PLAY111 リヴァイヴ委員会⑤
「最終的に『桜姫様を外の世界に連れ出す』と言う大まかだがそれが最終目標になる。詳しくするならば『桜姫を一日だけでも郷から脱出させ、近くの街で買い物をさせる』と言う内容になるが、買い物の場所はすでに候補は上がっている」
「候補? この郷の近くに買い物ができる場所とかあるんですか?」
ヘルナイトさんの言葉に対して私が小さな小さな驚きのそれを言葉にして言った後、ヘルナイトさんは「ああ」と頷きながら言う。
正直私はこのボロボ空中都市に来てからはクロゥさんの背中で世界を見ただけなので、街がどこにあるのかなんてあまり知らない。
知っているとすればこの試練の課せられた後で試練を与える魔女がいる郷にしか行っていない。
詳しくすると……、火山地蜥蜴人と高地|蜥蜴人《リザードマが暮らしている集落と鳥人族の郷。そしてこの鬼の郷とボロボ空中都市しか知らない。
だからヘルナイトさんの言葉を聞いた私は驚きの声を零してしまったのだ。と言っても小さいそれだけど……。
私の言葉を聞いたヘルナイトさんは頷きのそれを零した後、私達に向けて右手を差し出し、人差し指と中指を立てて私達にその指を見せる。
まるでピースサイン……、ではなく、二つあることを主張するように、ヘルナイトさんは続きの言葉を私達に向けた。
「このボロボ空中都市は確かに自然が多いかもしれない。だがみんなが見ていないだけでこの国には小さな村や郷がある。その中でも特に大きな街が二つあるんだ。この国の兵士達やアルテットミアや王都の兵士達の衣食住を提供するために作られた街でもあるんだが、その場所ならばちょうどいい遠出にもなる且つ……、みんなも充実した買い物もできるだろう」
「みんなもってことは……それって冒険者も例外じゃないってことでいいのかしら?」
「ああ――例外じゃない。二つの街には冒険者が泊まれるような駐屯地ギルドもあるからな。その心配はいらない」
「なるほど……、ならいいかもしれないわね。物資の調達もしないといけないから、この場合は一石二鳥に」
ヘルナイトさんは私達に向けて詳しい情報を言葉にして伝えていく。その情報の中には私達が知らないことがたくさんあって、聞いていた私は驚きのままちょっと静止画のように固まってしまっていた。それはアキにぃ達も同じで、オウヒさんに至っては固まったまま目を点にして聞いている。
きっとオウヒさんに至ってはこの郷の外から出たことがないから、この郷の外に色んな町とか村、郷があるだなんて知らなかったのかもしれない。
そんなオウヒさんの目の前、そしてヘルナイトさんの目の前と言う間に入り込むようにシェーラちゃんが顔の遮りをかけると、シェーラちゃんはヘルナイトさんの言葉に対して疑問と言う名の質問を投げかける。
『みんなも』
その言葉に反応して、その言葉が私達に向けられたことに違和感というか引っ掛かりを感じたシェーラちゃんはヘルナイトさんに質問をすると、ヘルナイトさんは頷きのそれと共にその街には駐屯地のギルド (懐かしい響きだなぁ……。砂の国とかアクアロイアにはなかったから懐かしい……)があることをシェーラちゃんと私達に告げる。
告げられたそれを聞いてシェーラちゃんは考えるように顎に自分の右手を添えて、その状態でヘルナイトさんの言葉に納得すると同時に『良いかもしれない』と自分の主張を述べる。
と同時に……、アキにぃ達の顔に『ギクリ』と言う引き攣った曇りが見えたのも、私は見てしまった。
かくいう私もその一人で、私達チーム自身いい加減物資だけは調達したいなと思ってしまったのは正直な本音。本音と言うか、本気で近いうちに物資調達しないとまずいと思ってしまっている。
最初に物資調達をしたのは『ライジン』浄化に行く途中の『腐敗樹』駐屯ギルドで大目に調達したけれど、それ以降はあまりしていない。
水の国アクアロイアに来てからはちょこちょこ魔物討伐をしながら物資調達をして食べ物には困らなかった。寝るところはちゃんと持っていたから幸いしていたこともある。
そして砂の国に来てからは色んな人達と一緒に行動しつつ、その人達から御馳走してもらったりして物資はあまり少なくならなかった。
この時、バトラヴィア共和国か王都で物資調達をしていればよかったのかもしれない。でもそれをしなかったのは私達の所為で、結局のところ物資調達を怠けていた結果少なくなって現在に至っているのだ。
薄々気付いていたけれどみんな言葉にしなかった地味な危機。
ヘルナイトさん自身は食べなくてもいいし寝れない身体だからあまり気にしていなかったかもしれないけれど、食べないと死んでしまう私達にとってこれは痛手でもあり痛恨のミスなのだ……。
それをさらりと告げたシェーラちゃんの言葉に、虎次郎さんとオウヒさん、ヘルナイトさん以外の私達は表情を引き攣ったそれに変える。
『誰も言わなかったのに、なぜ話したんだ馬鹿野郎っ!』と思ってしまいそうな (私は『それ言わないで……っ!』と思ってしまった)それを心の中で思いながら……。
――あれ? そう言えばアクアロイア王に頼まれた『白』の極クエストの報酬貰っていないような……。
そう私はふと思い出したことに驚きつつも考え、それと同時にあれはどうなったんだろうと思いながらヘルナイトさん達耳を傾けていると、シェーラちゃんの言葉に対して……『一石二鳥』の言葉に反応を示したヘルナイトさんは『ああ、そうだな』と言ってその話にいったん区切りを入れて言葉を切ると、その後続けて彼は言う。
シェーラちゃんの言葉を聞くためにいったん突き出した手を降ろしていたそれをもう一度上げて、私達に人差し指と中指を突き立てたそれを見せるように、ヘルナイトさんは言った。
「シェーラの言う通り一石二鳥になる街の候補は二つ。一つはボロボのアルテットミアと云われている街『フェーリディアン』。その町はショーマ達とエド達が寝泊まりしている街でもあるんだ」
「えぇ……? それだったら俺は嫌だなぁ……」
「お前が駄々こねるな。お前がこねるような場面じゃないし、なんでお前がそれを言うんだよ。それを決めるのは姫さんだろうが」
「いやいやこれは個人的に嫌だって、だってあの小僧共がいるんだよ? ハンナ達と一緒に行動していたくせに裏切者と仲が良かったあの二人がいるんだろう? もしそこで本性を露にしたらどうするの? ましてや裏切者と言う名の妹を傷つけた輩」
「お前もう口縫うぞ」
ヘルナイトさんの言葉を聞いていた私達はうんうんっと頷きながら一つ目の候補の街『フェーリディアン』の名を記憶に刻むと、アキにぃはその言葉にストップをかけるようになんだか嫌そうな引きつり方をして『やめておこうよ』と言う手の振り方をする。
その手の動きは完全なる否定のそれだ。
ぶんぶん振るその光景を見ていたキョウヤさんは怒りと真顔の突っ込みを露にしてアキにぃに向けて突っ込みを入れるけど、アキにぃはそれでも折れずに……、というかキョウヤさんのことを無視するようにアキにぃはヘルナイトさんの第一の候補『フェーリディアン』はやめていこうということを伝える。
でもその内容はまさにアキにぃ自身の見解で、みんなのことを考えてのことじゃないものでそのことを聞いていたキョウヤさんは本当に真顔で、とてつもなく低い音色でアキにぃに向けて手を伸ばそうとしていたけれど……、アキにぃはそれに最後まで気付くことはなかった……。
結果……、私はアキにぃのくぐもった断末魔を聞くことになってしまうんだけど、その断末魔よりも私はアキにぃが言った言葉に対し心臓の位置に鈍い痛みが走る感覚が勝ってしまい、その勝った痛みがじくじくと心臓の周りを駆けまわっている感覚にむず痒さを感じながら思った。
しょーちゃん達と一緒に、いつも一緒だったメグちゃんのことを思いながら……。
アキにぃはきっとメグちゃん達と一緒にいたであろうしょーちゃん達のことを多分疑っているからあんなことを言っているのかもしれないけど、しょーちゃん達はそんなに悪くない人だから今回ばかりはキョウヤさんの行動が最も適していると思う。
そしてメグちゃんに関しては質濃いと思われても仕方がないかもしれない。何度も何度も思い出してしまうことは人間において避けて通れないものでもあり、この記憶は、事実は絶対に忘れてはいけない。
そう思っているんだけど、それでも一瞬だけ、本当に一瞬だけ、あの出来事が夢であってほしいと思ってしまう。
それは一般からしてみれば受け入れてない証拠かもしれないけれど、それでも私は、今でもメグちゃんのことを信じたい気持ちでいる。
その気持ちでいるから、痛いんだ。
痛いことに対して理解と納得をすると更に痛みが大きくなり、その痛みを感じながら私はぎゅっと胸の辺りで握り拳を作る。
まるで痛がっている心臓を優しく片手で包み込むように、弱々しく握るという動作をしながら私は痛みを緩和させようとする。
私自身こんなことをしても無理だと思うし、これは結局考えを変えない限りは治らないかもしれない。でも私はこの意行動が癖になっているのか無意識にこの行動をして心の痛みを感じながら緩和させていたのかもしれない。
正直、こんなこと完全に無意味なのに……。
これを行うことで緩和させようとする――いうなれば精神安定剤なのかもしれないなと、自分でも呆れてしまう。
精神……、安定、剤?
なんだろう、この言葉なんか……。
「アキの気持ちわからなくもない。アキのようなプライドの高い人にとってすれば、知り合いがいる場所での失態はしたくないだろうからな」
「!」
一瞬、一瞬だけ私はとある言葉を思い浮かべた瞬間――何か懐かしい感覚に襲われてしまいそうになったけれど、その感覚もヘルナイトさんの言葉によって消えてしまい、私はすぐに反応してヘルナイトさんのことを見る。
どうやら話が進むようで、私はその話に耳を傾けつつヘルナイトさんのことを見る。
みんながそうしているように、私もそうして――
「おい何さり気にディスってんだよこの野郎……っ!」
…………一瞬アキにぃの小さな声が聞こえた気がしたけど、多分空耳だね……。うん。黒いもしゃもしゃも感じるけれど気のせいでだよね……? うん……。
ヘルナイトさんは言う。話の続きを――
「だが『フェーリディアン』は買い物には最適だ。街を囲むように壁ができているが森側の壁は夜でもわかるほど緑と言う光景が美しい。自然によってできたその外壁の美しさはきっと目を奪うものだろう。初めての買い物で思い出を作りたいのであればそこがいいかもしれない」
「自然! それって郷よりも綺麗な自然なのっ?」
「郷よりきれいかはわからないですが、外壁に沿うように出来たその光景はまさに自然の芸術かもしれません。会話の材料になればと思うのですが」
「自然を交えた外壁ってあまり聞かないし、一瞬苔かと思ってしまったわ」
「イチイチ口挟むな馬鹿野郎! 話進まねーよっ!」
ヘルナイトさんの話しを聞いてオウヒさんはワクワクキラキラしているその眼でウキウキした面持ちをしながら近付くと、はつらつした音色で質問を行う。まさに好奇心が止まらないと言わんばかりのワクワクキラキラその目でヘルナイトさんのことを見つめながら……。
そんなオウヒさんにヘルナイトさんは冷静な面持ちでオウヒさんの質問に答えていくと、シェーラちゃんがヘルナイトさんの話を聞いて『へぇー』と言う相槌を打ちながら言葉を滑らせた瞬間、キョウヤさんの突っ込みがさく裂した。
行動も口を挟めないようにシェーラちゃんの口を背後から両手で塞いで――
でもそんな二人のことなんて気にもしていない……、というか見ていないのかヘルナイトさんはオウヒさんに向けて再度会話の続きを口にする。
「街の外壁の内部も郷にはない情景ばかりです」
「見たことがない世界なんだっ! じゃぁそこにしたいっ! 早速行きたいっ!」
「ですが――桜姫様は初めて外の世界に行かれる。であれば『フェーリディアン』は少し難しいかもしれません」
「えー? 外の世界の買い物でも難しいとかそんなことがあるの?」
「ええ……。何もなければいいのですが」
「?」
私はヘルナイトさんの言葉を聞いて心の中で首を傾げた。勿論頭上に疑問符と言うそれをつけて。
私が注目したその言葉は『何もなければいいのですが』と言うところで、その言葉を聞いた私は――なんで何もなければいいのだろうか。とか、何かアクシデントがあったらとか、そんな心配をしているのかな? と思いながら聞いていたけれど、ヘルナイトさんの言葉はここで終わりではない。
ヘルナイトさんは一区切りと言わんばかりのその言葉を再開させるように人差し指をオウヒさんに向けると、その状態で続きの言葉を言う。
「桜姫様のように初めて外に出て買い物をするのであれば、ここから南西の方角に位置し、少し遠いですがギルドを中心とした街『クルティクス』もいいと思います。そこも『フェーリディアン』と同等の物資がありますし、何よりあそこは安全ですので」
「くる……、?」
「『クルティクス』です。鉱山地域でボロボにおいて貴重な鉱物が発掘されている場所でもあります」
「鉱山地域で、鉱物が発掘される……。まるでアルテットミアのエストゥガみたい」
ヘルナイトさんが次に挙げた街の名前――『クルティクス』の名前を聞いて、その街の詳細を聞いた私は思い当たる光景を頭の中で描いて行き、似ていると思ったその地域の名前を口にすると、その言葉を聞いたアキにぃとキョウヤさんは私に向けて指をさし……、二人同時に「「あぁっ!」」と思い出した声を上げた。
唯一エストゥガの場所と情景を知らないシェーラちゃんと虎次郎さんは二人と私の言葉を聞いても首を傾げているけれど、ヘルナイトさんは私達の言葉を聞いて頷きながら『確かに、『クルティクス』はボロボのエストゥガと言われているからな。その見解は間違いじゃない』と言うと、その言葉に私達は驚きの『へぇー』を上げる。
また一つの雑学が私達の知識になった瞬間だった。
その知識が脳に定着した時、ヘルナイトさんはオウヒさんのことを見て、そして私達にも伝えるように話の続きを行う。
今までと変わらない凛としているその音色で――
「その『クルティクス』は『フェーリディアン』よりは面積が狭い分物資の充実も乏しいところがありますが、『クルティクス』には竜騎士団の者達がいる場所でもあります。勿論鬼族であるあなたが狙われてしまわないように我々も目を光らせますが、それでも届かない可能性があるかもしれません。その不安を抱えたくなければ『クルティクス』を選ぶ方がいいかもしれません。あそこはボロボで二番目に安全な街ですから」
と言うと、その言葉を聞いてオウヒさんは『うーん』と言いながら腕を組んで唸って目を瞑る。
その光景はまさに『体をうねらせて体を動かしながら考えている人』そのもので、その光景を見ながら私達もお互いの顔を見合わせながら各々意見を主張する。
さっきまであった蟠りなどない。一応案として、『自分がオウヒさんの立場だったらどっちに行く?』と言う考えを元に私達は自分で考えた主張をみんなに向けて言葉にする。
お互いの顔を見て――学校の話し合いをするように……。
最初に主張をしたのは――シェーラちゃんだった。
「話の内容からして、オウヒって女の夢の手助けをすることが私達の試練合格の鍵なんでしょ? 確証はないけれど、やるからにはちゃんとやるわ。そうなると私は『クルティクス』の方がいいと思う。初めて買い物をするならリスクがあるところは避けた方がいいと思うし、何よりそのリスクの具体性がない限りは『クルティクス』一択になっちゃうわ」
「俺も!」
「黙れ闇エルフ。お前の口に針と糸を通すぞおら」
「怖いっ! 怖すぎだって! 拷問反対っ! いじめ反対! そして異常行動反対っ!」
「そのくらいお前は発言しないでくれって言いたいんだよオレはっっ!」
シェーラちゃんの主張――『買い物するなら『クルティクス』』で、その言葉を……、主張を聞いたアキにぃは即座と言わんばかりに手を上げて同文であること。そして同じ意見であることを主張したんだけど、キョウヤさんはアキにぃの理由を聞く前に静止の掌を見せて怖い言葉を言い放つ。
アキにぃの言う通りの怖いそれで、アキにぃはキョウヤさんの言葉を聞いて何か反対を主張するその旨を伝えるけれど、キョウヤさんはそんな主張を蹴るように怒りの突っ込みでアキにぃを押し込む。
怒りで押し込んでいるその光景は、まさに蛇に睨まれた蛙。
キョウヤさんと言う名の蛇 (蜥蜴人の亜人なんだけどね)に睨まれて委縮してしまうアキにぃと言う名の蛙 (エルフなんだけどね)になっているその光景を見て、今キョウヤさん怖い顔をしているんだなと思いながらその光景を横目で見つめる。
見つめながら私は脳内で『クルティクス』に二票入ったことを覚えると、次に主張をしたのは――
「はぁー。でもシェーラの気持ちと言うか、考えていることは一理あるけどよ……、品揃えとか充実した買い物をしたいなら『フェーリディアン』の方がいいんじゃねえのか? 最初から質素って言うのも変だけどよ……。オレだったら買い物は充実しているところがいいって思っちまうぜ?」
キョウヤさんだった。キョウヤさんは頭を掻きながら呆れるようにというか、疲れているような溜息を吐いた後、彼は自分の意見を述べながら二人や私達に向けて言う。
シェーラちゃんやアキにぃとは違う意見で、自分は『フェーリディアン』に一票入れることを言葉にして。
キョウヤさんの言葉を聞いたシェーラちゃんとアキにぃは驚きの顔をしてキョウヤさんに詰め寄りながら――『『なんで? なんでリスクを負ってまでそこにするん?』』とキョウヤさんの顔を至近距離で見つめて言う。その光景は一瞬目の前に現れたお化けのようなもので、その光景を見てキョウヤさんは驚愕と言うか絶叫を上げて『わー近い近いっっ! 近くて鼻息やべーって! あとアキ口臭やばいっ!』とか何とか言いながらキョウヤさんは二人から、特にアキにぃから距離を三メートルほどとる。
距離を取ってからキョウヤさんはアキにぃや私達に向けて少しだけ慌てているような音色で主張を行った。さっきまでの真剣だったシェーラちゃんとはかけ離れた主張のそれだけど……、それでもキョウヤさんは主張を行った。
「いやだって、よくキャンプとかそう言った修学旅行がある前の日には必要なものを買うだろ? 掻いた目にはそりゃ大きなショッピングモールとか行って買ったりしてものを揃えるけど、ショッピングモールじゃない普通の店であるものを買ってもないものだってあるじゃんかっ。コンビニとかで新発売のスイーツを買おうと思って見たけれどなくて、そんで少し遠いコンビニに寄ったらあったって言うことあるだろ? それって店によって置いてあるものも違うってこともあるし、買い物をするなら正直物資が充実している『フェーリディアン』の方がオレは良いと思う」
「………………………なんか、実体験を交えて話しているみたいだ」
「というかあんたマジでコンビニスイーツのためにコンビニ探しをしていたのかしら?」
「うっせぇわ」
キョウヤさんの主張を聞いてアキにぃとシェーラちゃんは一時目を点にしてキョウヤさんのことを見た後、思っていることを口にして向けると、その言葉を聞いたキョウヤさんは真顔で怒りの『うっせぇわ』を零す。
真面目な声を聞いていた私は一瞬本当だったのかと思ってしまったのだけど、その真相を知っているはキョウヤさんだけだし、今はそのことについてとやかく追及することは場違いだからそれ以上のことは聞かないことにした。
でも、これで一時的多数決の結果は――
『クルティクス』:『フェーリディアン』の比は2:1
一票クルティクスが多いような結果になってしまったけれど、それでもまだ私も主張していないし、虎次郎さんも主張していない。
ちらりとオウヒさんのことを見るとまだ考えているのか腕を組んでうんうん唸っている。その光景を見てヘルナイトさんは凛とした声で「焦らなくてもいいんですよ」と言って待っている。
きっとヘルナイトさんはオウヒさんの言葉を尊重するだろう。
実を言うと私もその一人で、やっぱりオウヒさんが行きたいところに行った方がいいかもしれないという意見で、この場合はその体験になってしまうだろう。
そうなってしまうと、『クルティクスに行く』:『フェーリディアンに行く』:『オウヒさんの意見に尊重する』で比にすると、2:1:2になって後は虎次郎さんだけの意見になったので三人は即座に虎次郎さんの方を見て『どっちなんだ?』と言う目をしている。
その眼はまさにどっちなんだという睨みつけるそれで、まさに選択を強いる人のそれ。どの眼力だけで怖いと思ってしまいそうなほどの視線だった。
……でも、三人はそんなに怖くなかったけれど視線に気付いたのか虎次郎さんは『お?』と言う声を零し、アキにぃ達のことを見た後虎次郎さんは「どうしたんだ?」と聞いて来たけれど、そんな言葉を聞いていたアキにぃは虎次郎さんに向けて――
「あの……、虎次郎さんだったらどこの方がいいと思います? まぁこの場合本人の意思尊重したいですけど……、できればというか、『決められなーい』って言った時の場合、俺達の意見で決まるとなったらどっちにします? って言う事を話していたんですけど、聞いていましたか?」
「ああ、そのことか」
と言うと、虎次郎さんはやっと気付いたような顔をして自分の左掌に右拳をポンっと軽く叩くと、虎次郎さんはにっと満足な笑みを浮かべて一言アキにぃに向けて言った。
自分の主張を私達に、アキにぃ達に告げ――
「儂は『」
「よしっ! 決めたっ!」
『!』
る前に、オウヒさんの声が虎次郎さんの声に覆い被さるように遮り、その遮りを聞いた私達は驚きの顔をしてオウヒさんに向けて視線を向ける。声を大きく放った張本人は自分の目の前で握り拳を作って気合を入れるような鼻息をふかしながらヘルナイトさんのことを見上げて言った。
はっきりとした顔で、ヘルナイトさんに向けて――明るくて揺るぎなど許さない真っ直ぐな目で。
「私――『フェーリディアン』で買い物したい! 買い物をして色んなものを食べて色んなことを見て回りたいっ!」




