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PLAY114 フェーリディアン②

「ねー……、街に入る前はこの頭の被っているもの脱いでもいいと思うんだけど……だめなの~? 頭蒸し暑いぃ~」

「脱がないで我慢して。見られているかもしれない危険も考えておかないと後々大変なことになるかもしれないもの。用心に越したことはないからそのままかぶってて。かぶりたくないならこのまま帰るわよ」

「それいやだぁ~。行くぃ~」

「分かったらシャキシャキ歩く」


 休憩から再度歩みを進めて、目的の場所でもある『フェーリディアン』に向けて私達は草木が生い茂る道を歩いていた。


 ざくざくと草木をかき分ける音と、草を踏むと同時に微かに鼻腔を指す緑の匂い。


 その自然特有であるけれど人為的に出てしまった匂いを感じながら私達は足を進めていく。


 草木はそんなに長く生えていない。長さで言うと膝くらいの高さかな、そのくらいなら手で掻き分けていけば問題ないし、アキにぃや男性であれば踏み越えれば問題ない事だ。


 でもオウヒさんは現在進行形でシェーラちゃんから借りたフードを深くかぶっている状態なので足元がよく見えないのだろう……。覚束ない足取りで歩き、手探りで辺りを散策しながら歩いているけれど、フードを深くかぶりすぎているせいでふらふらと歩みを進めているけれど……。


「――ぎゃっ!」


 と、素っ頓狂な声と共に草木に倒れる音が私達の耳に届く。


 どさりという音を聞いてすぐに振り向いた私は幸い近くだったので、オウヒさんに駆け寄りながら「大丈夫ですか?」と声を掛けて彼女に向けて手を伸ばす。


 視界がほとんどない状態で私の手を見たのか、オウヒさんはおずおずと言うよりも、少しだけ困惑している様子で「ハンナ……?」と聞いて来たので、私はその言葉に「はい」と言って頷きのそれをする。


 頷きの声を聞いたのかオウヒさんは安心の溜息を吐いて「ありがとー」と言って私の手に自分の手を乗せてぎゅっと握って来る。


 その握りを感じた私は優しく握り返して、その状態でオウヒさんの手を引っ張って立ち上がらせると、オウヒさんは「よいしょ」と言って立ち上がったので、私はオウヒさんのことを見て握った手を放さないで『一緒に歩きませんか?』と聞こうとした時、オウヒさんは再度私の名前を呼んで、両の手で私の手をぎゅっと握ると、オウヒさんは私に向けて聞いて来た。


 聞いて来た……じゃない。これは懇願するような視線とお願いと言う切実なもしゃもしゃを放っていて、そのもしゃもしゃと視線を感じた私に対しオウヒさんは開口――『お願い』と言って……。


「一緒に歩いてっ、このままじゃ私何度も転んで買い物どころの話しじゃないよぉ~。お願い目的地に着いたら手ぇ放してもいいからぁ」

「あ、そのつもりですので安心して下さい」

「やったぁ」


 と言ってきたオウヒさん。まさに嘆願と言っても過言ではないほどの必死な思いを乗せた言葉と声で私に向ける。


 もう泣きそうと言ってもおかしくないその言葉ともしゃもしゃを見て聞いた私は一瞬驚いてたじろいてしまったけれど、元々そのつもりだったし言おうと思っていたので素直に頷いていいですと言うことを伝えると、オウヒさんはフードを被っている状態で満面の笑みを零した。


 もう言葉の中にほんわかとしている何かが含まれているような音色で言っていたので、私の言葉が本当に嬉しかったんだな……。


 そう思ってオウヒさんの手を引きながら「行きましょう?」と言うと、オウヒさんは元気な頷きと声で私の手に引かれるがまま――されるがままになって歩みを進める。


 なんか……、子供の手を引いて歩いているような、温かい雰囲気……。


「どうしたの? なんかにやけてる?」

「――っ!?」

「ねぇ何でにやけているの? どうしたの?」

「にやけていないよ。大丈夫」

「間があったけど?」

「気にしないで。大丈夫だよ」

「?」


 オウヒさんに指摘された言葉に対し、私は一瞬不意を突かれたような顔をしてしまいそうになったけど、その顔を隠すように咄嗟に出た小さな嘘を使って誤魔化すと、その言葉を聞いていたオウヒさんは首を傾げながら私の顔を見るけれど、フードを深くかぶっているおかげでなんとか誤魔化すことができた。


 それ以上聞かなかったから誤魔化すことができたかもしれないけど、まさか顔に出ているとは思わなかった……。あぶないあぶない……。


 私はオウヒさんに言われ、無意識ににやけていた顔を修正するように片手で頬に添えてムニムニとにやけのそれを崩して消す。


 むにむにむに。むにむに。


 片手だけでの簡素で素人の施術……と言う名のほぐしだから本当ににやけが治るわけではない。


 私はつい先ほど思っていたことを抹消し、その後普段と変わらない顔を取り繕ってオウヒさんの手を引いて歩みを進める。


 勿論ずんずん前に進むなんてことはしない。ちゃんとオウヒさんに歩幅を合わせてみんなの元に駆け寄ると、私の前にいたアキにぃは私に事を見て――


「ハンナとオウヒさん。大丈夫?」


 と聞いて来たので、私はうんっと頷き、オウヒさんも『平気だよ』と言いながら握っていない手を上げてピースサインをアキにぃに送る。


 オウヒさんのその姿を見て、本当に少し身長が大きいけれど活発な性格の女の子を思わせるもので、さっきまで転んでしまった光景や握っててほしいと嘆願してきた時の不安とかが嘘のように思えてしまう。


 ……そう言えば、アキにぃも小さい時転んで大けがをした時泣いたことがあったけれど、おばあちゃんが『痛いの痛いの飛んでけ』って言った後、手を繋いだ時嬉しそうな顔をして、私がアキにぃの隣で手を繋いでいたら更に嬉しそうな顔をして痛みなんてすっかりなくなったかの様にはしゃいでいたなぁ……。


 オウヒさんはまさに小さいアキにぃと同じだ……。


「ふふ……」

「なんで俺のことを見て微笑んでいるの? なんで?」


 そんなことを思い出しながらアキにぃのことを見ていたら、アキにぃは私の顔の変化に気付いたのだろう……。


 なんだかおっかなびっくりな面持ちをしながら私に向けて聞いて来るけど、そんなアキにぃの言葉を聞いてか前を歩いていたキョウヤさんとシェーラちゃんがアキにぃのことを見るために振り向くと――呆れるような視線を向けながらアキにぃに向けて言った。


「どうせお前が都合よく忘れたことを思い出して笑っているんだろう?」

「あんたって都合のいい事はしっかり覚えていて、悪いことになったら抹消の如く忘れているからね。本当にそこらへんは性根の悪い奴と同じ思考回路よ?」

「おいお前ら俺は仲間だろうが。そんなこと言うと俺だって泣くぞ? そろそろ今までの積み重ねも相まって大の大人の大号泣大地団駄を披露しちまうかもしんねーぞ? いいのか? 恥ずかしくねーのか?」

「「全然。むしろスマホに残したい」」

「肖像権で訴えるぞこの野郎っっっ!」


 キョウヤさんとシェーラちゃんの冷めた言葉と冷たい視線を見てアキにぃは指を指しながら否定と言う名の意義を唱えた。唱える以前に……、アキにぃの言葉を聞いていた私は大の大人の地団駄を踏む光景を想像してしまい、思わず自分のことの様に恥ずかしいと感じてしまったのは私だけの秘密にしておこう。


 恥ずかしい想像をしながら自分の心に刻んでいる時、アキにぃの言葉を聞いていたキョウヤさんとシェーラちゃんは私の様に恥ずかしいとは思わなかったらしく (というか他人事だから恥ずかしいなんて思わないかもしれない)、むしろ平然とした顔で現代の時代を思わせる発言をする。


 スマホだなんて……、この世界に来てから全然触っていないな……。


 アキにぃの怒りの言葉を聞かず、私は今まで何も考えずに触っていたスマホのことを懐かしみながら思い出していると、後ろからオウヒさんの「すまほ……?」と言う疑念の声が聞こえて、私はオウヒさんの方――つまり背後を振り向きながら「あはは」と乾いた笑みを浮かべて……。


「えっと、私達の国にある通話手段……? えっと……遠隔で対話ができる装置です」

「え? すごーい! 遠隔対話ってそんなことできるのっ? それって異国の技術? 紫知がよく言っていたアムスノームの魔導具技術でできること? まさかアクアロイアの砂の国の技術みたいな?」

「え、えっと、うんと……。どっちかと言うと……、機械、ですね。魔導具じゃないし、かといって秘器(アーツ)でもないので、機械としか……」

「へぇーっ! そうなるともしかして、亡国マキシファトゥマ王国が起源の装置なの?」

「こ、これ以上は、えっと……」


 と、あながち間違っていないと思う言葉で軽く説明をすると、その言葉を聞いたオウヒさんは興奮した面持ちで私に怒涛と言わんばかりに質問をしてくる。質問の内容は簡単なんだけど、果たしてスマホのことを話していいのかどうかわからないし、それにスマホのことを洗いざらい話していいものなのだろうかと言う不安もあって、正直に告げることができずに曖昧な返答で返していく。


 返していくのだけど、オウヒさんは更に追い打ちをかけるように質問をしてきた。


 オウヒさんと言う人格というか、性格と言っても過言ではない好奇心旺盛のそれを出しながら聞いて来るので、満面の笑顔と興奮した面持ちで聞いて来るその姿に、鼻息をふかして聞いてくるその姿を見て内心焦りの雨を降らせて私は思考を巡らせ、最終的に折れる……と言う名の会話終了を選ぶ形になってしまい、私の最後の言葉を聞いたオウヒさんはまだ聞き足りないと言わんばかりの「えぇ~?」と言うまだ聞きたそうな声を零した。


 零したその声を聞いて、すごく申し訳ない気持ちに苛まれてしまうけれど、そもそもスマホのことをオウヒさん……、仮想空間の人に話して分かるのかと言う問題もあるんだけど、なんか現実世界のことをポンポン話しても大丈夫なのかと言う変な不安もある。


 実際話しても大丈夫かもしれないけれど……、この世界の世界観を壊すようなことをしているような、そんな罪悪感があって……。


「着いた」

『!』


 と思っていた時、突然凛とした声の主――ヘルナイトさんの声が私達の鼓膜を揺らし、声を聞いた私達は驚きの顔でヘルナイトさんのことを見上げる。


 今までからかったりしていたキョウヤさんとシェーラちゃんも、そんな二人に対して怒りを露にしていたアキにぃもヘルナイトさんの声を聞いて動きを止める。虎次郎さんは今まで前を向いて進んでいたのでヘルナイトさんの声を聞く前から目の前を見上げて「おぉ……」と小さな声を上げていた。


 虎次郎さんは小さな驚きを。


 私とアキにぃ、キョウヤさんとシェーラちゃんは驚いた顔のまま固まり。


 ヘルナイトさんは目の前に広がった光景を見上げた後、頭に手を添えて少し黙ると……。


「――ここ?」


 最後の一人、オウヒさんは驚きと言うよりも疑念……、疑いのもしゃもしゃを出しながらヘルナイトさんが言った目的の場所を見上げる。


 そう……、目の前に広がっている大きな大きな、きっとアムスノーム以上の高さを誇っているかもしれないその壁を。


 森と街を隔てるように作られた大きな壁。壁は街を守るようにしているのか首が痛くなるほど見上げても見えないほど高い。本当にアムスノーム国王以上かもしれない。


 その壁に張り付くように木の根っこや苔が灰色の壁に緑と言う彩を与えている。


 現実世界であるグリーンカーテンとは違う、年季と言う名の(うつ)ろいを感じさせるような緑の生い茂になんだかこの壁の時代を感じてしまう。


 でも、壁の灰色と苔や木の根っこの緑とは正反対に、壁の内側はなんだか活気に溢れる笑い声が私達の耳に入り、まさに王都の賑わいを思い出してしまいそうなほどの笑いと明るさに溢れる――明るいもしゃもしゃがもう蒸気船の様に、蒸気機関車の様に吹き上がるその壁の中の声を聞いて、私は理解した。


 ここが目的の場所なんだ。


 ヘルナイトさんが『着いたぞ』って言っていたからそんなの当たり前だと思ってしまうかもしれない。でも私はこの光景を感じて、もしゃもしゃを感じて思った。


 ヘルナイトさんがこの場所を候補として上げたのも頷ける。


 ここは……、明るいもしゃもしゃしかない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()




 ここは、()()なんだ。




 そう思い、私はオウヒさんのことを見るために振り向くと、私はオウヒさんに向けて控えめに微笑んでから告げることにした。


 ここが目的地であることを告げて――


「オウヒさん。目的地に着いたみたいですよ」

「そうなの? 只の壁だけど、()()()()()()()()? 郷の様に門がない気がするんだけど……」

「! そう言えば……」


 オウヒさんは目の前の壁を見上げながら首を傾げ、その後で壁を指さしながら私達に聞いて来る。


 その言葉を聞いた私は「あ」と言う声が零れそうな顔をすると同時に壁を見上げるとオウヒさんの言う通り、この石で作られた壁に門らしきものは一切見当たらなかった。


 というか、門と言う物がない。


 オウヒさんの言葉を聞いていたアキにぃ達もすぐに石で作られた壁を見上げて――


「確かに……。門と言う名のそれがない」

「アムスノームとか鬼の郷とかは目立った門があったもんな。あ、バトラヴィアは例外だ」

「あの時は足に巻き付いたなにかに引っ張られて引き摺られてしまったから門とかそんなの覚えていないわよ」

「どんなもんだったのかも忘れてしまったな。門なだけに」

「師匠そのまま口を閉じててください――今すぐ口を縫いますから」

「やめぃシェーラッ! さすがにやめなさいっ! 駄洒落だけで重罪とか洒落にならねーからっ!」


 見上げながら顎に手を添えて推理をするように考えるアキにぃと、腰に手を当てて見上げて辺りを見渡しながら今までのことを思い出していくキョウヤさん。


 キョウヤさんの言葉を聞いていたシェーラちゃんは溜息交じりの声で砂の国のことを思い出してしまったのか、なんだか気分が悪い音色で零すと、虎次郎さんは石の壁を見上げて場違いな言葉を発したのだ。


 まさに駄洒落。


『どんなもん』と『門』を掛けての駄洒落が放たれた瞬間、ここ一帯の空気が何か寒くなったような気がする……。というか寒いと感じたのはきっと直感で、その直感の中シェーラちゃんの氷のような言葉を聞いて更に寒くなってしまったのはきっと気のせいではない。


 現にその駄洒落を聞いたシェーラちゃんから氷のような冷気が漂っているし、言葉に絶対零度のそれが出ているのは、絶対に気のせいではない。


 それだけは断言できる。


 シェーラちゃんの言葉を聞いたキョウヤさんは尻尾を使ってシェーラちゃんのことを諫めると、寒い空気に温かさが戻り始めて、私とアキにぃは安堵のそれを吐いて肩の力を抜く。


 肩に力が入ってしまうくらい変わってしまった空気に気圧されていたのかもしれないけど、その状況に気付いていなかった虎次郎さんと、虎次郎さんの駄洒落を駄洒落として認識しなかったヘルナイトさんとオウヒさんは私達の光景を見て首を傾げているだけだったけど、その光景を見て、そして肩の力が抜けたことによって、私ははっと今やるべきことを思い出して――


「って、こうしている場合じゃない……!」


 と言うと、その言葉を聞いてアキにぃもはっとして「そうだった!」と言った後……。


「どこかに扉のスイッチとかがあるはず……! 門番的な人もいないし、早く探さないと……っ! このためにどれだけ時間と気力体力を消費したか……!」

「そうだったそうだった。まずは入る方法だな」

「分かったなシェーラ」

「子供じゃないんだから何度も言わなくても分かるわよ。というか放しなさい。探せないわ」

「お前はオレと一緒に探すんだよ。二人一組になった方が探しやすいし、それに見つける確率も高いだろう?」

「それもそうね」

「え? 俺必然的に虎次郎さんと一緒? ねぇグーチーしない? ハンナやヘルナイト達も一緒になってグーチーパーで……聞けっ!」


 と言って街の壁の周りにある草木の近くにしゃがんでかき分けながら捜索をする。そんな小さな背中を見ながら虎次郎さんやキョウヤさんとシェーラちゃんも頷きながらどこにあるのかと捜索を開始しようと動こうとする。


 キョウヤさんは万が一のことも踏まえてシェーラちゃんと一緒に行動して虎次郎さんの安全を確保しようとしている光景を見て、シェーラちゃんなら本当にしそうな光景だったので心配してのそれなのかもしれないと思ってしまう。


 正直あのもしゃもしゃは本当にやりかねないようなそれだったけど、今のシェーラちゃんを見ると気持ちを切り替えたのだろう、そのもしゃもしゃも消えている。


 消えて気持ちを切り替えているのはよかったけれど、キョウヤさんの言葉を聞いていたアキにぃはなんだか納得いっていない様子で右手のグーを突き出してグーチーパーをしようと提案していたけれど、その提案も虚しく拒否されてしまい、無視した二人に対して緒性を浴びせていたけど、その怒声も虚しく空気に溶けてなくなってしまった……。


 そんな光景を見て私もはっと現実に意識を引き戻すと、オウヒさんとヘルナイトさんのことを見て――


「わ、私達も探しましょう」


 と言いかけた時だった。


 ガシャン。と――金属と金属がかち合うような音が響くと同時に草木を踏みつけるような音が鼓膜を微かに揺らし、その音と共にその音を立てた人物――ヘルナイトさんは私達のことを見ず、更にはアキにぃ達のことを見ないでこんなことを言い出したのだ。


 なんだかあべこべに聞こえてしまうかもしれない。というか言っていることが変だと思ってしまうかもしれないけれど……、ヘルナイトさんは凛としているのに、私達のことを見ないで私達に向けて――


「問題ない。()()()()()()()


 入り口が。


 と言ったのだ。


 その言葉を聞いて、「ここにあるんだ」と言いながら指を指した場所を見た私達は、更に首を傾げるような困惑のそれを浮かべてしまう。


 なにせ、ヘルナイトさんが指さしたその場所は――ただの石で作られ、蔦や苔が生えて纏わりついている壁で、どこに何があるんだと言ってしまいそうな場所を指さされたのだから、困惑以外の感情なんで浮かばないだろう……。


 簡単に言うと――ただの壁。


 只の壁を指さして『ここだ』と言われても……。


「いやわからんっ! 『ここにあるんだ』って格好良く言ったとしても全然わかんないっ! どこ? どこにあるの? 俺達のこと馬鹿にしてんのかこんのやろうっ!」


 あ。アキにぃが全部言ってくれた。


 本当にわかんないことを伝えようとしたらアキにぃが全部言ってくれたことに、私は驚きが鎮静化されてアキにぃに対して心の中でお礼を述べた。


 でもヘルナイトさんはそんなアキにぃの言葉を無視しているのか、それとも聞いていないのかは分からない。わからないけれどヘルナイトさんは歩むそれを止めないで、どんどんと、ずんずんっと石で作られた壁に向けて歩みを進めていく。


 何の迷いのないその歩みにキョウヤさんはヘルナイトさんのことを止めようと手を伸ばし、ヘルナイトさんに声を掛けるけど、ヘルナイトさんはただ「大丈夫だ」と言って、あと二、三歩で壁にぶつかるという距離でヘルナイトさんも手を伸ばし、その岩に触れようとした瞬間……。


()()()()()()


 と言って、壁に触れる。と思った瞬間……。


『え?』


 私やアキにぃ、更にはキョウヤさん達やオウヒさんが声を零し、零して茫然とした面持ちのままヘルナイトさんを見てしまう。


 茫然と見てしまった。




 ()()()()




 と――ヘルナイトさんの手が壁に呑み込まれ、どんどんとその壁に呑み込まれて行くヘルナイトさんの姿を……。

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