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PLAY105 腹を括ってお話しましょう⑥

「知らん。そんなこと一度も聞いたことがない。なんなんだその『あの場所』と言うのは」


 デュランははっきりとした音色でヘルナイトに向けて言った。


 嘘も偽りなどないはっきりとした音色を聞いた瞬間、ヘルナイトは一瞬驚きのあまりに硬直をしてしまい甲冑越しで口を開けそうになったが、そんなことをしていることよりもヘルナイトはデュランに向けて言葉を発した。


 ヘルナイトらしくない荒げと慌ての声を発し、横に前のめりになると己の横で片手を地面につけながら彼は聞いた。


 もしかしたら忘れている可能性が高い。そしてまだ記憶が戻っていない可能性が高いかもしれない。


 そう思いながらヘルナイトはデュランに向けて、一抹の希望を求めるように食い気味に聞いた。


「な……っ。知らないのか? 本当に知らないのか?」

「ああ知らん。そんな言葉聞いたことがない」

「忘れているだけだとか、あとは思い出せていないだけではないのか? あのお方……、サリアフィア様と『あの場所』と言う言葉を聞いて、何か来ないか?」

「いいや来ない。どころかあのお方のことを聞けばすぐにでも引っかかりを感じるものだ。違和感ではなく記憶の引っ掛かり。それはお前も分かっているだろう?」

「ああ、それは私も理解している。どころか体験しているから言うまでもないが……、そうではない。本当にこの言葉を聞いても思い出せないのか? 何か懐かしいような、そんな感覚は」

「くどい。くどすぎる。そんなもの感じているのならばすでに思い出している。頭部が舞い幽鬼の我であろうと、頭が無いだけでそんなに鈍感ではない。むしろ記憶に関しては敏感だ」

「そう、か」


 食い気味で聞いたヘルナイトに対し、デュランは少し驚きながらヘルナイトのことを見下ろして返答をする。


 勿論嘘も偽りもない返答で――


 しかしそれを聞いたとしてもヘルナイトは聞き終えることをしない。どころか追及するように面持ちで聞く始末。


 ヘルナイト自身ここで終わればよかったのかもしれないと頭の片隅で思っていたが、彼自身それで終わればいいと思えなかった。本心がそれを拒否した。ゆえに彼は本心の思うが儘に聞いたのだ。


 サリアフィアが己に向けて言ったあの言葉――


()()()()で――待っていてくれますか?』


 彼女――女神サリアフィアが言った『あの場所』が一体どんな場所なのかを知るために、ヘルナイトはきっと同じことを言われたであろう『12鬼士』のデュランに向けて聞く。


 ――が、デュランの返答は変わらず、『知らない』の一点張り。どころかその言葉に対しても引っかかることがないところを見て、ヘルナイトはそれ以上の追及はしなかった。


 これ以上の追及をしてもデュランは知らないのだから仕方がない。そう思ってヘルナイトは頭を落とし、はたから見る落胆のそれを見せた。


 何度も話すが、彼等は『終焉の瘴気』に敗北した結果その瘴気の影響で記憶を失ってしまっている。


 要は記憶喪失のようなものになっていることは理解しているだろう。


 しかし彼等『12鬼士』も少しずつではあるが記憶を思い出してきている。


 そのことに関して言うとヘルナイト達自身が驚いていることは伝えておこう。何せ今まで一人で行動してきた時よりも格段に頭痛の回数が増え、少しずつではあるが着々と思い出しているのだ。嬉しい無理もない話だ。


 今まで一人で行動してきた時よりも格段に記憶の修復が進んでいる理由に関して言うと、一人ではなく仲間と一緒に旅をして行き、そして巡る場所を見てきたことで思い出しているのかもしれない。


 特に、仲間たちが話す言葉、巡った場所を見て、聞いた瞬間に脳に衝撃が走り――その影響で思い出しているのかはわからない。


 だが確実に言えることは、ヘルナイトはハンナ達と出会い、そして彼女達と一緒に行動していく中で確実に思い出す量も増えていき、どんどんと『終焉の瘴気』が来る前の自分と言う存在の記憶を、サリアフィアと言う存在のことを思い出している。


 思い出しているからこそ、新たな疑問も増え、そして焦りを覚える。


 だからこそヘルナイトはデュランに聞いた。


『あの場所』、そしてサリアフィアの名を聞いた瞬間に懐かしいそれを感じ、それと同時に何かを思い出すのではないか。そんな一抹の希望を、弱々しい吉報を抱きながら聞いたが……。


 結果――なんにも感じてない。どころかデュランはその二つの単語を聞いても何もわからないということを言い切った。


 つまり――知らない。


 その言葉を聞いてヘルナイトは落胆をしたが、それと同時に新たな情報を入手することに成功し、そして疑問が少しだけ確信に近付いた気がした。


 デュランはサリアフィアから『あの場所』のことを聞いていない。と言っていた。それは紛れもない事実でもあり、思い出せないのではなく聞いていないのだから無理もない話だ。


 しかしそれは新たな真実を指し示すことにもつながる。


 簡単なこと。


 それはサリアフィアが言ったあの言葉は――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 他の『12鬼士』には聞いていない。デュランしか聞いていないが、その確率は十分にあるだろう。まだ確証はないが、それでもこの確率がかなり有効だ。


 なにせ記憶の中でサリアフィアは()()()()()()()()()()()()この言葉を言い放ったのだ。その可能性は高い。


 ――だが……。


 と、ヘルナイトは一通り可能性めいたことを仮説した後、すぐに新たな疑問めいたことを思い、その疑問に対し彼は率直に思った。


 素直な気持ちで、今まで前のめりであったその姿勢を元の座る体制に戻し、考える仕草でもある顎に手を添え、唸るような声と共に背を少しだけ曲げてから彼は思った。


 疑問を抱いた。


 ――なぜサリアフィア様は、私にだけそのようなことを……?


 そう思いながらヘルナイトは首を傾げそうになったが、その行動を遮る様にデュランがヘルナイトの名を呼び、『どうしたんだ?』と言う声を掛けてきたので、ヘルナイトはその声を聞いて今の今まで思考の海に使っていたその気持ちを現実に戻し、デュランのことを見上げて「何でもない」と言った後でヘルナイトは崖の付近であるにも関わらず流れるように……、その場所がまるで崖であることを忘れさせるように立ち上がると、ヘルナイトはデュランに向けて言う。


 今までの思考を頭の片隅に入れながら――ヘルナイトはデュランに向けて言う。


「すまないな。突然あんなことを聞いて」

「! いや構わない。どうせこんな体なんだ。この体ならば寝なくともいいからいい暇潰しになった」

「そうだな。確かに、私達は寝なくともいい種族だったな」

「特に我は幽鬼。夜という時間帯の方がいい心地だ。幽鬼であるがゆえに夜という時間は我の力が増大し、心なしかこの時間が居心地がいい。寝るという行い自体いらん存在だ」


 ヘルナイトの謝罪を聞いたデュランは一瞬驚きのそれを浮かべてヘルナイトのことを横目で (顔はないが、デュランはそうしているのでその表現にする)見るが、デュランはヘルナイトの口から零れたその言葉に対し反論をすることもなく、どころかそれを受け止める姿勢を腕を組んで前を向くという姿勢で表してその言葉を受け止める。


 さり気に己の体の仕組みのことを言いつつ、暇潰しになって助かったということを付け加えて。


 実際、ヘルナイトのアの言葉を聞いた時デュランは正直なところ『何を言っているんだ?』と言う面持ちでいたが、ヘルナイトの珍しい食い気味の面持ちに、『これはふざけているわけではないな』と思ったが、ヘルナイトがそれ以上聞かなかったので、デュランもそれ以上のことを聞くことをしなかった。


 記憶の話云々が出てきたところから見て、きっと自分の記憶に関して違和感を覚えたのかもしれない。


 それはデュラン自身体験したことがあるのでその気持ちに関してわからないという気持ちも、その記憶が何なのか。その記憶が何なのかと言う嫌悪も焦りも分かる。


 ゆえにヘルナイトの食い気味の言葉に関しても追及どころか受け入れることにし、デュランはそれ以上の話を変えるように己の話を切り出したと言う事だ。


 その切り出しにヘルナイトは思い出したように頷くと、デュランは胸を張るように己の記憶の中にある種族のことを――幽鬼魔王族のことを誇らしげに言う。


 幽鬼魔王族は水属性の技が苦手であるが、夜という時間が力が上がること。そしてヘルナイト達のようにずっと眠らなくてもいい事をヘルナイトに告げた。


 キクリで言うところの――光と闇を司る天魔魔王族は満月が出ている時こそが力を発揮するのと同じように、デュランと言う幽鬼魔王族は夜という時間こそが己の力を発揮することができるという事。そのことをヘルナイトに告げたデュランは鼻で笑う様なそれを零した。


 その言葉を口で並べているが、心の中では少しだけ驚きを感じながらデュランは思っていた。


 今までヘルナイトの強さと言う者に対して憤りを、焦りを感じていたのが嘘のような清々しい感情だ。こいつと一緒にいるだけで、こいつの強さを見続けてるだけで憤っていたのに。


 今は、そんな感情など湧かない。どころか普通に落ち着いているような、そんな感情だ。


 そう思いながらデュランはヘルナイトと話をしていた。心に渦巻く赤くどろどろとした感情を一切感じない状態の中で……。

 

「どうした?」


 すると、今まで無言になった状態で眼下に広がる街『フェーリディアン』のことを見下ろしていたのだろう。ヘルナイトがデュランに向けて声を掛けてきた。


 その声を聞いてデュランは「お」と驚くような小さな声を零し、声を掛けてきたヘルナイトに向けて視線……と言っても彼の場合頭がないのでヘルナイトのことを見ているのか定かではない。しかし彼は上半身を少しだけ回し、胴体をヘルナイトに向けるように動かしているので首を動かしているのだろう。デュランは上半身を斜めにしてヘルナイトに向けると、デュランはヘルナイトに向けて言う。


「…………、何でもない。ただ少しだけ考え事をしていただけだ」


 突然聞かれたことによる反動なのか、もしくはいつもの癖なのか、デュランは少しだけ怒りが含まれているような声を放つ。


 デュランの言葉を聞いたヘルナイトはデュランの言葉に対し少しだけ苛立ちを覚えることもなく、どころか普段通りの顔で安心しているのか、安堵のそれと共に「そうか」と言ってヘルナイトはデュランから視線を外し、眼下の『フェーリディアン』を見下ろした。


 ヘルナイトの視線を外した光景を見て、デュランもヘルナイトと同じように眼下の『フェーリディアン』を見下ろした。


 夜という生きとし生きる者が脳の休息を行う時間帯。人が眠るという時間帯であるにも関わらず、『フェーリディアン』の街の人々は夜という街を堪能している風景が目に写る。


 酒を飲み交わす若者。


 冒険者の憩いの場所でもあるバーを営んでいる店の光。


 そしてその中でワイワイと楽しくおしゃべりをしたり飲み交わしたりする声。


 まるで今の現実世界を異世界風に投影されたかのような風景が魔王族二人の目に写り込む。


 一見して見ると平和そのものの光景。しかしこの街の裏を知ってしまった二人にとって、その光も、賑やかも偽りに思えて悲しくなってしまう。いいや――悲しくではない。


 この街の闇を知らない人達がかわいそうだ。と、そう思ってしまう。


 裏で行われていることがあまりにも残酷で、一見して見るとバトラヴィア帝国を縮小したかのような光景。そんな光景を見ている二人にとってすれば、この街の真実を知らない街の人達があまりにも可哀そうでならなかった。


 ゆえに可哀そうだと、そう思ってしまったのだ。


 そう思いながらヘルナイトは甲冑越しにそっと目を伏せ、この街の対処をどうするべきかと思考を巡らせようとした時――突然デュランはヘルナイトに向けて言い放った。


 いいや、聞いてきた。


「なぁ――貴様は何故、旅を続けている?」

「? 何故……だと?」


 唐突にして突拍子もなく、どころか当たり前のようなことを聞くデュランに対し、ヘルナイトは腕を組んだ状態でデュランのことを横目で見て、その後でヘルナイトは即答と言わんばかりのそれで――


「言うまでもないだろう。それにデュラン――お前だって知っているだろう? 私が」


 と言うと、ヘルナイトの言葉が最後まで言い終わる前にデュランは彼の言葉を遮る様に「そうではない」と言い、デュランは胴体を斜めにしてヘルナイトのことを見ているような動作を行う。


 頭のないデュランではあるが、その視線を、真剣なそれ感じたヘルナイトはデュランの言葉を待つと、デュランはヘルナイトに向けて言葉を並べる。


「貴様は確かに我も認めてしまう強さを持っている……、二つ名の最強の鬼士だ。あの詠唱を……、橙の退魔魔王族が引き継ぐはずの二つの詠唱に選ばれた。『12鬼士』の詠唱と、そして()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………ああ。元々あの詠唱は――」

「みなまで言うな。詠唱は人を選ぶ。我々が詠唱を選ぶわけではない。名のある武器がそのものを選ぶのと同じだ。仕方がない事だ」

「……そうだな。そのことに関しては師匠からも、兄上からも言われた」

「あぁ、あのお方か……。なるほど。さて――話を戻すと、お前はそんな強い詠唱に選ばれた。サリアフィア様からの加護も受けてきた。それは我も同じでもあり、あの奇面も、キメラプラントもキクリもみな同じだ」

「デュラン……?」

「だからこそ、サリアフィア様のことを第一に考えることは当たり前だ。あの厄災以外はな」

「………………………」

「それで我は思ったんだ。貴様と共に、一時だが行動をしてきてこんなことを思ったんだ。ヘルナイト――」



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()



 デュランの言葉は夜の世界と言う二人の空間内に静かに、竪琴の様に柔らかく響いた瞬間、その音をかき消すように雑音()が彼等に襲いかかり、ヘルナイトのマントを大きな音を立てさせるように靡かせる。


 靡くと同時に枯れ葉が宙を舞い、そのまま夜空の世界へと飛んで行く光景がヘルナイトとデュランの視界に入り込むが、そんなことお構いなしにデュランはヘルナイトの言葉を待つ。


 なぜそこまでして小娘――ハンナに対して肩を持つのか。


 サリアフィアと瓜二つでもある存在に対して、何を抱いているのか。


 その答えを知るためにデュランは聞く。


 デュランの言葉に対してヘルナイトは甲冑越しで驚きのそれを示していた。しかしそのあとすぐに平常の顔へと戻り、デュランに向けて言葉の返答を返した。


 いつもと同じように、凛としている音色で――彼は答えた。


「肩を持っているのではない。私が、私自身が彼女の傍にいることを決めたんだ」

「……お前自身が?」

「そうだ。私自身がそうしているだけだ。肩を持つなどと言う強請(ゆすり)などはない」


 ヘルナイトのあまりにわかりやすいが曖昧にも感じてしまう様なその返答に、デュランは一瞬拍子抜けをしてしまったような面持ちになってしまう。顔はないが、その顔を浮かべるとデュランの見えない顔と声を聞いてヘルナイトは頷き答える。


 だが、それでも納得がいかないのも事実であり、そこで『はいそうですか』と言えるほどデュランはヘルナイトの言葉に対して理解ができなかった。


 ただ自分自身の判断でそんなことをする。サリアフィアのために彼女とただ行動しているのでなく、その子と一緒にいる時間でさえも大切であるようなその言い草に対し理解ができなかった。


「あ、いや――そんなことを聞いているのではないが、なぜそこま」

「以前の私ならば、その返答に対してこう答えていたかもしれない」


 顔が似ているだけでそこまでなのか? そんな疑念が頭をよぎると、デュランはヘルナイトに再度聞くと、その言葉を言う前にヘルナイトは言葉を発し、デュランの言葉を今度は遮った。


 ヘルナイトは言う。


「多分だが、そこまで思い入れがなければ、私はその返答に対し『浄化を持っているからだ』と、非道なことを言ったかもしれない。記憶がない時――私だけでもと、私だけでも浄化しようと、自棄になっていた時期があった。もし浄化の力を持っている人がいれば、その人についていこうと思った。それで、サリアフィア様が救われるならと思っていた。結局それは……、利用しているほかならない。自分ではそう思っていないが、結局利用していると言われてもおかしくないな」

「ほほぉ……、今は違うと言いたいのか?」

「ああ、サリアフィア様のことを救いたい気持ちはある。だがそれと同等に、ある思いが強くなった」

 

 そう言ってヘルナイトは夜空に浮かぶ淡い光を見上げる。淡い光はヘルナイト達のことを暗くもなく、明るくもない光で照らし、少しだけヘルナイト達の足元に影を作っているが、それでもはっきりとしているものではない、ぼんやりとした輪郭の影を作っていく。


 そんなぼやけた輪郭の影を作っている光の主を――月を見上げながらヘルナイトは続きを言葉にした。


「あの子の……、ハンナの震える姿を見た時、思ったんだ。この子は何の力もない、心に傷を負った女の子なんだと。そんな子が浄化の力となる詠唱に選ばれた。それは名誉であると同時に枷になる。心に傷を負い、それでいてこんな命にかかわる様な使命を背負うことは、精神的にも大きな負担になる。私の様に心を鍛えていればいいかもしれないが、そうとはいかないのも事実だ」

「だからこそ、浄化を持つ女が死なないようにと言う事か?」

「いいや、そんな理由じゃない。私は、私の意志で行動しているんだ。ハンナの愛する人達を守りたい。ハンナを守りたい。あの子を守りたいと、私自身が強く……、そう思った。一人にさせないと――そう誓っただけだ」

「………………………守る、か」


 明らかに言葉にしてしまうと恥ずかしく感じてしまう様な言葉の数々。胸を張り、そして堂々とした面持ちで『守る』や『愛する人達』と言う言葉を口にして行くヘルナイトを見て、デュランはなぜか言っていないにも関わらず恥ずかしさが込み上げてくるような感情を抱いてしまう。


 ――こいつは本当にさらりとこんなにも恥ずかしいことを言える精神力を持っているな……っ!


 と、心の片隅でそんなことを思い、それと同時に呆れるような息を零した後デュランはヘルナイトのことを見て聞く。


「それでは、あの小娘に対して肩を持つのは……」

「ああ――私の意志だ。肩を持っているのではなく、私の意志であの子のことを守っているだけだ。勿論――ハンナの大切な人達のことも守るためにな」

「……それは、我も含まれているのか?」

「………………………。……………」

「考えるな考えるな阿呆っ! 真剣に考えずに『お前は強いから例外だろう』とかそんな感じであしらえっ! 聞いたこっちが恥ずかしくなってくる! 真剣に考えるな堅物めがっ!」

「そうか……。なぁデュラン」


 と言い、「あーっ! 恥ずかしい思いをしたっ!」と一人で言ったことに対して後悔と言う名の羞恥を抱いているデュランに対し、ヘルナイトは徐にデュランに向けて左拳を突き付け、その拳を見たデュランは「あ?」と、怒り交じりのそれで言うと、ヘルナイトはデュランに向けて言う。


 凛としている――『12鬼士』の団長らしいその面持ちで、ヘルナイトは言った。


()()()……。本当に万が一のことがあった時、力を貸してくれないか? 勿論このことに関してはトリッキーマジシャン達にも言おうと思っている」

「力を……?」

「ああ、前回私達は『終焉の瘴気』に対して黒星を与えられてしまった。それは大きな痛手でもあると同時に、今回の討伐……、浄化は犠牲無しでできることではない。もしかしたらという可能性も高い。そうなってしまったらハンナを、ハンナ達を守ることができなくなってしまう。だから」

「みなまで言うな」


 と、ヘルナイトの最後の言葉を言う前に、デュランは突きつけられたその拳に己の拳を『ゴツンッ』とぶつけ、そのぶつけの衝撃をその手で感じながらデュランは言う。


 心の中で――それ以上のことを聞いてはいけない。と思い……、その直感に従ったことに対し後悔がないそれを浮かべながら、デュランは言った。


 はっきりとしつつ、堂々と胸を張っているその面持ちで、デュランは言った。


 いつぞやか抱いていた強さへの執着もない。清々しく見えるようなそれで、デュランは言う。


「そんなことを言う暇があるならそれ以上に強くなればいいだろう? 貴様の強さは未知数だが、その強さの成長は止まっていないんだ。そのことを頼む暇があるなら鍛錬修練に明け暮れろ。まぁ――貴様が言うのならば、貴様がいない間だけは御守を行っておくがな?」


 デュランの言葉を聞いて、ヘルナイトは一瞬だけ驚きのそれを浮かべた。


 それは自分が言おうとした言葉を理解していたことに対し、心を読んだのかという驚きでもあるが、それと同時にデュランに言われてしまうとはという驚きも相まって、ヘルナイトはそれ以上の言葉を言う事を忘れてしまった。


 言おうとしていた言葉も忘れてしまうほど、呆気に取られてしまった。


 だがその呆気もすぐに解かれ、ヘルナイトはデュランの言葉を汲み取る様にふっと小さく笑うと――ヘルナイトは小さな声で感謝の言葉を口にする。


 宵という夜空を背景にお互いの拳を打ち付けた状態で……。



 ◆     ◆



 お互いがお互い心に秘めた思いを打ち明け、そして和解をし、悩み、誓い合った濃密の夜。


 その打ち明けがこの先の未来に何をもたらすのかは本人達も分からない。


 ただこの打ち明けが、彼等の足を動かすきっかけになってくれることを。前に進む一歩になることを願いたい。




 後に来るであろう――ボロボを壊す元凶達との戦いの支障にならないように……。




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