PLAY91 ファルナの試練②
「それじゃ――初めまして、って言っておこうかな? 私はファルナ。この近くにある鳥人族の郷の住人で『生物』の魔女。そして……、試練官で~す」
「お、お前が試練官? マジでか……」
「マージでーす」
その人の言葉を聞いて誰もが驚いて言葉を失っている。
それは私もヘルナイトさん。そして今まで自慢げに他力本願を宣言した京平さんでさえも言葉を失いながら……、あ。違う。京平さんの場合は言葉を失っているんじゃなくてあまりの衝撃に言葉を発することができないだけ。
そんな状態で私達は見る。
薄い緑色の少し跳ねた腰まである髪の毛にオレンジを基準とした少し角ばっているベレー帽に着いたリボン。そして帽子と同じようにオレンジを基準としたベストに白いスカート。はたから見るとその光景は女子高校生が着るようなものに似ている。そのオレンジの服のほかに、白いノースリーブブラウスに黒いリボンをして、袖がない腕には薄オレンジ色の布を巻いているようだけど、赤と黒のチェック柄の裾が似合っている。そしてショートブーツもオレンジで、そして黒いタイツを履いた少しだけ吊り上がった金色の目が印象的な人間に近いその人――ファルナさんのことを見ると、ファルナさんはニコニコとした顔で私達のことを見つつ、周りを見ながら足元を見降ろして彼女は口を開いた。
背中に手を回して片足を上げて見降ろしながら――彼女は足元を見て言った。
「それにぃ……、お久し振りですねクロゥディグルおじさん。お元気でしたか? 私は見ての通り息災ない人生を送っています」
「え? クロゥさんお知り合いだったんですかっ?」
ファルナさんの言葉を聞いたつーちゃんは驚きの声を上げながらクロゥさんのことを見降ろし……、と言うか、クロゥさんの大きな大きな背中を見降ろしながら驚きの声で言ったのだけど、それを聞いたクロゥさんはつーちゃんの驚きの声を聞いて「あ、はい……」と、竜の声で頷きのそれを示すと、クロゥさんは私達を背に乗せた状態でゆったりとした飛行を一旦やめてから言葉を零す。
「ファルナ……、いいや、厳密には鳥人族と竜人族は昔から親交が深い一族で、たまに顔を合わせることがあっただけのことです。前に会った時は確か……」
「私が大体五歳の時ですね!」
「ああ、そうだな」
その言葉を聞きながら、みんな唖然とした顔でファルナさんのことを見ている。
唖然としながら……、意外と普通の子だなと思いながら見ていると思うけど……、私だけはファルナさんのことを見て、警戒のそれを怯えるように出しながら見ていた。
びくびくと心に芽生えてしまった根強い不安を剥き出しにしながら、私はファルナさんのことを見る。
あの時――初めて私達の前に姿を現した時に見せたあの全く見えないもしゃもしゃ。
何も考えていないんじゃない。まるで感情そのものがないような、人形でもなければ人間でもない……、あ、違う。人形でもなければ鳥人族でもないようなそれを隠し、私達に近付きながら話しているファルナさんのことを畏怖の人物として私は見てしまう。
今まで見ていたもしゃもしゃが全く見えない。
そんな予想だにしない事態に戸惑い、そして他の人を見ると見えるのにファルナと言う人を見た瞬間見えなくなるようなその現象に、私は恐怖そのものを感じながらファルナさんを警戒するような目で見てしまう。
「ハンナ? どうしたの?」
「腹痛いのか?」
「ハンナ……?」
私の近くにいたシェーラちゃんとシロナさん、そしてヘルナイトさんが私の異変に気付いて声を掛けてくる。
ヘルナイトさんに至っては私の背に手を添えながら聞いてきて、その優しさを肌で感じた私だけど、その優しさも今となっては全然効果のないことで……、私はそれを聞いても、受けても全然言葉を返す気力がなかった。
返す気力がないというよりも、ファルナさんがあまりにも怖くて見ることもできなくなり、その人の話を聞くことも怖くなっていたから、聞くことができなかったのかもしれない。
恐怖による拒絶。
そう言ったほうがいいのかもしれない。
今まで悪人と言う悪人には会ったと思うけど、ファルナさんはその中でも異質なそれを持っている。そう直感が囁いた。
アルテットミアではエンドーさん、カイル、そして『六芒星』
アクアロイアではネルセスや亜人の郷で会ったジンジと言う人。
バトラヴィア帝国……違う。今はバトラヴィア共和国で、そこでは元帝国の兵士や『盾』、駐屯医療所のブラウーンドさんや『BLACK COMPANY』に『バロックワーズ』
そして……、ネクロマンサー。
色んな悪い人、怖い人に出会い、これからも怖い人に出会うと思うのだけど、味方だけど怖い人に関しては、初めてな気がする。そう私は思った。
だって――悪意すら感じられないような顔を、表情をしているのに……、その心は全然違う思考で満ち溢れている。それが怖くて仕方がなかったから……。
そんなことを思っていると、ファルナさんのことを見て、そして疑問を抱いているのか、アキにぃが思い切ってファルナさんのことを見て、慎重に――
「あの、あなたがファルナさんだということは分かりました。けど……な」
と聞いた瞬間、ううん。どころかアキにぃの言葉を聞いていたのか、ファルナさんはクロゥさんとの会話を一時中断すると同時に、少し遠くの背後にいたアキにぃのことを振り向きながら、ファルナさんはアキにぃに向かってこう言ってくる。
ずずずぃ! と、翼を羽ばたかせると同時にアキにぃに急速に近付いて行くと、彼女は至近距離で、鼻と鼻がくっつきそうなほどの至近距離で驚きの顔を浮かべているアキにぃのことを見つめながら、ファルナさんは笑顔に溢れる様な声でアキにぃの言葉を遮ってきた。
「あ、君アキくんだよねっ? 知っているよ。よく聞いているもの。妹ちゃんのことが大好き過ぎる変な人だって。よく聞いているし私もあなたのこと初めて見たけど、本当に妹のことが大好きーっていう雰囲気出しまくりだね。私のことも敵対心剥き出し。丸見え~」
「っ!?」
『――っ!?』
ファルナさんの言葉を聞いて、アキにぃがぎょっとしながら顔中を青くさせて言葉を失う。
それは私達も一緒で、ファルナさんに対しての警戒心が更に上がったのは――言うまでもない。
どころか……、まだアキにぃのことを話していないのに、アキにぃの名を話していないにもかかわらず、ファルナさんはなぜかアキにぃの名を知っていて、且つアキにぃが一体どんな人なのかも知っているかのようなことを隠すこともなく告げたのだ。
まるで――全部知っているかのような口ぶりで……。
それを聞いた瞬間、アキにぃの顔から生気と言うものが失われ、そして私達の警戒もマックスに跳ね上がり、そしてファルナさんという存在を敵として見なしそうになる。
ラドガージャさんは彼女のことを知っていたけど、本当なのか? 本当に味方なのか? そんな疑心が、私達のことを襲う。
言いようのない、グネグネとしているようなもしゃもしゃを放ち、それをファルナさんに向けながら……。
そんな光景を見てか、ファルナさんは私達の視線に気付き、アキにぃから視線をそらしてからすっと私達のことをもう一度見回すように見つめると……、ファルナさんは言った。
「あれれ? もしかして私のこと疑っている? でも私嘘なんて言っていないでしょ? だってこのアキくんはアクアロイアの亜人の郷の近くで『六芒星』に対して殺そうとした。そして仲間の静止の声を聞かずに銃を乱射して大暴れした。これも本当のことでしょ?」
ファルナさんは言う。笑顔で、ニコニコとしながら、ファルナさんは言った。
それを聞いた私達は、愕然と言うか……、得体のしれない恐怖をファルナさんから感じ、そして体感しながらその恐怖を体に刻む。
だって……、アキにぃが暴れたことも、そして『六芒星』と相対したことなんて、誰にも話したことがないのに……!
話していないことがどんどんと、初めて出会う人の口からこぼれ出てくる。
それはまさに、自分の情報なのに赤の他人がそれを知っているかのような、気持ち悪さと、恐怖……。
感じたことがない……、体験したことがない恐怖そのものだった。
ヘルナイトさんは頭を抱えて何かを思い出したかのような顔をしていたけど、それを見る余裕もないまま私は未だにニコニコとしているファルナさんのことを畏怖そのものとして見ると、ファルナさんはそんな私達のことを見ながら……。
「あれれ? なんで黙っているの? 私はほんとのことを言ったのに、みんな何か言ってほしいんだけど~? どしたの?」
と言う。
体を曲げつつ、唇を可愛らしく尖らせながら言うけど……、可愛いなんて言う印象は今のところこれっぽちも感じられない。どころかその可愛い仕草も怖い仕草に見えてきて、異常性をふつふつと剥き出しにしていくようなそれを感じながら、私達は見つめてしまう。
この人は、本当に異常だ……。
そう思うと同時に、私は次の言葉を思う。
ラドガージャさんの言葉を思い返しながら、私は思う。
なんで……、この人は私達の情報を、私達しか知らなう譲歩を知っているの……!? と。
クロゥさんが荒げる声でファルナさんのことを止めているけど、ファルナさんはそんなクロゥさんの言葉を無視するように「聞いているの~?」と言いながら私達に聞いてきている。
その光景を見ても異常で、ラドガージャさんのあの奇襲が可愛く見えてしまいそうになる……。
そんなことを考えていると……、突然ファルナさんに向けて声を荒げてきた人物がいた。
「てめぇが変なことを言うからだろうが……っ! 突然出てきて変なこと言いだす怪鳥もどきがっ!」
「んん?」
その言葉が聞こえた瞬間、ファルナさんはそのまま前屈みになりながら体を曲げ、そのまま足の間から覗き込むようにしてその人物のことを見る――ううん、彼女の場合見上げるのほうがいいのかな? ファルナさんはその状態で背後にいる人物のことを見た瞬間、その人物はファルナさんの顔を見ながら荒げる声で言った。
「つーか……、突拍子もなく現れて、そのあとで変なことを言い出す。お前頭おかしいんじゃねえのかっ? 頭のネジ一本どころかいくつも取れてなくなってんじゃねえのかっ? あぁっ!?」
「コ……ッ! コウガさん……っ!」
むぃちゃんは京平さんと一緒に泣きながら抱きしめ合い、そして声を放った人物――コウガさんの名を呼びながら言うと、それを聞いていないのか、コウガさんはファルナさんに向けて苛立ちを剥き出しにしながら大きく舌打ちをすると、コウガさんはファルナさんに向けて更なる怒りをぶつけようとした時、ファルナさんはそんなコウガさんのことを見て一言――。
「取れてないけど、なんとなーくここで暴露すると何か楽しい事が起こるかなーってやってみただけだよ? 人が知らないことを暴露されたらどうなるのかな? とか、あとはその暴露を聞いてその人の印象が一体どのように変わるのかなって、なんとなーく思ったからしただけだよ?」
「な、あ……っ! はぁ……?」
「コウガさんだってそうでしょ? 昔したことがあるでしょ? わからないがゆえに探求心ゆえに行動。わからないことがあればそれを徹底的に追及するその行動力。私はそれを模してやってみただけなんだけど? あれ? もしかして変だったかな? 見た通りのことをしたまでなんだけど?」
「んだよそりゃぁ………………、お前、イカレてんぞ……!?」
「えぇ~? また変なことなのぉ? どれが正解なのかよくわからな~いなっ」
「!」
その言葉を聞いて、コウガさんの言葉がつまり……、そして返す言葉もないまま固まってしまう。
それは私達も同じで、ファルナさんの異常な言葉に、誰もが言葉を失ってしまった。けど……、そんな中でもたった一人だけ、ファルナさんの言葉に対して怒りを覚えていて、そして頭で考えるよりも感情で動く人がそこにいた。
「なにが、何がなんとなくなんだよっっ! そんなの……、身勝手な攻撃と一緒じゃねえかっっ!」
「?」
その言葉を放った人物の声に驚きながら、ファルナさんは曲げていたその体の体型を直立に戻し、そのまま彼女は声がした右の方向 (ファルナさんから見て)を見ながらファルナさんは首を……、と言うか、体を右に曲げながら傾けると、声を荒げた人物はファルナさんのことを睨みつけ、そのままずんずんっと歩みながらファルナさんに迫っていく。
「あ、ちょっと皆様落ち着いて下さ……!」
クロゥさんの静止の声が聞こえたけど、その言葉に静止の力は僅かだったのか……、誰もその言葉を聞いて止まることをせず、そのままファルナさんに向かってその人は……。
しょーちゃんはファルナさんに向かって怒りをぶつける。
コウガさんのような冷静と怒りが混ざっているそれではなく……、しょーちゃんは感情の怒りをぶつけながらファルナさんに向かって言ったのだ。
「あんた……なにしたのかわかっているのかっ?」
「会話でしょ? そんな変なことじゃないと思うんだけど」
「あれのどこが会話なんだよっ! ただ人の話したくないことや隠したいことを暴露しただけだ! 仲良くなろうとか思ってやっているのかもしれねえけど、やっていること全然逆効果じゃねえかっ!」
「えぇ? そうなの? でも会話を弾ませるためにはネタが必要だって」
「会話のネタなんて色々あるだろうがっ! これは異常だろうが! あんたそんなことをして楽しいのかっ!? あんたがこれなら、まだラドガージャさんの方がましだったよっ! 王都にいる鬼不神さんの方がまだましだったよ! 怖かったけど」
そうファルナさんに向かって講義をするように荒げるしょーちゃん。
しょーちゃんのその行動を見てつーちゃんは慌てながらしょーちゃんのことを止めようと動こうとするけど、しょーちゃんはそれを気にすることもなく、そのまま荒げる音色でファルナさんに向かって続けて言う。
「でも、あんたがやっていることは、とことん異常としか言いようがないって!」
「異常異常っていうけど、それって具体的にどんな風に異常なの? 其処を詳しく説明してくれないと困るんだけど?」
でも、しょーちゃんの言葉を聞いたとしても、ファルナさんは首を傾げながらしょーちゃんのことを見て、意味が分からない。そんな顔を向けながら言ってきたので、そんなファルナさんの言葉に、更なる苛立ちを覚えたしょーちゃんは見開かれた目を更に見開かせて、そしてそのまま彼女の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。
ばっと――素早い動きで伸ばし、そのままファルナさんの服を掴もうとした。けど……。
「おっとっ」
しょーちゃんが彼女の服を掴もうとした瞬間、ファルナさんは背についているその翼をばさりと羽ばたかせ、そのまましょーちゃんから距離をとりながら彼女は私達の上を浮遊する。
ばさり、ばさりと羽ばたかせながら、ファルナさんは「あはは!」と場違いの笑いを上げながら彼女はしょーちゃんに向かって言う。
「あははは! あなた面白いねっ! まさか勝てると思って突っかかったの? 私は魔女だよ? マースのおじさんとは違うけど、そこそこ強いんだから。あなたとそこにいるハイエルフの僕はマースにかすり傷一つつけることもできなかったのに、勝てると思っていたとかかなりの自意識過剰なんだねー! それだったらあっという間に捕まるのも頷けるよー! あはは」
「っ! 落ちて来やがれっ! 飛ぶとか卑怯だぞっっ!」
「私鳥人族だもの。飛ぶことが卑怯なんて言う言葉、私の記憶にはないもの。それにそれは敵に言うセリフでしょ? なんで私にそれを言うのさ。私はこう見えて仲良くなろうとして言っているのに~? ひどぉ言い方だよ? それだと傷ついちゃうよ、私」
「お前がさっきから言っている言葉も傷つくような言葉だ! 言われたくないこととか、見られたくないことを言われたら、誰だって傷つくに決まっているのに、なんでそんなことを言うんだっ!」
「知らないもん。私はあなたたちのことを逐一知って入るけど、会うのは初めてだし、そこらへんは大目に見てよ。そんなこと言っていると、君たちの試練無条件で不合格にするけど? いいの?」
「お、脅しかよ……っ! それ……! やっていい事と悪い事があるだろうがっ! お前頭おかしいんじゃねえのかっ!?」
「私は王様の命令を聞いただけだし、受けさせるのも受けさせないのも私の自由でしょ? なんでそんなに怒るのさ。私は何も悪いこと言っていないよ? 正直なことを言っているのにー」
長い間、空を飛んでしょーちゃんのことを見降ろしているファルナさんと、しょーちゃんの会話が続いている。
しょーちゃんの言うことに対してファルナさんは斜め上のような返答をしていて、その返答を聞いていたしょーちゃんは言った。
頭がおかしいんじゃないか。
その言葉を聞いたとしてもファルナさんはやっぱりわからないという顔をしながら首を傾げて、明るい表情と困った顔を混ぜたような顔で言う。
何にももしゃもしゃを出さないで、彼女は言う。
それを見て、私はますますファルナさんという存在を怖いと感じてしまう。だって……、ファルナさんの感情が全く読めないから、まぁ普通は読めないのは当たり前なんだけど、それでもファルナさんが一体何を考えているのか全然理解ができないのだ。
なんだろう……。この異様な気持ちと感覚。
まるで――彼女自身その表情を取り繕っているかのような顔で、笑顔を向けているのに笑顔の仮面をつけている無表情の人にしか見えなくなっている……。
だから、だからこそなのか……、怖いと思ってしまう。
なんだか異様に馴れ馴れしいし、それに人の気持ちを全く考えていないような言い方。
言葉もそうなんだけど、何だろう……。ラドガージャさんの時は考えが見えていたのに、ファルナさんは考えどころか、私達のことをどんな目で見ているのかも分からない。
それが、恐ろしくてたまらない……。
彼女は、張り付けた笑顔で何を考えているのだろう……。
そう思った、その時……。
「ファルナァァァァーッッッッ!」
「どこにいるんだーっっっ!」
「!」
『!』
「あ、あれは……っ!」
突然聞こえた別の声。
その声はファルナさんの声でもなく、みんなの声でもない。本当にこの場にいない別の人の声だ。
その声を聞いた誰もが声がした真正面を――クロゥさんの頭がある方向を見て、ファルナさんもその方向に目をやり、クロゥさんは正面を見て驚きの声を上げた瞬間、クロゥさんの前からくるその人物達は私たちを見て驚きのそれを向けた。
目の前に来たその人達は、まるで鳥の姿をした人間……、うーん。違う。何といえばいいのか……。
そう! その人達は鳥が人間の言葉をしゃべっているようなそんな人達で、服装は簡素で、布で作った民族風の服を着ていて、鋭い鉤爪に大きな翼を羽ばたかせながらその人達は……、違う。その鳥達は私達を見つけて、そして慌てながら来たのだ。
顔も、翼も、尻尾も、すべてが鳥そのものなのに、人間の言葉をしゃべりながらその人達は……、ああ、いや、その鳥人の人たちはクロゥさんに近づき――
「これはこれはクロゥディグル殿! 御足労掛けました」
「いや……私は大丈夫です」
「え? この人鳥人さん?」
「ん?」
と言って、先頭を飛んでいた黒い身体と黒い嘴が印象的な……、まるで烏のような姿の鳥人がクロゥさんに向けて話している。
その隣で飛んでいる若い烏の鳥人さんを連れて、クロゥさんのことを見て驚きと申し訳なさを出しながら言うと、それを聞いていたクロゥさんは竜の首を大きく振りながら大丈夫だと言うと、それを聞いていたエドさんと善さんが首を傾げながらその二人のことを見て、そして飛んでいるファルナさんのことを交互に見る。
それは私も同じで、きっとエドさん達と同じように、みんなもその烏の鳥人さんのことを見ながら思っただろう。
なぜファルナさんは人間に近いような姿をしているのに、烏の人達はこんなにも鳥に近い姿をしているのだろうと、なぜこんなにも同じ種族なのにこんなにも違うのだろうと思っていると、最初にクロゥさんに話しかけてきた烏の鳥人さんが、ファルナさんのことを見てはっと息を呑むと、そのままブワリと上空に飛んで行き、そしてファルナさんに近付き、彼女の名を呼びながら――
「一体何をしているんだっ! また失礼なことをしているのかっ? こんの逸れものめっっ!」
?
今、あの人、ファルナさんのこと『はぐれもの』って言った? そしてまたって言った? まさかこんなこと多々あるってことなのかな……?
と言うか、なんで逸れものって呼ばれているのだろう……。そんなことを思っていると、ファルナさんに近付いたその人はファルナさんの腕を足でがしりと掴み、そして彼女のことを引っ張りながらその鳥人さんはファルナさんに向かって怒鳴る。
「さぁファルナッ! こっちにこいっ! ほら来いこの異常めがっっ!」
「めてよもぉ! そんなことをしなくてもいくよーっ! だから引っ張らないで! 服のびるーっっ!」
「そんなへんてこな服を着るなら鳥人族の正装を見に纏えっ! それをしないから鳥人族は異常な種族と呼ばれてしまうんだぞっ? お前のせいで我々の見方が変わってきているんだからなっ! 少しは恥を知れ! 一族の恥めがっ!」
「あーもぉー! ひっぱるなーっっ!」
烏の鳥人さんに連れていかれ、ファルナさんは暴れながら連行されて行ってしまう。
その光景を見ながら、私達は唖然としながらも、今まであった怖いという感情が無くなり、安堵と言うか、嵐が過ぎ去ったかのような緊張の糸が切れたそれを感じ、私はほっと息をついてしまう。
他の人も茫然としながらその光景を見て、しょーちゃんは未だに怒りを剥き出しにしている顔で「がるるるっ」と唸っていたけど……、しょーちゃん、ヘルナイトさん、今まで寝てたシリウスさんにその光景を唯見ていたデュランさん以外のほとんどの人が緊張の糸が切れたかのようにその光景を、嵐であったファルナさんのことを見ていた……。
一体何なんだったんだろう……。そんなことを思っていると、ファルナさんを連れて行ってしまった烏の鳥人さんと一緒にいた若い烏の鳥人さんがふわりと両手を羽ばたかせて飛び、そしてクロゥさんと、私達のことを見降ろしながら彼は飛びながらも器用に頭を下げて――
「皆様――先ほどはファルナが大変失礼なことをしてしまい、不快な思いをさせたでしょう。そのことに関してはこちらの不手際でもありますので、この場を持ってお詫びを申し上げます」
と、丁寧な言葉で若い烏の鳥人さんは頭を下げてきた。
その器用ような光景を見て、私はおろか、みんなが驚きの顔を浮かべているけど、その光景を見て、そしてむぃちゃんのことをしっかりと抱きしめていた京平さんは、泣きべそをかきながら――
「だったら早く来てくれぇっっ! 危うく俺ハートが壊れそうだったべぇっっ!」
と、大きな声で、泣きじゃくりながら叫ぶ京平さん。
その光景を見ていたリカちゃんは、大きな大きな圧縮球に身を預けてゴロゴロと転がりながら「かっこうわるー」と言っていたけど、その言葉に対して聞こえていないのか、京平さんは未だに若い烏の鳥人さんのことを見て「どういうプレイなんすかっ!? どんな仕打ちなんだべっっ! もうあんな子は俺の視界に入れるなぁ!」と、泣き叫んでいたけど、若い烏の鳥人さんは京平さんの言葉を聞きつつ、私達のことを見ながらくるりと自分達が来た方向に体を向けると――その人は私達に向かって言った。
「大変不快な思いをさせて今いまして申し訳ございません。お詫びを兼ねて――これから鳥人族の郷へと案内をしたします。そこで此度の試練のことを話しますので」
「そうか」
若い烏の鳥人さんの言葉を聞いてクロゥさんは頷くと、若い烏の鳥人さんはそのままクロゥさんの前でばさりと羽ばたき、飛行する。
真っ直ぐ――正面に向かって。
その光景を見てクロゥさんは私達のことを目だけで見ると、いつもの冷静な音色で「行きます。落ちないように気を付けてくださいね」と言いながら、大きな大きな竜の翼を羽ばたかせ、若い烏の鳥人さんの後を追いながら飛行する。
その目から零れる――複雑なもしゃもしゃを出しながら……。
□ □
一時危ない目に遭いそうになったけど、それも何とか乗り越えて私達は鳥人族の郷に向かう。
鳥人族の郷に着いた後、一体何が起きるのか。
そしてファルナさんと他の鳥人族さんが見せた軋轢のような光景と、ファルナさんの何も感じられないあのもしゃもしゃ。
それが一体何なのかわからないまま、私達はきっと答えがあるであろう鳥人族の郷に向かって行く。
そこ行われる試練が一体どんなものなのか、そしてその試練を受ける人達が誰なのかまだ知らないけど……、それでもこれだけは分かる。
試練を課せる人――ファルナさんの試練は絶対に……。
クレイジーだと。




