PLAY124 神器取り扱い説明書⑥
エドが装備している武器『聖楯アナスタシア』と『聖槍ブリューナク』
この二つの武器はこの世界に三つしかない聖武器と言う幻の武器であり、アズールの世界の人からすれば神器と言う名を持っている。
神の武器。
それはアズールの世界の大昔の逸話にも残っている事実。
神が造り、神に認められたものしか使うことができない神器――それこそが聖武器。
因みに、聖武器と対となる邪武器と言うものがあり、それも認められたものにしか扱うことができない神器として扱われている。
今まで出会ってきた者達の中では、ただ一人――緑守しか使っていないが、彼は認められ、邪武器――『血濡れ斧』を武器として使っている。
神は神でも、邪武器は邪神の武器なのだが……。
誰もが知っていることかもしれない。そして常識に聞こえてしまうかもしれないが、この武器は選ばれた人物しか使えない。
いつぞやか語ったことがあるかもしれない。
それはアムスノームで騒動を起こしたカイルの回想で、彼は『聖槍ブリューナク』を手にしようと抜こうとしたが、それを引き抜くことができず、エドがそれを引き抜いてしまったというエピソード。
これはカイルに大きな打撃を与えたのだが、エドからすれば些細な事。
と言うよりも、彼は選ばれた者にしか使えない神器を二つ持っている。
常識、いいや暗黙の了解と言うもので考えればエドは少しイレギュラーなのかもしれないが、今回は関係ないのでそれは置いておくことにする。
エドが持っている武器――神器は槍と盾。
『聖槍ブリューナク』
そして、『聖楯アナスタシア』
『聖楯アナスタシア』は、普通に扱えば普通の盾として使うことができるが、この武器にはたった一つだけ、それを持つと発動する特殊スキルを使うことができる。
それは『聖槍ブリューナク』にも備わっており、この特殊スキルと言うものは普通の武器には備わっていない――いうなれば特別な力が備わっているのだ。
一言で言うと――その武器にしかない力。
違う言葉にすると……『ユニークスキル』と同じ代物である。
このユニークスキルに関して、エドはこう思っていた。
この武器にしかない固定のスキルかな?
まぁ使いやすいし強い技みたいだから、必要な時に使おう。
なんか邪魔だけど。
そう軽い思考と軽い解釈、この固定のスキルを『邪魔』扱いするエド。
有効な属性に関しても全然理解できなかったエドだからの思考なのか、もしかするとどこか頭のネジが無くなってしまっているのかもしれない。
一見すると逸脱している。
別の視点から見ると変だ。
そんな見解が見えるかもしれない。
ゲームが大好きな人であれば喉から手が出てしまいそうなものを――『邪魔』と見てしまうのだから……。
だが、そんなエドだからなのか、選ばれたのかもしれない。
よく聞く話だ。
物は持ち主を選ぶ。
この言葉通り、エドは二つの神器を扱うにふさわしい存在であることは確かだ。相応しいと認知したからこそ、エドは使っている。
神が作ったとされる神器を……、この世界に三つしかない聖武器を。
さて――ここから本題に入ろう。
エドはボロボ空中都市を苦しめていた『残り香』三体を相手にしていた。
その時言っていた内容をまとめようと思う。
簡潔に言うと、エドが使っている武器のまとめと思ってくれても構わない。
まず……、『聖楯アナスタシア』の固定スキル。
『聖楯アナスタシア』が持っているスキルは――『防御変換』である。
エド曰く……防いだ攻撃を武器が持つ性質と同じ属性を変えて溜めてしまう。
水属性の攻撃が当たれば、聖武器の属性は光属性なので光の属性を溜める。
一言言で言うとカウンターの亜種のように見えてしまうだろうが、それが正解だ。
普通のカウンターであればその攻撃をそのまま跳ね返すだけだが、それに変化球を加えたのが『聖楯アナスタシア』の特性。
属性の変換。これこそがこの盾の特色でもある。
そしてこの盾にはもう一つの特色があるが、それはいつぞやかの『残り香』戦闘の時に発揮している。
『残り香』戦闘の時、三つの攻撃が吸収されたのを覚えているであろうか。その時エドはこんなことを言っていたのを、覚えているであろうか?
曰く――一気に三つの攻撃が当たったから、今この盾には三つの光属性の攻撃が溜まっているってこと。簡単に言うと――三倍の光属性がこの盾に溜め込まれているってこと。
と……。
これもエドが持っている聖楯が持っている力であり、三つの力を三つの状態を維持したまま跳ね返すことができる。と言う事である。
普通のカウンター攻撃であれば……、受けた力を蓄積し、その力を溜め込んだ状態でその時を待ち、その時が来た瞬間一気に放つ。
これが普通のカウンター。
受けた力を数倍にして跳ね返すカウンターもあるが、エドの場合は違う。
エドは受けた攻撃を光属性に変換し、その攻撃をまとめることなく、別々に返すことができるのだ。
こればかりはカウンター系を持っている者からすると変質のカウンターだ。
そしてその力を光属性に変えてそっくりそのまま返すだけなので、結局は大打撃にはならない。
それは聖楯を持っていたエド自身感じていたことであり、課題でもあったが、その課題もすぐに解消することになる。
解消のきっかけを与えてくれたのが――エドが持つ『聖槍ブリューナク』であり、この二つの武器を手にしたエドだからこそ閃いてしまった。
この武器は――二つで一つの武器として使えるかもしれない……。と。
◆ ◆
二つで一つの武器。
これが一体どんな理由があってこんなことを書いているのか。
三つの神器であるにもかかわらず、その神器の流れを壊してしまうその内容に、誰もが『設定ミス』だろうと罵りが来るかもしれない。
いいや来るであろう。
そもそも二つで一つと考えたエド自身変わっている思考回路なのかもしれない。
誰もが思っている固定概念――神器は一つしか使えないという固定概念。一つしか持てないという凝り固まった思考回路をエドは持っていない。
ゲームと言う物をしたことがない。ゲーム上のお約束を理解していないエドだからこそ、この武器を一つの武器として使えるかもしれないと、なんとも予想だにしないことを考えてしまった。
考えてしまったが、現に使えている。ちゃんと一つの武器の効果として扱えている。
運がよかったのか? それとも元々こう使えるようにコードを組み込んだのか? それに関し手は当事者に聞かなければいけないことかもしれないが、その当事者は現在どこにいるのかわからない。ゲームと言う仮想空間の世界では当事者に出会うこと自体無理な話なのだが……。
話を戻そう……エドが持っている『聖槍ブリューナク』も神器。
神器であるがゆえにちゃんと固定スキルがあるのだが……、実際エドはそれをしっかりと理解していない。
理解どころか、彼はブリューナクを銃口代わりにしているのだから、使い方を全く理解していない感丸見えである。
そんな状態でエドは言っていた。ちゃんと、胸を張りながら言っていた。言っていた。
そういえば、おれはこう見えてももう一つの聖武器を持っていて、その武器の名は『聖槍ブリューナク』。このブリューナクにもアナスタシアと同じ特殊なスキルを持っているんだけど、もう放つ前だから、簡単に言うと――ブリューナクは『我慢して我慢して溜めまくった力を敵に向けて解放して攻撃をする力』なんだ。
それをもっと簡潔に言うと――
この槍は、光属性の力を吸い、そしてそれを倍にして返す力がある! さっき盾に溜めた三倍の光属性をこの槍に溜めたから、威力は六倍!
実際、エドの言っていることはあながち間違いではない。『聖楯アナスタシア』が攻撃を受けた瞬間その力を光属性に変換して反射する。と言う力を持っているが、『聖槍ブリューナク』は光属性の力を倍にする力を持っており、攻撃した瞬間相手の『神力』を大幅に減らすことができる付加効果付き名だけで、盾に溜めた力をやりに込めることは――不可能なのだ。
最初は納得していたかもしれないが、実際はそんなのありえない。
盾に溜めた攻撃の力を槍先に向けて流して、それを光属性として放つ。
それはもはやスナイパーがすることであり、エドはガーディアンであるが故そんな攻撃、できるはずがない。
ましてや詠唱があったとしても、そんな詠唱があるのかすら疑問視してしまう。
ありえないやり方でエドは二つの神器を使っているのだ。
まるで自分の体をパイプ代わりにして二つの固定のスキルを使い分ける。
芸当として考えると……、ありえない。
普通に考えても、それは無理がある話だと思ってしまう。
漫画で見るような設定であればありえるかもしれないという、少々危ない話になってしまうが、それでも事実は事実。論より証拠が明らかになる様な事をエドはしている。
人は言うであろう。聞くであろう。
これはバグ?
これはチート?
これは……、ツール?
正解は、今のところない。エドに聞いても『なんとかできた』と答えてしまうだろう。
つまり――三つとも違うが正解。
エドはもしかすると奇異な存在かもしれない。それとも何かを隠した存在なのか?
その真実は分からない。まだ明かされないが、それでも彼は行動を起こそうとしている。ラージェンラの攻撃を貯め、その力を二倍の血うからで返すという行動を。
まだ明かされない秘密があったとしても、今は今の状況を打破することが肝心。
ここでいったんエドの武器の取り扱い説明を終えることにする。
□ □
「おれもできるだけ削って、みんなの負担を減らすようにするから」
その言葉を言いながらエドさんは自分が持っている槍――『聖槍ブリューナク』の先をラージェンラに向ける。向けた状態でエドさんは言い、私のことを見上げてエドさんは続けて言った。
「おれの合図でこのバリアを解いてくれ。勿論鬼姫様のバリアは壊さず、できる?」
「! あ、はい……!」
エドさんの言葉に私は一瞬反応が遅れてしまったけど、すぐに肯定のそれを体で表現する。
頷いて、行動に映せる様に――
エドさんと私の会話を聞いていたシロナさんと善さんは攻撃でき様に構えを解いていない。キョウヤさんと虎次郎さんは何かを察したのか、お互いの顔を見て頷き合って構えているけれど、会話を聞いていても理解できない。何をするんだという顔をしているアキにぃとシェーラちゃんはエドさんに向けて審議を行う。
まるでわかりませんけどと言いたげな、そんな顔をして――
「何言っているのよっ。騎士系統の所属ガーディアンにそんな攻撃できるわけがないわ」
「そうだっ。できるとしても……、『マジックスキルを跳ね返したり、吸収したりすることができる』だけで、結局攻撃だってあの女を止めることなんてできるのかもわからないし、それにここは」
「まぁまぁ見ていて――きっと状況打破に貢献できるから」
「!」
シェーラちゃんとアキにぃの言葉を遮り、エドさんはやんわりと止めるような声を出して二人の会話を止める。
本当に、やんわりとしたその言い方には少しだけ調子が狂いそうになってしまうけれど、その声を聞いてか、言葉を聞いてか、エドさんの何かを察したのか、二人は言おうとしている口を開けたまま言葉にすることができずたじろいてしまう。
柔らかく、聞き取りやすくて聞いていても嫌な気持ちにならないのに、なぜか言葉の芯が太くて、それ以上言えない風紀を纏っているエドさんは、心なしかやり遂げるという意地を見せているようにも感じる。
絶対に失敗してはいけない様な、そんな覚悟のもしゃもしゃ。
棘が出ているようなイガイガ具合のもしゃもしゃは私も感じられて、見なくても感じることができたみんなは驚きつつもエドさんに追及なんてしない。
ううん。今は追及する時間なんてないんだ。
「っ! 聖武器を持っているから何なの? こっちには邪神が作った神器――邪武器を持っている奴がいる。そう考えると、あんたもあいつと同じなんでしょ? 選ばれただけで結局は『国宝の選択損』。二つ選ばれたからと言って……、調子こかないでほしいわ!」
今までの話を聞いていたラージェンラは、両の掌をその場で空に掲げるように広げて、天を見上げながら色んな言葉を言っている。
その中でも『国宝の選択損』とは、もしかすると『宝の持ち腐れ』のアズール諺なのかもしれない。
全然関係ない事に関して考えている暇なんてないし、余裕なんていないけど、ふとそんなことが頭を過ってしまう。
もしかすると、張り詰める状況を何とか緩和しようと私自身が無意識にしているのかな……?
ううん。そんなことはどうでもいい。
今はそれを気にする時間も惜しい。
惜しいというか……ない。
空を見上げた状態で何かを言っていたラージェンラの手から真っ赤なそれが噴水のように噴き出し、吹き出した後すぐに赤いそれは細長い何かになっていくのだから……。
手の平から出てきた真っ赤なそれは命の原水の如く流れ出て、細長くなったものを見て一瞬で思い浮かんだものは――嫌な事を連想させる鞭。
しかもそれが幾つも枝分かれしていくのだから、あれが当たったら痛いなんて言う言葉では済まされない。
ずりゅりゅりゅと、生々しくて痛々しく聞こえるそれを聞いていたアキにぃは『うげっ』と、顔を痛みを受けたかのように歪ませて、キョウヤさんと虎次郎さん、シェーラちゃん、善さんはそれを見て真剣さと緊迫した面持ちを顔に出すけど、シロナさんだけは引き攣ったように顔を歪ませて「うわ、なんだよあの技……」と吐き捨てるように舌を突き出す。
まさにうげーと言う感情を表しているんだけど、そんなみんなの顔を見てラージェンラは首を傾げるように「あらぁ?」と一言言葉を発すると、その後の言葉を繋げていく。
ロフィーゼさんのような妖艶……とはかけ離れているけれど、併せ持っているような……狂気と歪みを持ったそれを……。
「これを見てそんな顔をするだなんて……、あなた達もあいつらと同じなのね……?」
『?』
ラージェンラは言った。
最初こそ明るさを保っているような音色で言うんだけど、後半になっていくにつれてどんどん低くなる音色。
特に……『あなた達もあいつらと同じなのね』と言う言葉だけは特に暗くて、というかどろどろとした黒いもしゃもしゃが渦巻いているような。ねっとりとした気色悪さを感じさせるような音色。
アキにぃ達もその音色を聞いて、言葉を聞いて首を傾げてしまいそうになるほど理解できないというか、一体何を言っているんだという雰囲気を出している。私もその一人だ。
エドさんはそれを聞いて、小さい声で『それは』と聞こうとしたけど、ラージェンラは遮るように「まぁいいわ」と言うと、ラージェンラは掌から出している赤い枝分かれの鞭を蠢く芋虫のように動かしながら続けて言う。
ばしぃん! ばしぃん!
しなって地面にそれが打ち付けられると、あまりの強さに地面が抉れていく。
抉れた地面は一部が砂となったり、細かい小石となったり、抉れの道ずれとなってしまった草がバラバラになって、その場所に生えていたであろう黄色くてきれいな花も無残に散り散りになって地面に落ちていく。
抉れ具合とか小石やいろんなものが地面の落ちていくその光景は、何か恐ろしいものが通ったかのような悍ましさを物語っていて、それを間近で見た私達はそれを強く理解してしまう。
この人は、やばいと……。
そんな私達のことを見ながらラージェンラは言う、
はっきりとした物言いで。
「そんなの当たり前なんだから、考えても仕方ないし、可能性を考えても意味がないわ」
最後は私一人になるんだから。
……ぞっとした。それが最初に出た感想。
みんな思ったに違いない。みんな、顔面蒼白にしてラージェンラの言葉を受けていたのだから。私もその一人だし、ナヴィちゃんもぶるるっと翼を揺らしていた。
おぞましくて、はっきりとしていて、尚且つ嫌でもわかってしまう。
殺意を――感じたんだから……。
誰もがぞっとしてしまう顔を露にしている。ここにもし、ヘルナイトさんがいてくれたら、どれだけ心強いかと思ってしまうほど、私はヘルナイトさんがいる有難さを感じてしまう。感じてしまい程ラージェンラの言葉と音色、雰囲気は私達を飲みこもうとしている。
でも、そんな中エドさんだけは違って――
「最後が、あなた一人か……」
飲みこまれようとしている最中、エドさんは普段と変わらない音色で、落ち着いているその音色で言う。
言った瞬間か、それともその前からかはわからない。でもはっきりとしていることは――エドさんの言葉が言い終わる前にラージェンラは掌から出した真っ赤な鞭を大きく振るう素振り……、つまりは両手を広げた状態から私達を叩き落とそうと両手を揃えて、一気にそれを下ろす。
ぶんっと空気を斬る音を放ちながら振り下ろされると、空に大きな長い影が出て私達を覆って行く。
束にした赤い鞭が私達に振り下ろされているのだから無理もないけど、それを見上げて慌てているアキにぃや、何とか防ごうとしているキョウヤさんと善さんをしり目に、エドさんは変わらない音色で言う。
言葉の続きを言いながら…………。
ううん。言う前に、エドさんは行動を起こした。
ぐっと聖槍を強く握って――そして……。
刹那。
世界が白くなって、そして眼で視認することを脳が拒絶したのか、思わず目を手で覆ってしまう私。
何も見えない。目を守るために目をつぶってしまったせいで、見えるとすれば、少しだけ赤黒い世界しか見えない。瞼を貫通するように強い光が私達を襲い、シェーラちゃんの悲痛の声が響いた。
ただ……、眩しいという僅かな悲痛の声。
でもその声が聞こえた後、何かが抉れる音と、息を詰まらせる声。最後に聞こえたのは……、鳥たちが飛ぶ音。
一瞬だったのに何故か長く感じてしまったするけど、それでもやっとと言うべきなんだろうな……。光が治まって、やっと元の光が灯る世界になった私は、そっと目を開けて視界に映る光景を脳に刻もうとする。
刻もうとして、目を見開いてしまった。
きっと、その見開きはアキにぃ達もしていると思う。厳密には――私達リヴァイヴしかしていない。
していないけれど、それでもこれは見て驚かない方がおかしいかもしれない。そんな光景が私達の視界に広がっていた。
だって……、私達の場所を最初に、細長くて、抉れてしまうほどの威力を持つ何かが放たれたかのような地面の抉れが姿を現し、その絵切れを避けるようにラージェンラが私から見て右に避けていて、膝を付きながらも抉れているその場所を見て言葉を失っている。
声すら出ないほど驚いてしまったその光景は奥まで続いていて、木々でさえも抉ってしまい、少し遠くに見える山も、微かだけど穴が開いているような、そんな威力を見ていたラージェンラはどう思っていたんだろう……。
見ていなかった私は、私達は……、これを見ないでいて本当によかったのか……?
「――敵が怯んだぞっ! 構えろ新参チームッ!」
『!』
「!」
驚いて固まっている私達に一喝するようにシロナさんの怒声が鼓膜を壊そうとする。
幸い壊れなかったけど、それでも私達は驚きで肩を震わせてしまい、シロナさんの言葉に従う様に反射運動のようにみんな武器を構える。私は手をかざすだけだけど、みんなが武器を持った瞬間の音が鼓膜を揺らしたのを聞いて――
――もしかして、あれって。
と思い出そうとした時、エドさんは言う。
穏やかな音色で、槍の先をエドさんに気付いたラージェンラに向けながら……。
「訂正してください」
はっきりとして、穏やかな音色で言うエドさんにラージェンラは一瞬引き攣る様な顔を浮かべていたけれど、そんなこと知るかと言わんばかりにエドさんは言う。
背中しか見えない私でもわかる様な……、怒りのそれを出しながら……。
「おれ達が――残るんです」




