PLAY12 混ざり合う③
「マナ・イグニッション――『円形部屋』」
突然だった。
突然声がしたと思った瞬間、私達とヴェルゴラさんの足元に異様な円形の図形が光り出した。
それはまるで魔法陣……。ううん。これは……、まるで切り分けられたホールケーキのように、均等ではないそれが地面に光っていたのだ。
私達がいるところが異様に広く、私はみゅんみゅんちゃんを見ると、みゅんみゅんちゃんのところにはヴェルゴラさんとロンさん。
ロンさんはみゅんみゅんちゃんを抱えながら慌ててヴェルゴラさんに近付いたようだけど、ロンさんは向こうを見て手を差し伸べてから声を荒げた。
「ネェサンッッッ!!」
その声を聞いて、私はロンさんが見ているその方向――メィサさんを見ると、メィサさんは一人でその面積が小さい場所にいて、両手を前に出した状態でいた。
まるでそれは突き飛ばす……。ううん違う。突き飛ばした後のような姿で……。
私も何とかしようと動こうとした時、もう遅かった。
ブワリと出る光の壁。
それは私達を閉じ込めるように出てから、すぐに白い壁となって私達を本当に閉じ込める。
言葉のあやではなく、本当に閉じ込められた。
「なんだ、こりゃぁ……」
キョウヤさんは驚きながら上を見ている。
私も上を見上げると、そこには天井があった。
完全なる密室。
地面だけは『腐敗樹』の地面で、ぐにぐにして、さっきヴェルゴラさんが壊した地面も残っていた。
ところどころに魔物が落とした素材があり、それを見る限り、ワープされたわけではないと認識する。
「これは……一体……」
アキにぃも驚いて辺りを見回すと……。
「おやおや。これはこれは……」
「「「っ!?」」」
突然声がした。
私達三人は声がした方向を見る。
そこにいたのは……黒い服装に身を包んだ、金髪の長髪をオールバックにして、ライオンのような犬歯が印象的な……目が黒い人がいた。その人はにぃっと口元を不気味に弧を描いて、私を見て言った。
「何ともお美しいお方がいますね」
「っ」
そんな、まるで獲物を見るような目で見られた私は、きゅっと近くにいたヘルナイトさんのマントを握る。アキにぃは私の前に立って、銃を突き付けて――
「あんた……誰だ?」と聞いた。低い声で、冷たい音色で聞いた。
それを聞いた男は、はたっとしてから、驚いて、そしてああ、やってしまったといわんばかりに彼は言った。
「申し訳ございません。こちらもお美しい体があったがゆえに、少々興奮してしまいました。自己紹介がまだでしたね」
その言葉を聞いて私達は身構える。
しかし男は対照的に、くつくつと笑いながら私達に言う。
「そんなに警戒しないでください。私はただ自己紹介をするだけです」
攻撃などしません。
そう言って男はすっと頭を下げて――彼は自分の自己紹介をした。
「こんにちは。私は死霊族のエディレス」
「…………え?」
今……。この人はなんて言ったの?
今この人は……、確かに……。
ネクロマンサーって…………っ!
「正式に言いますと……。死霊族――『骨を愛して使う』。エディレスです」
以後、よろしくお見知りおきを。
そう言ってネクロマンサー――エディレスは言った。
◆ ◆
「なんなのよこれ……」
「どなってんだ……?」
その頃、みゅんみゅんとロン、そしてヴェルゴラも同じ状況……、否、敵がいない中でその密室の中に閉じ込められた。
みゅんみゅんは何度もハンナがいるところに向かって叫んでいる。
しかし聞こえない。と言うよりも、向こうには聞こえていないかのように声がしないのだ。
「完全に……。防音」
「どなって……」
みゅんみゅんは壁を叩きながら言うと、ロンはへんてこな日本語を言いながら呆然としていた。
が。
「密室で防音か……、完全に閉じ込められたな」
冷静に分析したヴェルゴラ。
それを聞いたみゅんみゅんは苛立ちを露わにし、その矛先をヴェルゴラに向ける。
「あんた、なんでそんなに冷静なの……? 恋人だって閉じ込められたのに、なんでそんなに冷静なのよ」
みゅんみゅん自身、心境はかなりの大荒れだ。ゆえに冷静でいるヴェルゴラを見て、彼女はその苛立ちをぶつけてしまったのだ。
八つ当たり。
これが正しい。
しかし……。
「ああ。確かに、慌てた方がいいな」
ヴェルゴラの言葉に二人はほっとした。
が……。それが、間違いだった。
「解除される前に、俺もお前達をどうにかしないと」
「は?」
「エ?」
みゅんみゅんとロンはそれを聞いて、思考が一旦停止してしまった。
まるでこの事態を予測していたかのような……。
否。
まるで計画していたかのようなその言葉に、みゅんみゅんは言いようのない不安が大波となって押し寄せてきた。
ヴェルゴラは壁と向かい合った状態でいたが、それを解除するかのようにゆっくりと、みゅんみゅん達がいる方向を振り向いた……。
手に持っているナイフを逆手に持って……。