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PLAY10 絵本の真実。そして再会③

「はぁ……オレ達が言い争っている間に……」

「あのおじいさん……、アムスノームの……」


 おじいさんと別れた後、私達は『腐敗樹』の前にある駐屯地ギルドに向かって歩いていた。


 キョウヤさんは背中に大きな尻尾の棘を背負って、アキにぃは両手からはみ出そうなくらいの甲殻や肉がついた甲殻を抱えながら歩いて、ヘルナイトさんから聞いた話を聞いて最初の言葉を言ったのだ。


 ヘルナイトさんも素材を抱えながらなんだけど、なぜか私は何も持っていない。


 ううん、持たされなかったの方がいいのかもしれない。


 なぜか私が持とうとした瞬間、アキにぃがそれを血眼で止めてきたところを見て……、アキにぃのその必死さを見て私は運ぶことをおそるおそるといった形で離した。


 離れた……、の方がいいのかも……。


 そして。


「というか、あたしはその話聞いたけどさ……、かなりシリアスじゃない?」


 と、後ろを歩いていたシャイナさんが牧師様を出して、六つの手でゴロクルーズさんを拘束しながら歩いていた。


 シャイナさん曰く……。


 ゴロクルーズさんが逃げないための保険としてギルドまで護衛してほしい。あの時手を貸したから、これでプラマイゼロね。


 そうシャイナさんは言っていた。


 そういうことなので、私達はクエストクリアを報告することと、シャイナさんの護衛についていた。


 私はその言葉を聞いて、頷く。


 絵本通りの世界ならよかったなど言えない。でも、それ以上におじいさんから聞いた話はすごく悲しいものだった。


 そして意味深な言葉を聞いて、その絵本の話に一体どんな裏があるんだろうと思いながら私は歩きながら考えていた。


 考えて……。


 う~ん…………。


 だめだ……今考えても頭が痛くなるだけだ……。というかおじいさんは何で私にあんなことを言ったんだろう……。


 他の人に言ってもおかしくないのに……。


 後、さらりと私馬鹿にされたことに関してはショックだったけど、なんだかだんだんと仕方がないと思い始めていく私もいて、正直――腑に落ちないのが事実。


 だからその腑に落ちない気持ちを何とかするために、と言うかアムスノームの真実を知るためにも何とかして突き止めないと……。そうでもしないとアムスノームの人達がかわいそうだし、前の王様も可哀そうだ。


 そんな可哀そうなまま時が過ぎることは絶対に嫌だ。私がその立場なら、絶対に真実を突き止めてほしいって思うだろう。死んでも死にきれないとはこのことだ。


 それならば――何とかしてでも突き止めよう。ただ言われて怒っているからではなく、本当に、絵本の本当の真実を見つけるために……。


 なんか、探偵っぽくてちょっと新鮮な気もする。


 そう思いながら、私は腕を組んで悶々と考えていたけど、深く深く考えてもきっと正解に至らない。と言うか、唐突に言われたからそんな名探偵の様にすぐに解けるなんて夢のまた夢なんだろうけど……。


 情報が無さすぎるので今は考えることをやめて、目の前のことに勤しんでみよう……。


 そう思った私は私は気を紛らわそうと近くにいたヘルナイトさんを見上げると、ヘルナイトさんは私に気付いて、申し訳なさそうに……。


「すまない。私ももう少し言葉を選ぶべきだった」

「ううん。いいですよ……」


 謝ってきた。きっとあの時言ったことを悔やんでいるのだろう……。その言葉を聞いて、私は首を横に振った。


「あたしが言うのもなんだけど……」


 シャイナさんは、腰に手を当てながら歩いて、私達に言った。


「結局……、過去を変えることはできないし、それに対し、あたし達がどうこうするなんて……、絶対に無理だと思う」


 でも……。


 シャイナさんは言った。


「それに対して、悲しいって思っても、いいと思う。それは人の感性ってもんだし、それを否定されても困ると思う。悲しくて泣いているんだから、それに対してとやかく言われたくない」


 ……シャイナさんが言っていることは、私にはよくわかった。理解した。


 シャイナさんは、私が俯いて悲しんでいるところを見て、そう言っているんだ。


 だから……。と、シャイナさんは言う。


「その気持ち、なくさない方がいい。これからも……ずっと」


 ……その言葉に、私はシャイナさんを見るために振り返って、控えめに、それでいて少し歪な笑みを浮かべて……。


「はい……。ありがとうございます……」と言うと。


「それ」

「?」


 シャイナさんは私を指さして、怒りながらこう言った。


「そうやって無理していると、いずれどこかで大爆発するから、そういう時はどこかで感情爆発させた方がいい」


 そう言われても、私は感謝して言っただけなのだけど……。


 そう思いながら私は何となく頷いてしまう。


 私とシャイナさんの話を聞いて、少し悲しそうに見ているヘルナイトさんを、私は見ることがなかった。


 その時だった……。


「っはっはっは!」


 拘束されているゴロクルーズさんが、笑いながら私達に言った。


「なにおバカなことを言っているんだいっ? これはゲームの話だろう? そんな感情移入しなくてもよくない? って俺は思うよ。ゲームとして受けて、流した方がいいって」


 なんだか、ゴロクルーズさんの言葉を聞いて、私は少しむっと頬を膨らませてしまった。


 それはきっと、無情なことを言わないでと言う意志表示だろう……。


「むかつく。『無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』。締め上げろ」

『ラジャ! デェス!』

「あいでででででででででっっっ! あ、やめちぇ! 内臓飛び出るっ!」

「そうそうでねーよ」

「そのままお口チャックプリーズ」


 そう言いながら、キョウヤさんとアキにぃは無表情で、ゴロクルーズさんを見ないでそのまま歩みを進める。ゴロクルーズさんはブランブランっとなりながらも何とかしてその圧迫から逃れようとしている。


 私はそれを見ながら、少し罪悪感もあったけど、それでもあの言い方もあったのだけど、やっぱり罪悪感が勝ってしまい、助けようとした時、シャイナさんに止められてしまい、そのまま放置することとなった……。


 あ、ゴロクルーズさん失神しそう……。


「……止めなくてもいいのか……?」


 ヘルナイトさんの言葉に、アキにぃは冷たい言葉でこう言った。


「うん。永遠に――」



 □     □



 どろどろと腐りかけている森の前に、大きな建物が建っているのを発見したキョウヤさん。


 それを見た私達も、ほっと一息をついて中に入る。ヘルナイトさんは外で待機し、残りの素材はシャイナさんが持つと言って、持ってくれた……。


 でも、実際持っているのは、牧師様……。


 中に入ると、どんなギルドでも共通なのか、赤い旗と何人もの筋骨隆々の冒険者。そして……受付の人達。


 それを見て私はほっと胸をなでおろす。


「そういえばキョウヤ。クエストあの時受けたんだよね?」

「あー。それか。実はすごく高額のクエストを二つ受けて、それがこの先の『腐敗樹』にあるんだ」

「なるほど……」


 そんなことを話しながら、キョウヤさんとアキにぃは、受付に向かって、アキにぃは私を振り向いて「ハンナ。あれを」と言った。


 私はそれを聞いて、ポーチからそれを取り出す。


 それは黄色い魔導液晶(ヴィジョレット)


 それと自分の冒険者免許を一緒に出して、受付の人に見せた。受付にいたのは、私が初めて見た男の人で、男の人はそれを見て、にこやかに「はい。お受け取りします」と言って、最初に冒険者免許を見て、次に黄色い魔導液晶(ヴィジョレット)を開く。そして――


「認証を行います。魔物素材を見せてください」


 と言われ、アキにぃはすっと肉がついた甲殻を見せた。


 それを見た男の受付の人は「うっ」とそれを見て気持ち悪そうに見てから……。青ざめながら笑みを無理に作ってそれを受け取りながら……。


「は、はいしゃく……しまふ」


 頬を膨らませ……、うっぷと言いながら、それを受け取った。


「……、アキ。お前ドSだろ?」

「へ?」

「無自覚かよ……っ! となるとあれは……、うぇっ!」

「何で気持ち悪がるのっ!?」


 そんな話をキョウヤさんとアキにぃでしている風景を見ながら、私はくすっと微笑んで和んでいた。


 すると……。


「お待たせしました」


 奥に行っていた受付の人はさっきまでとは裏腹の笑みでこう言った。手に持っているトレーを受付のテーブルに乗せながら。


「クエスト達成おめでとうございます。こちらは報酬の……。『アムスノーム入国許可証』『空の収納の瘴輝石三個』に、報酬金額五十万Lとなります」


 と言って、それを見せてくれた。


 私達はそのトレーに乗っている物を見ると、『入国許可証』は銀行のカードのような銀色のそれで、三つの透明の瘴輝石に大きな袋に入ったそれがあった。


「ウソだろ! こんなに!」

「一気にお金問題解決した気が……」

「こんなに……いいんですか?」


 私達はそれを見て驚いていると、受付の男の人は「ええ」と言って……。


「特殊討伐クエストならば、これくらいは序の口です。最も、『極』となると報酬なんて高い云々じゃないですよ。国がもらえる可能性だってあります」と、笑顔でそう言ったのだ。


 私はそれを聞いて、私達が今受けている『極』クエストのことを思い出した。


 確か……報酬は自分が願うものを一つ。パーティーや徒党を組んでいるのなら、それぞれ一つ。


 ……それを思うと、億万長者になりたいって願えばそれがいとも簡単に叶うということになるし、有名人になりたいって願えばそれも叶う……。


 ……なんだか、怖いな。この世界……。


 そう思っていると……。


「はい。クエスト達成おめでとうございます」

「おめでとうじゃないぞこれ!」

「「「?」」」


 隣から声が聞こえたので、私とアキにぃ達は右を見る。すると……。


 丁度シャイナさんがクエストの達成を済ませているところで、ゴロクルーズさんは暴れながら違うと反論しているみたいだ。でも受付のお姉さんとシャイナさんはそれをやめないで、話を続ける。


「報酬はまず、三十五万Lとなりまして……、あとは……」


 と、受付の人はきょろきょろと周りを見だして、身を乗り出して辺りを見回した。シャイナさんはそれを見て後ろに下がりながら待っている。


「おい! 人の話を」



「あああああああああああああああああああああああああああーっッッッ!!」



「っ!?」


 突然背後から聞こえた声。


 その声は、私はよく聞いていた声で、懐かしい声だった。


 私は後ろを振り返ると……、叫んだ張本人はずんずんっとヒールの音を出しながら近付いて来ている。それも、ゴロクルーズさんに向かって。


「やっと見つけたわ……、セクハラまがいな贅肉腹デブ……。そいつよ……っ!」


 カツカツと歩みを止めずに近づいて来るその女の子は……。私がよく見ている。私がよく知っている……友達の姿と同じ……、ううん。同一人物だと認識した。


「あ、やべ」


 ゴロクルーズさんはひくっと顔を引き攣らせていると……、その子は腰から武器を取り出す。それを見た受付の人はぎょっと驚いて手をぶんぶん振って言った。


「あ、待ってくださいっ! ここで魔法の使用は――」


 と言った瞬間。


 ひゅんっと空を切る音と、ゴロクルーズさんの頬にクリーンヒットする何か。それはしなっていて、先が丸い――鞭の先。


 鞭はゴロクルーズさんの頬に直撃して、ゴロクルーズさんは「ぶっっっっ!?」と声を上げながら『ぎゅるるるるるるっと』高速で横回転して、べちゃっと床に倒れてしまった。


 頬に痕がくっきりと残っていて、痛そうに涙を流しながら倒れていた。


 私とキョウヤさん、シャイナさんはそれをぞっとした顔で見ながら……、驚いているだけだった。


 アキにぃはそれを見て「あーあ」と言わんこっちゃないという顔で呆れて見ているだけだった。


 私はもう一度その鞭でゴロクルーズさんを攻撃した女の子を見た。


 その子は怒りが収まらないのか、ふんっと鼻息を荒くしてゴロクルーズさんを見降ろしていた。そして……。


「さぁ! 私の一万! 返して」


 すっと右手を突き出して、掌を見せるようにそう言った。


 それを見て、聞いて――私は思わずその子を見て叫んでしまった。


「――みゅんみゅんちゃんっ!」


「え? あ! ハンナッ!?」


 その子――みゅんみゅんちゃんは、驚きながら、顔を赤くして声を上げて私の名を呼んだ。

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