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PLAY97 アサシン・エルフ③

「しょーちゃん、しょーちゃーん……。おーい。大丈夫? ねぇしょーちゃーん……。って、聞こえていないみたい……」

「え? マジで? あれから丸一日経ったってのに……、まだ昇天中なの? マジすか……」

「ちょっと、起きなさいよ馬鹿。早く起きなさいアイキュー二十五の大馬鹿。あんたの大馬鹿めいた馬鹿発言がないと調子が狂うわ」

「シェーラ。お前それ励ましてんの? 百パーセントの悪意に満ち溢れた殺意の言葉にしか聞こえねえけど……?」

「おいしょうま。大事に至っていないかしょうまよっ。しょうまっ! 気をしっかり持てっ!」

「持っていたらこんな大きな丸を書いて黒ゴマが落ちているかのような目になんねぇよ。あとあんたわかってやっている? やっていたら正直な話やめてくれ。オレの突っ込みに体力かなり使うから」


 効果音で言うのならば『ぽけーっ』として鳥人族の郷の方角を見ながらぼーっとしているしょーちゃんに対し、私やアキにぃ、シェーラちゃん、キョウヤさんに虎次郎さんが駆け寄って、しょーちゃんの顔を見ながらそれぞれが心配の言葉をかけていく。


 あ、でも……、シェーラちゃんに至っては何か馬鹿にしているような言葉だけど、彼女なりにその言葉を発しておけばしょーちゃんが怒って起き上がるかもしれないと思っていたのかもしれない。


 でもその想いも虚しく……、しょーちゃんはシェーラちゃんの言葉にも反応せず、『ぽけーん』としたままキョウヤさんの言う通りの目をしている。


 虎次郎さんは虎次郎さんで真剣そうな顔をしているけど、キョウヤさんからしてみればなんだか癇に障ったみたい……。


「ショーマくーん。おーい。ショーマくーん」

「お前まだぽけーっとしているのかっ? おーい大丈夫かー?」

「だーいーじーよーぶーかー?」

「だーいーじーよーぶーかー?」

「ん。んん」

「ほれ。リカもシリウスも心配しているし、善に至っては『意識を強く保て。皆がお前のことを心配しているぞ』って言っているから。早く意識をこっちに戻せー」

 

 私達の次に入ってきたのはレギオンのエドさん達で、エドさん、シロナさん、リカちゃんにシリウスさん、善さんと言う順番でしょーちゃんのことを心配しながら顔を覗き込んできていた。


 エドさんの心配そうな顔も然りなんだけど、リカちゃんとシリウスさんの下から覗き込むようにして同じ行動で、同じ言葉をかけている光景を見て、何だかリカちゃんとシリウスさんが双子なのかと思ってしまったくらい同じ行動をして心配していた。


 シロナさんも心配をして励ましの言葉をかけると、善さんの言葉を通訳して言葉にしたけど……、本当に『ん』の言葉に含まれる言葉が本当に深い気がするのは……、気のせい……、ではない気がする。うん。


 そんなことを思いながらみんなでいつもと違うしょーちゃんのことを心配していた。その時――



「――お前……っ! なんちゅうおいしいことを独り占めしてんだべっ! こんのマセガキがぁ!」



「真瀬垣?」

「馬瀬柿?」

「貝? 貝の一種?」


 何と言うか、何という言葉で表現をすればいいのかわからないけど、唯一励ましの言葉どころか、憎々しげにしょーちゃんに向けて叫んできた京平さんは、目尻に涙を溜めて、下唇をまるでハンカチを噛みしめる様な形をしながら悔しそうに叫んでいた。


 本当に、心の底から、もしゃもしゃでさえも憎々しいというそれが一目でわかる様なそれで……だ。


 その言葉を聞いていた私はおろか、アキにぃ達でさえも京平さんの言葉を聞いて冷たい眼差しで京平さんのことを見て (私は『なんてこんなひどいことを言うんだ』っていう顔をしていただけ)、エドさんはそんな京平さんのことを真剣な眼で、真顔のそれで悲しそうに見つめていた……。


 本当に、今にも死にそうな子犬を見る様な、そんな悲しい目で……。


 私達の反応をしり目に、ヘルナイトさんとデュランさんは首を傾げながら京平さんのことを見て、多分違う言葉を口遊み、シリウスさんもその言葉を聞いて首を傾げると同時に貝のことを連想してエドさんに聞いていた。


 エドさんは答えなかったけど、それでも違うことは明白。


 マセガキはマセガキでも、柿でも垣でもないし、貝でもない。


 マセガキは、マセガキなのだから。うん………。


 そんなことを思いながら私は内心――なぜシリウスさんはマセガキのガキを貝と思ってしまったのだろう。と思っていると……、突然声がまるで大砲の如く私達の耳に飛び込んできた。


 ううん……、声だけじゃない。この場合は、本人も一緒にしょーちゃんの隣にいたエドさんに向かって……、しょーちゃんを巻き添えにしながら京平さんはわんわんと泣きながら二人の肩に手を回し、肩を組むように抱き着くと……。


「じぎじょ~っっっ! なんでお前のようなガキが俺より先にぃいいいいいいっっ! 俺の方が人生的にも年齢的にも先輩だっていうのに……っ! 経験上も先輩なのに……! なんでお前のような青二才未満のクソガキがああああああああああああああっっっっ! うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!」

 

 ……なんとも悲痛と言うか、欲望めいたもしゃもしゃみたいなものを出しながら京平さんはエドさんとまだぼーっとしているしょーちゃんに向けて叫ぶ。


 もう滂沱(ぼうだ)と言っても過言ではないほどの涙を流しながら……。


 でも、エドさんは大泣きをしている京平さんのことを見ずに、どころか京平さんに対して冷たいそれを発しながら「離して。痛い」と訴えていたけど、その訴えを無視して京平さんはわんわん泣き続けている。うわんうわん泣きながらエドさんとしょーちゃんを巻き添えにするように肩を抱きながら左右に体を揺らしている。


 左右に揺れ、大きな声で歌うように、京平さんはエドさん達を道ずれにするように泣き叫ぶけど、その光景を見ていたアキにぃ達の反応は、かなり冷たいもので……、シェーラちゃんに至ってはこのボロボに着いた時、寄ってしまったエドさんを見る様な……、絶対零度のごみを見る様な目つきで見ていたのを見て、私は京平さんとみんなの間にある温度差のもしゃもしゃを感じながらこう思った。


 ――なんという寒暖の差……。


 と……。


 そんなことを思っていると――エドさん達から少しばかり離れた私の背後で、突然凛とした音色の人物――ヘルナイトさんは私の名を呼び、そして私のことを背後から見降ろすように覗き込む。


 ヘルナイトさんのその凛とした音色に一瞬だけ驚きの肩の震わせを表してしまったけど (なぜなのかはわからない。きっと背後から声を掛けられたから驚いたのだろうと思うけど……)、私はすぐに見降ろして私のことを覗き込んでくる彼のことを見上げて、ヘルナイトさんの名前を呼ぶと、ヘルナイトさんはこう言ってきた。


「いや、そんな重大なことではないんだ。驚かせてしまったのならすまない」

「あ、大丈夫です。これは多分反射的なものなので、ヘルナイトさんだって突然背後から声を掛けられたら驚きますよね? あれと同じです」

「そうか……。それならいいんだが、生憎私はそんな体験をしたことがなく、あるとすれば背後にいる人物に向けて剣先を付きつけることくらいだ。それも極々たまに起きることだが。斬ったりはしていない」

「……そっちの方が十分すぎるほど怖いです。一瞬で血の気が引きます……」

 

 ヘルナイトさんの言葉を聞いた後で、私はそのことを想像し、そして困惑のそれを浮かべながら私はヘルナイトさんに向けて今のことよりもそっちの方が断然怖すぎることを伝える。


 だって……、声を掛けた瞬間に剣先を突き付けるって………、ホラー映画ならびっくりもので、映画館から悲鳴が上がると思うから。うぅぅ……。


 そう思いながらそのもしもの想定をシュミュレーションし、あろうことかその想像で怖い映像と重ねてしまったせいで肩を震わせてしまう私だったけど、ヘルナイトさんは私から一瞬視線を外したのだろう。ヘルナイトさんは私のことを見ずに私に向けて続けるようにしてこう言ってきた。


「ところで、本題に入るが……、ショーマは一昨日からあのままだ。いい加減に起こした方がいいのではないのか? ずっとあのままならこの先の戦いに支障が出るかもしれない」

「その通りだ。今すぐあいつを正気にもどせ」


 ヘルナイトさんが言い終わると同時に、ヘルナイトさんの背後からつかつかと馬の蹄の音を鳴らしながら私達の近くに歩み寄ってくるデュランさん。蹄の音を鳴らし、腕を組んで胸を張りながら歩み寄ってきたデュランさんに、私は驚きながらデュランさんの名前を呼ぶと、デュランさんは私のことを見降ろしてきて――


 あ、顔がないから見降ろしているのかはわからないけど、体を私の方に向けて俯いているから多分そうだと思う。だから見降ろしているということにしておいて……、デュランさんは私に向けて呆れるような音色で――


「あの馬鹿はなぜあんなにも長く茫然としているんだ。ただ二人で話しただけだろう? 何故あんな風に魂が抜けたかのような顔になり、そしてそのままの状態を丸丸二日……、いいや丸々三日かかった今でもあのような醜態をさらしているんだ。このままでは本当の意味で昇天してしまうやもしれんぞ」


 と言うと、私達の言葉を聞いていたのか――私達のことを乗せて最後の目的の場所まで飛んでいるクロゥさんはデュランさんの言葉に対して自分の意見を返すようにこう言ってきた。


「申し訳ございません。まさかショーマ様があんなことになるとは、思っても見ませんでした」

「いやいやあんたのせいじゃねえだろうが。てかそれをした本人が謝ればいい…………って。もうボロボの都市だよなー……。何をしたんだか……」

「本っ当に申し訳ございません…………っ! 私があんなことを言ったばかりに……っ」

「だからそれ――あんたが謝ることじゃあいてててててててててててっっっ! おい突っつくなイテテテテテテテテテッッッッ!」

「えへへ~」

「この………っ! クソガキィィィ…………! イデデデ…………!」


 クロゥさんは言う。自分の意見――自分があんなことを言わなければしょーちゃんがこうなることはなかったという後悔のそれを述べると、話を聞いていたキョウヤさんは呆れるような顔をすると同時に言葉を述べるのと連動するように右手首を左右に振子のように揺らす。


 そんなことはない――そんなジェスチャーをして。


 でもクロゥさんは器用にぐっと心底後悔しているような唸り声で、心底申し訳なさそうな顔をして私達に向けて――特にまだぽけーんっとしているしょーちゃんに向けて謝罪の言葉を投げかける。


 私達はそれを聞いて、本当にキョウヤさんの言う通り誰もが思ったに違いない。


 それはクロゥさんが言うことではない。と――


 誰もそのことに関して口にしなかったけど、唯一筋肉痛と戦っていたコウガさんはクロゥさんの言葉に対して呆れるようにクロゥさんは悪くないと言っていたけど、そのあとすぐにリカちゃんがつまらないと思ってしまったのか、コウガさんの筋肉痛が集中している箇所――右横脇腹に向けて人差し指を突き刺すように『つんつんっ』と小突く。


 つんつんっ。と小突いた瞬間、全身に電撃が走ったのか、コウガさんは痛みを訴えるように叫ぶと己の脇腹に向けて突いているリカちゃんのことを睨みつけ、やめさせようと手を伸ばしたけど、リカちゃんは悪そびれもないかのような満面の笑みを浮かべ、指の突きをキツツキの如く早くさせると、コウガさんはその衝撃に対しいくつもの電流を感じたかのように痛みを訴えて、しまいには目じりに涙を溜めてしまう。


 けらけら笑うリカちゃんとは正反対に、痛みのせいで泣いているコウガさんはリカちゃんのことを鬼と言っても過言ではないような睨みで見つめ、握り拳と赤いもしゃもしゃを放ちながら膝をつけていた。


 赤いもしゃもしゃから察して……、完全に殺意のような感情を抱いている。


 コウガさんのその殺気のもしゃもしゃを見て、本当に道を間違えるようなことしないでくださいと――なんだか落ち着かない焦りのようなものを感じながら思っていた私は、再度しょーちゃんの方に目を移す。


 しょーちゃんは未だに京平さんの行動にされるがままになっている。


 なぜしょーちゃんがこうなっているのか。そのことについて話すとなるとかなり長くなる話でもあり、詳しいことは私達でさえも分からないけど、とにかく話すとなると――こうだ。


 今から三日前のこと。鳥人族の郷で私達は二つ目の試練――『生物』の魔女でもあるファルナさんの試練を受けに来て、その試練を受けにしょーちゃん、つーちゃん、むぃちゃんにコウガさん、そしてデュランさんと飛行係のクロゥさんがその場所に行き、しょーちゃん達はファルナさんの試練――摂食交配生物『偽りの仮面使』の討伐に向かった。


 討伐に向かった。ここまでは言い。ここまではよかったのだけど……、この試練には大きな裏があった。


 大きな裏と言っても、そんな陰謀めいたものではなく、この大きな裏は、とある一人の人物の怨恨が大きくなりすぎたせいで色んな犠牲を生んだ裏。


 ううん……、これは、闇だ。


 一体どんな闇なのか。


 それは簡単で残酷な闇――鳥人族の郷の長でもある族長が魔物と結託をして、鳥人族の郷にいる族長に逆らう鳥人族や見た目が違ったりする亜人族の鳥人族を、その魔物の供物……、つまりは生贄として捧げていたという、なんともシンプルだけど残酷で負の連鎖を体現したかのような闇だったのだ。


 今にして思うと、族長がしていたことは全部が全部自分の思い通りに動かそうとした暴挙でもあった。


 自分のことを貶す人を消し、自分の意見に逆らう人はこの郷にいらないから存在を消し、ファルナさんのように族長に対して敵意を抱く人を秘密裏に処分してきた。


 いうなれば――鳥人族の郷は族長の楽園。


 ……、違う。族長だけの楽園を族長は作り上げてきたのだ。


 でも、それもしょーちゃん達、そしてエドさん達、私達の登場で崩壊してしまった。


 試練に向かっていたしょーちゃん達が摂食交配生物『偽りの仮面使』を討伐することに成功したのだ。


 試練成功と同時に、しょーちゃんやファルナさん、クロゥさんは今まで族長がしてきたことを明るみにするために、族長の目の前で族長の行いを全て暴露をした結果……、今まで族長のことを信じてきた鳥人族の人達が、どんどんと……、その意志が意図的に広がり始め、鳥人族は一斉に族長に向けて疑念と本当なのかと言う心意を問い詰めだした。


 そのことを聞いていた族長は心のダムを壊してしまったかのように、心の声、感情をむき出しにして、郷の住人達……、私達に向けて自分の本音を暴露した。


 その言葉を聞いた時、私やみんなも族長の言葉に対して怒りを覚えた。アクロマやDrの時と同等の憤り。


 あの二人以外に異常な憤りを感じることはなかった。けど族長の言葉、行いを聞いた瞬間……、なんでそんな身勝手に人の命を弄べるのだろう。


 人の命は――ものじゃない。


 そう言いたくなるような……、身勝手な族長に向けて私は怒りをぶつけそうになったけど、その怒りを代弁するようにしょーちゃん達がみんなが言いたいことを全部言ってくれた。


 全部全部言ってくれて、コウガさん達の言葉を聞いた瞬間――族長は論破された。


 全部論破されて、族長はクロゥさんの手で拘束された後でボロボ空中都市に連行することになった。


 ここまでは問題なくしょーちゃんは普通だった。いつも通りのしょーちゃんで、ぽけーんっとした顔のしょーちゃんはここに存在しなかった。


 存在したのは……、この後起きた出来事でしょーちゃんは三日間この状態になってしまったのだ。


 そのことに就て詳しく話すと――ファルナさんの心と体の療養のため、クロゥさんと一緒に都市に行くことになった。


 ファルナさんの体は負傷しており、私の回復スキルを使えばいい話だとあの時コウガさんは言っていたけど……、クロゥさん曰く、ファルナさんはこの郷に対していい思い出がない。


 そんな場所で傷を癒し、そしてここで住むことは難しい。どころか心の傷が大きくなる可能性も高い。


 クロゥさんはファルナさんのことを心配し、この苦痛の思いでしかない郷で傷を癒すことよりも、王国に行って心身の療養に勤しむことを選択したのだ。


 確かに、トラウマを抱えている人の中にはその場所に行くだけで吐いてしまう。


 と、エドさんが言っていたけど、その言葉を聞いた私は内心驚きながら、そうなのか……。と思ってしまった。皆はエドさんの言葉に対して何の返答も反応もしなかったけど。


 クロゥさんの言葉を聞いたエドさんはクロゥさんの言葉に賛同し、みんなに同意か否かを聞くと、みんなは同意を示すそれを首を縦に振るという仕草で示す。


 みんなの行動を見てエドさんはクロゥさんに「頼みます」と言って、クロゥさんのことを見送ろうとした時……。


「あ、待って――!」


 瞬間、ファルナさんの声が私達の耳に突然入り込み、その声を聞いた私達は驚きながらファルナさんのことを見る。一体どうしたんだという顔をしながら見ると、クロゥさんがファルナさんのことを見て――


「? どうしたファルナ。忘れものか?」


 と、クロゥさんはファルナさんと親しげに (後にわかったことなんだけど、クロゥさんとファルナさんってお知り合いだったみたい)聞くと、その言葉を聞いたファルナさんは「うん」と頷き、そしてくるりと私達のことを見つめるように振り向くと――ファルナさんはそのまま私達に向かって駆け寄る。


 たたっと、駆け足の如く駆け寄ると、その行動を見て、京平さんがなぜか嬉しそうな顔をしたけど、その光景を見てエドさんは小さな声で「下心丸出し……」と、呆れるように突っ込んでいた。でもそれ以外のことを強いて言うのであれば、みんな驚きながらファルナさんのことを見て、そのままファルナさんが私達に駆け寄った後――ファルナさんはそのまま私達のことを見て、すぐに視線をしょーちゃんに向けた後、彼女はこう言ったのだ。


「ねぇ――ショーマ、で、いいんだよね?」

「? おう」


 唐突にファルナさんに聞かれたしょーちゃんは驚きん顔を浮かべていたけど、すぐに返答をする。そうだよと言わんばかりに頷きも加えて。


 しょーちゃんの言葉を聞いて安堵のそれを吐くと同時にファルナさんは徐にしょーちゃんの手に向けて手を伸ばし、そしてぱしりと掴んだ後、彼女はどことなく恥ずかしそうな、それでいてちゃんと言おうという決心がついたかのような顔をしながらファルナさんはしょーちゃんの手を引っ張る。


 ぐいぐいと引っ張り、驚いて目を点にしているしょーちゃんをしり目にファルナさんは私達に向けて一言告げた。



「ちょっと、彼と話したいことがあるので、時間いただきますねっ」



 その言葉を言い終えた後で、ファルナさんは私達の有無を言わせることなく、そのまましょーちゃんの手を引っ張って少しだけ遠くに行ってしまった。


 それを見ていた私達は驚きの目をしつつ、数人が首を傾げながらその光景を見て、私は一体何なんだろう……? と思いながらしょーちゃんとファルナさんの帰りを待つことにした。


「何の話をするんだろうね」

「きっとお礼じゃない? だってこの郷を救ったのは彼と彼の仲間なんだし、きっとそのお礼を魔女として、そして一族の一人としてお礼を言いたいからあんなことをしたんじゃないかな?」

「ちょっと待って。それだったら僕達も入るのに、なんでショーマだけ? 何故にあの馬鹿だけ?」

「んん……」

「あ? 『そもそも彼女の言葉、いまいち日本語として成り立たない気がする。ああいった場合は『お時間いただいてもよろしいでしょうか?』っていうだろうに……』って、お前頭相変わらず固すぎだな……。そんなもの考えなくてもいいだろうが」

「二文字の『ん』の中に含まれる意味が長すぎる気がするけど……、もう突っ込んでも意味なさそう」


 待つことを決めた後、リカちゃんはシリウスさんのことを見上げながら首を傾げ、何の話をするのかということを素直に問うと、その言葉を聞いていたシリウスさんはリカちゃんのことを見降ろし、そして満面のそれを浮かべながら至極真っ当なことを言う。


 いつもなんだか子供っぽいところがあるけど、やっぱりシリウスさんは大人と同じ思考を持っているんだ……。そう私は今更思ったけど、すごく失礼なことを思っていたけど、シリウスさんの言葉を聞いてつーちゃんは真顔になりながら真剣さと怒りが混じった黒いそれをシリウスさんの背後で見せる。


 なんぜ僕達は呼ばれなかったの? そんな顔をしながら……。


 それに対してはむぃちゃんもつーちゃんの言葉に同意だったらしく、コウガさんの肩でうんうんっと頷きながら高速首縦振りを繰り返す。


 コウガさんはあまり気にも留めていなかったけど。


 そんな中――善さんとシロナさんだけはなんだかこの話に関係のないことを言っていたけど、それでも私達はしょーちゃんとファルナさんが戻ってくるのを待った。


 きっと長くなるのかもしれない。もしかすると早くなるのかもしれない。


 そんな予想もできないような時間の中、しょーちゃん達のことを待って…………、三分後。


「あ」


 突然アキにぃが声を上げてしょーちゃん達が向かって行ってしまった方向に目をやり、そしてその方向に向けて指をさして私達に教えてくれた。


 しょーちゃんが帰ってきたことを。


 アキにぃの声を聞いた私達ははっと驚くと同時にしょーちゃん達が言ってしまった方向に目をやると……、私達は目を疑って――まんざらでもないファルナさんと、そして今のようにぽけーんっとしたまま体を左右に揺らし、()()()()()()()()()()()()()()覚束ない足取りで歩みながら私達のところに帰巣本能の如く戻ってきたしょーちゃん。


 意識はないのにここまで歩いて戻ってきた時は驚いたけど、それ以上に驚いた事――ファルナさんが悔いのない笑顔で鳥人族の郷から王国に言った後も、最後の試練の場所に向かう時もずっとこの状態のまま元に戻らないことに私は驚いたし、それにしょーちゃんがなぜこんなことになってしまったのかも全然理解できなかった。


 赤い痕は今日になってやっと消えたけど、それでもしょーちゃんはぽけーんっとした顔のまま現在に至っているけど、みんなはそんなしょーちゃんのことを見た瞬間……。


「あぁ……」


 と、なぜだろうか。納得をしたような顔をして溜息を吐きながらしょーちゃんのことを見ていたけど、私やシリウスさん、リカちゃんにむぃちゃんはそんなみんなのことを見て、頭に『なに?』と言う思考の文字を上げることしかできなかった。


 そして――現在になって……。


 しょーちゃんは現在進行形でぽけーん状態。

 

 なぜこんなぽけーん状態が続いているのかわからないし、そのことを察して知っているみんなは呆れた目をしてしょーちゃんのことを見ている。


 ヘルナイトさんとデュランさんもなんとなーくだけど理解して察してしまったらしく、未だにこの状態になっているしょーちゃんのことを見て……。


「もう三日も経っているが、まだ思考の整理が追い付いていないようだな」

「青二才どころか呆れるような光景だ」


 と言って、ヘルナイトさんは驚きと納得のそれを上げ、デュランさんは心底呆れたような音色で言っていた。


 二人が言っている言葉。そしてみんなのあの納得と言うか、心の底から呆れているような顔。なぜみんなはすぐに理解できたのだろう。なんでしょーちゃんはあの状態のまま茫然としているのだろう。


 あの時――ほっぺについていたあの痕が原因なのかな……?


「う~~~~ん………?」


 考えて、考えて、一体あの時何が起きたのだろうと。そんなことを思いながら私はうんうんっと唸りながら考えを巡らせていると……。


 突然――キョウヤさんが声を上げた。


 唐突に……、今までの穏やかなそれをかき消すような音色で――今まで穏やかに流れていた空間が突然かき消されるような、毎度の如く体感しているけど慣れようにも慣れることができない出来事に巻き込まれる前にキョウヤさんは叫んだ。





「っっっ! お前等っ! ()()()()()()()()()()()()っっっ!」





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