それを聞いてガーディさんは陽気に、笑顔でこう聞いた。
「それで、どうだった? 俺が作ったアークティクファクト」
その言葉に、私は控えめに微笑んで……。
「すごい爆発で、すごい数でした」と言った。
「そうかそうか! それは……え? 爆発ですごい数ってどゆこと?」
うんうん頷いて納得していたガーディさんだったけど、すぐにこてりと首を傾げてはて? と言う感じで言っていると、マティリーナさんは大きく「エホンッ!」とせき込んだ。
それを聞いたガーディさんはぎょっと肩を震わせて「おおっとぉ! そうだった! えーっと」と言って、アキにぃの装備を見る。アキにぃは再度座りながらピシッとしていると……。
「ふんふん。装備の方は『隠密スタイル』一式。主に潜伏とかに特化している装備だな。そんで君のヘアゴムはスキルの詠唱なしでも発動できる『スキルカットピン』を付けているんだな……」
「あ、はい……」
あ、そうなんだ……。
だからシャイナさんの時、スキルを言わなくてもトラップショットが使えたんだ。
「だからなんだな……、あいつ意外と課金使っているんだな……」
「そのアクセってもしかして……」
「ああ、課金アイテム」
その話を小声でしていると、ガーディさんは「うーん」と首をひねったかのような声を上げていた。それを聞いて、私達はアキにぃ達を見ると、ガーディさんはアキにぃのライフル銃……、『グレンヘレーナ』を見て、少し申し訳なさそうに言った。
「これは……ガタがきているな」
「……ガタ?」
その言葉にアキにぃはぴくりと膝に置いていた指を動かして、そしてガーディさんを見て聞く。少し、怪訝そうな表情が気になるけど……。
「どういうことですか? ガタって、どういうことですか?」
「いや、そんなの当り前な話。道具ってのは使い込むと罅とかが入るだろ? 刀だって手入れとか使いすぎると切れ味が悪くなって鈍になる。それと同じで、この『グレンヘレーナ』、かなりガタがきている。もしかしたら、壊れる可能性もあるって話だ」
「壊れる?」
その話を聞いたアキにぃは驚きながら目を見開いて、その話を聞いていた。
私達も驚いて聞いていた。でもマティリーナさんは瘴輝石を研ぎながら冷静に――
「いずれ物は壊れるもんさ」と言った。
その声を聞いて私達はマティリーナさんを見ると、マティリーナさんは続けてこう言う。
「瘴輝石だって、使用回数を超えて使うと……、その聖霊族の命は燃え尽きて砕ける。それと同じで、酷使は道具の寿命を削る。手入れをしたとしても、寿命を延ばしているだけの付け焼刃。物の破損は人間の寿命が尽きるのと同じ。これを機にスペアの武器でも持った方がいいんじゃないか?」
空の収納の瘴輝石持っているんだし。
そうマティリーナさんは言った。
それを聞いてアキにぃは俯いて考える。
その背中を見た私はなんだか苦しいもしゃもしゃを感じてしまった。
キョウヤさんはその背中を見て……。
「まぁ、愛着がある武器が壊れるって聞いたら、オレだってしょげるってもんだ」
と、アキにぃの気持ちがわかるかのように言った。
それを聞いて、ガーディさんはリュックに手を突っ込んで「それでだ……」と言いながら、それをにゅるにゅると、リュックの大きさ以上の何かを出した。
「てか、そのリュックの中どうなってんすか?」
キョウヤさんは冷静に突っ込んだけど、それを無視して、ガーディさんはそれをとんっと自分の膝の上に乗せて見せてくれた。
それは……、紺色の塗料が塗られているけど、ところどころに白い石が埋め込まれているような、そんなまばらの模様が印象的な……、長い銃だった。
「……なんですか? これ……」
「あー……、これってアサルトライフルじゃね?」
キョウヤさんはうーんっとうなりながらそれを見る。私はキョウヤさんを見上げて「あさると……?」と聞くと、キョウヤさんは肩を竦めて「オレもよくわかんねーわ。銃の種類なんて」と言った。
でも……。
「これ……、SG五五〇型のアサルトライフル……」
「お前……ゴロクルーズの時から思っていたけど、お前ガンゲームやってたんじゃねえの?」
アキにぃはそれを見て、小さく呟く。それに対してキョウヤさんはそれを見ながら小さく突っ込んだ。
それを聞いてガーディさんは「まぁ、そんなところだが……」と言って、その銃をとんっと手で叩いてこう言った。
「これは俺が作ったアークティクファクト、名付けて『ホークス』。スコープ無しで五百はいける代物だ。ここに瘴輝石を埋め込むところがあるだろ?」と言って、ガーディさんは引き金の下のところを指さした。そこは確かに、大きく窪んでいて、何かを填め込むところがあった。
それを見たアキにぃは、ガーディさんを見て――
「従来でも、四百が限界だから、これはかなり……、お金とかは……」
「もちろん無償だ。古いアークティクファクトを見せてくれたお礼でもある」
と言って、ガーディさんはにやりと笑った。
それを聞いたアキにぃは、小さく頷いて……。
「それ、使いたいです」と言った。そして――
「でも、『グレンヘレーナ』は使います。最後まで」
そう言うと、ガーディさんは少し残念そうだけど仕方ないかという感じで「そうかい」と言って、その『ホークス』をマティリーナさんに手渡して……。
「これには『スコープ』が適任だろうな」と言ったけど。
「あ、まだ填めないでください。実際にそれを何度か使って馴染ませたいので」とアキにぃは待ったをかけた。
それを聞いて、マティリーナさんはふぅんっと溜息を吐いてこう言った。
「まぁ、嵌める時が来ると思うから、そのサイズにカットしておくよ」と言って、キョウヤさんが選んだチョーカーをテーブルの端において次の瘴輝石のカットに取り掛かった。
それを見て私はアキにぃを見る。
アキにぃのこだわりを垣間見た私は、少しだけアキにぃのことを知った気がして嬉しくなった。
アキにぃは昔から自分のことを話さない人だったから……、それを聞いてなんだか、兄の性格を少し知った気がして無性に嬉しくなった自分がいた……。
「さて――最後は嬢ちゃんだ」
ガーディさんは再度座って私を見て手招きをした。
私はそれを聞いて、ピシッと気を付けをして「は、はいっ」と大きな声で返事をした後、ガーディさんの近くまで歩んだ。