表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
629/834

PLAY108 ご対面! 鬼の姫――桜姫③

 ここで長い長いボロボの冒険をおさらいしよう。


 ここまで来て、ボロボと言う国に来てからハンナ達は色んな試練を受け、合格を貰ってきた。


 それはボロボ空中都市の王――アダム・ドラグーン王がハンナ達に課せたもので、その試練を突破しない限りボロボを守っていた『八神』シルフィードの浄化を許可できなものでもあったので、ハンナ達はその試練をエド達レギオンと、なぜか王都にいたショーマ達と一緒に合格するためのボロボの旅に出たのが大まかなあらすじ。


 試練はこのボロボで行動をしている魔女三人……、『砂』の魔女――ラドガージャ。『生物』の魔女――ファルナ。『大気』の魔女――アルダードラが出題し、その試練に合格することで王に認めてもらう。


 なんとも従来のゲーム展開を思わせるような出来事であるが、これは必然の展開でもあった。


 ゲーム的な展開の必然ではなく、現実的にこうなることは運命だったのかもしれないのだ。


 この試練の話が出た時、ハンナ達はボロボのことを滅ぼそうとしていた黒幕――『終焉の瘴気』の『残り香』を相手にし、その『残り香』に勝った後であった。


 だがそれはあくまで『終焉の瘴気』の『残り香』であり、結局のところ『終焉の瘴気』の()()なのだ。


 本体ではなくただの一部。


 その一部相手にエド達は苦戦を強いられ、何度も死を体験してきた。


 ヘルナイト達とデュラン達の加勢があったおかげでエド達は一度も死なずに済んだのだが、それでもただの一部相手に何度も死んでしまうことはただの不安要素でしかない。


『残り香』相手に何度も死んでしまっては、本腰でもあり最終決戦の相手でもある『終焉の瘴気』を相手にした瞬間全滅もあり得る話だとドラグーン王は告げ、そんな彼等のことを鍛えるという面目でこの試練を施したということなのだ。


 勿論ボロボと言う国は空に浮く島なので、案内人兼ハンナ達の運搬としてボロボ空中都市憲兵竜騎団第二部隊隊長クロゥディグル・ウルダ・ギルデログルと共に行動し、彼等は少しずつであり時間をかけてはいるが着々と試練を受けて合格をしてきた。


 最初はラドガージャの試練――『クィーバの拘束』をエド達が武器なしで拘束をし。


 ファルナの試練――『偽りの仮面使討伐』を詠唱がないショーマ達が苦戦を強いられながらも討伐をして、合格と言う名の証明を受け取ってきた。


 最後となる試練に関しても、ハンナ自身はおろかアキ、キョウヤ、シェーラ、虎次郎、ヘルナイトもどのような試練を課せられようとも合格して見せると意気込んでいたが、その決意は意外な形で崩れることになってしまう。


 いいや……、崩れたというよりも、呆気に取られてしまい、一体どんな顔をすればいいのかわからなくなってしまった。の方がいいだろう。


 なにせ百戦錬磨でもありこの世界において最強の名を持つにふさわしい存在でもあるヘルナイトも唖然としてしまっているほど、最後の試練は予想できなかった。


 どの世界においても、こんな形の試練の内容はまさに意外であり、正直この場所にシェーラがいれば毒と言う名の呆れを吐き捨て、キョウヤがいれば突っ込みと言う名の衝撃がこの室内に木霊するであろう。


 ラドガージャやファルナが課せた試練は聞いた限り先頭に関する者であったので、ハンナ達自身も先頭に関するものだろうと予想していたのも事実でその酔蔵が外れたことによってハンナ達は魂わK空いていたのも正直な話だ。


 なにせ――アルダードラがハンナ達に課せた試練がこれなのだから。


「私が課す試練は……『()()()()()()()()()()()()()()()』です。それが完了すれば、試練は達成となります」


 アルダードラが課せた試練。それは戦闘に関する試練でなければ採取関連の試練でもない。今現在ハンナ達は利用していないがこの世界の冒険者達が欲利用する冒険者ギルドのクエストのような内容化と思っていたらとんでもない落とし穴で、まるで時限爆弾に擬態されたびっくり箱を持たされたかのような感覚だった。


 緊張がまさかの呆気に変わり、ハンナとヘルナイトはアルダードラの言葉を脳内で繰り返し口ずさむと、ようやく状況を理解した。


 アルダードラはこの後急用でボロボの王宮に行かなければいけない。その内容が一体何なのかはわからないが、それでも急用で行かなければいけないような状況なのだろう。


 そこを理解すると同時に、自分達がおかれたじょうきょうを即座に理解した。


 アルダードラはこの鬼の郷では特権でもあり唯一の竜人族。たった一人の竜人族でもありこの郷の姫でもある桜姫の御守をしている。その御守がいなくなってしまうと誰も桜姫を止めることも諫めることもできないので、二週間の間その役割を担ってほしいという言ってきた。


 つまるところ……、自分達は桜姫の子守を命じられたのだと。脳内で理解したハンナ達だった。



 ◆     ◆


 

「貴様達に告げる必要はないが、()()()のことを踏まえて一応だが教えて置く。あの小娘たちの試練は『子守』だ」

「え? 子守って……、シッターみたいなものですか?」

「したー? というものは分からんが、まぁそんな感じだな。意味は分からないが子守の類義語だという想定で言っているがな。アルダードラはいつもあの桜姫の御守をしながらこの場所で住み込みをしつつ、世界のことやいろんなことに対して教師をしたり、脱走を阻止したり夜逃げを阻止したりなどをしながら桜姫の御守をしている」

「ちょっと教師としての仕事はあまりないように聞こえますけど? 脱走の阻止しか仕事がないような気がしますけど? リアル脱出ゲームを何度もしているんですか?」

「なんだその『りあるだっしゅつ何とか』と言うものは。まぁいいが、確かに常に命からがらのような鬼ごっこだったな」

「鬼の姫様を竜が追うって……、入れ替わっていますよ?」

「モシクハソノ題名デ本ガ売レソウ」

「ないないペストさん」


 ハンナ達の話を聞いていた……、いいや、こうなる前に事前に聞いていた赫破はエド達に向けて説明をするようにハンナ達に指を指しながら口にした。


 その言葉を聞いて驚きの言葉を最初に発したのはエドで、エドは赫破を聞きながらハンナ達、そしてその場所にいた重厚な装備をしている竜人族――『大気』と言う曖昧でどんな力なのかわからない様な力を持っている魔女にして竜騎士団第一団長のアルダードラのことを見て、そのまま視線をずらしてエドは未だにショーマにくっついて『腕斬って腕生やして』と、初めて聞く人であれば悍ましいい言葉を放っている桜姫のことを見る。


 いや、何度もあった人でもこの言葉は悍ましい。


 その思考を頭の片隅に入れつつ、エドは桜姫のことを見ながら納得のそれを示し、心の中で――なるほど、そう言う事か。と理解をした。


 先ほどアルダードラはこの郷に於いて特権ともいえる様な地位にいる存在だ。鬼族しか住むことが許されない郷で、彼は特権でこの場所で住み込みの仕事をしていると、赫破はエド達に話した。


 その特権が『御守』であることは知っていたのだが、その御守相手が桜姫――エド達視点の場合は姫など血う言葉では済まされないほどのじゃじゃ馬姫で、世間というものを知らないような言動が目立つ我儘姫となると、アルダードラの御守はきっと毎日がストレス日課だろうなと、この時のエドは思い、そして続けてこう思った。


 ――そんな毎日ストレスを抱えてしまいそうな人の代わり、それは災難だなーハンナちゃん達。おれ達は戦闘で、それでも大変だったけど、これはこれで精神的に堪えそうだな。


 ――あのお姫様ならば……。


 そう思いながらエドはハンナ達の対し、無言と言える心の合掌を向けた。


 二週間頑張れ。


 そんな心のエールを与えながら……。


 そんなことを考えつつも赫破が言うことに対して的確で穏やかとは言えないが内心これはこれでやばいかもしれないなと言うことを思いながら相槌を打っていくエド。コーフィンの言葉に対しても流すように突っ込みを入れるが――内心はそんな穏やかなものではなかった。


 エドの心境はまさに大荒れの前触れ。


 風が少しずつ強くなっていき、灰色の空が辺りを包んで人の不安を仰ぐような、そんな天候の状態。


 そんな状態の中エドは思考を巡らせて思ったのだ。


 何度も何度も脱走を試みる桜姫にも驚きではあるが、それと同時にアルダードラの毎日の確保も大変だろうな……。と思いつつ、それと同時に桜姫の外に対する執着が異常であるという恐ろしい片鱗も理解してしまい、これは相当つらい試練かもしれない。ある意味……。と思ってしまった。


 人の心、思考など読めない。ましてやこの世界の時代で一番わからないこと、一番理解できないことランキング上位に君臨しているほど、人が何を考えているのかだなんて考えることができない。


 どころか何が何でも外に出ようとするその心意がわからない以上、毎日、毎日、毎日……、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日繰り返しているこの行動はまさに怖いそのもので、ストレスの他例えがない。


「これは精神的な試練内容だな……。内容は簡単なんだけど、毎日あの子の御守はねー……」


 エドはため息を吐きつつ、もし自分がこうなってしまった時のことを想定してシュミュレーションをした結果、ハンナ達に再度合掌を心の中でして、最後にこの言葉をかけた。


 ドンマイ。


 その言葉を心の中でかけながら……。


 そんなことを思っていると、赫破は桜姫のことを見つつ、エド達のことを見て言葉を零した。


「さて――あっちはあっちでまぁ問題はないだろう。元々はあの小娘共に課す試練だ。こっちには関係のない事だ」

「あなた鬼族ですよね? 重鎮ですよね? なのになぜそんな親ライオン子供ライオンを崖から突き落とすような月話をしているんですか? 当事者なんだから少しは彼女達の助けになってほしいですっ」


 零した言葉はなんとも無責任極まりないような発言で、赫破自身手を貸さない意思を徹しているような目でハンナ達のことを見ていたが、その眼を見てすぐに察してしまったエドは驚きと焦りが加わったワタワタした面持ちで赫破に向けてやんわりと否定の突っ込みを入れる。


『それだけはよして』問わんばかりの泣き顔で――だ。


 しかしエドのそんな訴えなど赫破からして見ればただ空気に変な歪みが入っただけのことで、一部の空間の空気が淀んだだけのことと同じ。つまりは無害であり、赫破はエドの言葉を無視するようにくるりと踵を返す。


「さて……、こっちはこっちで()()()()に入るか」


 エド達の頭に疑問と言うそれを出すような意味深な言葉を零しながら……。


 今までハンナ達に視線を向けていたその先をエド達に向けて、向けた瞬間赫破は見た。


 厳ついと言わんばかりの鋭く威圧が込められているその視線で赫破はエド達のことを見る。反対に赫破の目を見て、その視線の奥に潜む本心を直感で感じてしまったエドと京平、シルヴィとコーフィン、デュランは一瞬だけ強張るようにたじろいてしまった。


 …………いいや、一人だけ未だに桜姫の手によって暴れているショーマは例外だ。


 それでもショーマ以外のエド達は赫破の鋭く、そしてその視線を外してしまった瞬間何が起きるかわからない。最悪の想定が起きるかもしれないがそれが何なのかわからない。そんな曖昧ではあるが確かな殺意を感じたエド達は固唾を飲むように唇を固く噤む。


 一瞬の静寂……、ハンナ達の会話がその静寂を静寂にしないようにしているせいで静かな空間とはいいがたいが、それでも一瞬だけ静寂と言う空間が出来上がった、その一瞬の間誰も言葉を発さず、ハンナ達の声を皮切りに赫破は声を上げたのだ。


 それははっきりとした言葉ではない。赫破はエド達に向けて――疑問と言う名の質問をかけたのだ。


「ところでお前達に聞いていなかったな。お前達の意思、覚悟というものを」

「!」

「覚悟……、あぁなるほど。そう言えばそうでしたな。そんなことをあの浄化の娘にも聞いていましたが……」

「そうだ。その覚悟を聞こうと思って聞いたんだ。お前達がここにきて、これから起きるであろう何かと、この先で起きるであろう何かについて――な」


 何か。


 そうなぜかぼかしをかけているような言い回しで言う赫破に、京平は心の中で「はぁ?」と突っかかりそうな音色を零しそうな心の声を放ったが、所詮は心の中。言葉にしていない、声にしていないので聞こえているわけがない。


 しかし顔に出てしまっているのか、京平の顔を見た赫破は呆れるような溜息を吐きつつ京平のことを見て呆れのそれで赫破は――


「これを聞いても分からんとは……。魔族交じりになってしまうと知能まで魔物と同じになってしまうのか?」


 と呆れのそれで零す。本当に、呆れたと言わんばかりの音色で――馬鹿にしていないそんな音色で。


 赫破の言葉を聞いて馬鹿にしていない。本当にそのことを言っている赫破の顔に京平は頭の中で何かが部ちぎれるような音を聞くと同時にとびかかろうと行動を起こそうとしたが、その前に京平は行動を止め、一旦落ち着くように一度だけ深呼吸をした後、京平は赫破に向けて怒りの視線を向けるだけに留めることにした。


 牙を剥き出しにし、威嚇をする獣のような面持ちで。


 その光景はもう襲い掛からんばかりの顔つきなのだが、すぐに襲わなかっただけ成長をしているのだろう。どころか前のことを教訓しているのかすぐの行動を一旦おいて、落ち着いてから行動を起こしている様子に赫破は内心驚きながら京平の成長を見た。


 ――ほぉ、すぐに噛みつかんとはな。まぁそれも三日坊主か、それとも一日坊主かもしれんがな。まぁ最悪半日坊主の可能性も高いが、今は及第点として何も言わんでおこう。


 ……殆ど長くは続かないであろうという物言いではあるが、彼自身人間族――ましてや魔獣族としての京平に対して少しだけ褒めたことは大きな進歩であると同時に鬼以外の種族のことを褒めたのだ。


 これは鬼族にとって大きな進歩と言っても過言ではない。


 さて。話を戻そう。


 京平のことを見ていた赫破だったが、その視線をエドに向け、驚いて固まり、何をするのかと思いながら身構えているエドに向けて赫破は聞いた。


 巨人の小僧。そうエドのことを呼びながら彼は聞いた。


「お前さんはどうなんだ? ここまで来て貴様はどうするつもりなんだ?」

「どうするって……すごく曖昧ですね」

「曖昧に聞こえてしまうか。だが儂は貴様の意思、覚悟を聞くために今こうして聞いている。まぁあっちの会話が終わるまでの時間潰しになってしまうが、それでも聞きたいのが本音だ。具体的にな」

「曖昧な質問なのに具体的って……、どんな面接ですか?」


 エドの言葉通り赫破はとてつもなく曖昧で、それでいて返答に関しては具体的に述べろという言葉に。エドは内心自分が今務めている職場の冷たい面接の火を思い出しながら言葉を述べたが、その言葉に関して同意のそれをしたのは彼の背後にいる京平だけで、それ以外の人は――無言を徹していた。


 エドの言葉に対して無視したわけではない。突っ込みを入れること自他が面倒臭くなったからではない。理由は簡単なことだった。


 ただその空気に呑まれ、それと同時に赫破の言葉に対してエドはどのような返答をするのか。


 そんな状況の変化の順応と人間が持つ興味が彼らの心を揺らし、その揺れを優先するように誰もは言葉を発さず、エドの言葉を待った。


 エド自身も順応に適応していたのか、それ以上の脱線の言葉を述べることなく左手を腰に添え、祖のまま長考するような唸る声を出すと、エドは少しだけ、本当に少しだけの間無言になる。


 その無言に一同 (ショーマと桜姫だけはまだ騒いでいる)も伝染したかのように無言になっている。赫破もエドの言葉が出るのを待ちながら腕を組み、祖の情痴でエドの言葉をじっと待っていると――エドは鉄の仮面越しではあるがそっと口を開き、言葉を口にした。


「まぁ……、うーん。覚悟とか意思はどうなんだ? と言われましても、おれ達は彼女達のようにこの世界を救うカギとなる『浄化』と言う力を持っていない身です。そんな人に対して『お前はこの先どのような覚悟を持って、そして意志を持って進むつもりなんだ?』って聞かれても……、正直返答は難しいところです」


 エドの返答に一瞬誰もが驚きのあまりに顔から表情と言うものが消え、赫破自身も予想外の返答だったのだろう。驚きの顔のまま目をぱちくりとさせていた。


 もう目で開閉の効果音が聞こえそうな面持ちで、赫破はエドのことを見ていたが、京平だけは違っていた。


 エドの返答を聞いて、腕を組んだかと思えばにっと笑みを零した後うんうんっと頷き、『そう来ると思っていた』と言わんばかりの顔をしてその光景を見つめる。


 まるでエドの言葉を呼んでいたかのようなその笑みは京平本人しか知らないことで、誰の視界にも入ることはなかった。ゆえに一同の茫然のその顔が元の顔に戻るのに少しだけ時間を要したのだ。


 最初の戻ったのは赫破で、赫破は息を呑む声を零すと同時にエドの言葉に対して言葉のボールを返すように肩を竦めながら彼は言った。


「……意外とあっさりしているな。普通なら言葉だけのそれを吐き捨てるのかと思っていたが……」

「普通はそうだと思います。突然意志はどうなんだとか覚悟はあるのかとか聞かれても、正直何と答えればいいのかわかりません。従来のゲームのように目的と言うものがあれば行動できると思いますし、正直ここにいるのはボロボの王の命令に忠実に行動した結果ですから」

「なかったら何もしなかったと?」

「そこまでおれは、おれ達は邪道じゃないです。鬼族見解で見ればそうなってしまうかもしれませんけど、おれだってただ流れに乗ってぶーらぶらしているわけじゃないです」

「目的がないというのに流れに乗らないと言う事か? まさか目的が突然できたとか言うまいな? 苦し紛れの発言はあまり感心せんが」

「別に苦し紛れでも何でもありません。()()()()()()()()()()()()()ことでもありますし、それが俺がこれからもこの戦いを、この世界が救われるまで続ける意思、覚悟ですから」

「?」


 ここに来る前。


 その一文に赫破は首を傾げてその言葉を心の中で復唱したが、エドは赫破の疑問を素通りし……、否、逆にその疑問を解消するためにエドは具体的に返答を述べる。


 曖昧な質問に対して、自分はこんな意志を持ち、こんな覚悟を持ってここに来て、これからも戦い続けることを赫破に向けて。


 京平の笑みに連動するようにエドは鉄の仮面越しで笑みを零しながら彼は言ったのだ。


「おれはここに来る前、とある理由でこの世界に来ました。その理由は明かせません。なにせ守秘義務と言うものがありますし、これは機密事項と言うもので守られています。それを話してしまったらおれは多分殺されます。いいえ絶対に殺されます。だっておれ達はその機密事項と言う面目でここに来ている。いやそう言う言葉じゃないな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って言った方がいいと思います」


「この世界ですること? それが貴様の意志と覚悟に何の繋がりがあると言うんだ?」


 エドの言葉は赫破からしてみれば何を言っているのだろう。まるで言葉の壁の所為で理解ができないようなエドの言葉に赫破は頭を捻らせながら疑念に近いような音色で聞くと、エドははっきりとした音色で「はい」と言い、続けて彼は言葉を口にする。


 そのはっきりとした音色と同時に出ている普段通りの彼の顔。その顔に潜む確固たる想いを感じながら赫破はエドの言葉に耳を傾け、赫破のことを見ていたエドは続きの言葉を発した。


「覚悟とか、意志に関して聞かれたら、おれ自身そんな大きな目標もなければ使命なんて言う物なんてない。主人公でもないからおれが抱く、背負うものは明らかにあの子達よりも少ないし軽いし、小さい。それだけならばそうかもしれないけれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()。京平にもあって、おれ達がここで死んではいけない。生きなければいけない。前に進んで、見つけなければいけないから泊ることなんてできない。生きて、進んで、お目当ての人を見つけて、その人にこの気持ちをぶつけるまで――おれ達は死ねない。だから進む。おれ達の使命を、おれ達の心の(わだかま)りが崩れるその時まで、おれ達は進み続ける。それが強いて言えばの――おれ達の覚悟と言いますか、意地ですかね?」


「………………………。意地か。覚悟とは程遠いものだな」


 エドの言葉――エドの本心を、その覚悟を聞いた赫破は溜息交じりに言葉を零し、無言のまま聞いている京平達のことを横目で見つつ、再度エドのことを見て赫破は言葉を零すが、エドは赫破の言葉に対して乾いた笑みを浮かべて「ですよねー」と言いながら彼は言う。


 腰に手を当てた状態で、彼はその言葉に対して後悔などしていないと言わんばかりの面持ちと気持ちの表れで彼は言う。


「ほど遠いですけど、それしかないんです。おれの生きがいと言いますか……、おれのことを、おれ達のことを拾ってくれた人に対しての恩返しが、これしか思いつかないし、恩人の大切な人を守るためならばおれはこの命を捧げても構わないですから。ね――京平」

「おう! 考えていることが同じでよかったべ」


 さらりと言ったエドの発言。そしてその言葉に同文と言い切った京平の発言。


 二人の言葉を聞いた赫破は言葉を失ったわけではない、ただ無言になってエドの――エドと京平の覚悟を脳に刻む。


 それは聞き流しながら聞けば普通に聞こえてしまうかもしれない。エドの面持ちを見れば普通という気持ちで聞いてしまいそうになってしまうが、エドが発した言葉はまさに自己犠牲と言っても過言ではないような物言い。


 己のことを拾ってくれた人のためならばこの命捧げてもいい。


 それはクィンクがヌィビットに対して抱いている感情と同じであり、同じ重さ、同じ覚悟を意味している。


 誰もがその覚悟を聞いて言葉を失い、エド自身はそれでいいのかという疑念が浮かびそうになったが、エドの後悔していないその笑顔を見て、そしてはっきりとしたその言葉を聞いて、誰もがエドの気持ちは変わらない。この覚悟を変えることは出来ない。そう確信してしまい言葉を失ったまま驚きの顔で強張りを見せるようなその顔でエドのことを見ることしかできなかった。


 普通は出来ないことを平然と行う。


 何度死んだとしても、その死を捧げる気持ちで恩人のために動く。


 それこそ彼等が抱く覚悟であり、これからも戦う理由なのだ。


『残り香』相手に何度殺されても、何度も立ち上がった――それが片鱗の表れであったことに気付けばよかったと赫破は内心舌打ちを零し、それと同時にエド達の覚悟を垣間見た瞬間、赫破は思った。


 ――この覚悟は凶器と言うものを感じるな。善意と言う中に眠る異質な狂気。それをこ奴等は持っている。そしてその狂気を普通の感情と誤認して行動している。


 ――まさに善と言う名の歪みだな。


 ――真っ直ぐすぎる善とは違った歪みを持っている善。その善が一体どの場所に向かうのか、どのような終着点を導くのかは、こいつら次第だな。


 そう思った後、赫破はその場で一度深い溜息を鼻で吐き、その後彼はエドのことを見て呆れの顔で見た後、腕を組んだ状態で彼は言う。


 呆れを含んでいるせいで、言葉が単調になってしまう様な音色で、彼は言った。


「………………………そうか。わかった」


 たったそれだけ。


 それ以上の言葉など見つけられない。


 どころかそれ以上の言葉を言ったとしても、この男の意志を曲げることができないだろう。そう思いながら赫破は半ば諦めを含んだ形で頷くと、その言葉を聞いたエドはほっと胸を撫で下ろし、そんな彼に京平は笑みを浮かべた状態で歩み寄りながら彼の肩に手を置く。


 ぽんっと置かれたその小さな衝撃にエドは京平がいる背後に視線を向け、疲れたような顔をしてグーサインを出す。


 二人の顔からは緊張のそれが一気に歩ぶれたかのような肩の力が抜けたような顔をしていたが、赫破はそんな二人のことを見た後、次に移さんばかりに二人から視線を外し、その視線をとある人物に向けて彼は言い放つ。


「さて――次はお前さんだが……、今いいか?」

「へ?」

「ねーねーねー! 斬って生えている所見せてー! 再生の力見せて―!」

「見せねぇよぉっ! 離れろぉ!」


 赫破は言い放った。現在進行形でショーマの悪魔族の再生能力を見たいとねだっている桜姫のことを引きはがそうとしているショーマのことを見て言い放つが、真剣であった先ほどの空気が一気に淀み、なんだか締まりのない空気を感じた時、赫破は思った。


 心の中で、現在桜姫に遊ばれているショーマのことを見て思った。


 ――こいつは時間の無駄かもしれないな。


 と……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ