PLAY90 ラドガージャの試練②
「なぁにをやっておるんだぁーっっっっっ!! こんの愚か者おおおおおおおおおおおおおおおっっっっ! すぐにこっちに戻ってこおおおおおおおおおおいっっっ! 馬鹿たれがああああああああああああ!!」
『っっっっ!?』
「っ!」
「ほえっっ!?」
突然聞こえたその声はすごく高い上空にいた私達の耳にはっきりと……、ううん。そんな次元じゃない。どころか私達の耳の近くでダイレクトに叫んでいるような大声で叫んだその人。
声からして……、初老に近いような声でかなり野太い……。そして五月蠅い……。本当に五月蠅いと思ってしまう……。あまりの大きな声に、と言うかその大声だけで草木がまるで台風の風に当たってしまったかのような大きな音で揺れ、超音波のような声も聞こえる……っ!
な、なんでこんなに大きな声が出るの……っ? というか……、あれ……? なんか……? 頭がぼーっと……?
あれ?
私は驚きながら目を点にしてその声を聞いていたけど、次第になんだか体が変になる様な、まるでぐあんぐあんっと平衡感覚がなくなってしまったかのような感覚を覚えながら、その声を聞いたと同時に私の頭が――パンクしてしまった。
本当に足がふらついてしまうような……、そんな感覚を覚えながら……、私はふらふらしながら辺りを歩き回る。
他の声も聞こえるけど……、視界がぐるんぐるん回っているせいでよくわからない。でも分かることはある。
私――現在進行形で目を回しているみたい。
「あわあわあわあわあわあわ……っ」
超音波で、爆音に近いようなその大声を聞いた私は、近くでもないのにまるでダイレクトに耳に向けて放ったかのような大声を聞いてふらついてしまう。もう目も蚊取り線香のようなぐるぐるをしていると思う。本当に、視界がぐるぐるしているからそうだと思う……。
ああ、何か思っていることがなんだか曖昧な気が……。そう思いながらふらふらとしながら歩いていると……。
「ハンナ……ッ! しっかりしろっ」
そんな私の光景を見てかヘルナイトさんが頭痛が収まって不通に戻ったらしく、私の肩を掴みつつ、そのまま支えるようにして抱きかかえる。まるで――そのまま私がヘルナイトさんの胸に向かってダイブするような形で……。
「あ、ありがとうございます……。ヘルナイトしゃん……」
「大丈夫か?」
「まだ頭がぐわんぐわんしましゅ……。そう言えばみんなは……?」
「みんなもあの大声を聞いて耳を塞いだり、目を回したりしている。しばらくは動けそうにないな。ハンナ……君は大丈夫なのか?」
「わ、私は大丈夫でしゅ……、な、何かヘルナイトしゃんが三人に、あれれ? なんか六人に増えました……」
「そうか……、なら少し落ち着くまで休んだ方がいい。それに、あの声には聞き覚えがあるから大丈夫だろう」
「ふえ?」
ヘルナイトさんは言う。私のことを抱えた状態で凛とした音色で言うと、その声と言葉を聞いた私は目をいまだにぐるぐると回しながら首を傾げる。ああぁ……、未だに視界がぐるんぐるん……。もうなんか、気持ち悪くなってきたような気が……。
これが、目を回すと船酔いのような気持ちになるっていうのかな……?
そんなことを思いながら私はヘルナイトさんの腕の中でその話を聞いていると……、突然クロゥさんの声が私達の耳に入ってきた。
「皆さん! このまま下に降下します。できるだけ安全を心がけますが、もしもの時があります。落ちないように気を付けてください!」
「や、やっと……、なのね……」
「ようやくかよ……。キンキンする……っ!」
「はにゃにゃにゃにゃにゅにゃにゃにゃ~?」
「あらほれんぴれ~」
「う、うるせぇ………っ! まだキンキンする……っ!」
「ん」
クロゥさんの声が聞こえると同時に、ゆっくりと、本当にゆっくりと私達のことを心配してなのか本当に慎重に降下をしていくクロゥさん。
降下すると同時にしたから噴き上げる上昇気流のようなそれを感じながら、私はヘルナイトさんの腕の中でその空気を肌で感じていた。クロゥさんの言葉が出た後、シェーラちゃん、コウガさん、むぃちゃんとしょーちゃん、シロナさんと善さんの声が聞こえたけど、目が回っているせいでよく見えない。
あれれ? なんか空でぐるんぐるん回っている何かがある様な……、気のせい……、かな? 鳥……かな?
そんなことを思いながらどんどん降下していき、どんどん地上に向かって近づいて来る。目を回してても分かる。鼻腔に入ってくる土の匂いと埃っぽい何か、草木の匂いが地上に近付いているという合図を送ってくれる。
それを感じていると、どこかから声が聞こえた。その声は――キョウヤさんと、あとは……、あ、白い蜥蜴人の声だ。その声が聞こえたけど、一体何を話しているのかわからない……。一体何の話をしているのかもわからないけど、今はこのぐわんぐわんする状況を何とかしないといけない。
そう思いながら私は、ヘルナイトさんの腕の中でどんどん降下していき、地上に着くその時を待ちながらその腕の中で一時的な疲れを癒していた……。
キョウヤさんとその白い蜥蜴人が何を話しているのかも知らないまま。
「な? わかっただろ? オレ達はそんな怪し輩じゃない。それはあの子が……、ハンナっつー女の子が証明してくれた。あの詠唱……、聞いたことがあるんじゃねえの?」
「…………………………」
「クィーバとかよくわかんねー地名を聞いたけど、オレたちはそんなところ聞いたこともねーし、それにそんな街に行くほどオレ達は余裕じゃねーんだよ。こう見えてオレ達その間所に向かって一直線だから、そんな場所に行く時間もねぇことわかっている。お前が思うほど、オレ達は必死なんだってこと……、少し理解してもらえると助かるんすけど……? どうなんすか?」
「理解はしました。あの力はまさしく『大天使の息吹』。その光景を見ていた魔女たちから聞いた情報通りの光景です」
「なら……、偽物宣言撤回ってことで……、いいんですよね?」
「ええ。確かに前言撤回します。あなたたちは確かに偽物ではありません。あの浄化を持つ少女の目に、偽りなどと言うものなど一切感じられなかった。クィーバの者たちが見せる様な目ではなかった。たとえ隠したとしても、その微かな誤差が漏れることが必然」
「で?」
「ええ。信じましょう。歓迎いたします。御一行様方」
「…………手洗いおもてなしどうも。絶対に一つ星評価っすよ……」
「何度でも構いません。非難を言われようとも構いません。私がしたことは事実なんですから。そして……、今の行いを見て確信しました。あなたは強い」
「まぁ……、よく言われますけど……」
「だからこそです。あなた方に貸せる試練が一体どうなるのか……、楽しみです」
「?」
何を言っているのかわからない。思考も何もかもがぐるぐるの世界になってしまっている中、そんな聞こえているような、聞こえていなうような会話を流し聞きしながら、私はヘルナイトさんの腕の中でクロゥさんが地上の降りるのをじっと待っていた……。
あ、違う。
目を回しながら待っていた。本当に、船酔いをしたかのように目を回しながら待っていた……。
ううぅ……、何か、気持ち悪い……っ。
□ □
それから、私達はと言うか、ほとんどはクロゥさんが飛行をしていたので私達は何もやっていない。ただ白い蜥蜴人に証明するために行動しただけ。そして目を回しながら降りるのを待っていただけ。
一言で言うのならば――ほとんどやっていない。
そんな状況の中、みんなも目を回して酔ったような感覚に陥っていたらしく、嗚咽を吐きながら口を押えている人や、頭を抱えている人、そして気持ち悪そうにしている人など様々いて、その中でも特にひどいそれを浮かべてたエドさんは「おおおおおぉぅっぷ………っ!」と声を漏らしながら鉄のマスク越しで口元を押さえながら吐くのを耐えていた……。
あまりの突然の酔いを受けながら、私達は何とか治まりつつあるその酔いと寄り添いながらクロゥさんからゆっくりと下りて、ようやくと言わんばかりの地面に立つ。
すとんっと足をつけると、アルテットミアやアクアロイア、バトラヴィア帝国……、あ、違う。今となってはバトラヴィア共和国で今まで感じていた土の感触が、今となっては懐かしい気持ちで、その地面に着いた途端ほっと胸をなでおろすような安心感を感じた。
やっぱり……、人間って地面につかないと落ち着かないのかな……?
そんなことを思いながら少しだけ酔う気持ちと格闘している私は、未だにヘルナイトさんの手を握りながらよろめいた足で立っている。皆は頭を抱えたり、肌色の顔を白くさせながら唸る声を上げている……。私と同じくらいみんなもあの声を聞いて酔うようなそれを感じたのだろう……。
今にして思うと、何で大声を聞いただけで酔うような、気持ち悪いようなそれを感じてしまったのだろう……。今考えても分からない。じゃない……。考えたとしても今現在頭がグラグラしているから全然考えるというそれができない。
そんなことを思っていると、ヘルナイトさんが私の手をぐっと握り、そしてその場で屈んで私の顔を除きながら凛とした音色で私の名を呼んできた。
その声を聞いた私は未だに目を回すような、そんな気持ち悪いようなそれを感じつつヘルナイトさんのことを見ると、ヘルナイトさんは私のことを見て、一呼吸私の顔をじっと見つめた後、ヘルナイトさんは徐に私の手を掴んでいない手を上げて、そのまま私の頭に『ぽふり』と手を乗せると、そのままヘルナイトさんは突然……。
「すまない」
「へ?」
と、突然謝ってきたのだ。それを聞いた私は首を傾げながら、『何を?』や、『なんで謝るんですか?』という言葉は真っ先に思い浮かばず、そのままへんてこな声を上げて首を傾げると、ヘルナイトさんはそのまますぐに立ち上がり、そしてそのまま私の右横に立った瞬間――
――ひょいっと、私の体が宙に浮いた……。じゃない。これは、今までも感じたことがある感覚。えっと、確かマドゥードナや帝国に向かう時にも体験して、何度も体験したような感覚。
膝裏と背中に感じるぬくもりを感じながら……、私はぐるぐると回る視界の中でヘルナイトさんのやることにされるがままになっていた。何をされているんだろう……、そんな感覚で……。
そんなことを思いながらぐるぐる回る視界の中でヘルナイトさんは凛とした音色で「足元がおぼつかなかったからな、少しの間我慢してくれ」と言うと、それを聞いた私は、酔っている頭で思考が定まらないまま頷くと、その頷きと同時にあの時聞こえた初老の老人の声が私達の耳に入ってきた。
「すまなかったな! 王から聞いている! 先ほどは失礼なことをしてしまった! 申し訳ないっ!」
「?」
その声を聞いた瞬間、誰もが首を傾げるような、気持ち悪さが勝っているような顔をして私達に向かって近付いているその人のことを見るけど、視界がぐらんぐらんしているせいで、その人の人相がよく見えない。全容も見えない。もやもやしたその景色のせいで、よく見えない私は首を傾げながらその光景を見ていた。
よく見ると……、赤いそれが見えるんだけど……、何の赤なのかがよくわからない。
そう思いながらよく見ようとヘルナイトさんの「おっ」という声を聞きながら身を乗り出そうとすると、その光景を見てなのか、赤い人はそんな私やみんなのことを見て、「おぉ!」と思い出すような音色で言うと、すぐに揺れる景色の中で――
「すまないすまない! そう言えばかけっぱなしだった! すまないな! このイグニッションがかなり効果が持続するからよく使うのだ! すまない! 今解くぞ!」
と言った瞬間、目の前の赤い人はそのまま何かをする動作をして、『ぱぁんっっ!』と手を叩いた瞬間……。
「――っ!?」
『!?』
「! ようやくか」
「大丈夫ー?」
「ハンナ、アキ、シェーラ大丈夫だったか?」
瞬間だった。本当にその手を叩く音が響いた瞬間、さっきまでこびりつくように私達のことを狂わせていた船酔いが一気に無くなり、今までと同じ感覚に戻った。
感覚が戻ると同時に、私ははっと息を呑みなながら身を乗り出すそれのまま固まり、はっきりと見れる景色の中、デュランさんとシリウスさん、そしてヘルナイトさんの声を聞きながら、私は酔っていた時は見えなかったけど、今ならはっきりと見える景色の中で辺りをすぐに見渡す。
目の前には――さっき見えた高床の集落がある場所で、きっと蜥蜴人の集落なのだろう。ぱっと見シャズラーンダさんの集落よりも広く見える気がする……。その集落の周りにはあの白い蜥蜴人の人と同じ鱗を持っている子供や老人の蜥蜴人、あとは赤くて硬そうな鱗を持っている筋肉質の女性蜥蜴人が集落の中を歩きながら日常茶飯事のような会話をしている。
ぱっと見湿地帯の集落と同じ光景。
そして平和な風景の中話している痩せている蜥蜴人と筋肉質の蜥蜴人。
対照的な蜥蜴人が歩いているのに、なぜかその光景を見た私は違和感を覚えた。どんな違和感なのかはわからないけど、それでもなんか……、違和感があった。
この違和感は何なんだろう……。なんかこの村……、おかしい気がする。
そう思いながら私はその考えを頭の片隅に入れつつ、みんなは大丈夫なのかと思いながらすぐに背後を振り向きながら――きっとアキにぃ達がいるであろうその場所を見た。
私の背後ではアキにぃ達が首を傾げる様な顔をしながらあたりを見回し、頭を抱えながらきょとんっとしている。そんなアキにぃやシェーラちゃんのことを見ていた虎次郎さんとキョウヤさんが、心配そうな顔をして二人のことを見て「大丈夫か?」と聞いている。
そんな二人の言葉を聞いて、シェーラちゃんとアキにぃは目を点にしながら首を傾げながらも……、大丈夫だと言いながらきょとんっとして二人のことを見ていた。
アキにぃ達の光景を見ながら私はアキにぃとシェーラちゃんも私と同じようになってしまったんだと思いながら見ていると、コウガさん達やエドさん達のことを見て「あ」と声を漏らした。
コウガさん達の方では、つーちゃん以外の三人が頭を抱えながら一体何が起きていたんだというような顔をして首を傾げていて……。
エドさんの方ではリカちゃんとシリウスさん以外の四人が目をぱちくりとさせながら驚いたまま固まっている。
どうやらみんながみんな――私と同じ状態になって、そして私と同じ時に体を蝕んでいた酔いがきれいさっぱりなくなったことに、困惑しているんだろう。
でも、その酔いにかかっていない人もいるみたいだ。虎次郎さんとかキョウヤさんとかが層だったみたいで、酔っていた時はそんなに見る暇と言うか、余裕がなかったから、今はっきりと見て、キョウヤさん達はあの良いにかかっていないんだと思いながらその光景を見ていた。
突然押し寄せてきたあの酔い……。あれは、一体何だったんだろう……。
そんなことを思っていると――不意に上から凛とした声が私に降りかかってきた。
「ハンナ――もう平気なのか?」
「!」
降りかかってくるその凛とした声を聞いた私は、一瞬肩を微かに震わせると同時に、何も考えずに上を見上げた瞬間……、私は声を無意識に殺してしまった。
と言うか……、無意識に口がふさがってしまい、そのまま声を殺す形になってしまっただけなんだけど……、それを無意識でするほど、私は驚いてしまった。顔中が真っ赤になるほど、耳たぶが赤くなるほど驚いて、そしてその光景を見た瞬間、さっきと同様頭の中が真っ白になった。
なにせ――私の頭上に、というか至近距離にヘルナイトさんの顔があって、その顔を見た瞬間、私は遅まきながら気付いた。ヘルナイトさんが私のことを見て首を傾げながら頭に疑問符を浮かべているそれを見ながら、私は、今まで酔っていた時に何をしてくれたのか。それを思い出した。
ヘルナイトさんは私が酔っている間……、転ばないように支えてくれていたり、そして私を横抱きにして酔いが醒めるまでこうしてくれていたんだ……。
「…………………………っっっっ!」
それに気付いた私はヘルナイトさんから視線を逸らすように下を見て、横抱きにされている自分の体を見ながら私は……なんてことに気付かなかったんだと思いながら、数秒前の自分に叱りたい気持ちに押し潰されそうになった。
多分、酔っていない時の私なら、この状態は絶対に拒否をしてしまう案件だから。これを人前ですること自体恥ずかしいと言うか……、何か……、これを人前でしたくないという気持ちを抱いてしまうから……。あ、いや――ヘルナイトさんが好意でしているのならば断わるなんてできないけど、こうも人前でされるのはやっぱり恥ずかしいと言うかなんというか……っ!
えっと、簡単に言うと、やっぱり恥ずかしいから私は俯いているのだ。
だから私は何分か前に寄っていた私に叱りつけたい気持ちに狩られている……。駆られているのだけど……、何だろう……、なぜかこの横抱きをされている時、不思議と安心するような、ぽかぽかするその気持ちにかられるのはなぜなのだろう……。
たまにこう言う風にされることはあった。
けど今回はなんだか、違う……。うん。本当に違う。なんだろう……。まるで、頭の中にあるしこりがどんどん錆びて、ボロボロと壊れていって、私の脳にまた新しい何かを思い出させようとしているような、そんな感覚。不意に出るフラッシュバックと同時に、私は思ってしまう。
何か……、思い出しそうな……。
そう思った時――
「どうですかな!? 酔いは醒めましたかなっ!?」
「「!」」
また唐突に聞こえた初老の男性の大声。
それを聞いた瞬間、私ははっとしてその声がした方向を見て、ヘルナイトさんと一緒に、みんなと一緒にその人のことを見た。私達の目の前にいる――白い蜥蜴人と一緒にいる初老の蜥蜴人のことを見ながら……。
その初老の蜥蜴人は今まで見てきた蜥蜴人とは違い、赤い鱗を持っているんだけど、その鱗がなんだか分厚く、まるで恐竜――ティラノサウルスを思わせる様な姿をしている。顔も、牙も、爪も、ほとんどが蜥蜴人のそれからかけ離れている恐竜の姿をしていて、その人だけ本当の蜥蜴人なのかと疑問を持ってしまいそうになる。服装はほとんど裸に近いような姿で、黒い布の腰巻、そして首飾りにつけられている灰色の鉱物の飾り物しかついていないけど、手や足についている鱗でさえ焦がすような火傷が目に焼き付く。白い蜥蜴人よりも大きくて、痩せマッチョの白い蜥蜴人とは正反対に全身が筋肉で覆われているような赤い鱗の蜥蜴人は、私達のことを見ながら腰に手を当てて、そして鼻から息を思いっきり吸うと、その人は私達に向かって――
「どうやら酔いは醒めたようですな! それはそれはよかった! そして申し訳ないっっっ!」
と、まるで応援団長の様な大きな声でその人は私達に向けて声を上げた。と言うか……、怒鳴った? の方が、いいのかな……?
あの時――最初に聞いたあの声よりかはボリュームは下がっていると思うけど、それでも近くにいる私達にとってすればその声は大きすぎて、キンキンっと耳が悲鳴を上げる。
本当に、携帯越しに大きな声を上げて鼓膜を傷つけるようなその声を聞いて、私はヘルナイトさんの腕の中で耳を塞いでしまう。
ヘルナイトさんも驚いているのか、五月蠅いと思っているのか、唸るような声を上げながらこわばりを見せている。
やっぱり五月蠅いんだ……。失礼だけど。
そんなことを思っていると、赤い鱗の蜥蜴人は私達に向けてまた大きな声でこう叫んできた。
「申し遅れた! 儂はこの地に住む火山地蜥蜴人の長――グラドニュードと申すっ! そしてここにいる白い鱗の若造は高地蜥蜴人の長にして『砂』の魔女でもあるラドガージャである! 以後――よろしくお見知りおきを! 先程は本当に申しえ開けございません! 実はあの酔いは儂がかけたものであり――『マナ・イグニッション――『揺らめく世界観』』というものを使ってしまった結果、皆様は一時的に酔いを発症していたのです! ランダムで酔いを発症するものなのですが、大変申し訳ないことをしましたっっっ!」
「分かった……! わかったっつーのっ! だから少し小さく……」
「よくぞここまで来ましたぞ冒険者様御一行っっ! 王から聞いてますなっ!? この地で最初の試練を行うことを!」
「あのーっっ!? 聞いていますかーっっ!? 俺達のお話聞いていますかーっっ!? お声小さくしていただけるとこれ幸いっす!」
「その試練の内容に関しましてはこの場で話しては疲れるでしょう! 先ほどの謝罪も兼ねて――高地蜥蜴人の集落にある族長が集まる場所でゆっくりと話そうではありませんかっっ!」
「あれーっっ!? 聞いていませんねーっっ!? 聞いてくださいよこの爆音蜥蜴ーっっ!」
「誰か何か言いましたかなっ!? 爆音蜥蜴という罵倒が聞こえた気がしますがっっ!?」
「気のせいですーっっ! ありがとうございます行きましょう!」
その話をしながら、赤い鱗の蜥蜴人――グラドニュードさんは踵を返しながら私達に向けて「さぁ! こちらですぞ!」と言いながら歩みを進めている。
そんな光景を見ていたみんなは、グラドニュードさんの大きな声が耳にダイレクトに入ってしまったらしく、鼓膜を攻撃されたようなそれを感じてか、未だに耳を塞いでいる状態だ。
私もその一人だけど、みんなはその声を聞きながら怒りや苛立ちを露にしていて、特に耳の穴に指を突っ込んでいたコウガさんはビキビキと血管を浮き上がらせながら舌打ち交じりに唾を吐き捨てていた。
あ、マスクをしているけど、そっぽを向いてそれをしていたので、多分マスクを取ってしたんだと思う……。その光景を見ていたつーちゃんは、耳を片手で塞ぎながらもう片方の手でコウガさんの背を撫でながら「ドンマイ」と小さな声で慰めている。
きっと、本人は叫んでいないんだろうけど、私達からしてみれば叫んでいるようにしか聞こえない。だからストレスにもなるし、耳がおかしくなりそうな、そんな気持ちになってしまう。大音量の音が鳴る部屋に入っているような……、そんな五月蠅さ。
でも、グラドニュードさんの言葉を遮りながら話していたコウガさんの声も、しょーちゃんの声も遮るように、覆い被せる様に話していたので、小さくするということはできない。そう私達は悟ると同時に、どうやらグラドニュードさんは耳もいいらしく、しょーちゃんの小声に対してしっかりと聞き返すように聞いていたところを見て……、意地悪な……、と思ってしまったのは、多分私だけではないはずだ……。
そんなことを思いながらみんながみんなグラドニュードさんや白い蜥蜴人――ラドガージャさんの後を渋々と言った形で歩いてついて行こうとする。
ぞろぞろと歩き、小さい声で「あの大音量はねーな……」や、「あれは五月蠅いね……」という声を聞きながら内心同文かもしれない……。そう思っていたら――
「ハンナ、行くぞ。落ちないように気をつけてくれ」
と、ヘルナイトさんの凛とした声がダイレクトに聞こえてきた。
その声を聞いた私ははっと息を呑み、今更ながら思い出したけど今現在私は横抱きにされていることを思い出すと同時に、私はヘルナイトさんのことを見上げながら慌てるような音色でこう言った。
「あ、あの……っ! もう大丈夫です! もう酔いもないし、ふらつきもありませんから……、大丈夫です! 降ろしてください……っ!」
「っ! そ、そうか……、ハンナがそう言うのならば」
「あ、はい……、お願いします。あとごめんなさい。甘えるようなことをしてしまって……」
「いいや。大丈夫だ。それよりも、ハンナがよくなってよかったと思っている自分がいるがな」
「………………っ! あ、あの……! みんなもう行っちゃっていますから、早く行きましょう……!」
「ああ。そうだな」
そう言いながらヘルナイトさんは私のことを下ろし、そして私のことを見降ろしながら優しい言葉をかけてくる。その言葉を聞いて……『私がよくなってよかった』と言う言葉を聞いた瞬間、何だろうか……、顔中が熱くなるようなそれを感じ、そしてその熱を飛ばすようにそっぽを振り向きつつ、みんなが行ってしまったその方向を指さしながら言って、私はヘルナイトさんの手をぎゅっと握ってその方向に行くように促す。
はたから見れば小さな子供が『あっちに行こう』と親を促しているような光景かもしれないけど、私はそれをしながらヘルナイトさんの声を聞き、みんなが言った方向に向けて足を進める。
今でも沸騰して熱くなっている顔を覚ましつつ、脳内ではこんなことを思いながら、私はヘルナイトさんの手を引っ張る。
この感覚も――どこかで体験したことがある。
そう思いながら……。




