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PLAY13 vs死霊族(ネクロマンサー)!②

「んなもん関係ねーだろうが。というかこっちの話を聞け。死体野郎」

「死体……。そうですね、私は死体です。なにせこの体の元の持ち主はとうの昔に死んでいます」


 キョウヤさんの話を聞いていたエディレスは言う。


 肩を竦め、アメリカンジェスチャーをしながら彼は言った。


「というか、私達は魂だけの存在です。腐らない殺すこともできない。いうなれば不老不死でもあります」


 エディレスの言葉にキョウヤさんはぐっと槍を構えながら警戒を解かない。


 それはアキにぃだって同じだ。銃を構えたまま微動だにしない。


 ヘルナイトさんもそうだ。


 私は違う。


 さっきの言葉で、私は心が不安定になっている。


 たった一言で、私の心に鋭いナイフが突き刺さったのと同時に、後悔もしているのだから。


 メンタルなんてもんじゃない。


 私にはそんな逆境を生き抜くような最強のメンタルなんてない。


 普通のメンタルなのだ。


 言われたら傷つくし、言われたらしょんぼりする。


 アキにぃ達のような大人のメンタルを思い合せていない。傷つけることが嫌いと言っていて、この様だ。


 結局、傷つけていたのかな……? 私。



「不老不死。そんなものは存在しない」



 !


 突然だった。


 ヘルナイトさんは言った。


 キョウヤさんも、アキにぃも、ネクロマンサーの二人も、ヘルナイトさんを見ていた。


 あ、アキにぃだけは歯を食いしばっている顔……。


 そんな状態でもヘルナイトさんは言った。


「それはお前達死霊族がそう盲信しているだけの、理想だ」

「理想……?」


 その言葉に、ぴくりとクロズクメが反応する。


 エディレスも目元を引くつかせていた。


 ヘルナイトさんは続ける。


「生命あるものは、必ず命を終える。人間も、悪魔も、天族も、私のような魔王族も、そして聖霊族も、お前達……死霊族もだ。不老不死などはお前達の妄想だ」


 ぐっと、私を抱き寄せて、ヘルナイトさんは続ける。


「何より、貴様等はその憑代となっている人間を殺しているだろう。その憑代となった者達は、まだ生きれたのだろう? なのにお前達の盲信で、そして気まぐれの憑依によって殺されてしまった」


 貴様等の方がよっぽどあくどい。


 そうヘルナイトさんは言って……、私を見降ろした。


 それを見た私ははっとして、見ることしかできなかったけど……、ヘルナイトさんは、私を見て言った。


「逆を言えば、未練がある者達を浄化し、救済しているハンナ(彼女)は……、誰も殺していない」


 (たす)けている。


 そう、私を見て言った。


 ヘルナイトさんはそっと私を下して、そして頭に手を置いて言った。


「合図があるまで、私の後ろにいろ」


 その言葉を聞いて、私はさっきまであったどろどろとした黒いもしゃもしゃが、自分の中から出て行くのを感じた。


 おかしい話。


 たったそんな言葉を言われただけで開き直る私も私。


 でも、その凛とした声を聞いて、安心したと同時に……。嬉しかった。


 殺した。


 それはネクロマンサーの見解でも、人から見たら殺していると同じだから。


 でも、それを否定したのはヘルナイトさん。


 未練があって苦しんでいるアンデッドを浄化する。それはきっと、魂が救われている。


 そう言いたかったのだろう。


 殺しているという言葉を否定してくれたヘルナイトさんに向かって、私は控えめに、それでもきっと嬉しさが零れているような、目元が熱いその笑みで、私は言った。


「……っ。うん」


 それを聞いてヘルナイトさんは何も言わなかった。でも、大剣を両手でしっかりと持って、目の前にいるネクロマンサーを見た。


 それを見たネクロマンサーはびくっと顔を青ざめて、狼狽する。


「……そーなるわな」


 そう言ったのは、ひどく緊張感がないような、それでいて陽気な音色を出したキョウヤさん。


 キョウヤさんを見た私。私がいる方向を振り向いてキョウヤさんはにっと笑って言った。


「てか、考えすぎだろうが。あいつらだって昔ひどいことをしたってダンゲルさんが言っていただろ?」

「……はい」

「ならよ。結局は都合のいいことを押し付けているだけだろう。な?」


 隣にいたアキにぃを見ると、アキにぃはヘルナイトさんをじろっと見て、そしてくるっとネクロマンサーの方を見た。アキにぃは低く、そして怒ってるかのような音色で言った。


「お前等……、妹になにいちゃもんつけてんだ……? 撃たれたいのか……? 撃たれたいんだったら俺は(よろこ)

「正常っ! 正常な思考を保てアキッ! あ、だめか……っ! シスコンなのはわかったから……、今は倒すことに専念しろっ!」

「ぶっ放す」


 ……そんな、まるでいつもと変わらないような会話をしている二人。


 それを聞いて、私は胸に手を当てる。


 穏やかな色が混ざっているもしゃもしゃが、私を包んでいる。


 それを感じて、私はそっと手をかざした。


「みんな――」


 その声を聞いて、ヘルナイトさん、キョウヤさん、アキにぃは振り返った。


 私は、それを見て言う。


 控えめに、微笑んで言う。



「――怪我したら、すぐに回復スキル使うから……、頑張って」



 それを聞いて……。


 アキにぃは銃を構え。


 キョウヤさんは槍を構え。


 ヘルナイトさんは大剣を手に持って構えたまま――


「「わかったっ!」」

「ああ」


 そう、私の言葉に対して言ってくれた。


 ごめんねみんな……。私は心の中でみんなに謝る。


 私、一瞬心が折れそうだった。


 でも、みんながいる。


 今目の前に、信じられる人達がいる。


 ありがとう。


 ヘルナイトさん……、温かい言葉を、ありがとう。


「っっ! 戯言――っっ!」


 クロズクメは黒い手を操るかのように、ぶぅんと腕を振って命令した。


 それと同時に黒い手はクロズクメの影を拠点に、伸びに伸びながら私達に向かって襲いかかる。


「お前達だってそうだろう――っ!? 金のために生物を殺す――っ! お前達が例外などない――っっ!」

「そうですねぇ」


 そう言いながらボーンアンデッドに向けて、手を振るいながらエディレスも言う。


 その合図でボーンアンデッドは走り出した。私達に向かって。


「あなた方は利益のために戦争などと言う愚かなことをする。国が欲しいからとかそんな夢物語を実現するために、武器をとって命を壊す。あなた達だって同じではありませんか」

「なにが助けているだ――っ!」

「なにが盲信ですか?」


 二人は互いに声を揃えてこう言った。



「「それは、生命あるものにしかない……、現実逃避だ――!(ですね)」」



 その言葉を聞いているのか、聞いていないのかわからない。


 でもキョウヤさんとアキにぃは、そのボーンアンデッドと黒い手を見たまま……。


 キョウヤさんは一回横に薙いで、黒い手を壊して崩し、一回トンッと小さく跳躍したかと思うとすぐに一回転して残りの黒い手を斬る。


 それを見て、クロズクメはぎょっと驚いた顔をしていた。


 アキにぃはボーンアンデッドの頭めがけて、一発一発、必ず命中するように撃つ。撃ちまくる。


 パンパンパンパンッ! と発砲したけど、ボーンアンデッドの頭に当たったとしても、何のダメージもない。それをみたエディレスは「ははっ!」と声を漏らす。


 笑いのそれを漏らして……。


「そうでしょうっ! そうでしょうねぇ! なにせアンデッドは物理攻撃に耐性がありますっ! ボーンアンデッドはその中でも随一の物理耐性がありますっ!」


 エディレスは自分を抱きしめて、彼は言った。昂揚とした笑みで、彼は私達に言う。


 それはまるで、演説だ。


「ああ、なんていい骨付きなんでしょうねっ! 私のこの体中を、魂の中を駆け巡るこの刺激っ! そう! これが愛なのですっ! 愛してやまないボーンアンデッド達よっ! そこにいる者達を倒すのです。そして……、あなた達の同胞を増やして、私を愛してくださいなっ!」


 けど……。


「醜悪な性癖だな」


 ヘルナイトさんは言った。


 それを聞いていたエディレスは首を傾げて、怪訝そうにヘルナイトさんを見た瞬間だった。


 その表情は一変して……、驚愕に変わった。


 クロズクメもそうだった。


 背後から見ていたけど……、私だって驚いている。


 なぜなら……、今ヘルナイトさんは、スキルを使っている。


 それも……、前に出した右手の人差し指に、小さい蛍のような光を出している。


 それを見て、キョウヤさんとアキにぃは、ぽかんっとして振り向いて……。


「なんだありゃ……」


 キョウヤさんが呆けた声を出した瞬間……。


 ヘルナイトさんはそれを、優しく、とんっと押した。


 フヨフヨと浮くそれを見ているアキにぃは……「蛍?」と、私と同じようなことを言った。


 その瞬間だった。



「――『爆光(フラッシュ・ライト)』」



 パァンッと、爆竹(バクチク)のような音を出した小さな光は、眩く光を放ちながら爆ぜた。


 それを直視してしまったアキにぃ達は目を塞いで、ネクロマンサーの二人は目を塞いで唸った。


 私はヘルナイトさんの後ろにいたから、目への被害はあまりなかった。


 そんな中、クロズクメは苦しい音色でこう言った……。


「き……――、貴様――っ! なぜその力を……――っ!? それは『光』属性……――っ!」

「そうだ。八大(はちだい)魔祖(まそ)の『光』だ」


 まそ? はちだい? 一体何を言っているんだろう……。


 そう思っていると……。クロズクメは更に声を荒げて言う。


「貴様は――っ! 貴様の属性は――」

「私は『()()()()使()()()()()()()()()()


 そう言って、ヘルナイトさんは私の方を振り返って……、そして私に言った。


「私が呼んだら――走れ。そして、あの死霊族にしがみついてくれ」


 一体それが何を意味しているのか分からないけど、それでもヘルナイトさんはもう一度ネクロマンサーの方を見て言った。


 私は走る体制になる。


 クラウチングスタートではない。ただの走る体制。


「私は――『()()()()()()()()()()()()()()()

「~~~~~~っっっっ!」


 それを聞いて、クロズクメの悔しそうな唸り声が聞こえた瞬間……。


「ハンナっ! 走れ!」

「っ!」


 ヘルナイトさんの合図通り、私はダッと駆け出した。


 ちゃんと前を見て、驚くキョウヤさんとアキにぃの間をすり抜け。


 そして、ボーンアンデッドが白い塵となって消えていく中を掻い潜って――


「「っっ!?」」


 私は二人のネクロマンサーに向かって走って、タックルするように……。


 がっしりと抱きついた。


「おいっ!」

「ハンナッ!」


 キョウヤさんとアキにぃの声が重なった気がした。驚いた声が重なった気がした。


 それでも、私は放さない。


「っ!」

「小娘――っっ!」


 エディレスとクロズクメが驚愕の声を上げた。


 そして……。


「――()()()っ!」


 ヘルナイトさんの声を合図に、私はありったけのスキルを発動する!


「『浄化(ターン・アンデッド)』ッッ!」

 

~補足~


※八大魔祖――火、氷、風、土、雷、水。そして光と闇を一括りにした存在。この世界における力の祖先、魔力の祖先とも云われているので八大魔祖と言われている。自然の力ともいう。


 自然の力に近いのでその力を扱うことができるのはヘルナイトのような魔王族しか操ることができないが、アキ達はスキルとして使っているので八大魔祖との関係性はあまりない。


 耐性と言うものはその名の通り弱点耐性。火は水に、水は雷に、雷は土に、土は風に、風は氷に、氷は火に弱いと言った弱点属性のようなものである。ヘルナイトはチートなのでそう言った耐性の防御力が半端ないので、あまり効きません。

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