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PLAY10 絵本の真実。そして再会④

「ハンナ! 何でこんなところにっ!?」


 ゴロクルーズさんを縛った鞭から手を放さずに言うみゅんみゅんちゃん。


 私はみゅんみゅんちゃんに駆け寄りながら「よかった……っ! 大丈夫だったんだね」と安堵の息を吐きながら言った。


 それを聞いていたアキにぃは……。


「へ? ハンナの知り合い?」


 素っ頓狂に、疑問の声を出して聞いてきた。


 私は走りながらもくるっと一回りして振り返って言った。


「うん。友達っ」


 と言って、すぐにみゅんみゅんちゃんの方を見て走る。


「みゅんみゅんちゃ」


 と、みゅんみゅんちゃんに向かって言ったのだけど……、私の言葉は最後まで紡がれることはなかった。


 みゅんみゅんちゃんは私に向かって駆け出して、彼女らしくないやり方をしてきた。



 みゅんみゅんちゃんは私に抱き着いて、抱きしめた。それはもう――ぎゅうっと。



「? ??」


 私はあまりに唐突で、それでいて彼女らしくない行動に驚いた。


 驚きすぎて、さっきのアキにぃのように人語を忘れかけた。


 でも……。みゅんみゅんちゃんはばっと私の肩を掴んで離れてから……。


「大丈夫だったのっ!? 一人で平気だったっ!?」

「あ、えっと」


 ……時折だけど、みゅんみゅんちゃんはお姉さんのような言葉になって、そして私達のことを心配してくれる。


 それは……、みゅんみゅんちゃん本人の意志でもあり、性格でもある。


 それを聞いた私は、そっとアキにぃ達の方を振り返りながら見て………、彼女に言った。


「うん。信頼できる人達がいるから」

「…………本当? なら……」


 みゅんみゅんちゃんはじとっとアキにぃ達を見る。私も一瞬見たけど、頭に疑問符が出るくらい、一瞬言葉を躊躇った。


 そう。


 アキにぃが体中を真っ白にしながら……、立ったまま気絶してて、それを見たキョウヤさんが肩を掴んで左右に振りながら「やばい顔になっているぞお前っ。あとあれそう言うあれじゃねえって! ああいうスキンシップッ!」と小さい声で言って慌てていた……。


 その光景を見てか、みゅんみゅんちゃんはなんだか敵意むき出し……、と言うかそれ以上近付いたら何かをするぞ的な、まるで暗殺者のような顔をしながら――


「……あれが、あんたの信頼できる人?」


 と聞いてきたので、私は、みゅんみゅんちゃんの言葉に、小さく……。


「うん」と頷いた。


 それを見て、みゅんみゅんちゃんは少し呆れていたけど、まんざらでもない顔で私を見て……、溜息を吐いてから。


「まぁ、あんたがそう言いなら、そうなんでしょうね」


 と言った。


 それを聞いた私は、みゅんみゅんちゃんの顔を見て「うん」と控えめに言って……。


「無事でよかった」と、言った。


 その顔を見たみゅんみゅんちゃんは、ぽかんっとして私の顔を見て……。黙ってしまった。


 私はそれを見て、なんだろうと思いながら……、みゅんみゅんちゃんに聞いた。


「……どうしたの?」

「いや……」


 みゅんみゅんちゃんは私の顔を見たままぽかんっとして……。その表情のまま私の顔をじっと見て、首をかしげながら……。口を開いた。


「ハンナ……。()()()()()()()()()


「?」


 そんな話をしている時……。


 ずり……。ずり……と、なにかを引きずる音が聞こえた。


 その音を聞いて、私は下を向く。みゅんみゅんちゃんも下を向くと……。


「お、お前……。ひどくないが……? 俺はただ、お金が足りなくて……」


 そこには……、ゴロクルーズさんがみゅんみゅんちゃんの足を掴もうとしているところだった。震える手で、はぁはぁと、荒い息をつきながら……。


 それを見た私は、どこか打ち所が悪かったのかと思っていたのだけど……、みゅんみゅんちゃんはそれを見て、私を少し離れさせた後……。


 足を持とうとしていた手を見て、すっと片足を持ち上げる。そして……。


「なに触ろうとしてんのよっ! こんの変態っ!」


 怒りながら言って、そしてゴロクルーズさんの手を踏み潰した。


 ごぎゅりと、それはヒールのところで思いっきり。


「おぐぅぅぅぅっっっ!」


 ゴロクルーズさんは唸る。そして痛みで震えながら耐えている。


「みゅ……、みゅんみゅんちゃん……っ」


 私は慌てて止めようとした時……。


 それを見ていたのだろうか……、シャイナさんが入ってきて、ゴロクルーズさんを見降ろしたあと、私達を見てニコッと微笑んで……、ごすっと彼の背中を踏みつけて……。言った。


「これで依頼達成ね」

「うぉい! 俺のこと忘れているあぁぉうっっ!」

「そうね」

「そっちもぉ!? でも癖になるようなあだだだだっっ!」


 みゅんみゅんちゃんもその言葉に頷きながら微笑む。もちろん、ゴロクルーズさんの手を踏みつけることも忘れずに。それを私はおどおどと、どうやって止めようと思いながら戸惑っていた……。


 でも……。なんだろう。この感じ。


 懐かしい……。


 それもそうだろう……。


 現実なら、しょーちゃんやメグちゃん。あとはつーちゃんもいて、みんなでワイワイと楽しんでいた記憶が、新しいのに古い気がしてくる……。


 こっちの生活は、まだ三日目なのに対し……、濃密な二日間を体験しているからか、懐かしいように見えてくる。


 そんなおばあちゃんのようなことを思っていると……。


「あ。そういえば報酬ね」


 と言って、みゅんみゅんちゃんは懐からとある()()を……。


 紙筒?


 それをシャイナさんの手を掴んで、持ち上げたと思ったら、その紙筒をシャイナさんの手の上ににトンッと置いて……。


「はい」と言って渡した。


 それを見たシャイナさんは……、あの時使っていたんだ。きっと気付くと思う。シャイナさんはそれを一回見て、みゅんみゅんちゃんの首を傾げているその顔を見たあと……。


「え、ええええええーっ!? いいのこれ!」


 と、顔を近づけて驚きながらみゅんみゅんちゃんに聞いた。


 みゅんみゅんちゃんはそれを聞いて、少し引きながらも冷静に言った。


「え? いいけど。だってそれクエストの報酬よ?」

「そうだけど……これ、あんた知って渡したのっ!?」


 そう、シャイナさんが驚くのも無理はないし、私も見て驚いてしまった。


 みゅんみゅんちゃんが私たそれは……、黒い紐でくるまって縛られている紙筒……。



 詠唱結合書なのだから。



 それを聞いていた他の人達も、私達の方をじっと見てなんだなんだと言わんばかりに見ている。


 中には……、なんだか鼻の下を伸ばしている人もいるような……。


 そう思っていると、シャイナさんはみゅんみゅんちゃんに向かって言う。


「それ私使えないみたいだし、ごみを渡すようなことをしちゃったかしら? なら別の」

「いやいや! あたし使える。使えるそれだった! でもいいのこんな高価なもん!」

「いいわよ。使えないものを持っているだけなんて、無駄なものをとっておいて、そのまま放置しているのと同じだもの」

「う」


 そう言って唸るシャイナさん。


 みゅんみゅんちゃんはゴロクルーズさんの手を足で踏みつけながらこう言った。


「これで依頼は終了。あとはこっちで被害にあった人達に渡しておくから」

「うーん。まぁ……。こっちは依頼を受けただけの関係だからいいけど……、とりあえずもらっておく」


 どことなく納得が言ってない様子だったけど、約束は約束。そう聞かせていたのかもしれない……。


 そう言ってシャイナさんは出していた牧師様を背中にひゅんっと戻す。


 そしてゴロクルーズさんを一回踏みつけてから出口に向かって歩き出して……。


「それじゃ、またね」とドアを開けて出ようとした時、ピタッと足を止める。


 彼女は振り返って私を見て言った。


「あんた、そいつと友達だったんだね」

「え? はい……」

「?」


 その言葉にシャイナさんはふっと……少し悲しい顔をしたけど、すぐににっと笑った……。


 でも、その顔はどことなく曇りがある笑顔。それでも笑って、シャイナさんが手を振って歩み出す。


 そして――


「――()()()()()()()


 そう言って、ギルドから出て行ってしまった。


 バタンッと閉まる扉が、まるで大きな隔てのように感じる……。


 それを聞いてみゅんみゅんちゃんは私の顔を見て、あれっという顔をして「どかした?」と聞いてきた。私はそれを聞いて――


「なんだろう……、一瞬だったけど」

「……何となく、言いたいことはわかる気がする」


 その言葉を聞いて、私は言葉にはしなかった。でも心には出した。


 シャイナさんのあの言葉……、感じられたもしゃもしゃは……。


 青くて、雨みたいなもしゃもしゃ。


 それは、悲しい何かを感じたそれだった。


 多分、みゅんみゅんちゃんもわかったんだろう。みゅんみゅんちゃんは人を見ているし、何を考えているのかを当てることがある。


 それは、どうしてなのかは教えなかったけど……、それでもわかってしまう。私も何となくだけど分かった。シャイナさんは何かを抱えている。悲しい何かを。


 それを感じた……。


「お? どうした黄昏て」

「「!」」


 と思った時、後ろから声が。


 振り返ると、そこにはキョウヤさんがいて、手には真っ白になっているアキにぃの手を引っ張って、それと大きくてパンパンに何かが入っている袋を手に持って来ていた。


「キョウヤさん」

「あんたの保護者?」


 みゅんみゅんちゃんはキョウヤさんを指さして聞くと、私は首を振って「違うよ」と慌てて訂正して……、アキにぃを指さした。


「あっちが私のおにいちゃん」

「お兄ちゃん? へぇ……」


 と言って、アキにぃを見るみゅんみゅんちゃん。みゅんみゅんちゃんは今なおなぜか放心状態になっているアキにぃを見て……。


「死んでない?」と率直に聞いた。


「死んでない……。と思う」

「そこは即答しようぜ?」


 アキにぃを見て違うと否定しなんだけど……、あまりにも生命反応がないアキにぃを見て……、私は段々自分に自信が持てなくなって……、だんだん声が小さくなっていく。


 それに対して突っ込みを入れたキョウヤさん。


 すると、キョウヤさんは私の肩をとんとん叩いて、私の手の上にそれをトンッと乗せた。


 それは――冒険者免許。


「あ」


 私はキョウヤさんを見上げると、キョウヤさんは頭を掻いて注意をするようにこう言う。


「自分で出したんだからよぉ。少しは自覚してくれよ。カードだしたんだしさ」

「う。ごめんなさい……」


 そうだ……。


 そう言えばあの時、みゅんみゅんちゃんと再会できたお陰で、そのことをすっかり忘れていた。そう思いながら私はキョウヤさんに申し訳なく思い、頭を下げて謝る。


 するとキョウヤさんは――


「反省したならよしだ。こっちも稼げてウハウハだし……。今度はしっかりしてくれよ――なんてったって、このゲームクリアの要なんだからな」


 私の頭をワシワシと撫でる。それも帽子ごと……。更には笑いながらもっとワシャワシャと撫でまくるものだから……、私の頭、くしゃくしゃになってしまうのだ……。


 う。髪が崩れる。


 それを聞いて、私はグワングワンする頭の状態で、キョウヤさんに聞いた。聞きたいことはその大きくパンパンになった袋のこと。それを指さして私は聞いてみた。


「あ、あの……、その袋……」


 そう聞くと、キョウヤさんは手に持っていた袋を見て、うーんっと考えた後、小さい声で……。


「ん? ああこれか? これな、さっきポイズンスコーピオンの素材を換金したら、所持金三万にさっきの五十万。んで、換金額が二十五万で、占めて七十八万Lが入った袋だ」

「に……っ!?」


 私は驚いて声を上げそうになった。キョウヤさんも驚いていたらしく……、焦った顔をしてキョウヤさんは言った。小さい声で……。


「そうなんだよ……っ! なんでも、あの尻尾が相当高価なものだったらしく……、オレ今こんな状況に置かれていることがコエーのなんのって……、MCOじゃ、換金最大一万だぞ? あの尻尾だけで二十万っ! 特殊討伐クエスト……、スゲーんだな……」


 そう言いながら青ざめているキョウヤさんに、私かコクコクと頷いて同意のそれを示す。


 するとみゅんみゅんちゃんは……。


「まぁそうよね。普通は、その反応が普通なのよね……」


 と小さく言った気がしたけど、その真意を聞こうとした時キョウヤさんはみゅんみゅんちゃんを見て……。


「ってか……、その子……」


 と、みゅんみゅんちゃんの目元を一瞥してキョウヤさんは言った。


「天族……、あ、でも、ハンナとは違うか。金色じゃねえ」

「?」


 と思い、私もみゅんみゅんちゃんの目元を見ると、確かにそうだった。


 MCOのアップデート前は、金色の目だったのに、今は違う。



 ()()なのだ。



 両目銀色の目で、他は何も変わってないのに、みゅんみゅんちゃんはそう言ったのだ。


「みゅんみゅんちゃん……、それ」

「? ああ、これ?」


 と、みゅんみゅんちゃんは目元を指で撫でながら言った。


「これね……。こうなってからこうなったの。まぁ冒険者免許にはちゃんと『天族』って書いてあるわ」


 ほら。と見せてくれた冒険者免許。


 それを見て私とキョウヤさんは見ると、確かにみゅんみゅんちゃんは天族と言うことが記されていた。


「そん時受付の人がさ、私のそれを見て目を点にして、受付の奥に呼び出されてひどい目にあったわ」

「私もだよ……。それで」


 と言いかけて私は思い出す。


 そうだ。その時からだ。


 私がこのゲームの世界の希望として選ばれた……。『大天使の息吹』に選ばれた。


「それで?」


 と、みゅんみゅんちゃんは肩を竦めながら聞いた。


「なに? ハンナがゲームクリアの要って」


 その言葉を聞かれて、私とキョウヤさんは顔を見合わせた。


 そして、やっとアキにぃが覚醒した。

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