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PLAY11 頼みごと②

 ……そのような会話から少し遡り。



 □     □



「「「『腐敗樹』のアンデッド討伐!?」」」


「そうだ」


 ヴェルゴラさんの話を聞いて私達は驚いた声と言うか、何でそんなことをという念を込めた驚きで声を上げる。


 今私達は、互いの顔を見合わせながら席に座っている。


 私が真ん中で、キョウヤさんが左でアキにぃが右。


 正面には私から見て右から……、ロンさん、ヴェルゴラさん、みゅんみゅんちゃんにメィサさんが座っていて、みゅんみゅんちゃんはもう既に疲れたような顔をしてメィサさんにされるがままになっていた。


 頭を撫でられたり、後はほっぺをムニムニされたり……。


 ……やり方は愛玩(あいがん)動物と同じ。

「そのアンデッドの討伐で、ハンナの力を借りたいんですか?」


 そうアキにぃが聞いて……、続けてヴェルゴラさんにこう聞いた。


「あなた達は自分の所属をわかってないんですか?」

「……いや、わかっているつもりだ」


 アキにぃ……。なんだか挑発的だよ……。


 そう思っていると、ヴェルゴラさんはロンさんを指さして――


「先ほど話した通り、ロンは戦士所属。私は騎士の『ヴァルギリー』。メィサはエクリスターなんだ」


 順々に指をさしながら言っていく。


 私はそれを聞いて、内心「え?」と、疑問を抱いた時……。


「なら得意分野じゃないすか」と言う声が聞こえた。


 そう言ったのは、この場を和ませようと笑顔を振りまいているキョウヤさん。


 キョウヤさんは少しテーブルに前のめりになって、メィサさんを見て言う。


「エクリスターって浄化系のスキルがスゲーって聞いていますよ? それって今回のアンデッド討伐、かなり経験値丸儲けじゃないっすか?」


 その言葉に私も頷く。


 でも……。


「……そうとも限らないのよ……」

「「?」」


 みゅんみゅんちゃんは頭を撫でられながら気怠そうに反論した。


 それを聞いて、私とキョウヤさんは「はて?」と言う感じで首を傾げていると、アキにぃはみゅんみゅんちゃんを見て、怪訝そうな顔をして聞く。


「それはどういうことで?」


 すると、その言葉に対して返答したのは……。


「それが、私だけでは捌けないのよね……」


 メィサさんだった。


 メィサさんは困ったような表情で笑い、そしてみゅんみゅんちゃんを解放しつつ、メィサさんは言う。


「そのアンデッドなんだけど、この先の『腐敗樹』では結構出現率が多くて……、エクリスターやメディックにとって格好のレベル上げの場所なんだけど……」


 それを聞いていたロンさんが、少し舌ったらずで、それでも何とか話そうと努力しながら、ロンさんは言った。


「そこ、変。なにか変だ」

「何かって、何が……、ですか?」


 そう私が聞くと、ヴェルゴラさんは少し俯いて、私達に言った。


「『腐敗樹』に出現するアンデッド系の魔物が、()()()()()()()んだ」

「異常……?」


 私がまた首を傾げ、そして少しだけ不安を抱くような言葉を放ったヴェルゴラさん。


 ヴェルゴラさんは続けて言う。


「この世界の冒険者や受付の人に聞いた話だと、ここ近年、アンデッド系の魔物の出現率が大幅に跳ね上がっているそうだ。しかも生態系比で言うと……。アンデッド一に植物系四、そして変異種……スライムのようなものだな。それが一なのだが……、最近ではアンデッド六に植物系二、変異種一というそれなんだ」


「……明らかに生体崩れていますね……」

「それと同時に、『腐敗樹』を根城にしている人影を見たという情報もある」


 ヴェルゴラさんは重ねてそう言うと、アキにぃは何を言っているんだという目を伏せた状態でこう言う。


「いや、それは当り前じゃないですか? そこで討伐があって、しかも何日も経たないとできないようなところなら、それは野営のキャンプでも持っていけば」

「できない」


 そうはっきりと答えたのは、ロンさん。


 私達はロンさんを見る。


 ロンさんは口を噤んだ状態で、私達を見つめながら言葉を待っている。


 それを見ていたアキにぃは……。


「……よく、はっきりと言えますね……? あなた、俺より年下でしょ?」


 ニコッと微笑んでいて、それでいて優しい音色で言うのだけど……。なんだろう、なぜか黒いもしゃもしゃがアキにぃの周りを包み込んでいる。


 それを見ていたロンさんは「ひぃっ!」と驚きながら青ざめて、椅子から立ち上がりそうになった。


 私はアキにぃの服を引っ張って……。


「アキにぃ……」と、少しおどっとした音色で言う。私自身怖いと思ったから、声をかけても大丈夫なのかと心配してのそれである。キョウヤさん達も青ざめながら見ていると……。


 私を見降ろし、アキにぃは私を黒い笑みで見た。


 アキにぃはその表情のまま私の頭に手を置いて……。


「大丈夫だよ。あれは社会のスキンシップだよ」と黒いもしゃもしゃを無くしたアキにぃは、ニコッと微笑んで言う。


「いや、それ社会の脅しだからな……。ハラスメントね。ハラスメント」


 キョウヤさんが何かを言ったような声が聞こえたけど、小さかったのでよく聞き取れなかった……。


 アキにぃから黒いもしゃもしゃが消えて安心した私は、ぎこちない笑みで控えめに微笑んで……。


「そっか……」と言った。


 ロンさんを見て私は――


「悪気はないんです。ごめんなさい。怖い思いをさせて……」


 と、頭を下げて謝る。


 頭を上げてロンさんを見ると、ロンさんはおどおどと手を振って、顔を赤くしながら何かを言っていた。でもその言葉は、日本語ではなかったので、よくわからなかったけど……。


 メィサさんは私の名前を呼ぶ。私はメィサさんを見ると、メィサさんはニコッと微笑んで……。


「『俺は全然平気だよ』って言っているの。だから大丈夫」


 と言った。


 それを聞いて、私はほっと胸を撫で下ろす。


「あー……、ところで話を戻しますけど……」


 キョウヤさんは頭を掻きながら安心しつつ、そしてヴェルゴラさんに事の詳細を聞く。


「なんでできないってはっきりと言えるんですか?」

「……あそこは、何日もいられるような環境ではないからだ」 

「何日も……?」


 キョウヤさんは訳が分からないような疑問の表情を浮かべ、私が疑問の音色で聞くと、みゅんみゅんちゃんが答える。


「あそこは木々や草木が腐って、とてもじゃないけどそこをダンジョンとして指定したことを後悔している国のお偉いさんがたくさんいるくらい……、あの『腐敗樹』は、生命が長く住めるようなところじゃない。たった二日調査に向かった人達が、喉が完全に腐っていたらしいの。鼻腔や口腔……空気を取り込む箇所全部。他は無事なんだけど、それでも喉がやられたから、声すら出せない……。って、受付の人が言っていたわ」

「……どの場所でも、受付の人は優しんだな……」


 みゅんみゅんちゃんの言葉に、キョウヤさんは受付の人達を見ながらしみじみと思い、そしてありがたい目で見ている……。


 確かに……リオナさんもそうだし……、ナーヴェヴァさんも優しい人だった。


 受付の仕事をしている人は、誰でもやさしいのかな……? 私はそう思った。


「しかし今では、そのためのマスクが売られている。空気を即座に洗浄できる『空気浄化』の瘴輝石入りのマスクだ。毒霧やいろんな悪循環なところで使える代物だそうだ。それを使えばいいが、その人物は、マスクなんてつけていない。だからこそ……、変で、怪しいんだ……」


 そう言って、ヴェルゴラさんは「しかし……、これは俺の憶測だ」と付け足して、更に付け足すようにこう言う。


「その『腐敗樹』のところで、ロンがアンデッドの討伐を受けてしまったということだ」


 と言って、ヴェルゴラさんはロンさんの肩を叩く。ロンさんは相当反省しているようで、俯いて小さい声で申し訳なさそうに……。


「……すみま、せん」とメィサさんに向かって謝った。


 それを聞いたメィサさんは笑みを浮かべて「いいのよロン。あなたすごく正義感強いから。なんとなーくそう思っていた」と、慰めているように聞けるけど、それでも……、悪気はないみたいだけど、抉るその言葉に、ロンさんはがんっとショックの顔をして、また俯いてしまった。


 それを見ていた私達は、言葉を挟むことができなかったけど、アキにぃも流石に可哀想と思ったのか、キョウヤさんを見ながら……。


「あ、そういえば……。キョウヤが受けたそのクエストって……二つとも『腐敗樹』でできるクエストだよね……?」

「うん? う…………、あ…………。おー…………」


 アキにぃの言葉を聞いて、ぎょっと驚いたキョウヤさんだったけど、すぐに思い出しながら首をひねって、そして思い出して、うなだれた頭を手で支えながら、後悔するかのように、頭を抱えだした……。


「キョウヤさん、そのクエストって……?」


 私が聞くと、キョウヤさんは荷物からそれを取り出す。それはどれも赤の討伐の魔導液晶(ヴィジョレット)で……、キョウヤさんはその二つを開く。


 開いた魔導液晶(ヴィジョレット)を、まずは私達に見せるキョウヤさん。


 その内容は……。




 クエスト名:パンプキング五体討伐。

 期限:受理してから三日。(残り三日)

 報酬:五万L。

 補足:なお、目標討伐以上を倒した場合は、それ相応の報酬を設ける。目標討伐+一体とすると、五万+一万とし、+一体で一万Lの追加報酬を設けることとする。

 

 クエスト名:マンドピート三体討伐。

 期限:受理してから三日。(残り三日)

 報酬:十万L。

 補足:目標討伐以上を倒した場合は、それ相応の報酬を設ける。目標討伐+一体とすると、十万+五千とし、+一体で五千Lの追加報酬を設けることとする。尚、マンドピートの足を入手した場合は、必ずギルドで換金すること。


 


 それを見た私達。


 キョウヤさんを見ると、キョウヤさんは頭を下げて、その下げた頭の上で手を合わせている。


「……何も考えずにすまん……。まさかそんなところだとは……っ!」


 真剣な音色から察するに、キョウヤさんはすごく申し訳なく思っていたのだろう……。それを見て私は手を振って、「いいですよ……。そんな」と謝らないでと促す。


 アキにぃは魔導液晶(ヴィジョレット)から目を離さず見ていると……、顎に手を当てて、少し考えてから口を開いた……。


「でも、これは倒せば倒すほど追加報酬が見れるシステムなんだ……。これはかなり儲かる気けど……、この必ずギルドで換金って……、何か理由があるのかな……?」


 そう言うアキにぃだったけど、それを聞いていたキョウヤさんは顔を上げて……。


「あ、いやな、それを聞こうとしたら、誰も口を開かなかったんだよ……」

「? なんで……?」


 キョウヤさんの言葉に、私もなぜと思いながら首を傾げていると、それを見ていたのだろう……。ヴェルゴラさんがすっととあるものを私達の前に見せてきた。


 それを見て、私たちはヴェルゴラさんを見る。


「――これが俺達が受けたクエストだ。こちらから協力申請したのに、クエストの詳細を見せないというのは、割に合わないだろう?」


 と言って、ずぃっとそれを見せてくるヴェルゴラさん。


 私達はその押しの強さに驚きながらも、アキにぃはそれを受け取る。


 それは赤い魔導液晶(ヴィジョレット)だ。


 つまりは討伐。


 アキにぃはヴェルゴラさんを見る。ヴェルゴラさんはすっと見ろと手で促すと、アキにぃはそれに目を通し、私はアキにぃの横から覗くように見て、キョウヤさんは立ち上がってみる。


 そこには、こんなことが書かれていた。




 クエスト名:アンデッド系統十五体討伐。

 期限:受理してから五日。(あと三日)

 報酬:七万五千L

 補足:アンデッド系統すべてを対象。そして追加報酬として、+一体で千Lとする。




「割に合わなくねっ!?」


 と、キョウヤさんは驚きながら言うと、メィサさんはそれを聞いてふふっと微笑みながら首を振って――


「確かに割には合わないと思うけど、今大量発生して、なおかつアンデッド系統すべて対象でしょ?」


 くすっと微笑んで、口元に指を添えながら言う。大人の魅力を感じるような、そんな表情と余裕の笑みで……、私達に言った。


「エクリスターなら浄化系のスキルで何とかできる。でもMPの問題もあるから、そんなにできない。エーテルだってあまりないし……、でもお金を稼ぎたい。だからみゅんみゅんちゃんが提案したのよ。誰かと徒党を組もうって。報酬は分けることになってしまうけど」


 そう言ってメィサさんはみゅんみゅんちゃんを見る。


 私達も見ると、みゅんみゅんちゃんはふっとそっぽを向いてしまった。


 それを見て、私はくすっと微笑んでいまう。


 何も変わってないし、いつものみゅんみゅんちゃんだ……。そう思いながら……。


「…………それにだ」


 ヴェルゴラさんは言う。私達を見ながら。


 私達はヴェルゴラさんを見ると、ヴェルゴラさんは私達が持っていた魔導液晶を指さして言う。


「そのクエストは、すべて『腐敗樹』でできるクエスト。もしかしたら、俺たちの力が必要になるかもしれない。ヴァルギリーの俺と、戦士ではあるが潜在能力はお墨付きのロン。エクリスターのメィサがいれば……。欲を言うと、これはWINWINの関係じゃないか?」


 その言葉を聞いて、アキにぃはうーんっと考えだし、私はキョウヤさんを見る。


 キョウヤさんは元いた席に戻りながらぶつぶつと呟き、何かを言っていた……。


「それは確かに……、数が多すぎることもあるし、それに半分だけど、たくさん浄化できればかなりの高額……、うーん……」


 キョウヤさんの話を聞きながら私はヴェルゴラさんを見ると……、ヴェルゴラさんは私をじっと見て……。


「これは君に聞いているんだ」


 と、鋭い声で言った。冷たい針が喉元に突き付けているような、そんな音色でヴェルゴラさんは私に聞いた。


「君はメディックだろう? なら、『浄化(ターン・アンデッド)』ができるはずだ。みゅんみゅんから聞いた。君のその『浄化(ターン・アンデッド)』はかなりの威力だと」


 そう言われてみゅんみゅんちゃんを見ると、みゅんみゅんちゃんは手を上げて、申し訳なさそうに「ごめん」と頭をちょっと下げて謝る。


 それを見た私は控えめに微笑みながら首を横に振るう。


「だからこそだ。今は早くこの場から脱出したいことが、俺の悲願でもあり……、夢でもある。俺はなんとしても、元の現実に帰ろうと、なんとか突破口を見つけ出そうとしている。もしかしたら、あの場所にRCの社員が化けたプレイヤーがいるかもしれないと踏んでのことだ」

「…………!」


 その言葉を聞き、私は今まで考えなかったことが、一気に頭に入り、情報になって蓄積されていった。


 確かにアップロード後は、プレイヤーには何回か出会った。


 でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 あの監視AIのレセやマイリィは一体どんなところで監視をしているのかわからない。


 前の時は関係者もプレイヤーに扮して、違法行為をしている人がいたら通達などをしていた。でも今はいない。でも、どこかにいるはずだ。


 そうヴェルゴラさんは考えているに違いない。と言うかそうなんだ。


 ……、今まで考えないようにしていたのかわからない。


 でも、今考えると、至極まっとうなものなのかもしれない。


 現実に残した人が心配なのは、当たり前なんだ。


 たとえそれが子供であったり、親であったり、家族であったり、そして……恋人であったり……。


 大事な人を残して、そしてRCの思うが儘にされるなんて……、死ぬかもしれないのに、そんなこと、させない。絶対にそんなことになりたくない。


 それが普通なんだ。


 私もおばあちゃんを残して、ここに来てしまった。


 ヴェルゴラさんのおかげなのか、それとも私が無神経だったのかもしれない……。


 おばあちゃんは今どうしているんだろう……。そう思うと今更ながら、心を痛める……。


 ずきっと、心が痛むと同時に……。僅かだけど、その『腐敗樹』にいる人物が気になりだした。


 好奇心と言うものではない。


 ただその人がもし、管理人か関係者だったら……聞き出せるかもしれないと踏んでのことだ。


 現実に帰る方法。


 そして理事長はなぜこんなことをしようとしたのか……。


 それが聞き出せるかもしれない。


 ……、この浄化を放棄するということは、この時頭にはなかったけど、聞ける範囲で聞いて、そのあとで通信手段があれば、おばあちゃんの安否を聞き、そして連絡を取って……、理解できないかもしれないけど……、おばあちゃんを説得したいと、私は我儘で思った。


 おばあちゃんやしょーちゃん達のことも心配だけど。


 愛着じゃないけど、これは、私の我儘なんだ。


 この世界を、救けたい。


 それは、今も変わらない……。


 そう思った私は……ヴェルゴラさんを見て、言った。


「――私は、その協力を受けます。一緒にクエストを受けましょう」


 そう言った時、みゅんみゅんちゃんは溜息を吐いていたけど、なんだろう……。怒っていないし、悲しんでもいない。強いて言うなら、「まぁ、そうなるよな」という仕方ないという表情のそれだった。


 メィサさんはそれを聞いて身を乗り出すように席を立って「ありがとぉーっ!」と笑顔で私に抱き着こうとしたけど、ヴェルゴラさんはそれを見てぐっとメィサさんの腰の服を掴む。


 ガクンッとなったメィサさんは「わたたっ」と腕をグルンッと回して、机にダンッと手を付けてからヴェルゴラさんをじっと見る。ヴェルゴラさんは私を見てから、アキにぃ達を見る。


 私もアキにぃを見ると……。


 アキにぃとキョウヤさんは驚いた顔をして私を見ていたけど、キョウヤさんは「しかたねーか」と頭を掻きながらまんざらでもなく言って……。


「そんじゃ、短い間だけどよろしく」と、ロンさんに手を伸ばして言った。ニカッと笑みを浮かべて。


 それを見て、ロンさんはおずおずと手を伸ばすとぐっとキョウヤさんの手を握る。


「よ。よろしく、おねが、しま」

「そういう時は固くなくてもいいんだぜ?」

「あ、おうっ?」

「まぁそんな感じ。あとは慣れだな。うん。オレだって英語苦手だったし。慣れれば何とかなるって」

「?」


 そんな会話をしながら話しているキョウヤさんとロンさん。


 アキにぃは少し考えながら唸り、そしてヴェルゴラさんを見て言った。


「わかりました……、ですが、俺達には()()()()()()がいるんです」

「!」

「その人とも話しておきたいんで、明朝に伝えます」


 アキにぃの言葉を聞いて、私は少し胸が熱くなった。


 嬉しかったからだ……。


「そうか……、確かに、話しすぎたせいで暗くなってしまったな。結果は明日の明朝だったな……。なら五時に聞こう」

「それで」


 がたりと立ち上がって、ヴェルゴラさん達と私達は一旦話を終えて席を立ち、そして宿泊の予約を入れる。


 そんな中、私はアキにぃの言葉にまだ心がどくどくと嬉しく高鳴っていることに驚きを隠せずにいて、嬉しくて頬がなんだか自然と緩んでいるような感覚に陥った。

 なぜなら……アキにぃが言っていたもう一人の仲間……。


 それって、ヘルナイトさん……。だよね?


「……ふふ」

「なに笑ってんのよ?」

「!」


 みゅんみゅんちゃんは私の顔を見ながら、意地悪そうにこう聞いてきた。


「もしかして……、そのもう一人の仲間って、すごい人なの?」


 そう聞いてきたみゅんみゅんちゃんに私は頷き、控えめに微笑んで少し自慢げに言った。



「――そう、すごく強い人なの」

 

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