PLAY13 vs死霊族(ネクロマンサー)!①
えっと、状況を説明すると……、というかこの状況は、今までにないくらい危ない気がする……。
と言うか危ないそれだ。
たった何日しかいないのだけど、私達は今絶体絶命の状況にいる。
エディレスと……、クロズクメ……。
二人共、ネクロマンサー……。
ヘルナイトさんの様子がおかしい。
更には今私達は絶賛の絶対絶命……。
ではない。
私達を取り囲もうとしているのは、ボーンアンデッド。
アンデッドなのだ。
このモンスターを出したエディレスに感謝しないといけない。……敵に感謝なんてする大馬鹿がどこにいる。と言う言葉が飛び交うだろうけど……、それでもいい。
私はそっと手をかざす。
その手の先にいるのは――何十体……、ううん。何百体ものボーンアンデッド。
「っ! ハンナ――待て!」
ヘルナイトさんが叫んでいたけど、私は息を吸って吐いてから……発動する。
「『浄化』ッ!」
ブワリと出る白い光。それが私を中心に、一気に拡散して、広がっていく。
ボーンアンデットに当たった瞬間、彼等は白い光を出して消えていく。それがまるで波のように、広がって拡散して……、光となって消えていく。
「っ! マナ・イグニッション――『遮光装甲』――ッ!」
「マナ・イグニッション――『遮光装甲』ッ!」
クロズクメとエディレスは自分の周りに黒い壁の箱を展開した。
そのまま私が発動した『浄化』が通り過ぎようとしたが、その黒い壁を通り越しても、何も変わらない。
きっと、あの壁の箱は防御のそれなんだと私は思った。
それでも、私はここにいるボーンアンデッドを浄化するために、目いっぱい力を入れる。
なんだろう……、体に流れる血液がどんどんなくなっていく感覚……。
それを感じていたけど、それでも私は見て、そしてボーンアンデッドが全員消えたのを確認した後、すっと手を下す。
目の前には……、黒い箱に入った二人と、私達しかいなかった。
「す……、すっげぇ! 全部浄化しちまったっ!」
「流石は天族のメディック」
「っ!」
キョウヤさんが辺りを見て歓喜の声を上げ、アキにぃがそれを見て、私の頭を撫でながら褒めると……、ヘルナイトさんはぐっと私を抱き寄せた。
「うっ!」
そのせいで、私がヘルナイトさんの鎧にごつんっと額を当ててしまうことになって、ひりひりと額が膨らんだ気がした……。それを見てなのか……。
アキにぃは怒りながらヘルナイトさんに向けて指をさして……。
「あ! なにしてんだヘルナイトッ! ハンナの頭にコブが! なにしてんだよ羨ましいっ!」
「おいおい。怒りと本音が駄々漏れ」
と怒っていたけど、キョウヤさんはそれを見ないで聞いただけで突っ込みを入れる。
それを聞いていた私だったけど、未だに私を横抱きにしているヘルナイトさんの手は……、緊張しているかのように、力を入れていた。
それを感じていた私は、いつもと違うヘルナイトさんを見て、声をかけようとした。
その時だった。
「おやおや……」
「「っ!」」
「「っ!?」」
アキにぃとキョウヤさんは、武器を構えて私達の前に立つ。
ヘルナイトさんは驚き、私も驚いて声がした方向――黒い箱に入っていたであろう、エディレスとクロズクメを見た。
彼らは黒い箱を溶かして、姿を現した。
クロズクメは顔を顰めて、私を見て――
エディレスはにこやかに笑みを作っているのだけど、その笑みに隠された……、ぐちゃぐちゃした赤黒いもしゃもしゃを感じた私は、しまったと思ってしまった。
エディレスは……、怒っている。
その理由は……。
「私の愛くるしく、可愛らしく……、そして愛おしい愛おしい愛おしい骨の皆様を……、よくも……、よくも……」
ぎりっ。ぎりっと……。エディレスは言葉の合間に、歯軋りをしながら言う。
それを聞いて、私はわかってしまった。
ヘルナイトさんの言う通りにすればよかったと、ここで後悔してしまった。
「よくも……」
笑みの声が怒りの声に変わるエディレス。
クロズクメはそれを見て言う。
「そこの女……――、やはり天の一族……――っ!」
怒りと怨恨が混ざった、憤怒の怨みを乗せたその音色でクロズクメとエディレスは……、私達に向かって怒りをぶちまけた。
「よくも私の可愛いアンデッド達ををををををををををーっっ!!」
「殺す――っ! 我らの怨敵――っ! 根絶やしに――っっ!!」
それを聞いたキョウヤさんは、びりぃっと尻尾を逆立てる。
私もその黒くて赤みが混じった、びりびりとしたもしゃもしゃを感じた。
きっと、キョウヤさんも感じたんだ……。
あの二人の……、殺気を――
「っ! っふ」
キョウヤさんは槍を一回転させて、足に力を入れてから駆け出す。
アキにぃは銃を構えたまま撃つ体制になる。
ネクロマンサーの二人はそれを見て、手に持っていた瘴輝石を使おうとした。
その時だった――
ドォンッッ。
「「「「っ!?」」」」
「「っ!?」」
互いが互いに別の方向から聞こえた爆発音を聞いて、同じ方向を振り向く。
その方向には壁があるけど、その先から聞こえた爆発音。
誰かが閉じ込められている場所から聞こえた。
「…………え?」
私は驚いて声を漏らした。
「なんだ?」
「爆発……、誰かが壁を壊した……?」
キョウヤさんとアキにぃが言う中、ネクロマンサーの二人はそれを見て、聞いて言い合う。
喧嘩じゃないけど……。
「なんだ――? 閉じ込められているのはこいつらだけじゃないのか――?」
クロズクメは知らないようで、知っているであろうエディレスに聞く。
それを聞いていたエディレスは肩を竦めながら舌打ちをして。
「ええ、他にもいますよ。私だって好きで希少な瘴輝石を使ったんじゃないんですから。頼まれたんですからね」
「頼まれた――? 誰にだ――?」
「人間ですよ。高額なLを提供する代わりに、ここで潜伏してくれ。頃合いになったら、ここに連れ込むから閉じ込めろと」
え?
「はぁ?」
「それって、まさか……」
キョウヤさんとアキにぃが驚愕の話を聞いて、私と同じように呆然としてしまった。
ヴェルゴラさんは言っていた。
この『腐敗樹』に人が来ている。
もしかしたらRCの社員か関係者がいるかもしれない。
そうヴェルゴラさんが言っていた。
そうなると、今までこの『腐敗樹』を歩き回っていたのがこのエディレスだとしたら……。
「マジか」
キョウヤさんは溜息交じりに落胆した。
アキにぃも落胆してしまう。
結局、淡い希望だったけど……。
ここにRCの関係者どころか社員なんていなかった。
いたとすれば……、ネクロマンサーが誰かに頼まれて――
あれ?
「じゃぁ何か」
キョウヤさんはすっと槍を指に見立ててネクロマンサーの二人を指さした。
怒りが籠っているその音色で。
「お前らは、その雇い主に頼まれてこんなことをしたのか?」
「……答えたくありませんね」
エディレスは鼻で笑い、私達を見下すようにくつくつと笑いながらこう言った。
「なにせ私の可愛らしいあの子達を殺してしまったんですから」
殺した。
その言葉を聞いて、私はずくっと痛みを訴え心臓を押さえた。<
「っ」
心がどろどろと黒く汚染されていく。
しょーちゃんが言っていた……。『浄化』=『救済』が成立しない。ううん。元々成立なんてしないのかもしれない。
ここはゲームの世界。
『浄化』は、戦えない人達はアンデッドを殺すことで経験値を得る戦う術。
結局は殺しているのと同じだ……。