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PLAY112 お買い物に行こう・計画編③

 各々が目の前にある見取り図……、郷の中をイラストにしたアキにぃ作の筆イラストを見つめ、どのようにして脱走しようかと練っている最中……、もしかしたらこの郷から抜け出す手段は一つしかない――正面突破しかないのかと思ってしまった私。


 バリケードのつかめないほどのニスが塗られたかのようなつるつる具合のことを思い出し、それと同時にそのバリケードが私の二十人ほどの高さを持っていることを思い出すと、もしかしたらこの郷から出るには本当に正面の門しかないのかもと思ってしまい、私はそんなことはないと思いながらもう一度見取り図を見下ろし、凝視しながら案を模索する。


 頭の中でどこかに絶対にあるはず。


 絶対にどこかに抜け道的な場所があるはず。


 そう思いなが………。


 なんだろう……。


 今思うとこれはこれでちょっと危ない言葉に聞こえてしまう……。


 これがもし家ではない別の場所、簡単に想像すると刑務所とか脱獄してしまいそうな場所を連想してしまい、それと同時に私は思ってしまった。


 これが正真正銘の脱獄の計画……。


 刑務所から脱獄をしようとしている人達の心境なのかな……?


 そう思いながら私は一旦その思考を心の中にしまい込み、もう一度アキにぃ作のイラストを見下ろして模索を再開する。


 絶対にどこかに抜け道がある。そう思いながら……。


「うーん。一見すると本当に出ることができなさそうね」

「!」

「確かにな……」


 しかし現実と言うものはそう甘くなくて、私は絶対に抜け出せると都合のいい事を考えていた方なのだろうか……。


 シェーラちゃんが溜息を吐いて腕を組みながらその言葉を言うと、私は驚きの顔でシェーラちゃんのことを見てしまう。


 見て私は言葉を発しようとした。正直言葉なんて思い浮かばなかったけど、それでも何か言葉を発してシェーラちゃんに言おうとしたのだけど、その言葉を遮る様にキョウヤさんが私の言葉に言葉と言う名の座布団を覆い被せると、キョウヤさんは胡坐をかいて腕を見ながら尻尾をうねうねと動かして続きの言葉を言った。


 正直これでは無理かもしれない。


 そんな気持ちをにじませるようなそんな音色で――


「バリケードに関してはこの十日間で何度も見たけど、オレでも登れないかもしれねー高さだったしな……。最初はオレがお姫さんをおんぶしてそのまま壁に向かって蜥蜴の尻尾を使ったジャンプでもしていこうかと」

「それで俺達全員をおぶって跳んでくれよ。それなら相当楽」

「お前話聞いてた? 聞いててその話が出てきたとなると相当バカだぞ? オレは出来ないことを言おうとしていたのになぜおまえは『やれ』と独裁者的な命令を下すんだ?」

「面白そうっ! そ」

「やんねーよ」


 キョウヤさんがオウヒさんのことを横目で見ながら言おうとしていたけれど、その言葉を聞いていたアキにぃが挙手をすると同時にキョウヤさんに向けてその行動をしたらいいとなぜか意見を述べてしまうという変わった遮り方をされてしまった。


 そのせいでキョウヤさんはアキにぃのことを真顔で睨みつけると話を聞いていたオウヒさんはアキにぃと同じように、楽しそうな顔をしながら挙手をするとキョウヤさんに何かを言おうとしていた。


 これは予想でしかないんだけど、きっとキョウヤさんにお願いしようとしていたのだろう。でもそのお願いを即座に拒否したキョウヤさんは呆れるようなため息を吐いた後、もう一度アキにぃ作イラストを見下ろして、顎に握り拳を添えるようなそれをしながらキョウヤさんは続きの言葉を言った。


 続き……、と言うよりも、アキにぃとオウヒさんの意見を否定する理由を先に話そうとして、それと交えながらキョウヤさんはアキにぃ達挙手をした人達と私達に向けて言葉を放った。


「あのな……。確かにそれをすれば楽かもしんねーよ? オレ自身それを行うこと自体否定しねーし、正直そっちの方がいいかもしれないって思っている。夜中にこっそりとそれを行えばいい話だしな。でもそれができねーから言おうとしたんだよオレは」

「正直してもいいとか、あんたって人間としてよくできているわね」

「シェーラ……、お前今までどんな人間に出会ってきたんだよ……。って話が逸れちまったけど、あのバリケード……、お姫さんからしてみれば木の外壁なんだけどな――その外壁はオレ十五人以上の高さがある。且つあの木は普通の木じゃない。に住みたいなつるつるしたものが塗られているのかわかんねーけど、そんなものが塗られていて登るなんてことは出来ない。確かに跳んで行けばいいかもしれねーよ? だがあれは無理。一発跳んで行くなんてことは無理だから何回か木の板に足を乗せてウサギみてーに跳ばねーと無理だ。でもその足場もつるつるしているとなると……、足が上手に力まない且つ滑って祖のまま地面に向かって落ちていくのがオチだから飛び越えることは無理だって言いたいんだよ」


 キョウヤさんの言葉を聞いて、一時はシェーラちゃんが驚いた顔をして突っ込みを入れていたけれど、それを一蹴するようにキョウヤさんは話を続ける。


 続けて、キョウヤさんの言葉を聞いた私は心の中で芽生えかけていた脱出口の出口が狭まるのを感じた。


 一瞬、本当に一瞬キョウヤさんならばと言う淡い希望があったのだけど、キョウヤさんは自分がもしその行動をしたらということを丁寧に教えてくれて、その言葉を聞いてキョウヤさんのもしゃもしゃを見て私は理解した。


 キョウヤさんは嘘なんて言っていない。


 こんな場面で嘘をつくこと自体おかしいかもしれないけれど、それでもキョウヤさんは本音で言っている。その本音がこれと言う事は……。


「確かに、キョウヤの跳躍力では無理がある高さだ。そして木の外壁のてっぺんが一体どうなっているかわからないが、鋭利な状態になっていたら大けがでは済まされない。『キョウヤが一人一人をおぶって跳躍する』案はなしだな」


 ヘルナイトさんがキョウヤさんの話を聞いて同文というか、キョウヤさんの言葉を聞いて理解すると同時にキョウヤさんに担いでもらうという作戦は危険と見なして私達にそのことを伝える。その声は凛としているけれど、何かを隠しているかのようなそんな音色だ……。


 本当の音色はどうなのかわからないけれど、それでもヘルナイトさんの言葉を聞いて私達は渋るように頷き、オウヒさんはしょんぼりとした顔で「いいアイディアだったのになー』と言いながら可愛らしく頬を膨らませた。


 オウヒさんの頬の膨らませ方を見ていたシェーラちゃんは呆れるような小さな溜息を零しつつ、オウヒさんのことを睨みつけるように見つめた後彼女はオウヒさんに問い詰めるように、きつい言い方で彼女に向けて聞いた。


「っていうか、あんた姫でしょ? この郷のことに関して知っていることがあれば何でもバンバン言いなさいよ。絵だけで判断するっていっても限りがあるし、あんたが持っている情報があればちょっとは脱出口が見えるかもしれないの。小さい事でもいいから言いなさい」

「うーん。知っていること……」

「そう。どこかに穴があるとか、どっかの外壁がボロボロになってるとか、腐っているところがあるとか……、色々よ」


 シェーラちゃんの言葉を聞いてオウヒさんは少し考える仕草をして、腕を組んで「うーん」と唸りながら頭の情報をこれでもかと脳内で搾り取ろうと試みる。


 脳と言う媒体を絞って、絞った後で零れ出る水と言う名の情報を落とそうとしているような、そんな頭の捻り具合……。左右に頭を揺らしてうんうん唸っては上半身と言う名の上半身を酷使するようにぐるぐると頭を振り、髪の毛を振り乱してオウヒさんは考える。


 時間が経ってしまいそうなほどオウヒさんは考え、その考えが出るまで私やヘルナイトさん、虎次郎さんは待って、シェーラちゃん達はその光景を見てイライラしている面持ちで見守っていると……。


 オウヒさんは体を揺らすという大きな行動を止め、腕を組んだ状態で考えていたその眼を開けると――オウヒさんは大きな声で、はっきりとした言葉で私達に告げる。




「私脱走と言えば門しか思い浮かばなかったからわからないっ!」




「ははは――質問した私がバカだったわ」




 はっきりとした言葉で『わからない』ことを告げたオウヒさんに対し、シェーラちゃんはもう笑うことしかできないと言わんばかりに乾いた笑みを浮かべて力なく笑った後、自分のことを自嘲し始めたシェーラちゃん。


 哂っているのに目に生気がないというか、真っ黒なそれを笑みを浮かべる時の目元にしているような、そんな顔をしながらシェーラちゃんは乾いた笑みを零し続ける。


 機械のように少しの間笑い続けているシェーラちゃんのことを見て、私はシェーラちゃんの肩を叩きながら彼女の名前を呼ぶけど、反応はなくただ笑っているだけ。そんなシェーラちゃんを無視……というかそのまま放置するようにアキにぃは腕を組んで考えるような唸り声を出すと……、アキにぃは自分作のイラストを見下ろして小さな声で呟きを落とす。


「それじゃぁ……、キョウヤに頼んでの作戦は無理か……」


 振り出しに戻ってしまったショックを混ぜたような呟きを落としたアキにぃは再度『うーん』と腕を組んで考えるような仕草と声を出して、少しの間黙って考えていたけれど――何かを思いついたのだろう。『あ』と言う呆けた声を零して私達に視線を戻すと、アキにぃは私達に向けて胸を張る様な面持ちと笑顔で意見を主張する。


『これだ!』と言わんばかりの笑顔で――


「穴を掘ればいいじゃんっ! みんなで一緒に協力して!」

「それは十日前に言ってくれればいい事だったけどね。もう遅いけれどね」


 と言ったけれど、即座と言わんばかりにシェーラちゃんが突っ込みと言う名の冷徹なそれを投げかけてアキにぃの言葉を遮った。


 これは二度目となる言葉の『氷河の(リ・アブソリュート)再来(ゼロ)


 一回目はエドさんに向けられていたけれど、二度目がまさかアキにぃになるだなんて思っても見なかったし、アキにぃの発言に対しても驚きを通り越して固まることしかできなかった。


 本当に氷河期の氷に当てられて言葉すら出なくなってしまったかのような絶句。


 シェーラちゃんの言葉が追い打ちになってしまったけれど、アキにぃの発言もまさに『氷河の(リ・アブソリュート)再来(ゼロ)』と同じくらいの衝撃で、簡潔に言うと――言葉を失ってしまった私達。


 いつも突っ込みを入れるキョウヤさんは唖然とした顔で目元を引き攣らせながら固まっているし、虎次郎さんも驚きの顔でアキにぃのことを見ていたけれど、アキにぃは多分気付いていないのだろう。首を傾げながら意気揚々とした面持ちで――


「え? あれ? みんなどうしたん?」


 と、私達の硬直をまるで理解していないような笑顔で言ってきている。本当に何も理解していないその顔で言ってきた本人に対し、ヘルナイトさんは少しだけ考える動作をしつつ、アキにぃのことを見ながら質問……、じゃない。これは異議を唱えるという面目の言葉。


 その言葉を乗せるようにヘルナイトさんはアキにぃに向けて言った。


「アキ。聞きたいんだが、その穴を掘る場所や工程を考えたうえでその発言をしたのか?」

「あぁ、考えていったから発言したんだよ? 掘る場所もその工程も絶対に何日かでできると確信した上で――」

「な、成程……?」


 アキにぃのありもしない自信に満ち溢れた発言に、ヘルナイトさんは驚きつつも一体どこにそんな自信が溢れ出るんだと思っているようなもしゃもしゃと雰囲気を出してアキにぃのことを見ているけれど、私やみんなはきっとヘルナイトさんと同じ意見かもしれない。


 実際私は同じ意見で、どうして秋にぃはそこまで自信満々に言えるのかが不思議でならなかった。


 穴を掘るという小槌は脱獄において王道のそれかもしれないけれど、それは何ヶ月も前から準備をして初めて使える手段だから、たった何日かで使える代物ではないことくらい知っているのに、なぜそんなことを断言できるのだろう……。


 そう首を傾げながら思っていると、アキにぃは『ふふん』っと鼻をふかしてヘルナイトさんのことを見ると、アキにぃは自慢げ……じゃないけれど胸を張るような動作をした後アキにぃは『いいか?』と前置きの言葉を述べてから続きの言葉を言う。


 これぞ名案! と言わんばかりの面持ちと音色でアキにぃは言った。


「まず――この郷には森と言う樹木が多いだろう?」

「? あぁ確かに多いな。一応聞くがこの……。黒いそれが森でいいんだな?」

「どうしてお前もそこに関しては疑問形なの? まぁいいや――森があるだろ? その場所を使って穴を掘るんだよ。やるとすれば……、田んぼとか人が来る場所ではないオウヒさんの近くの森――外壁の近くの森に穴を掘った方がいいかもしれない。その場所で門の外へと続く穴を曲線を描くように掘るんだ。そうすれば絶対に外壁――つまりは鬼の郷の外に出られる穴が出来上がる。ってこと」

「森……か」

「そう! よく言うだろう? 木を隠すなら森の中。敵を欺くには味方からってね。穴を掘りたかったら森の中に隠して掘るってこと! 簡単だろう」

「………………………。簡単……には聞こえないが、アキはできると思っているんだな? 穴を掘るという行いはかなりの労力を使う。そのことについても考えているのか?」

「考えているよ。ヘルナイトの力を使えばこんなのチョチョイのチョイだよ」

「私の力……?」


 アキにぃの力説交じりの説明を聞いていた私はやっぱり王道なんだなと思いつつ、それはできないかもしれないというまたもや案が消えてしまいそうな絶望感を少しだけ味わっていると、ヘルナイトさんはアキにぃの言葉を聞いてもやっぱり腑に落ちない。ちゃんと理解と言う名のそれがすっぽりと自分の脳にはまらないそれを感じていたのか、ヘルナイトさんはアキにぃに二度目となる質問を投げかけた時、アキにぃの言葉を聞いてヘルナイトさんは驚きの面持ちで言葉を返した。


 自分を名指しされたことに対して驚きの顔を浮かべるように言ったヘルナイトさんに対して、アキにぃは『そう!』と断言するように頷きのそれを行うと、話しの続きを畳み掛けるようにアキにぃは続きを言葉にした。


 自信満々な面持ちで、教師のような動作をしながら……。


「ヘルナイトはこの世界の人達が認めるほどの力をもっている。いうなればチート! そんな存在でその力を有効活用しないわけにはいかないだろ? だからヘルナイトの力を使って……、土属性の『魔祖』の魔法を使って穴を掘ってくれれば、すぐに開通できると思うんだ! 名案じゃないか? ヘルナイトなら」

 

 アキにぃは凄く珍しくヘルナイトさんに向けて顔を近付けて力説を行っていく。至近距離で、今までのアキにぃと比べたら絶対にしないようなことをしているアキにぃはきっと必死且つ絶対に何とかしないとと言う使命感の元考えた結果なのだろう。


 内容は完全にがばがばと言ってもおかしくないものだけど……、それでもアキにぃは詰め寄りながら驚いているヘルナイトさんに向けて、私達にも説明をするようにアキにぃは続きの言葉を言い放つ。


 もう興奮冷め止まぬそれを放ちながら……。


「できるだろうヘルナイトなら――チートと言うその力をこの場所で発揮してくれれば絶対に成功する! 穴なんて造作もないだろう!? 穴なんてチョチョイのチョイでザックザック掘れるだろうっ!?」

「待て、待てアキ。待つんだアキ。私は土系の魔祖で穴を掘れるような力なんてない。あるとすれば攻撃系の『地神の鉄槌』と、防御魔法の『地母神の(グランディーヌ・)岩窟盾(ウォールド)』しかないんだ。穴を掘れるような魔祖なんてない。これだけは断言したい」

「え? え? え……。えー……」


 ヘルナイトさんの言葉を聞いた瞬間、アキにぃは言葉を失ったかのような……、というかヘルナイトさんの言葉を意外だと言わんばかりの反応で示して、何度も何度も瞼を開閉させる。


 その行動は漫画で言うところのまさに意外だと言わんばかりの反応で、その反応を見て私や他のみんなは思っただろう。


 ここで意外な顔をするの……? 


 アキにぃの言葉に私達は驚きだったから、それはこっちの台詞だよ……?


 と……。


 そう思っているとアキにぃは一旦言葉を失うと同時に口をぐっときつく閉じて、その状態でヘルナイトさんから視線を放して考える仕草を行う。その光景は息を止めて嫌な予感を感じたかのような青ざめ具合だ。


 正直その顔は私達がさっきしたんだけど、アキにぃはその光景を見ていないし、アキにぃ自身ヘルナイトさんの言葉は予想外だったのだろう。


 でもそれで折れるほどアキにぃは甘くない。どころかここで粘りを見せるように再度ヘルナイトさんに視線を向け――焦りのそれを声にしてアキにぃはヘルナイトさんを説得しだした。


「そそそ、それだったら他の魔祖を使って何とか掘ればいいんじゃないかなっ!? 何にしてもヘルナイトと言う力を使って何とかすれば――」

「アキー」


 説得をして、何とかしてでもアキにぃは自分が考えた方法を使って脱走を試みようとしていた。力説……、頑固ともいえる様な説得をしている最中、突然アキにぃの言葉を遮る様にオウヒさんが声を上げた。


 普通に――アキにぃのことを呼ぶようにオウヒさんは声を上げ、その声を聞いてアキにぃは回しに回していた舌を止め、口を止めると……、瞳孔をオウヒさんに向けて驚いた顔で「はい?」と呆けた声を零した。


 一時期の静止と、一時期の呆気。


 その二つを見ていたシェーラちゃんが小さな声で『コミックか』と突っ込んでいたけれど、その突っ込みに対して誰も反応することはなかった。


 ううん……、反応なんて示す時間の隙間なんてなかった。


 隙間を与えずにオウヒさんは驚いて自分のことを見ているアキにぃに向けて平然とした顔……、というか、普段通りの顔を浮かべて彼女はアキにぃに向けて言ったのだ。


 間髪なんていれさせない。且つアキにぃの説得を完膚なきまで壊さんばかりの証明の論破を――


「アキの言う穴のことなんだけど、無理だよ。絶対に無理。ヘルナイトの力……、魔祖の力を使って穴を掘る考えはこの郷でなければできるかもしれないけれど、この郷でやるとなったら無理だよ。絶対にみんなに気付かれちゃうもん」

「気付かれる……? どうしてですか?」


 その論破の言葉を聞いていた私はオウヒさんの言葉に対し疑念のそれを投げかける。


 正直そんな断言するオウヒさんのことを見て、なぜそんなにはっきりと、且つ絶対と言わんばかりの言葉を放つんだろうと思ってしまい、そこまで断言する理由があるのかと思ってしまったから、私はオウヒさんのことを見て聞くと、オウヒさんは私の視線を感じ、言葉を聞いて私に横目の視線を向けながら当たり前と言わんばかりの音色で彼女は説明をした。


 空に指を指しながら、彼女は私に説明してくれた。


「言っていなかった? 私達鬼族は角に魔祖を宿している種族で、魔祖を感知することに長けているの。さっき話していた監視のことに関係することで、あれから全然監視されていないって言ったのはみんなの魔祖が感知できないから監視されていないって確信しただけ。みんながこの近くで魔祖を使えば草木の匂いを嗅ぐのと同じくらい察知できる。そのくらい鬼族は魔祖感知に敏感なの」

「魔祖、感知……。なんか霊感みたいなものですね」

「レイカン……? って言う言葉は分かんないけど、そんな感じかな? だからアキの言う魔祖を使っての穴掘りをしたらすぐに気付かれて終わりだから、他の案を考えよう?」


 オウヒさんの説明を聞いていたアキにぃは、もう言葉なんて出てこないほど驚きの顔で口をパクパクと金魚のように開閉させながらオウヒさんのことを見て、その後でヘルナイトさんに視線を戻したけれど、ヘルナイトさんは詰め寄ってきたアキにぃの肩を掴み、その状態でゆっくりとアキにぃから距離を取るようにアキにぃから距離を取る。


 肩を掴んで、引きはがすという物理的な距離の取り方をしたヘルナイトさんは茫然としているアキにぃのことを見下ろした後凛とした音色でアキにぃを諭した。


「アキ――姫君の言う通りだ。鬼族は魔祖感知……、異国で言うところの魔力感知に長けている。魔女もその勘地に長けている輩も多いが、鬼族と比べれば雲泥の差。鬼族がいるこの郷でその行為はまさに自殺行為。無謀なことだぞ。最悪負の連鎖の贄にされてもおかしくない。焦る気持ちは分かるが今は落ち着いて打開策をじっくり練ろう。四日しかないこの状況でも、必ず打開できる策が見つかるはずだ」


 ヘルナイトさんは言う。


 悪いことをしてしまった子供の目をしっかり見て、その言葉をしっかりと聞いて受け止めた後、感情任せにならずに諫めの言葉をかけてから言い聞かせるように、ヘルナイトさんはアキにぃに言った。


 アキにぃはアキにぃで先走ってしまった自分の行いを思い出したのか視線を逸らして苦虫を噛み締めた赤面の顔を浮かべていたけれど、ヘルナイトさんの言葉を聞いて受け止めたのか、アキにぃは頷きながら小さな声で何かを言って肩を掴んでいるヘルナイトさんの手から離れた。


 手から離れたと言葉では表したけれど、その離れた方はとてつもなく優しいもので、アキにぃがその場から更に距離を取って離れるという行動で、はたから見ればヘルナイトさんから逃げるように距離を取ったようにしか見えないものだった。


 でもその距離の取り方に拒絶と言うもしゃもしゃを感じなかったので、私は手から離れたというそれで捉え、アキにぃのことを見て控えめに微笑むと、オウヒさんも『よーし』と声を上げて鼻息をふかしながら彼女は再度アキにぃ作のイラストとにらめっこをして――


「もう一度見て作戦立てよう! 鬼族の郷は確かに難攻不落のようなそれを感じるけれど、絶対にどこかにあるはず!」


 なんか楽しくなってきたねっ!


 と、私のことを見てウキウキしている面持ちで言ってくるオウヒさん。その顔はまさに好奇心旺盛な子供そのものの顔で、私は言ったことがない場所に行く旅行前の子供のようにウキウキしているオウヒさんのことを見て再度控えめに微笑むと、小さな声で「そうですね」と言って二人で微笑み合うと――


「お」


 突然、本当に突然声を上げた人物がいた。


 その人物の声は今まで聞かなかった声で、その声を聞いた誰もが今まで声を発さなかったその人に視線を向け、どうしたのだろうという顔でその人のことを見るという人間なら絶対にしてしまうことをしてしまう。


 要は――突然の声に驚いてしまった反射神経の結果。


 その結果で私達は声を発しなかったその人物に視線を向け、その人物が再度声を上げるまで待とうという姿勢でいたけれど、その姿勢もすぐに崩れることになる。


 なにせその人物――虎次郎さんはずっとアキにぃのイラストとにらめっこをして、その和紙を手に取りながら言ったからだ。


 和紙を手にしながら私達に視線を向け、はっきりとしている且つ断言と言っても過言ではないようなその音色と声量で、虎次郎さんは言ったのだから。


「――これだ!」


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