PLAY108 ご対面! 鬼の姫――桜姫①
「試練の内容はアルダードラに聞け。その場所に案内をする。ついてこい。……あと、その言葉、一応受け取っておく。そんなに言うのであれば、しかと実行してくれるとありがたいな。儂自身完全に考えを変えたわけではない。老人の暇潰しとして、お前さんの――お前さん方のその絵空事に耳を傾けるだけだからな」
□ □
長い間、というか長い時間の最中、私達は鬼族のことについて少しだけ詳しくなり、鬼族のことで考えさせられるような時間を過ごした。
本来の目的でもある――アルダードラさんに試練の内容を聞くということを忘れてしまうような長い時間……に感じたけど、実際はたったの三十分程度しか経ってないみたいだった。
この鬼の郷に時計と言う物が見当たらなかったけど、話しが終わりアカハさんに時間を使ってしまったことを謝罪すると、アカハさんはそんな私に向けて――
「あぁ、確かにほんの三十分程度時間を喰ってしまったな。そこにいる魔物交じりの小僧の所為で」
と言ってきた瞬間、私は表面上は困ったように笑みを零しながら「えっと……」と言って自分の本心を誤魔化そうとしたけど、内心はもう驚きそのもので、心の中で私はこんなことを思っていた。
――え? たったそれだけしか経っていないの? なんだか長い時間お話をしたような感覚があったんだけどな……。
心の中で芽生えたその言葉は一瞬喉から出ようとしていたけれど、その言葉をぐっと呑み込み、そしてそのまま胃の中で消化をするように静かに抹消した。
何故なのかはわからないけれど、これは言ってはいけないような、そんな直感を優先にした結果、私は心の声を胃の中で消化した。
これはまずい。何故なのかはわからないけれど、言ってはいけないような気がする。
そんなことを思い出しながら……。
「え? たった三十分しか経っていないの? おれてっきり丸一日経過していたと思っていたんだけど」
「おいやめろエドッ! それはなんだか言ってはいけないような空気だべっ。あとその言い回しだと俺が悪いような言い回しにしか聞こえねーべっ!」
「え? 実際は京平の所為でしょ? リカのことやシリウスのことが大好き過ぎてそれが大暴走した結果こうなったんでしょう? もう少しだけ我慢というスキルを強化しておけばきっと話は進んでいたはずなんだよ? でも鬼族のことを知ることができたからよかったから結果オーライなのかな?」
「オメーもジジィも口が悪いなぁこの野郎……っ! エドに至ってはスンゲー冷めた目で俺のことを見ているし、俺まだ朝なのにこわい感覚に襲われているべ……」
「寝不足?」
「オメーの所為だべよっ!?」
なんだか背後からエドさんと京平さんの会話が聞こえてきたけど、その会話はなんだか踏み込んではいけないような空気を漂わせつつ、なんだかエドさんと京平さんが楽しく会話をしているような声が聞こえた。
京平さんの口から『怖い』と言う言葉を聞いたけど、一体何に対して京平さんは怖いと感じたのかは、結局わからずじまい。
でもなんだかさっきまでの淀んでいた空気が和らいだ、和んでいるような空気を感じた私は――内心ほっと胸を撫で下ろすような安心感を感じた。無意識に『ほっ』と安堵のそれが出るくらいのそれだ。
だってさっきまで私達は鬼族の現状、歴史、そして鬼族のみんなが抱える憎しみのことを聞かされていたのだ。長い時間を感じるのは仕方がないし、殺伐としている空気の中ずっといることも人にとってすれば相当なストレスのはず。
そのストレスから解放されたのか、現在私達はアカハさんの後を追うように歩みを進めて、アルダードラさんがいるであろう部屋に向かって歩みを進めている。
重くもない。軽快でもないけれど、軽い足取りで――
でも、私の心には一旦しまい込んでいた感情は心の中で縦横無尽に動いていて、その心が一刻も早くその場所から出たい。言葉にして発したいというそれが爆発しそうになるそれを押さえながら私は歩みを進めていく。
その気持ちを生んだ張本人――ヘルナイトさんと一緒に。
いつもならばこんな風に歩いている最中でも、私はヘルナイトさんに声を小さくかけて小さな会話をすると思うんだけど、それを行うことができない。ううん――それを行うようなメンタルではなかった。
理由は簡単、ヘルナイトさんが言った宣言。
『鬼族のことが記載されている『滅亡録』から、あなた方の名を消す。『滅亡録』から『黙示録』への記載を成し遂げます。それがいつになるのかわかりません。保証も何もできないようなことですが、それでも私は動こうと思います。勿論――浄化も行いつつ、あなた方の憎しみを、負の連鎖を断ち切るためにも行動します。これ以上……、負の連鎖で悲しむ者達を増やさないために、そして――鬼族の未来を明るくするために』
その言葉が聞いかけで私はヘルナイトさんは今話をする気が起きない。だから無言の空間が続いているのだ。
あ、この状況に関しては私に非がある。私がこの状況を引き起こしている。これは私の所為なのかもしれないけれど、我儘かもしれないけれど、それでも私の我儘と言えるような言い訳……、もとい主張を聞いてほしい。
ヘルナイトさんはこの宣言を鬼族のことを思って、そしてこの世界を守れなかったことに対しての罪滅ぼしとして宣言をして、鬼族の未来のことを考えた結果この言葉をかけることしかできなかった。そのことに関しては分かる。
あの後エドさんが『本当に変えても大丈夫なの? それっておれたちに影響はない?』って詰め寄る様な焦り様で聞いて来たけど、ヘルナイトさんはエドさんの心の焦りを読み取ったかのように、冷静な凛とした音色で『大丈夫だ。種族の生存消滅に関しての法は全て『黙示録』と『滅亡録』が担っている。
その記述を変えれば鬼族の見方も変わる。
何より法を変える者にそのことを頼むんだ。犯罪ではないはずだ』と言って、その後ヘルナイトさんは明後日の方向を向きながら小さな声でこんなことを言っていた。
『それに、浄化の旅をしていれば必ずその局面と対面するだろう。その時がいつになるかはわからないが、この願いは叶わないものではないはずだ』
いずれ、対面することになる局面。
その言葉を聞いて、内心浄化の旅の中で必ず対面することなんだと思い (ヘルナイトさんもそう言っていたから絶対なんだろうな……)、そのことに関しては納得したけれど、私はそのことで怒っているわけではない。
むしろ私は別のことであると同時に幼稚ともいえる様な事でむすっとしていた。
それは――そのことを私達に告げずに宣言をしたことだ。
ヘルナイトさん自身鬼族のことを考えたらいてもたってもいられなかったからこんなことを言ったのかもしれないけど、それでもその考えを突然出されたら誰だって驚くし、勝手に決めた敵なことではないけれど、少しだけ時間をもらってくれたらよかったな。と言う考えが頭をよぎっていた。
正直……、私も鬼族のことに関してどうするか考えていたのだけど、それに関して、少しは私達にも告げてほしい気持ちもあったし、なんだか……、うーん……。なんて言った方がいいのかな? なんかこう……、怒らなくてもいいんじゃないんか? と言う考えが過っているのだけど、その考えをしたくない自分もいて、なんだか自分が自分ではないような感覚は自分を襲っている。
ヘルナイトさんに何をさせたいのかも言えないような自分に苛立ちも感じているけれど、こんなことを言ったら子供っぽいと思われてしまうかもしれない。
でも私の心の中ではこんな言葉がリレーの様に延々と回り続けている。
『先に言ってくれれば、よかったのに』
そんな言葉が心の声から脳の信号となって私の頭の中を駆け巡り、その脳内の言葉を口の言葉にすることもできないまま、私は現在に至っているというのが現状。
むすっとしている面持ちで私はヘルナイトさんに視線を向けずにいるのが今の現状なのだ。その状況が今の私達――つまりは私とヘルナイトさんの間に轍を作っている状況と言っても過言ではない。
大きな溝とはいいがたいので、車が通った後の様に浅いけどへこみがある様な、そんな溝を私から作ってしまっている。そんな状況。
ヘルナイトさんはそんな私のことを見て首を傾げている。そんな状況の中でも、私は足元がすれすれで見えそうな、そんな俯き加減で歩みを進めている。
すたすたすたっ。と――木で作られた廊下に足音が微かに響き、その音を聞きながら私は少しだけ俯きながら歩みを進める。
アカハさんの言葉があってからずっとこんな感じで、私は一応ヘルナイトさんと話をしていない。
………違う。話をすることができない。気持ちがそんな気持ちではないと言った方がいいのかもしれない。
「ドウシタンダロウナ……ハンナチャン、全然話カケナイゾ」
「どの世界でも女と言う存在はおしゃべり好きと思っているかもしれないが大間違いだぞ。男子にもお喋り好きな輩もいれば女装と言う性癖を持っている輩もいる。それと同じで、これが普通かもしれないだろう」
「イヤ、ソノ前ニ、『女装』ト言ウ言葉デ言イ包メルナ。ソノ場合ハ『オシャレ』デイイダロウガ。オ前ハ全世界ノ女性ニ謝レ」
なんだか背後でコーフィンさんとシルヴィさんの声が聞こえたけど、それは敢えて無視をして私は歩みを進める。その最中もヘルナイトさんは何も言わずに私のことを見下ろしているのだろう……。その無言の空間は嫌悪と感じるようなそれが出ていない。かといって居心地がいいそんな空気も放ってない。いうなれば無味無臭のような、そんな空間が私達のことを包み込んでいて、空気と言う名の酸素と少しばかりに二酸化炭素があるのに、なぜか息苦しさを感じてしまう。
今まで話しをしていた分、話をしないと言う事をすると人間息苦しくなるのか。
それとも意図的に話そうとしないからこんなに苦しいのか。
はたまたは……、私の心の表れなのかもしれない。
心の中では話をしてヘルナイトさんに理由を聞きたい。ヘルナイトさんに対して『ガッツーンッ』と物申したい気持ちが息苦しさとなっているのかもしれない。
そんないくつもの憶測を抱きつつ、話しのきっかけが、話しの切り出しができない状況の中私は無言と言えるような顔のまま歩みを俯きながら進めている。
ひたすら歩む音が消えるその空気の中……、私は歩みを進めていると……。
「――ハンナ、まさかと思うが、怒っているのか?」
「!」
突然ヘルナイトさんが声を掛けてきた。勿論小さい声で、私にしか聞こえないであろう囁くような声で――
その声を聞いた瞬間、私は条件反射と言うのか……、ヘルナイトさんの声に思わず反応をしてしまった。肩を震わせて、はっと息を零すようなびくつきをして……。
そんな私の反応を見て、そして今までの無音の空間に関して考えていたのか、ヘルナイトさんは私に向けて言う。
私は依然と視線を前に向けた状態で、ヘルナイトさんのことを見ていないけれど、ヘルナイトさんのことだ。多分私のことを見ながら歩みを進めている。そんなことを思いながら私は聞き耳を立てつつ歩みを進めていく。
ヘルナイトさんは小さい声でぼそぼそと呟くように言った。ぼそぼそと言っているのだけど、それでも凛としているそれを残しているような音色でヘルナイトさんは言ったのだ。
「……すまない。怒っている理由に関してはなんとなくではあるが理解はしている。だがあの場合、こうするしかないと思ってしまい、即断即決と言わんばかりに行動してしまった。自分自身の考えを主張して、それを決定事項にしてしまったことは謝る。本来ならばハンナ達にも説明をしなければいけないことでもあったのにな……。本当に申し訳ない」
配慮が足りなかった。
そう言ったヘルナイトさんは私に遠回しだけど私に向けて、みんなに向けて謝りの言葉をかけた。その言葉を聞いていたのか、後ろでコーフィンさんは「イイヨイイヨ。ソンナノ誰ダッテスルッテ」とフォローめいた明るい言葉をかけて、京平さんはその言葉を聞いて「時折俺ヘノディスりが凄かったけどな」と言って少し怒りの声が含まれていたけれど、その言葉を聞いていたのか、エドさんが呆れのため息を吐いているのが聞こえる。
そんな声を聞きながら私はヘルナイトさんの言葉を聞いて、今までむすくれていた感情が、少しずつ、本当に少しずつと言う形で再燃していくようなそれを感じていた。
別に怒ってはいない。
ただなぜなのかはわからないけれど、私はヘルナイトさんの言葉を聞いて――思ったのだ。
「配慮のこともですけど、考えがあるならば私達にも話してくれたらよかったです」
あれ? なんか無意識に口に出して言ってしまったような感覚がある。私は心の中でそれを隠そう解いていたのだけど、それがうっかり声になってしまったのか、ヘルナイトさんはその言葉を聞いて無言になってしまっている。
幸いなことにエドさん達には聞こえていないみたいで、その声を聞いたヘルナイトさんと、言葉を発した張本人が驚くという、なんともシュールと言えるようなそれが一瞬だけ描かれてしまった。
まるで一コマに描かれたおとぼけのコマのように、一枚の写真に収められた隠し撮りの様にそれは描かれていて、その状態で私とヘルナイトさんは黙ってしまった。
漫画のコマで言うところの、無言の点々の吹き出しが出ているような、そんな沈黙。
しかしその沈黙もすぐにかき消されることになり、かき消した人物は私に向けてこう言った。凛としているその音色だけど、その中に含まれる反省の色を靄として出しながらその人は――ヘルナイトさんは言った。
「確かにな……、考えがあれば先に話すべきだったな。そのことに関しては反省している。猛省と言っても過言――いいや、そんなことを言っても嘘のように聞こえてしまうな。だがこれだけは信じてくれ、反省していることを。ここに来て、この国のことを知らないハンナ達に対して、配慮がなかったことを謝罪させてほしい」
「………………………本当です。本当に、突然だったので驚きましたし、そんなことがあるならもう少し早めに行ってくれたらよかったなって思いました。この時ばかりは……、記憶喪失という存在にむっと来てしまいました」
「そうだな……。私自身この記憶喪失だけは自分で制御できない。ハンナの意見には同文だ」
「……………その事実は、鬼族のことを聞いていた時に思い出したんですか?」
「ああ。そうだ。鬼族のことを思い出すと同時に思い出したことなんだ」
「……それで、『そうなんですか。仕方がないですね』なんて、今の私には言えませんし、アキにぃやシェーラちゃんだったら『後出しじゃんけんじゃねーか』って、多分ごねます」
「………………………」
「私も今回ばかりはその一人です。勝手に決めてほしくなかった。そんな汚い本音ですけど、吐き出したかったです。我儘に聞こえるかもしれませんけど、それでも」
そんな方法があったのならば、先に聞きたかったです。
鬼族のことを考えていたのは私もなんですから。
そう言って私はもう一度静寂と言う名の沈黙を貫く。
ヘルナイトさんも同じで、私の言葉を聞いて少しの間沈黙を貫いた。
もう一度訪れた静寂はなんだか息苦しさも感じず、どころか何だか清々しいそれを感じてしまうほどの透き通った空気を感じてしまう。
さっきまで感じていた苦しみが嘘のような感覚に、私は内心驚きというか、本音で話したことはこんなにも重苦しいのに、その重苦しさが言葉と共に無くなっていくような感覚に驚きを内心隠せないでいた。
正直、重苦しい話をすると空気自体も重苦しくなるのに……。
私自身がすっきりしてしまっている可能性が高いけれど、それでもなんだか周りの空気が柔らかくなったような……、軽くなったような感覚を感じると、ヘルナイトさんのことを見上げて歩みを進める私。
本当は見上げないでこのまま進もうかなとか思っていたのだけど、流石にヘルナイトさんの反応が知りたいという欲求と少しの不安を抱いてしまい、私は思わず顔を上げてヘルナイトさんのことを見ると……。
「話は済んだか?」
「――っ!?」
唐突に前から聞こえた威厳のある声。
その声を聞いた瞬間私ははっと息を呑むと同時に、心臓が内蔵の中で跳ね上がる様な、そんな驚きを感じると同時に体で体現する。
びくぅっ! と体全体で垂直跳びをするようなそんな感覚で驚きを顔の強張りと共に表現すると、声の主アカハさんは私のことを見ず、すたすたと迷いのない全身をしながら冷静な音色で――
「言っておくが儂はそんなことをされても恩を着せられた。借りを作ってしまったとしか思わん。緑薙達にそのことを言ってしまえばただですまされん。むしろ恩着せがましいと罵られて追放されるやもしれんからな、そのことはあの二人にも、この郷にいる奴らにも言わないで置いた方がいい」
と言われ、私は驚きの顔のまま茫然とした面持ちでアカハさんの背中を見つめると、アカハさんの言葉を聞いていたヘルナイトさんは頷きの意思表示なのか、「はい」と言うはっきりとした言い方で肯定のそれを示した。
「確カニ、コノ郷ノ人達ヲ怒ラセルコトハ死にニ等シイカラナ。言ワナイ方ガ得策ダナ。ウン」
「この場合クィンクの暴走がきっかけだった。然しそれを止めることができなかった我々にも責任がある。この負の循環は止めることなどできない且つ、この循環の所為で険悪がさらに悪化したからな。これ以上の悪循環は避けた方がいいかもしれない」
「愚カナ行為ヲシテシマッタナ……。俺達」
「過去の感傷に浸るな。そしてこれは個人の損失であり、その個人も今制裁が喰らった状態だ。愚かな行為に関しては否定できんが、その愚かな行為を止めることができなかった私達も同罪だ」
背後からコーフィンさんの声が聞こえ、シルヴィさんも声も聞こえたけど、二人……というかあのヌィビットさんと一緒に行動していた人たちからしてみれば鬼族の恐怖は嫌と言うほど理解しているだろう。
クィンクさんがしてしまった過ちの結果なんだけど、それでも鬼族の憎しみを加速させたのは事実でもあるし、長い間この鬼の郷にいたシルヴィさん達からしてみれば鬼族の怒りの沸点を見て感じながら暮らして理解したに違いない。
そのことを思い出しているのか、二人の音色には明るさがあるけれど陰りが勝っているようなそれで、もしゃもしゃもなんだか落ち込んでいるような雰囲気になっている。
怒らせるとどうなるのかもわかっているはずだから、アカハさんの言葉はまさに追い打ちの確認。と言っても過言ではない。
そんなコーフィンさん達の話を聞いていた私は……、心の底からこう思った。
それどころではない。
そう思いながら私は体の奥底から波打つ感覚を体の中で感じる。心臓がバクバクと大太鼓を叩ているような……、お祭りでよく聞く太鼓の音で振動しているような鼓動を立てながら驚きの余韻に浸っている心臓を感じて、そのバクバクが未だになり続いている最中私はアカハさんの背中を見ると……、アカハさんは歩みを進めていたその足をぴたりと止め、私達のことを見ずにアカハさんは微動だにしない直立で言う。
私達に向けて――というか、私に向けてアカハさんは言った。
「書き換えに関してはお前さん達で決めろ。よく話し合い、そしてこれからのことも踏まえてじっくりと話し合え。もう心がそっちに向かっておるならばそれ以上言わんが、その話はこの郷から出てからにしておけ。あと一つ……このことは儂の前でしか話さないことをここで誓え。緑薙達に話そうとするな。良いな?」
あぁ、やっぱり書き換えのことに関して聞かれていたんだ……。
私は心の中で頭に重い意志が『ごんっ』っと乗せられたような空気の重みを感じ、その重みと共に私とヘルナイトさんの会話が聞かれたことにショックを受ける。それはもう鈍器のような衝撃と重みが襲い掛かる様に……。
でも、その重みを感じながらも私はアカハさんの背中を見るために顔を上げ、アカハさんの言葉に対して、私は小さな声でイエスの返事を返した。
ヘルナイトさんも頭を軽く下げ、会釈をするように行動をすると凛とした音色で「承知しています」と返す。
そんな私達の返答を聞いたアカハさんは小さな声で「そうか」と言うと、再度歩みを進めていく。
何事もなかったかのような面持ちで歩みを進めていくアカハさんの行動に、私ははっと驚きのそれを零し、慌ててアカハさんの元に駆け寄ろうと歩みを進める。
私は一瞬のぼーっとしている隙にコーフィンさん達やエドさん達が先に歩みを進めてしまっていたので、順番が逆になってしまったけれど、それでも歩みを進めて目的の場所に向かう。
少しの間、木で作られた廊下に足音を残して歩みを進めていると、アカハさんは突然声を発した。
「後少しまっすぐ歩けばアルダードラの部屋がある。そこまで案内するが、一度だけしかせん。後は自力で覚えろ」
「あ、はい」
「アルダードラ殿の……部屋ですか」
アカハさんは戦闘を仕切る様に歩みを進め、その足取りで前に向けてすっと指を指す。肉付きが少ししかない骨と皮しかなくなった枝のような指を出し、自分の前に向けて指を指すアカハさんのことを見て、言葉を聞いて私は歩みを進めながら頷きを示す。
親鳥の後ろを必死について行く小鳥の様に必死になって歩んでいると、アカハさんの言葉を聞いたヘルナイトさんは一瞬だけ疑念のそれを零してアカハさんの後頭部を見下ろすように見ると、ヘルナイトさんはアカハさんに向けて言った。
「部屋と言う事は、アルダードラ様はまさか、ここに住んでいるのですか?」
「まぁ、そうだな。住んでいるな。特例で」
ヘルナイトさんの言葉に対してアカハさんは少し濁りのそれを零すと、その後でヘルナイトさんの言葉に対して肯定のそれを言った後歩みを止めて、アカハさんは自分の左にある障子戸に視線を移すと、アカハさんはその障子戸と向かい合い、その戸を見つめながらアカハさんは言った。
特例――その言葉の答えになるヒントを零しながら……。
「特例と言っても、結局は御守を任されてしまっただけのことなんだが」
「? 御守」
「疑念を抱くのであれば、その眼で見た方が早いかもしれん」
ヒントに聞こえてしまうアカハさんの言葉にエドさんが首を傾げながら質問をすると、アカハさんは溜息交じりの言葉を零し、そのまま障子戸に手をかけると、アカハさんはそのまま勢いをつけるようにその障子戸を『――すぱぁんっ!』と開けた。




