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PLAY93 ショーマとツグミ、そして仲間達③

 それからところ変わって――ショーマ達はと言うと……。



 ◆     ◆





「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああばばばばばばばばばばばばばばばべべべべべべびびびびびびびびぶぶぶうぶぶぶぶぅぅぅぅうううううううううううおおおおおおおおおおおおっっっ!」

 


 なんとも呆れるような馬鹿らしいと感じてしまいそうな叫びを上げ、その後の叫びはまるで日本語でも外国語でもないような言葉を発しながらツグミが召喚したモンスター『サンドコアトル』の背に乗っていたショーマ。


 異常な奇声を上げながら加速するその背に足でしがみつきながら耐えていた。


 上唇が『びろびろびろっ』と、まるで漫画のようにぶるぶると、顔中の皮と言う皮が風圧によってどんどん伸びていき、よく言う顔面崩壊を引き起こしながらも、足を駆使してサンドコアトルの胴体に足を絡ませ、必死になりながらしがみつき、気を失っているファルナのことを抱えながらショーマは気合で耐えていた。


 落ちそう。いや落ちたら死だ。


 そんなことを想像してしまいそうになるその気持ちをかき消し、気合だけでその場をしのごうとしながらショーマは耐えていた。


 そんな必死なショーマを無視し、サンドコアトルは主の命令を遂行するようにそのまま旋回を大きくし、どんどんと飛んでいるクロゥディグルのところに向かって近付くと、その光景を見てショーマの日本語ではない声を聞いたツグミは、はっとしてクロゥディグルの首越しに見ると、ツグミは驚きの声を漏らすと同時に叫ぶ。


「あぁ! ? あ! ショーマッ! と、ファルナさん!」


 一瞬、ショーマの顔面崩壊を見て、内心――あれ? あれ誰? と思ってツグミだったが、彼の服装を見てあとからショーマだと認識をすると同時に、ファルナの存在を見たと同時に安堵のそれを零した。


 その安堵はツグミだけのものではない。それはクロゥディグルも同じで、ツグミの言葉を聞いた瞬間クロゥディグルは大きな翼を一際大きくばさりと大きく羽ばたかせると、その音と同時にクロゥディグルはショーマがいるその場所に向かって飛ぶと、その行動に驚くツグミはびっくりすると同時に首にしがみつき、どんどんと迫ってくる光景にサンドコアトルは冷静に対処をするようにくるりと上に向けて飛ぶと、飛ぶと同時にサンドコアトルはクロゥディグルの頭上で――


 くるんっと――なぜか背中を下にして回転をした。


「ふぁ?」


 その行動に驚いたのは――もちろんショーマで、ショーマはその行動に驚きながら顔面崩壊が治った顔でサンドコアトルのことを見上げようと、いいや、この場合は見降ろすと言ったほうがいいのかもしれない。何せショーマから見たら見降ろしている態勢なので。


 その体制で見ようとした瞬間……、サンドコアトルは回転し、上下が開店した状態でショーマのことを見た目からして見上げた後……、大きな翼をそのまま両手を広げるように広げると、そのまま……。


 ――べじぃんっっ! と胴体に絡めているショーマの足をハエたたきのように強い叩きをお見舞いしたのだ。翼の手を一気に自分にむけて抱きしめるように、勢いをつけて。


「あだぁっっ!」


 当然、それを受けたショーマは足の――特に指を立てるように巻き付いていたので、指に当たると同時にその痛みに耐えきれず、呆気なくパッと足の辛みをほどき、そのまま足を延ばしてその痛みを緩和させる。


 勿論――そのようなことをしたところで足の痛みが緩和なんてされるわけではない。足の痛みを緩和させるために手で押さえたい気持ちがあったのだが、生憎ファルナを抱えているがためそのようなことができない状況だ。


 ゆえに彼は足を延ばしたのだが、その足を延ばすと同時に――ショーマはギッと自分の足を叩いたサンドコアトルに向けて怒りのそれをぶつけようと声を荒げる。


「何してんだこの鳥がぁ! お前後で鶏肉にして俺の胃袋で消化してやるぞいいのか………………って、あれ?」


 しかし、その言葉を荒げて言ったのだが、その言葉を言う前からすでに行動をしていたのか、サンドコアトルはそのままクロゥディグルの上空から離れるように旋回をしているところだった。大きく回り、そのまま現在戦闘をしている場所――『偽りの仮面使』のところに向かっているその光景を見たショーマは、目を点にし、旋回をしているサンドコアトルのことを目で追っていたが、すぐにその光景も見れなくなる。


 なにせ――彼は今、ファルナを抱えたまま()()にいるのだ。


 ただの空中。


 鳥人族にとってすればこんな空など飛べばいい話だ。

 

 しかし……、それができないのが人間であり、ショーマであるのだ。


 つまり――


「あ、わ、わああああああああああああああああああーっっっ!」


 そう。簡潔に言うとショーマはファルナを抱えたまま背中から落ちたのだ。それも――クロゥディグルの背中に向かってだ。


 幸いなのはショーマが落ちる先が地面でない分まだ運はいい方だ。


 これで地面と言う名の地獄、もしくは落ちた瞬間アスファルト並みの硬さになる水に落ちてしまえば……、いくら今のショーマが三回死んでも生き返る種族であろうと即死であっただろう。


 そんなショーマであったが、そのことを考える前にと言うよりも、今の状況でそのことを考えている暇などない。余裕もない。そんな中でショーマはあらんかぎりの声で叫びながら、死ぬ? 死ぬ? と言うたった二文字と一文字の記号を頭の中でいくつも浮かべながら己の脳内に広がりそうな己の半生を回想しそうになっていた。


 そのくらいショーマは今の状況に対して、まるでスローモーションになる様な光景を見ると同時に彼は思ってしまったのだ。自分は――死ぬかもしれないと……。


 本当に、死ぬかもしれないと――そう思っていた。本来はそんなことありえないのだが、それでもショーマにとってすればこの状況は本当に死に連結してしまいそうな光景であった。

 

 が――それもすぐに終わる。


 ――どぅすっ!


「――ぐぼぉっ!?」


 ショーマは背中に感じた衝撃と、それと同時に発生した激痛に耐えきれず、彼はそのまま口から唾液交じりの咳を吐き出してしまう。ぶっと、口に溜まっていた何かが一斉に吐き出されるようなその衝撃を受け、ショーマはその場で体を震わせ、背中をつけないように軽くブリッジをしながらぶるぶると耐えていると……、その光景を呆れた見ていたツグミは――


「何やっているの?」


 と、心底呆れたような、心配して損したかのような顔をしながらツグミは落ちてきたショーマに近づく。その声を聞いていたショーマは、痛みに耐える様な震える声でツグミの名を呼ぶと、その声を聞いたツグミは呆れるような顔とショーマのその姿を見て、一度ため息を深く、深く吐き捨てる。


 まるで――本当に何をやっているんだ。と言うような心底呆れているような、失望をしたかのような視線を向けながら溜息を吐いたツグミを見て、ショーマはぎょっとしつつも激痛に耐えながら……。


「あ! お前なに思ったっ!? 今何を思ったっ!?」

「別にぃー。馬鹿だなーって思って。命知らずでぇー。無茶ばかりするなーって思ってぇ」

「ぐ」

「あとファルナさんを助けたい一心は分かるけどさー。その後のこと考えていないじゃん。結局その時に考える様な危なっかしい事で、そんな危ないことに僕を巻き込まないでほしいんだけどー。気持ちは分かるけどさー、あとのことを片付ける僕の身になってよー」

「あ、いや……、それは……。てか馬鹿を最初に言うことはないだろうがっ!」

「そこ? てかそれを最初に思ったから言っただけで、いいじゃんべつに」

「最初に思ったのかよっ! ねぎらいのお言葉とかねえのかよっ!」

「まぁ……」

 

 と、長い会話を終えた後で、ツグミはショーマのぶるぶると震えるブリッジを観賞しつつ、いつまでやるのだろうということを頭の片隅で思いながらも、ツグミはショーマのことを見て呆れるような溜息を吐くと、ツグミは一瞬、口を噤むように――いいや、と言うよりも、脳内で出た言葉を整理するように口を閉じておさらいをすると、ツグミはそっと口を開き、そして五Kまだにブリッジをしているショーマに向けて言った。


 真剣……ではないが、怒っているわけでもない。だが悲しんでいた、安堵をしているなどと言う感情などない、いつものツグミの雰囲気と顔を浮かべながら――ツグミは言った。


「労いなんてないよ。今あるのはショーマに対しての罵倒だけ。それだけお前はみんなに迷惑をかけたんだから、これくらいは当たり前と思ってほしいよ」

「な」

「それに、こんなことを言えるのは僕とおじさんとおばさんだけなんだよ? ショーマはそんな()()()()()()()()()()()()()()()()からわからないかもしれないけど、僕はこう見えても心配で言っているんだ。有難いと思ってほしい」

「…………………………」

「まぁ――ファルナさん救助は及第点じゃない? 其処だけは褒めてやるよ。ちゃんとグッジョブって言ったし」

「そこだけかよっ! あと俺聞いてねーよっ!? 言ったの? 本当におっしゃいましたかっ!? しっかりとブッジョブって言いましたかっ!?」

「言った」

「えぇー………っ?」

 

 ツグミの言葉はどことなく棘のあるような言い方に聞こえるかもしれない。しかしその中にある隠しを突くような、それでいてショーマの短所を記述したような言葉を述べると、その言葉を聞いていたショーマはどんどんと顔の色を悪くし、ブリッジをした状態で頭に血が上り、顔を少しずつ赤く染めながら唸る。


 そんな光景を見て、ツグミは呆れるようにため息を再度吐くと、ツグミはショーマの腕の中にいるファルナのことを見て、肩を竦めながら呆れるような笑みを浮かべて言葉を零す。


 自分が思ったことを述べると――それを聞いたショーマは驚きと言うよりも、怒りが勝っているような音色で突っ込みのような言葉を吐く。本当に言ったのか、本当に半信半疑になっているようで、その言葉を聞いていたツグミは怒り交じりの音色でははっきりと正直に言う。


 が――それでもショーマは信じていないような顔をしている。


 ツグミはそんな彼のことを見て、何度目になるのかわからないような溜息を吐くと、ツグミはショーマのことを見降ろし、そしてその場でそっとしゃがんだあと――ツグミはショーマに向かって、呆れつつもこう思ったのだ。


 ――こいつの奴ことはいつもいつも驚くことばかり。そしていつ見ても心臓が止まりそうなことを起こすけど、結局は結果として残す。


 ――何も考えずに結果を残すことは大変なことだし、こんな世界だからこんな形で残すことは至難の業だ。でも……、それでもショーマは残せるようなことを必死に足掻いてやる。


 ――僕はそんなこいつのことを見てきたから知っているし、それに、こいつがこんなに頑張る理由がきっと()()だと思うから……、()()()()()()()()()()()()


 ――好きでいるわけではないけど、それでも、何かと結果を出すショーマには何かと心の世話になったから、これ以上の意地悪はやめておこう。


 ――ショーマ自身も頑張ったんだし、それに、ファルナさんも助けられたからね。


 そう思いながらツグミはショーマの手の中にいるファルナのことを一瞥しつつ、そしていまだにブリッジをしているショーマに目を移すと、ツグミはもう一度ため息を零すと、ツグミは呆れるような音色でこう言った。


「まぁ安心してよ。僕の本心なのは本当だから。あといつまでブリッジしているの? 早くその状態から楽な姿勢になりなよ」

「まだ痛いんだよ……! 背中がびりびりしてて……っ!」

「あー。なるほど。じゃぁそのままファルナさんのことを降ろしなよ。ファルナさんもそのままだと息しづらいみたいだよ? 顔やばいし、うーうー唸っているし。彼女を下ろしなよ。一緒にブリッジはきついって。そのあとでショーマがその状態からうつぶせになって」

「あ………………………」

「…………………………本当、頭悪いね」

「うるせぇっっ!」


 そのような普段と変わらないような日常的でもありながら非日常のようなその光景で話をするツグミとショーマ。その言葉を聞きつつ、ファルナがまだ生きていることを聞いたクロゥディグルは安心のそれを吐くと同時に、心の中でクロゥディグルは思った。

 

 本当に、このお二人は仲がいいのだな……。


 そんなことを思いながらクロゥディグルは竜の姿で、喉の奥を小さく鳴らすと、その声を聞いていないツグミは今現在ショーマの腕の中で青ざめながら「う~う~」と唸っているファルナのことを今度はツグミが横抱きにする。


 しかし……、ショーマ並みの抱く力がないツグミは「うぉお!?」と言う野太い声を出し、ブルブル震える手で抱えその重みに驚きつつも、何とか落とさないように踏ん張りながらツグミはファルナをクロゥディグルの背に乗せる。


 その後でショーマは痛みを伴う背を上にし、そのままうつぶせの状態で安堵と癒しを含んだ声と表情で吐くと、その光景を見ていたツグミは驚きつつもショーマのことを見降ろし……。


 ――どこまで腕力鍛えているんだ……? と思いながらツグミはショーマのことを見た時、背中に感じた重みを察知し、その察知と同時にクロゥディグルは一度その進行をやめると同時に首だけで己の背を見降ろすように動かすと、クロゥディグルは荒げる声でこう言った。


「ファルナッ! 大丈夫か……っ!」

「わ」

「おぉぉっ!?」


 突然己の背中を見るために首を動かし、そして見つめているその光景を見たツグミとショーマは驚きの声を上げる。


 しかしクロゥディグルは二人のことを一時的に無視……ではないが、それでもクロゥディグルにとって一番の心配はファルナでもあるので、クロゥディグルはファルナのことを見降ろし、そして折れている腕と苦しそうな顔をしているファルナのことを見てクロゥディグルは苦しそうに顔を歪ませる。


 しかし、この場合クロゥディグルは心のそれを受けて顔を歪めている。ファルナが受けてきた迫害、そして同族からの差別を知っているからこそ、彼女が受けたそれを見た瞬間、居た堪れない気持ちになったのだろう。


 その光景を見つつ、クロゥディグルは驚いているツグミのことを見て、真剣な音色が含まれるそれを出しながらツグミに頼んだ。


「ツグミ様――頼みます。彼女に……、手当を」

「! 言われなくてもそうするつもり」

 クロゥディグルの願いを聞いていたツグミは、一瞬だけ放心状態になったが、それでもすぐに意識を現実に戻し、手に持っている杖に力を入れながら彼は杖を掲げ、そして自分とファルナの間に小さな魔方陣を浮かべると――ツグミはその魔方陣のことを見降ろしてスキルを発動した。



術式召喚(サモナーバインド・)魔法(スペル)――『召喚:ヒーリングバード』ッ!」



 ツグミがその言葉を放った瞬間、魔方陣が一際大きな光を発し、その光と共にその陣からずずずっと出てくる存在は、そのままぴゅぅっ! という空気を裂くような音を発すると、最初に出てきたその音について行くようにいくつもの存在が空に向かって上るように飛び、そしてそのまま上空で急降下をし、ツグミがいるその場所まで飛んできた。


 その存在は――白い羽を生やし、くちばしが鋭い小さな鳥で、現実世界で言うところのハミングバードのような姿をして急かしなく飛んでいる鳥系統の魔物――『ヒーリングバード』であり、その魔物は前にクルーザァーが出した魔物でもある。


 その鳥はまるで隊列を組むように――五羽で五角形の形になりながらぱたたたっと飛び、ツグミのことを見ながら首を傾げていた。なんとも可愛らしい。この場に女の人がいれば言うかもしれないが、今はそのような状況ではない。


 そんなハミングバードのことを見ながら……、いいや、ヒーリングバードのことを見ながらツグミは一羽一羽に話しかける。丁寧に、指を指しながらツグミは命令をした。


「よし――君はデュランのところに向かって、君はコウガさん達のところ。君は嫌だろうけどショーマのところに。忙しいけど頑張ってね。あと君はファルナさんの治療をしたら僕の近くで待機。君は僕と一緒にクロゥディグルさんの怪我の応対を。オーケー?」

「「「「「ぴぃ」」」」」

 

 ツグミの言葉を聞いていたヒーリングバード五羽は、可愛らしい音色をその小さなくちばしから発するそれを聞いたツグミは「よし――」と頷くと、そのままツグミは杖でみんなが戦っているその場所に向けて――


「――行け!」


 と号令をかけるように大きな声で言う。


 そんなツグミの言葉に反応するように、二羽のヒーリングバードはそのまま小さな翼をぱたたたたっと羽ばたかせていき、そのまま危険地帯でもあるその場所に向かいながら二羽のヒーリングバードは急いでいるようなそれを出しながら行ってしまう。


 急ぎながらその二羽の鳥たちはちゃんとツグミの命令通りにコウガとデュランのところにつき、それぞれのヒーリングバードはそのまま驚くコウガ達の傍で飛びながら小さな鳴き声を発したが、それを知るのはその場所にいる人にしか知らないことだ……。


 その光景を見て、ツグミは自分の肩に乗った一匹のヒーリングバードを横目で見つつ、ショーマの近くで「ちゅん……」と、なぜかショックを受けているような顔をしているヒーリングバードのことを見て、本当はショーマの近くは嫌なんだなぁ……。と思いながら見ていると……。


「!」


 ツグミはあっと言う声を出しそうになりながら――最後のヒーリングバードのことを見た。


 最後のヒーリングバードはファルナの近くで、折れてしまった腕を見降ろしながらぱたたたたっと、急かしなく羽ばたかせていると、ヒーリングバードはファルナに近づき、その急かしなく動かす翼を一際素早く動かし、その羽についているのか、その翼から出てくる緑色の粉をファルナに向けて落としていく。


 くるくるくると――ファルナの上を回りながらヒーリングバードはファルナの傷と、そして折れてしまった腕をその粉で治していく。


「え? 何してんの? あいつ……」

「見ればわかるでしょ? 傷を治しているんだよ。ちゃぁんと腕を修復する力を持っているからご安心を。と言っても、はなちゃんのようにしっかりと治せないからね。急ごしらえだから」

「えええええっ? マジで?」

「…………………………僕と二人っきりでやっていた時僕しょっちゅうヒーリングバード出したと思うけど……、忘れているのかな……?」


 ショーマはその光景を見ながら驚きのまま首を傾げ、その光景を見ながら目を点にしていると、ツグミはその光景を指さしながら事の詳細を簡単にいうと、ショーマは今まさにヒーリングバードの万能性を見て驚きを隠せないまま目を飛び出してしまいそうなその顔で見ていた。


 だがその光景を見ていたツグミは呆れるような……、と言うよりも疑念が浮かばれるような顔をしながらショーマを見ていたが、そんなショーマのことを見てすぐ、ツグミと今まさに治療を受けているファルナのことを見ていたクロゥディグルは、恐る恐ると言った形でツグミのことを見て――


「本当に治るのですね……」

「ああ。そうだね。でもこれは応急的なそれだし、このヒーリングバードの専売特許は傷の癒し。部位破壊の手当ては郷に戻ったらエキスパートがいるから、それまでの時間稼ぎなんだけど……、でも大丈夫だということは確かなんで大丈夫だと」


 と、クロゥディグルの言葉を聞いて、ツグミはその言葉に対して冷静でもあり、あとはハンナ(エキスパート)の手当てでできるように応急処置をしただけと言うことを告げた瞬間……。


「うぅ………………………」

「「「!」」」


 突然、ファルナの声が零れた。


 悲痛にも似た弱々しい音色だ。


 その声を聞いた瞬間、ショーマとツグミは驚きの声を上げるが、その声に上乗せを掛けるようにクロゥディグルがファルナのことを見降ろし、ファルナの名を必死に叫びながら何度も、何度も呼び続ける。


 その姿はまるで――本当の親子のように、このことを心配する親のようなその姿を見せて、ツグミとショーマの脳裏に思い出される親の像を映し出していくが、その記憶もすぐに消去されてしまい、目の前のことに集中することになる。


「うぅ、うう……、くろぅ……、さん? みんな……、なんで…………?」

「ファルナッ! 大丈夫かっ?」

「もう平気だよ。今けがの治療をしているから。あとは安静にしてて。あとは僕達でなんとかするから」

「もう安心だぜっ! 後は俺達に任せろっ!」

「そうだね。とにかくショーマはそのうつ伏せから早く復帰しようか」

 

 ファルナは零す。小さく、翳む視界の中で己の目の前にいるクロゥディグル達のことを見ながら彼女は小さな声で零すと、その言葉を聞いてクロゥディグルとツグミ、そしてショーマが各々思っていることを言いながらファルナに向けて告げると、その言葉を聞いてか、ファルナは一瞬だけ茫然とした無言になる。


 しかし、その後すぐ――彼女は……。


「う……。うう……。うぅぅぅ~っ」


 ファルナは、なぜか泣いてしまった。折れていない手でその目を覆い、泣いているその顔を隠しながらないているそのしゃっくりのような声を零しながら、彼女は泣いてしまった。その目の端から零れる涙をぬぐうことなく……、ぼろぼろと泣きながら……。


「え?」

「ファルナッ、どうした? どこか痛いのか?」


 その光景を見ていたツグミは驚きながらファルナのことを見降ろし、クロゥディグルに至っては困惑しながらワタワタとしてファルナのことを見ていたが、ファルナはそんな二人の言葉に対して返答も何もしない。


 ただただ……、ぐずぐずと泣いているだけ。


 本当に泣いているその光景を見ていたショーマは、そのまま起き上がり、そしてファルナになぜ泣いているのか聞こうとしたその時――ファルナはみんなに向けて泣いている声ではない声を発したのだ。


 小さな声で――掠れそうな音色で彼女は言った。


「――――――――――――」


「…………………………え?」

「…………………………ファルナ、何を言っているんだ?」


 ファルナの言葉を聞いた瞬間、その場にいたツグミとクロゥディグル、そしてショーマは驚きながらファルナのことを見た。


 その後ですぐになぜそのようなことを言うんだという言葉を、クロゥディグルの口から零そうとした瞬間――




「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!」




「「「っっ!?」」」


 突如として聞こえた『偽りの仮面使』の叫び。


 その声を聞いた瞬間ショーマたちは驚きな声がした方向――『偽りの仮面使』の方に視線を向けた瞬間、ツグミとクロゥディグル、そしてショーマその光景を見て……、その光景を見上げ、絶叫に近いようなその大音量を耳を塞ぎながら聞いていたコウガ、むぃ、デュランもその光景を見て言葉を失いながらその光景を見ていた。


「あぁ……? どうなってやがるんだ……?」

「え、えええええ………………………?」

「なんだ、これは……っ!?」


 その光景を見て、コウガ、むぃ、デュランは各々が思ったことを口にすると同時に、その光景を見上げて一体何が起きているのかと思いながらそれを見ていた。


 そう――ショーマ達と同じように、今まさに『偽りの仮面使』がその身を海老ぞりのように反り返り、その状態で絶叫を上げているその奇妙な光景を見て、コウガ達は言葉を零す。


 コウガはその光景を見て疑念しかない目で見上げていると、どこからか、何かが罅割れるような音を聞いたむぃはその音がした背後を振り向きながら見た瞬間……。


「――っ!」


 むぃは顔面を蒼白にさせながらその光景を見、俗吏と背中を這う悪寒に直面しながらその光景を見ていると、それと同時にデュランもその光景を見て、言葉を失うよりも攻撃の構えをとり、目の間で()()()()()()()()()()()()()()()()()()と対面をする。


「なぜだ……? なぜこんなことになっているんだっ!」

 デュランは荒々しく吐き捨てる。


 こんなことありえない。


 魔物で、こんなことができる奴がいること自体あり得ない。こんなの反則だ。そんなことを思いながら――デュランは槍を構え、そして一気に急転したその状況を再度非っきり返すことを心掛けた瞬間。


 ぶわり! と――デュランとコウガ達の背後から襲い掛かってくる髪の毛の手。


 それも――今までの比ではいほどの量であり、その光景を背後から見える影と悍ましいほどの気配を察知したデュランとコウガ達は、背後を振り向くと同時に見てしまう。目の前に広がる――いくつもの髪の毛の手達を。


 それはツグミ達も同じで気持ちで、なぜこうなっているのかという疑問がいくつも頭の中で出ながら見ていると、ショーマは匍匐前進をしながらファルナに駆け寄り、そしてファルナの近くで――


「おい! なぁ! さっきの言葉どういう意味なんだよ! なんでそんなことを言うんだよ! まだ終わってねえだろうがっ! まだこれからなのに――」


 と聞くと、それを聞いたファルナは、震える音色で、水を含んだ音色で――


「違うの……。ち、違う……っ。最初こそ、そう思っていた……。倒せるって……。これで、()()()()()()……、そう思っていた。けど、無理だった……。あいつは、やっぱり……、狡猾だった……っ! うぅ……! みんなの、目を――欺くために、演技、していた……! あんなの、勝てるわけないよ……っ! やっぱり、族長の言う通りだった……!」

「はぁ……? どういうことだよ……!」

「見て、わからないの……? あれを見て、わからないの?」


 と、ファルナは言った。ボロボロと泣くその顔で、ショーマに向けて言うと、それを聞いたショーマは再度目の前に広がる光景を目に映し、そして――記憶に刻む。


 目の間に広がる――傷を負いながらも着々とダメージを与えていた『偽りの仮面使』の傷が、その叫びと同時に体中を罅割れさせ、まるで脱皮のようにその皮を剥ぐと……、きれいさっぱりとその傷が無くなっているその光景を見て絶望にしか見えないその光景を見つめ、あろうことか脱皮をしたと同時に八つと二つあったその手が――その脱皮と同時に二倍に増えているそれを見て、ショーマは言葉を失った。


 十の手が二倍になり、そしてそれと同時に傷も治った。


 今までの苦労が台無しになった瞬間でもあり、そしてショーマの絶望が増幅した瞬間でもあった。


「!」


 その光景を見たショーマは、再度ファルナのことを見降ろしつつ、そして彼女が言っていた言葉を脳内で再生しながら、ショーマは思った。


 ――だから、あんなことを言っていたのか? ()()()()()()()、そんなことを言ったのか……?


 そう思いながらショーマはファルナに対して疑念と、疑心を抱き、ショーマはファルナのことを見降ろし、そして再度思った。


 ――ファルナは、俺達のことを……、騙したのか? だから言ったのかよ……! 


『ごめんなさい』って――!


 そう思いながら、ショーマは考えても考えても解決できないことに苛立ちを覚えつつ、それと同時に噴き出す焦りを抱えながら、今目の前で自分達のことを見降ろし、玩具を発見したかのような目つきで見降ろしている『偽りの仮面使』を見て、誰もがこの状況をこう思っただろう……。


 最悪だと。


 その言葉に更なる最悪を上乗せするように――『偽りの仮面使』はすでに二十本となった手を髪の毛の手達の手によってボキリとへし折っていく。


 以上にも見えたその光景を見て、ショーマ達は驚きで言葉を失ったが、『偽りの仮面使』は平然とした顔でいとも簡単に鞭や剣を持っていたその手をボキボキと折り、プラモデルのように外していくと、『偽りの仮面使』はそのままいくつもの手をふわりと――浮遊させていく。


 そう――二十もの己の手だったそれを浮かせ、そして髪の毛の手もうねらせながら、『偽りの仮面使』はにたりとショーマ達のことを見て――


「――カァッッッ!!」


 と言う叫びと共にその浮遊させていたその手を一気にショーマ達に向かわせたのだ!


 彼らのことを――いいや、クロゥディグルのことを握り潰そうとする勢いで向かうその手を見て、ショーマ達は驚きのまま強張り、そしてその手の攻撃の――否、その手の中に吸い込まれて行くような光景を目のあたりにしてしまった。


 もう終わりだ。そうツグミが思った――瞬間。

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