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PLAY13 vs死霊族(ネクロマンサー)!⑤

「逃げ……た?」


 アキにぃは銃を下しながら言う。


 その光景を見ていたキョウヤさんも頭を掻きながら腑に落ちない顔をし……。


「苦渋の決断みたいだな」と、倒れているエディレスを見た。


 そしてはっと目をひん剥く。


 私はそれを見てすぐにエディレスを見ようとした時……、はっと目を疑う。


 エディレスの体がまるで砂のようになって、服ごとボロボロと崩れている光景を目にしてしまった。


「なんで……?」


 私は思わず声を漏らしてしまった。


 救える。救けると言って、なぜ砂になりかけているの?


 私は結局、殺してしまったのか……? そんなことを思いながら、私は手の中にあるぬくもりを感じる。


 その手にある……、エディレスの瘴輝石を見ると……、私は目を疑った。


 赤黒かった石が、私の掌がが見えるくらいの透明度がある薄黄緑色の石になっていたのだ。


 それを見て、再度エディレスを見ようとした時だった……。


「え?」


 小さい声で、エディレスは何かを言った。その声を聞いた私は、聞き返そうと振り向こうとした時……。


 エディレスは――ざぁっと砂となって、風に乗って運ばれて行った……。


 それを見て、私は言葉にできないそれを目の当たりにして……、思わず……。


「私……、私は……」


 と言いかけた時だった……。


 とん。


「!」


 誰かが、私の背を支えるように手を添えてくれた。私はその人物が誰なのかと見上げると……、そこにはもう見慣れた姿のあなたがいた。


「……ヘルナイトさん、なんで?」


 私は、初めてだろうが……。駄々をこねる子供のように、私はヘルナイトさんに聞いた。


「私なら、救えるって言ってくれた。でも、あの人は、消えた……。魔物じゃないのに……、消えちゃった……っ。私は、殺しちゃったの?」


 その言葉を聞いていたヘルナイトさんは、ただ言葉を探しているかのように、一旦口を閉ざしたけど、すぐに凛とした声で言った。


「違う」


 その言葉に対し、反論したのは――


「そんな無神経なこと言うな」


 アキにぃだった。


「あ、おいアキ……」

「お前の言葉を信じた結果。こうなった。結局記憶が戻っていない人を簡単に信じることは間違いだった。結果――こうして妹を傷つけたんだ」


 どう責任をとるんだ?


 そうアキにぃはヘルナイトさんに詰め寄る。


 それを聞いてか、キョウヤさんは溜息を吐いて、アキにぃを宥めながら「まぁまぁ」と言い、私を見て言った。


「責任とか云々よりも、()()()()()()()。なんだかわかんねーけど、きっと、まんざらじゃなかったんだろ?」

「!」


 その言葉を聞いて、私は思い出した。


 あの時、エディレスは……。確かにこう言った。



 ――ありがとう――



 と……。


 でも……。


「でも……っ。結局私、助けることができなかった……っ。使えば生きて助けられると思った。還せなかった」


 どうしよう……。


 今の私は、駄々をこねている女の子だ。


 救えると思って使ったのに、結局殺している。救えたはずの命を、救うことができず……、死に追いやっているのと同じだ……。


 どうしてこうなったの?


 なんでこうなってしまったの……?


 そんな言葉が頭をよぎる中……。ヘルナイトさんは言った。


「そんなことはない。ちゃんと、元のあるべき姿に還している」


 その言葉を聞いて、私は顔を上げる。


 一体何を言っているのだろう……。そう思ったくらい、意味が分からなかった。


「お前……っ!」

「まーまーアキ。お前は少し黙ってた方がいい。この世界のことをよく知らないオレ達があーだこーだ言っても何も解決しないし、こう言う場合は知っている奴が言った方がいいだろ? 記憶ねぇ騎士だけどな」

「んぐぅ! くそ……! 返そうと思ったのに返せねぇ……っ!」


 アキにぃを止めるキョウヤさん。キョウヤさんに止められ、アキにぃはぐっと顔をしかめて唸りながら言う。


 するとその話を聞いていたのか――


「その通りだよ。君は殺していないし、それにこれで正しいんだ」

「! あ……っ」


 キメラプラントは、左腕を押さえながら歩いてきた。その腕を見て、無くなってしまっているその手を見て私は声を上げようとしたけど、キメラプラントはそれを察したのか……。


「あーこれ? 大丈夫。だってまた別の腕をくっつければいいし」

「気味わりぃ……」


 そんなことをけろりとして言ったキメラプラントを見て、キョウヤさんは『んげっ』と舌を突き出して青ざめる。それを無視しながら、キメラプラントは言った。


「確かに、あの死霊族は『終焉の瘴気』の従順な(しもべ)のような存在。でも、元々は聖霊族だし、死んだって言っても、()()()()()()()()()()()()()()

「肉体……?」


 その言葉に、私は疑問符を頭に浮かべて聞くと、ヘルナイトさんが言った。


「聖霊族は、確かにこのアズールを作り上げた存在の一角だ。しかし彼等は私達のように、()()()()。聖霊の霊は霊体。異国の言葉で、『幽霊』と言うものだ。本来なら、肉体となる憑代を、彼等の生まれる場所で作られ、それを憑代として、彼等は人間の姿をして、人間と共存している」

「あれ……? でもネクロマンサーは……」

「ああ、彼等はお前達のような、彼らが生まれたところではない別の場所で、命を奪って憑代にしている。要は……、殺して奪っている。しかも、その人間の魂を石に取り込んで、仲間を増やしている……」


 アキにぃの疑問にヘルナイトさんが答えた。


 そしてキメラプラントは言った。


「元々人間だった死霊族がいたくらいだし……、結局は死体。死体はここに長く留まってはいけない。なにより……、そんなむごい事、てんし様は望んでいないと思うし……」


 それを聞いた私は、そっとエディレスの『屍魂』の瘴輝石だったそれを見る。


 掌に広がる……温かいぬくもり。


 それを感じていると、キメラプラントは私を見てなのか……。


「君は優しいね」と言った。


「え?」


 私は顔を上げる。上げるとキメラプラントは肩を竦めながら、溜息交じりにこう言ってきた。


「ただ浄化しただけで、そんなに驚くことかな? というか、そいつは死霊族。悪い存在なんだけど? 慈悲なんてないよ。自業自得なんだよっ。そんなくそみたいな奴ら」

「キメラプラント」

「ほ?」


 段々怒りを露にしているキメラプラントのその言葉を聞いて、ヘルナイトさんは言った。凛としているけど、怒っているような音色で、キメラプラントを見て言った。



「時と場所を考えろ」



 その言葉に、キメラプラントは、頭をガジガジと掻いて、そして私を見て……。


「まぁ、感謝の言葉を投げかけるなら……、別にいいけど」


 その言葉を聞いて、私は再度その薄黄緑色の瘴輝石を見た。


 未だにぬくもりを感じているそれはさっきまで心臓だったそれを思い出させるそれで……、私はやっぱり……、受け入れることができなかった。


 石を抱きしめるようにぎゅっと胸に押し付けて目を閉じる……。


 …………そんな風に、簡単に言えるようなことではない……。


 初めて、人ではないけど死んでしまった。目の前でそれを見てしまった……。


 それを見て簡単に受け入れるなんて……、できない。


 そう思っていると……。


「ハンナ」


 ヘルナイトさんが声をかけてくれた。私は顔を上げる。するとヘルナイトさんは私の胸の中にある瘴輝石を見てこう言った。


「その石は浄化されて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……え? どういうこと……?」


 驚いて、よくわからないまま、私はヘルナイトさんに聞くと、ヘルナイトさんは私を見たまま、凛としているけど、それでいて優しい音色で言った。


「……、この世界に溢れる瘴輝石は、すべて聖霊族は人の姿を全うした姿ともいえる。魔力がこもった石とも言われてるが、それは聖霊族の命の源ともいえる。『屍魂』は、死霊族の心臓のようなもの。瘴輝石は、聖霊族の心臓なんだ」

「……、そう、なの……?」

「マジかよ……っ」

「知らなかった。鉱山でホイホイ掘り出されているのかと思った……っ」

「バカなの? それはそこに聖霊族だった瘴輝石があっただけの話だと思うよ?」


 ヘルナイトさんの言葉を聞いて、私とキョウヤさん、アキにぃは驚く。


 そんなことダンゲルさんは言っていなかった。


 私もアキにぃの言うとおり鉱山とかで取り出せるものかと思っていたから……、その言葉を聞いて私は驚きを隠すことができなかった。


 キメラプラントはそれを聞いて、アキにぃを見ながら馬鹿にした言葉を投げかけたけど……、それは今は置いておこう……。


 ヘルナイトさんは続ける。


「だが、それでも聖霊族は、人のために、最後の最後まで、その命が燃え尽きるまで、その力を人間のために役立とうと、守る力を、育む力を、戦う力を、彼らが大好きな人間のために捧げているんだ。だからこそ、ハンナは殺していない。むしろ……」


 救っている。


 その言葉を聞いて、私は手に収まったエディレスの魂が入っていた瘴輝石を見た。


 あのお礼の言葉が、頭をよぎる。


 それは……、人としてのエディレスの……、今の今まで死体として生きて、そしてやっと天に召された感謝の言葉でもあり。死霊族として、聖霊族としてのエディレスの……、己の遺志を、人のためにこの力を使えるという嬉しさを表した……。



 ありがとう。



「うん」


 私は頷く。


 誰にでもない。私しか知らない……、エディレスに対して……。


「あなたの命……。大切にする……から。だから……、私の方こそ、ありがとう……」


 そう私は言った。


 それを聞いていたヘルナイトさんは、そっと、本当に壊れ物を扱うかのように私の肩を優しく掴んで、そのままでいてくれた。


「……てんし様に似ているね。君」

「へ?」


 突然、キメラプラントは私の顔をじっと見て言う。それを聞いた私はぎょっと驚いてみたけど……、すぐにキメラプラントは首を傾げ、そして首を横に振って……。


「違うよね」と小さく言って、そしてくるんっと踵を返した。


「あ」


 キョウヤさんは声をかけようとした時……、キメラプラントはそれを遮るように、私達に……、ううん。ヘルナイトさんに言った。


「ヘルナイトー。頼んでいたこと引き受けてくれてあんがとー。きっとこの『腐敗樹』も静かになるよー」


 じゃあ、またね。


 それだけ言って、ぐっと足を屈めて、屈伸するのかと思ったら――


 ぐんっ。と勢いをつけるような屈伸をすると同時に……。


 ばきゃっと言う地面が凹む音が聞こえた。と思ったらキメラプラントは跳びながら、私達に向かってこう言った。


 いつの間に跳んだの? そんな顔をして驚いている私達に向かってだ。


「ほんじゃまー。俺はまた昼寝を再開するんでー。また逢う日までー」


 重力に従うかのように、そのまま森の中へと消えて行った。


 それを見ていた私達はただ見ているだけだった。手に残ったエディレスだった『屍魂』の瘴輝石がきらりと反射して光を放っていたことを、私は知らない。



 □     □



 こうして私達は何とかクエストをクリア。そしてネクロマンサーを何とか浄化した。一人逃げてしまったけど、それでもいいと私は思う。


 これ以上……、あんなことがなければいいと願いながら……。


 でも、それは無残に砕け散った。



 ()()()()()()()()()()……、()()()()。 

~補足~


※聖霊族と死霊族。


 聖霊族は魂でもある瘴輝石を体に埋め込んで生活をし、そして体の寿命を迎えると聖霊族は瘴輝石となって人間のためにその命を捧げる。瘴輝石は元々聖霊族の魂ということになる。


 対照的に死霊族は生きている生物にその瘴輝石を入れて人間の魂を取り込んだり、人間の体を奪って無理やり自分の体にしている。生きた生物の魂を取り込む方法があるらしいが、まだ解明も何もされていない。人からは『終焉の瘴気』の使者などと言われているが、事実死霊族と『終焉の瘴気』が関係しているのかはまだわからない。


 元は同じだが枝分かれしてできてしまったのが聖霊族と死霊族である。

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