PLAY114 フェーリディアン⑤
今まで薄暗く感じた世界に勢いよく差し込んでくる半円の光。
その光に向かって歩みを進め、光の向こうに歩みを進めていくと、その先は――
何度も言ったかもしれない。この仮想空間に来てから何度も言った通りのお決まりの台詞と化してしまっているけれど、このお決まりの台詞は今回も発動してしまう。
無意識に発動して――私は心の感情を零す。
はぁ。
それだけの言葉だけで私は視界に映る世界を見て思った。
ワイワイ、がやがやと活気溢れるその声の数々を聞きながら私は思った。
別世界と――
トンネルの世界のような薄暗い世界とは違い、この街の門の外の世界のような自然と言うものを感じさせない。
一言で言うと小さな街を思わせるような光景。
そう――私達の言葉で言うところのイタリアの街を思わせるような世界。
赤い屋根に茶色い屋根、暖色で統一されている家屋。その周りを照らすように黒い金属で作られた街頭やランプなどが吊るされている。きっとその光がこの街の夜の世界を明るく照らすんだろうなと頭の片隅で思い、そして周りを見て再度驚かされた。
人がいっぱいいるのだ。
アムスノーム国王、アルテットミアの様に、王都やボロボほどの人はいないけれど、それでも小さな街には多くの人々が和気藹々と話に花を咲かせて歩み、ところどころにある露店やお店に顔を出して商品を見たりなどしている。
まるで小さな都市――私達が暮らしている……、當間市の様に……。
視界に広がる光景をもっと見ようと思った私は、無意識に向けた視線の先を見つめる。最初に見た視線は私から見て左。
視界に入ったのは二人の女性。どちらも若い人で――その二人はお互いのことを認識した後楽しげに会話を始めた。
「あらこんにちわ。今日もいい天気ねっ」
「ええとっても。今日はなんだかいい事が起きそうね」
「確かにね。あははっ」
「ふふふっ」
最初は和気藹々とした会話。他愛もないことを話した後今度は小さな声で何かを話し始め、歩みを近くにあった喫茶店みたいな場所に向けると、そのままその喫茶店らしきお店に入ってしまった。
終始微笑み合いながら話していたので、多分暗い話なんてしていないと思う。
入った喫茶店も小綺麗で観葉植物が置かれていることもあって雰囲気がいい感じも相まって、なんだか最初に見た光景に対して微笑ましく思ったのは気のせいじゃないだろう。
そして次に視線を向けたのは――小さくて黒を基準とした露店の前に少ないけれど数人に人だかりができている。その人だかりの中から一際大きな声が私やみんなの耳に入り込んできた。
「さぁさぁ新商品入荷したぜ! 遠い遠い魔法国家――ヌゥークルディレル帝国の古文書事典! 更にナーヴィスの魔物撃退薬! 今日は大出血大サービスで売ってやるぜっ!」
「古文書事典か」
「こっちは魔物撃退薬か……。それも捨てがたいものばかりだが――やっぱり必要性で考えたら撃退薬かなぁ……?」
「いやいや古文書事典も必要かもしれないだろ? それに早々手に入らない代物なんだ。持っておいて損はない。それにナーヴィスの古文書技術……、いいや解読技術は凄いんだぞ? なにせアズールの竜族の言葉とか、あとは古の言葉も解読しているって噂だ。これさえあれば考古学者になるのも間違いなしだろ?」
「考古学舐め過ぎだぞお前」
「さぁどうするんだ? 早い者勝ちだぜ? 古文書辞典通常価格65,000Lの所――61,750L! 魔物撃退薬も通常価格89,000Lのところ84,550に値下げ! 早い者勝ちだ!」
「――何が早い者勝ちだっ! 全然減ってねーじゃねーかっっ! たった数千Lしか減ってねーぞっ!」
「値下げの意味理解できてんのかっ!」
「理解しているから値下げしたんだろうがっ! あと五パーセント引きなんだぞっ? 普通なら取り寄せることができない代物なんだぞっ? その価値がわからないのかっ!?」
「あれって……、たたき売り的な感じかな……?」
「たたき売りって言う言葉は分からないけれど、いうなればバーゲン? それともセール的なものかしら。言う割には全然安くなっていなかったけど」
「いやあれは論外と思った方がいいんじゃね? あれは見てはいけない光景だ。いいな姫さん」
「?」
「至極同意だ」
露店の方を見て、一時は新入荷したものを売ろうとしている光景を見て、『あぁあんな光景見たことがあるなぁ』と思いながら見ていたけれどだんだん雲行きが怪しくなっていき、最終的には口論となって露店から『わーわーギャーギャー』と言う騒がしい声が飛び交う。
そんな光景を見ていた私は心の中でなぜ……? と思いながら騒動の光景を見ていたけれど、アキにぃもそれを見て『なんで?』と言わんばかりの困惑の音色を零すと、シェーラちゃんは呆れて溜息交じりのそれを零す。
アキにぃとシェ―ラちゃんの話を聞いていたキョウヤさんは呆れるような顔と情けないという顔を混ぜた表情をして、疲れているような音色を零すと同時にオウヒさんの両耳を両手で塞いで見せないように後ろを向きながら言うと、虎次郎さんがその言葉に反応しを示した。
今まで見たことがない真顔で、頷きながら同意のそれを。
そんなキョウヤさんと虎次郎さんの言葉……は聞こえないみたいだから顔色を見ているのだろう、疑念の声を零しながらキョウヤさんオンことを見上げていたオウヒさんだけど、キョウヤさんの言う通りこの光景は多分見せてはいけないだろう……。
オウヒさんの影響に対しても悪影響だし、それにこれから鬼族が前に進むために歩もうとしているのに、こんなの見てしまったたらさらに話がこじれそう……。
そのことを考えたらキョウヤさんの行いはまさにファインプレー。
キョウヤさん、ありがとう。
私はキョウヤさんの背中を見ながらグーサインを出す。誰も見ていないけれど、それでも私はキョウヤさんに対して感謝のそれをグーサインで表して頷きのそれを行った。
はたから見たらそんなの少しおかしい人だ。気付いてよかった……、私……。
そう思って少しだけ恥ずかしい思いをした後、すぐにグーサインを降ろして羞恥心で赤くなってしまった顔を俯かせて隠していると、またまた声が鼓膜を揺らした。
その声がした方向に視線を向けるとその場所には人だかりができていたけれど、場所が場所で通路の真ん中。現実世界で言うと歩行者優先通路を人だかりで遮っている光景。歩道の前で集まっているようなそんな光景なんだけど、その人だかりの中央から声が放たれていた。
まだ大人の男の声ではない。幼くないけれど男の子の声が聞こえてきた。
声色からして……、中学生かな? そんな感じの声がその人だかりの中央から聞こえてきた。
「号外号がーいっ! 鳥人族の郷でひと騒動があったらしいよーっ! ボロボでその裁判が近日始まるってー!」
「マジかよ」
「本当か? ひとつくれ」
「俺も!」
「あいよ。はい――96L」
「…………………………鳥人族の郷」
「あの『偽りの仮面使』騒動ね。まさか裁判沙汰になっているとは」
「仕方ないだろ? 己の利益のためだけに郷のみんなを騙して、あろうことか邪魔者を生贄にしていた。これはまさに現実世界の連続殺人だよ」
「大昔に存在していた人身御供を、あんな形で悪用される。はらわたが煮えくり返る様な憤りじゃ」
「同じ国の出身である私から見ても、何度も心が痛くなる内容だ。あんなことが二度と起こらないことを願いたい。そして、それ相応の判決を願いたい」
「ねーねー? 何話してんの? 何の話ー?」
「姫さんは聞くな。聞いてしまったらだめなことだ。大人の話だ。いいな?」
「???」
号外の話を聞いていた私、シェーラちゃん、アキにぃと虎次郎さん、ヘルナイトさんは各々が思っていることを口にして話をするけれど、心の中はきっと私と同じ気持ちなんだろう……。
ううん、それよりもあの騒動がまさか裁判沙汰になっているとは思っても見なかった。あの騒動で終わりかと思ったけど、きっとそれですまされない事態だったのかな……?
その件に関しての真相は分からないけど、
人だかりができている理由はまさに私達が絡んでいることで、その内容を聞いた私はあの時のことを……鳥人族の郷で起きたことを思い出した。
二度と……とは言えないけど、あまり思い出したくないことを私は思い出す。
鳥人族の郷はボロボの領土内にあり、鳥人族と言う種族が住んでいる場所だったんだけど、その場所はボロボの王様――ドラグーン王の試練の場所の一つにもなっていた。と言っても試練を受けたのはしょーちゃん達で、しょーちゃんはそれを快く受け入れて、そして無事に帰ってきた。
鳥人族の郷の魔女ファルナさんの試練――『『偽りの仮面使』の討伐』を見事こなして。
その光景を見た時、討伐した素材を見た時――私は安堵のそれを零しそうになった。ううん。絶対に零れてしまっていただろう。だってしょーちゃん達がいない間に起きたことが記憶に残っていたし、本音を言えばこの後どうなってしまうんだろうとか、知らないしょーちゃん達にどこから話せばいいのかといろいろと悩んでいた。
でも、そんな一抹の不安を払拭するようにしょーちゃんは鳥人族の郷の族長に言い、その言葉が背中を押す作用を与えたのか、クロゥさんもファルナさんも族長に本音と心の叫びを言い放って、三人の声が、想いの声が響いたのか、どんどん族長のことを慕っていた人達の気持ちが傾き始めた。
傾いたことで劣勢になって、余裕がなくなって本音を吐き始めた族長に、私は思った。
理不尽と言うものへの怒り。
なんで自分だけ苦しい想いをしたのに幸せそうなのという負の感情。
他人の幸せへの嫉妬。
些細で小さなそれが大きな起因になり、妬みが族長の心を壊し、その破壊の結果今に繋がったこと。
誰の所為とかなんて言えない。実際にいた人物でもないし当事者でもないから何とも言えない。
小さい時に受けてしまった迫害のせいだと思うけど、過去を治すことは出来ない。修復などできない。できないからこそその傷は、壊れてしまったものは壊れたまま進んでいき、壊れてしまった心の赴くがまま、族長は動いてしまった。
心が歪んだまま族長は生きて、そして正しいと思ってしまった。
一つの出来事が生んでしまった、悲劇の連鎖。
――族長は、第一の被害者。
でも、そんな族長にしょーちゃんは怒鳴った。子供を叱る親の様に、真摯になって叱って……。
今思い出すと、しょーちゃんはいい事を言ったと思う。本当に思う。その前に族長に向けて言ったファルナちゃんの言葉も、今思い出すと本当に響く言葉だったな……。
『お前――命っていうのが何なのかわかんねぇのかっ!? 神様に与えられら最初で最後の贈り物で、みんなが一生をかけて大事にする炎なんだぞっ!? その炎はどんな炎よりも消えやすくて、消えちまったら二度と灯すことができない炎なんだ! それなのにあんたはその炎をないがしろにして、苦しめて消した! どれだけ痛いと思っているんだよ……っ! 命が消える瞬間は、すごく悲しいんだよ! 苦しいんだよ……! それが他人であろうと、死んでしまった瞬間、その炎が消えてしまった瞬間は、傷ついていなくても痛いんだ! 悲しいんだっ! なのに『それくらい』で? 『ちょっとやそっとの処分』で? それで喚くなっ? 喚くに決まっているだろうがっ! お前のせいでたくさんの命が消えちまったんだ! 二度と会えなくしてしまったんだっ! ありがとうとか……、おめでとうとか、そんなたくさんの感謝も謝罪も……、いろんな言葉をかけることもできないまま、別れの言葉を言うこともできずにお前の身勝手で消えちまった……! お前の身勝手な気持ちのせいで色んな無関係な奴らが死んじまったんだっ! それを……、ただのおもちゃとか抜かしやがって……、お前――本当に救えねーよ。本当に…………、生きている存在として――終わっている』
『何が………………………、なにが自分の王国だ! 族長がしていることは自分の思う通りの世界を作るだけの独裁者の国だよっ! 誰にも愛されない国、自分だけが愛している汚い国だよっ! 自分だけの国を作るためにみんなを……、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、あろうことか他の鳥人族達を騙して生贄として捧げるだなんて……、最低以外の何があるのっ!? 族長がしていることは郷のためにもならない異常なことだよっ! みんなを騙しているくせに……そんな人を、私は族長と呼びたくないっっ!』
「はぁ」
長い間思い出している時間に費やしていたけれど、思い出してもやっぱり嫌な気持ちになるな……。
あんな後味悪い出来事……、本音を言えばそれ以上のことは体験したくない。
そう思いながら再度溜息を零して頭を垂らすと……。
「ちょっといつまで黄昏てんのよ」
「はっ」
突然背後から聞こえた声。
その声の主はお馴染みシェーラちゃんの声で、シェーラちゃんの声を聞いた私は驚きのあまりに息を殺してしまった声を出して驚きの顔のまま背後を振り向くと、背後には私の肩に向けて突こうとしたのだろう……、人差し指を出して疑問の顔をしているシェーラちゃんがいた。
シェーラちゃんは私の驚きを見て固まっている様子でいたけれど、その後すぐに元の顔に戻して私に向けて言う。
とんとんしようとしていたその指を脇に持っていき、そのまま腰に手を当てるような動作をしながら彼女は私に聞いて来た。
「……黄昏ているところ悪いんだけど、目的の場所に着いたからこれからどうするかってことで話し合いましょうって」
「あ、そっか」
シェーラちゃんはそう言いながら指を自分の後ろに向ける。
指さした方向に視線を向けるために、正面にいるシェーラちゃんの背後を見ようと体を少しだけ左に傾けて見ると……、ちょうどアキにぃ達が何かを話しているところだった。
オウヒさんや虎次郎さん。そしてヘルナイトさんとキョウヤさん、アキにぃがとあるところに集まって固まりながら輪になって話しているその光景は、まさに話をしていますと言ってもおかしくない光景だった。
その光景を見つつ、シェーラちゃんの「行きましょう」と言う誘いの言葉に頷きつつ、私はシェーラちゃんの後を追う様に歩みを進め、みんなが集まっているところに近付く。
「あ、ハンナにシェ―ラ! ねぇねぇどこに行く? どこに行く? どこに行く? 私ね初めてだから色んなところに行きたいっ! あ! あの建物は何? あの建物に」
「はいはい興奮しない。興奮しない。そんなに興奮しなくても買い物は逃げないし一日は長いのよ? そんなにはしゃいで大丈夫?」
「逃げもしませんから大丈夫ですよ」
私達が来たことで興奮冷め止まない状態で、鼻息ふんふんしている状態で私達に詰め寄って来るオウヒさん。その光景はまさに――初めてのアトラクション施設に来た子供そのもので、興奮冷め止まない状態になっているオウヒさんのことを宥めながら呆れの言葉を零すシェーラちゃん。
そのシェーラちゃんの背後から顔を出して困った笑みを浮かべて言う私。
まさに興奮している子供を落ち着かせようとしている両親そのものだなぁ……。と、頭の片隅で思いながらオウヒさんとオウヒさんのことを諫めているシェーラちゃんのことを視界の端で見ていると、突然アキにぃが手を軽くたたいて――
「それじゃ――これから買い物をしますが、注意事項があります」
と言うと、その言葉を聞いたキョウヤさんが小さな声で「修学旅行の引率の先生かよ……」と突っ込んでいたけれど、その言葉を無視してアキにぃは私達に向けて言う。
私達に……、というか、特にオウヒさんに向けながらアキにぃは言った。
「まずここは姫様が今まで住んでいた郷とは別世界です。しかも鬼族のことを考えたらこのまま隠し通さないといけないことは分かっているでしょう」
「んなのわかってるって」
「私達も気を付けつつ、オウヒも気を付けないといけないことよね」
「むー……」
アキにぃの言葉に対しキョウヤさんは平然とした言葉で言うと、その言葉にシェーラちゃんも頷きのそれをしながら隣にいるオウヒさんのことを見つめる。
言われた本人はシェーラちゃんのことを横目で見ながらむすくれた顔をしている。きっと言われたことでむかついているのだろう……。頬を膨らませているその光景を見ながら心の中で可愛いと思ってしまったのは、私だけだと思う。
オウヒさんのことを見て可愛いと思いながら見ていたけど、そんな私の心境なんて誰も読むことなんてできないから、アキにぃは続けるようにオウヒさんや私達に向けて言う。
まさに引率の先生と言っても過言ではないような面持ちで――アキにぃは言った。
「ですがこんな団体で行動することは怪しむこと間違いなしです。今回は個人で、または少数編成でこうしていきましょう」
「なぬ?」
「いや、『なぬ』じゃなくて……。虎次郎さん、まさか家族団欒の様にみんな一緒に行けるとか思っていたんですか」
「そうだ」
「はっきり言わないでください」
アキにぃの言葉に即座に反応を示したのは、呆気にとられた顔をしてアキにぃのことを見ていた虎次郎さんだった。本当に不意を突かれたかのような顔をして驚きの声を零して眼も見開いていたから、アキにぃの言う通りのことを――みんな一緒に行動すると思っていたのだろう。
一応、私も思っていたけれど視線を逸らしたのは、内緒……。
そんな虎次郎さんに対して一括を与えたアキにぃは一度深呼吸のために溜息のようなそれを吐いて、思いっきり吸った後、みんなに聞こえるように、引率の先生のような声量でアキにぃは言った。
幸い――私達の近くに人はいない。というか私達の話しなんて聞いていないらしく、誰も視線を向けて来るなんてことは無かった。それをこれ幸い。チャンスと言わんばかりにアキにぃは私達に告げる。
「個人行動も厳禁。全員行動なんて目立ってしまう。何せここにいるのは――可愛い天使の女の子とただのエルフ。槍を使う武闘派蜥蜴とやけに突っかかりがひどい鮫女。その鮫女の支障でもある鈍感おじさんに最強で少し鈍感でやけに妹のべったりしている『12鬼士』団長。最後に彼女と言う組み合わせがこの街をうろつくと完全に目立つし、それに早めにばれてしまう可能性が高い。ゆえに少数編成で行こうと思います」
「おいお前オレのことをそんな風に見ていたんだな」
「お前マジでいい加減にしろよ。私は人魚族とマーメイドソルジャーの魔人族だっつってんでしょ。刺身にして船盛にするわよ?」
「船盛勘弁。今の言葉は冗談だからっ」
アキにぃの言葉に私とオウヒさん、虎次郎さんとヘルナイトさんは頷いて肯定を示したけれど、キョウヤさんとシェーラちゃんはアキにぃの言葉に苛立ちを覚えたのか、背後から静かな赤いもしゃもしゃを出してアキにぃに詰め寄ろうとしていた。
その赤いもしゃもしゃはまさに殺気そのもので、その殺気を感じたアキにぃは即座に自分の発言を変えて謝罪の言葉を述べるアキにぃは、いつものアキにぃでなぜかほっとした自分がいた……。
シェーラちゃん達の言葉に対して謝罪の言葉を述べていた時――突然凛とした声でヘルナイトさんは「みんな」と言い、みんながヘルナイトさんのことを見上げると、ヘルナイトさんは軽く手を上げた状態で私達に向けて言った。
「私は少しの間単独で行動する。少し気になることがあってな」
「え?」
「ん?」
ヘルナイトさんの言葉を聞いて、私は思わず声を零してしまった。
驚きの声と顔をしてヘルナイトさんのことを見ているけど、ヘルナイトさんはアキにぃの「あ、あぁいいけど、少しなら……ね」と言う言葉に対して「すまない」と小さな謝罪と感謝を述べた後、彼は私のことを見下ろしてその場でしゃがんだ後、私の頭に大きな手を置いて――
「少しの間だ。用が済んだらすぐに戻る」
安心してくれ。
と言って、ヘルナイトさんは立ち上がり、立ち上がりと同時に私の頭に乗せられていた手もするりと離れて行く。
その離れを感じながら私はアキにぃ達に向けて何かを言っているヘルナイトさんのことを見つつ、そのまま踵を返してどこかへ行ってしまうヘルナイトさんの背中を見つめる。
じっと見つめて、頭に手を添えながら私は無くなってしまった温もりに寂しさを感じてしまう。
今までこんなことあった。何度も撫でられたのに、何度もこの体験をしたのに……何故かその時だけは違った。
離れると同時に感じてしまう小さな小さな喪失感。
どうして今になってそれを感じてしまうんだろう……。そう思いながら、私は無くなりそうになっている頭の感触を思い出しながらヘルナイトさんの背中を見つめた。




