PLAY89 ここからが⑤
ボロボ空中都市――王宮内の謁見の間。
「ま、マジで天国見えた……っ。三途の川見えた……っ! やっばい……っ!」
「私はそこまで見ていなかったけど、一瞬院長先生の顔が……って! 見えていたわ……ごめんなさい。嘘ついちゃった……」
「妻が、儂のことを連れ戻そうとしていた……。あれは稀に見ない光景……」
「ん」
「マジでやべぇ光景だった……。もう体験したくねぇ……」
「うぎゅうううううう……っ! デュランじゃんのびどでばじ~~~っ!」
「あ、あかいひがんばな……。ひがんばなのむこうにはあおいかわ……。あおいかわのむこうにきれいなおねえさん……。きれいなしろいきものをきたおねえさん……。てまねきしておれをさそう……」
まるでお通夜のような……、ううん。なんだか薄暗くて危ない儀式の最中にいるかのような絶望のそれを醸し出しながら各々口を開けているみんな。
その光景を見ていたのは――雰囲気に呑まれることなく平然としている私とヘルナイトさん、アキにぃとつーちゃんとエドさん、京平さん、リカちゃんとシリウスさんがその光景を見て、そして困ったような頬を鋭く伸ばした爪でぽりぽりと掻いているドラグーン王と、その王の……、私から見て右側に、クロゥさんとリリティーネさんが腰の辺りで腕を組み、仁王立ちになりながら静かに待っていた。
正反対に見えるそんな光景を見ながら私は私達の隣にいる今まさに憔悴しきっているキョウヤさん達のことを見る。
みんな、あの時の落下が相当堪えたのだろうか……戦っていた時、そして出発する前とは裏腹の真っ青なその顔を私達に見せ……、てはいない。俯きながらぶつぶつと何かを言っていた。
最初に言っておくけど、最初に譫言のように呟いていた人達を順に上げるとすると……、最初がシロナさん、次がシェーラちゃんで、その後から虎次郎さん、善さん、コウガさんとむぃちゃんが言った後で最後にしょーちゃんが真っ青になり、全身の贅肉が落ちてしまったのか痩せこけているそれを見せながらしぼんでしまった目でどこかを見つめつつ、ぶつぶつと呟いていた。
でも……、しょーちゃんって、言ってはいけないと思うけど、あまり戦っていないようなそれを感じるのは私だけなのかな……? よくわからないけどしょーちゃんは見た通り――真っ白になってしまっていた。
と言った方がいいのかな……。
そんなことを思っていると、戦った中で唯一今までと変わらないキョウヤさんがシェーラちゃん達に向かって困ったような顔をして――
「お、おい……、もう謁見の間なんだぞ? 空じゃねえんだぞ? 早く意識戻せ。な?」
と、優しく困ったように声を掛ける。きっとみんなのことを思ってのことで、それを聞いてもキョウヤさんからは優しいもしゃもしゃが溢れ出ていた。
けど……、それが見えるのは私だけで、それが見えないシェーラちゃん達にとってすれば……。
「五月蠅い……」
「すまんが、少し黙ってほしい」
「うるせえんだよ……っ! 蜥蜴やろう……っ!」
「………………」
「おいキョウヤ、いくらお前でも、今言って良い雰囲気とか察しろや……」
「ううううううううう…………っ! シャァアアアアッッッ!」
「あ、あかいひがんばな……。ひがんばなのむこうにはあおいかわ……。あおいかわのむこうにきれいなおねえさん……。きれいなしろいきものをきたおねえさん……。てまねきしておれをさそう……」
であり、それを聞いたキョウヤさんは焦りの顔を浮かべながらもみんなから距離をとり、そして焦った状態でキョウヤさんは宥める様な音色で言う。
「わかった! わかったからそんな威圧を込めた目でオレを見るなって! こんなことこれからもあるかもしれねえんだぞっ!? あれでそんなに引きずるなって!」
「あかいひがんばな……。ひがんばなのむこうにはあおいかわ……。あおいかわのむこうにきれいなおねえさん……。きれいなしろいきものをきたおねえさん……。てまね」
「うるせぇっっっ! コピーしているのかって言うくらいうるせぇっっっ!」
「………はぁ」
キョウヤさんは焦りながらも正論とも云える様な言葉で言うと、いつまでその言葉を続けて言うのか、しょーちゃんはまるでお経を唱えるような音色でさっきと同じ言葉を繰り返し呟くと、キョウヤさんでも流石に苛立ってしまったのか、怒りが籠った突っ込みを炸裂する。
私はそれを見ながら、少しばかりシェーラちゃん達に対して同情してしまうという気持ちと、キョウヤさんが言っていることが至極正論で、その言葉に対して受け止めないといけないよな。っという気持ち同時に押し寄せてきたので、それを聞きながら二つの感情を受け止めつつ頷いて溜息を吐く。
そんな光景を見ていたアキにぃは、呆れるような顔をしながらシェーラちゃん達に向かって小さな声で何かを言っていた。
本当に小さい声なので、よく聞こえなかったけど……。
そんなことを思っていると――不意に目の前から声が反響するように響き渡った。
「冒険者一行よ」
『!』
声を聞いた瞬間……、ううん。ドラグーン王の王様としての威厳のある声を聞いた瞬間、私達はまるで魔法にかかったかのように背筋を伸ばしてしまい、そしてすぐにドラグーン王のことを見上げる。
ドラグーン王はさっきから王の椅子に腰かけた状態でいたけど、その佇まいも威圧が込められているかのような……、王としての品格が溢れているかのようなその瞳で私達のことを捉えながら見降ろしている。
それを見た私達は、さっきまでの雑談が悪い事だと無意識に自覚してしまい、そのまま強制的に会話を終わらせると同時に、王のことを見ながら直立してしまう。
よく学校で集まった時、校長のお話を聞くように背筋をピーンっとしながら私はみんなは王のことを見る。
静かに、言葉を一言も発さずに……。だ。
シリウスさんだけはなぜか首を傾げながら「ほぉん?」と、素っ頓狂な声を上げてリカちゃんは首を傾げながら私達の顔をじぃーっと見つめていた。
そんな二人を見ながらエドさんは小さな声で二人に何かを言っているみたいだけど、その声でさえも聞こえないのか、リカちゃんとシリウスさんは首を傾げてエドさんのことを見ると、ドラグーン王はみんなに向かって、威厳のある音色でこう言ってきた。
「まぁわかっていることではあるが、改めてこの場を借りて言おうと思う。そして肩の力を抜け。そこまで力を入れてしまうと余計に疲れてしまうからな。これから先話が長い。気長に聞いてほしい」
「は。はぁ……。はい」
その言葉を聞いてか、私を含めたみんながほっと胸を撫で下ろすように肩の力を抜いて、深く深く溜めていたその息を「はぁー」と吐き捨てて胸を撫で下ろす。王の言葉に返事をしたのはエドさんで、エドさんは驚きつつも困惑を浮かべた顔で肩の力を抜く。
きっと、初めて見る光景だったのかもしれない……。
私はほっと胸を撫で下ろしながらドラグーン王のことを一瞥すると、私は心の中で……、あんな威厳のある声を聞いた瞬間、まるで操られるかのように直立していた……。まるで魔法にかかったかのように……。と思うと、私はそのまま王のことを見上げて、帽子の中方ひょっこりと飛び出すナヴィちゃんに気付かないまま私は思った。
王のことを見て――私は思った。
この感じ……、『創成王』と同じ威厳のある声。これが……、始祖王と呼ばれた王の品格……、なのかな……?
そんなことを思っていると、王はコホンッと口元に握り拳を近づけてえづくと、そのまま何事もなかったかのように私達のことを見つめた後、王は私達に向かって続けてこう言ってきた。
「では改めて……。此度の『残り香』討伐の協力――心から感謝をする。これで我が国の一時的ではあるが戻ってくる。国の代表として、此度の件――感謝する」
ありがとう。
そう言うと王は座った状態で私達に向けて頭を深く落とすと、そのままの状態を少しの間維持した。その光景を見た誰もがぎょっと驚きの顔を浮かべていた。けど少しずつ、本当に少しずつだけど、みんなの顔に疑問と言うそれが浮かび、それは私にも伝染していた。
みんなが疑問に思ったこと。
それは王が言った言葉に変な言葉があったからだ。
王は私達に向かってこう言った。
これで我が国の一時的ではあるが戻ってくる。国の代表として、此度の件――感謝する。
その言葉ははたから聞くと確かにという言葉なんだけど、なんだか違和感を感じる様な言葉で、その言葉を聞いた私は、なぜ疑問に思ったのか、その言葉を繰り返し、繰り返し脳内で再生をしながら事のあらましを簡単に思い出す。
私達は『八神』が一体シルフィードを浄化するためにボロボ空中都市に来た。けど着いた途端に都市を襲う黒い稲妻が襲い掛かってきて、それを防いだ私達。
その後色々とあったけど、その中ででもこの国で起きていることを知った。
この国――ボロボ空中都市はずっと前から『終焉の瘴気』の一部でもある『残り香』が放つ攻撃に怯えていた。一日必ず来る攻撃に対して、人々は怯えながら過ごしていた。
今となっては慣れてしまってそんなに怖いという感情はないようなことを話していたけど、その『残り香』対策としていろんなことをしたけど、それも時が過ぎるにつれて脆くなっていく。
だから『終焉の瘴気』の瘴気を払うことができる私とヘルナイトさんの力を借りて、国を襲う『残り香』討伐を手伝ってほしいと頼まれた。
その頼みに私は承諾をして、みんなと一緒に討伐に向かった。
『残り香』は確かに強くて、今思い出しただけでも怖いと思いそうなおぞましさ、あと追加でグロテスクなそれを彷彿とさせていたけど、ヘルナイトさんと一緒に浄化をしたおかげで攻撃も通り、そして何とか討伐もすることができた。
そのことに関して、王は感謝のそれを述べているんだろうけど…………、うん。やっぱりおかしい。おかしい。やっぱり、おかしいんだ。
王は確かに感謝していると言っていたけど、その言葉の続きに、『一時的』と言う言葉が聞こえた。まるでこの安泰が永遠に続かないような雰囲気で、それを言ったドラグーン王。
その言葉を聞いて、誰もが疑問に思ったんだ。私もその一人で、思ってしまったのだ。
もう『残り香』はいないのに、なんで終わりではないような言い方をするのだろうと……。
そんなことを思っていると、王は私達の疑問のそれを見て、待っていましたと言わんばかりの顔を浮かべながら王は私達に向かって――
「感謝はしているが、まだまだなのも事実」
と、突然私達に刃を突き付けてきたのだ。
あ、本当に刃を突き付けていない。これは言葉のあやで、そんな雰囲気の言葉を、挑発を込めたような笑みで突きつけてきた。の方が正しいのかもしれない。
王様の言葉を聞いた私はおろか、エドさん達やコウガさんも (あれ? しょーちゃん未だに痩せこけている……っ!?)驚きの顔を浮かべながら王のことを見て、今まで反論なんてできないという雰囲気に呑まれていたその感情も消され、その言葉を聞いてかコウガさんは荒げるような音色でドラグーン王に向かってこう怒鳴った。
「あぁ……っ? なにがまだまだだぁ……っ!? まさかと思うが……、俺達のことを試していたとか言わねえよなっ? どうなんだ? 竜の王様さんよぉ!」
王は何も言わない。無言のままコウガさんのことを見降ろしている。
でも、その言葉を聞いていたリリティーネさんやクロゥさんは、手に持っていた得物を掴んで、そのままコウガさんに向かって武器を振り上げようとしていたけど、ドラグーン王はそんな二人に向けてそっと左手を上げて制止をかける。
何の言葉も発さずに、無言の静止をかけて――
その行動を見て、クロゥさんとリリティーネさんは何事もなかったかのように武器を持つ手を離す。そしてそのまままだ仁王立ちになって黙ってしまった。
ドラグーン王はその二人のことを見ずに、私達のことをじっと見つめたまま王は続けてこう言う。
じっと――私達やエドさん達のことを見据えながら、王は言った。
「確かに、貴殿達の気持ちは分からないとは言えない。拙僧も騙したような口ぶりであったことで荒ぶる気持ちも分かる。だが――その質問に対して答えるのならば……、半分正解。半分不正解だ」
「はぁ……?」
「半分正解? 半分不正解? どういうことなんですか?」
ドラグーン王の言葉を聞いたコウガさんが、また苛立つような顔をして王のことを凄んだ眼付きで睨みつけると、その足元で首を傾げて考える仕草をしていたむぃちゃんは、うーんっという声を上げながら王に向かってどういうことなのかと言うそれで聞くと、ドラグーン王ははっきりとした音色で――
「言葉通りだ」
と言って、そのあとすぐ続けて私達に向かってこう言った。
「確かに、『残り香』を倒したことに関しては感謝をしている。関係のない拙僧達の国を命を懸けて救ってくれたことは心から感謝をしている。レギオンの者達に至っては――何度も死にかけた経験をしたにも関わらず、なおも立ち向かってくれた。そのことに関しては感謝しきれないほどだ」
「まぁ……、えーっと。はい」
「俺も今思い出したけど、俺達ってかなりの確率で死んでいたべ……。今更ながら悍ましいことに体を張っていたべ……」
「「………………………」」
「「?」」
ドラグーン王の言葉を聞いたエドさんは、何だろうか……。困ったような顔と思い出したくないような悲しい顔を合わせたかのような顔をして、明後日の方向を向きながら言葉を零している。
京平さんも明後日の方向を向いて冷や汗を流していて、シロナさんと善さんも明後日の方向を向いていた……。
心当たりが凄くあるような顔をして……。
そんな四人の顔を見ながら首を傾げているリカちゃんとシリウスさんだったけど、そんなエドさんたちのことを見つつ、王は張りのある声で「しかし」と言うと、その声色のまま王は私達のことを見てはっきりとした音色でこう言ってきた。
それではだめだ。そう言い聞かせるような音色で――ドラグーン王は言ったのだ。
「『残り香』は確かに強かった。何もできない存在ではあったが……、それでもあの『残り香』は『終焉の瘴気』の一部。つまりはほんの一握りの力の元でしかない。そのような存在相手に何度も死ぬようでは――あまりにも脆弱。本音を言ってしまうと……、任せるとは言えない」
「――はぁっっっ!? んだよそれっっ!」
王の言葉を聞いてか、エドさん達は言葉を失ったかのような顔をして王のことを見ていたけど、その言葉に対して反論をした京平さんは、怒りをぶつける様な顔でドラグーン王に向かって指を指しながら畳み掛けるように怒鳴る。
「だいたい瘴気が邪魔で攻撃できなかった! 何度も死んだ! それでも俺達は攻撃を放棄しなかっただろう!?」
「ああ、しなかった。瘴気のせいで攻撃できなかったこともこちらの不足が招いた結果。そのことに関しては深く謝罪をする。しかし――その瘴気が無くなってから戦い、そしてあの様子。下手をすれば全滅に追い込まれていた」
「全滅って……、まるで私達のやり方が駄目な言い方ね」
「ああ。そうだ」
京平さんの言葉に対して、ドラグーン王はそっちにも非があると認めたのか、怒っている京平さんに対して軽く頭を避けると謝罪の言葉をかけるけど、すぐに頭を上げると、私達のことを再度睨むような顔で見つめ、そしてあの時起きていたことを思い出すように、王は冷静で、そして突き刺すような言葉をどんどん私体に向けて、どすりと突き刺す。
特に――全滅。という言葉を聞いた瞬間、私の心臓がひどい心音を放った。
下手をすれば全滅。それを聞いたと同時にその予想図が私の頭をよぎった。
するとそれを聞いてか、シェーラちゃんは呆れる様な、イラついているような音色で溜息交じりにドラグーン王に向かって言うと、その言葉に対して王は即答と言わんばかりに頷き――そして続けて私達に向かってこう言ってきた。
ひどく冷静で、どんどん重くなるその空気をさらに重くさせるように、王は私達に向かって言ったのだ。
「今回は『残り香』一体で済んだことで事なきを得たが、これが二体、三体、四体、もしくは数十体でアズールに襲来してきた時、貴殿達はそれをどう対処する? 複数人で対処するのか? もしその時『六芒星』や死霊族が襲来してきた時、貴殿達は真っ先に駆り出されるであろう。そのような状況で、数も限られている中、何十人と言う人数で『残り香』に立ち向かうのか? その背後にいる『終焉の瘴気』がいるという状況の中、たった一体の一部相手にてこずるほど――今の状況は甘くない。そして――今のままで行くと、アズールは死に、貴殿達も、死ぬ」
ドラグーン王の言葉を聞いた瞬間、反論するという意思が無くなってしまった……、ううん。そうじゃない。適切と言うか、的確で真っ当なその言葉を聞いた瞬間、私達は言葉を発するという行動をすることができず、黙秘と言うそれを行ったまま、王の言葉に耳を傾けることしかできなかった。
王の言う通り――確かに一体倒すことはできた。けど最後の戦いとなれば複数対で来ることもあり得る話で、今の状態で戦ったとしても、相当な時間を喰ってしまう可能背も高い。
『六芒星』や死霊族がいた場合、そっちにも人数を割り振らないといけないから、『残り香』だけにそんな大人数を費やすことはできない。
つまり――今の私達は『残り香』一体相手に手こずりまくってしまった。だからまだまだな存在なのだ。と言うことを言葉で聞いた私達はその言葉が刃となって、そして心に突き刺さってしまったかのように痛感してしまう。
そのことに関しては言い訳できないし、正論だ。と言うか手こずっていたことに関しては本当のことなので、ドラグーン王の言葉に誰も否定なんてする人はいなかった。
アキにぃも、つーちゃんも、コウガさんも、京平さんも、一言も反論するそれをしなかった。
でも――
「お待ちくださいっっ!」
突然――荒げるように言い放ってきたデュランさんは、ドラグーン王に向けて一歩馬の足を前に出して自分の胸に手を付けながら必死に抗議をするように大きな声で言った。
デュランさんの言葉に驚いていたコウガさん達と私達。でもデュランさんは私達のことを無視して、ドラグーン王しか見ていない (顔がないからわからないけど……)状態でデュランさんは王に向かってこう言った。
「我は、我であれば『残り香』なんぞ一振りで倒せます! 最後の決戦の時、確かに『六芒星』や死霊族が来る可能性も高いでしょう。『終焉の瘴気』、そして『残り香』の襲撃もあるやもしれません。ですが! その時が来たとしても、我々『12鬼士』総出で『残り香』を狩ればいいのです! 冒険者達は『六芒星』や死霊族を相手に戦いヘルナイトを除いた我々で『残り香』を倒せばいいのです! そうすれば――この問題も」
「――そう簡単なことではない」
「――っ!」
でも、ドラグーン王はデュランさんの言葉を、必死の言葉を遮るように凄んだ音色で無理矢理デュランさんを静止させた。
というか……、鬼よりも強い騎士団の一人を唯の声で止める竜の王様って、そう相違ないと思う。始祖王……、すごい人だ。
場違いながらその時起きたことを驚きながら見ていたけど、そんな私の心境など余興のようにスルーされ、王はデュランさんのことを睨みつけるような目で見降ろしながら、凄んだ音色で――
「誘い卿。あなたは確かに強いが、今回の戦いでは何を考えていたのかはわかりません、しかし拙僧でも、今回のことに関しましては――失望いたしましたぞ。あなた様であろうものが、首を刈るのに五体が限界だった。それでは全然力不足であり、そのような状態で『残り香』一体相手にすること自体自惚れているのです。武神卿は一気に百もの首を刈った。最低それくらいでないとだめだと――拙僧は思っています。ゆえに断言いたしましょう。今のままでは――即死です。誘い卿」
「………………っ!」
「デュランさん」
王の的確な言葉は、私達の心にもひどく突き刺さり、そしてデュランさんの心をいとも簡単に陥落させていく。
言っていることは至極真っ当であり正論。
でも感情が混ざってしまうと、その正論もただの嫌味にしか聞こえない。嫌悪の言葉として受け止めてしまうこともある。そう――現在進行形で私達は傷ついていた。
私達は弱い。今までと違って、これからの世界は別次元の世界だ。
それをはっきりと言い聞かせるように、王は言ったのだ。
今のままではだめだ。今のままでは弱すぎる。
そう言われた私達は、何の返す言葉もないまま俯いてしまう。デュランさんの悔しそうな声が聞こえたけど、それを見ていたむぃちゃんは泣きそうな顔をしてデュランさんの足をきゅっと肉球がついた手で握ると……、そんな私達のことを見てか、ヘルナイトさんは王に向かって凛とした音色でこう言ってきたのだ。
「王よ――それでは、我々はこの国にとって必要のない存在と言うのですか?」
「ん? と言うと、どういうことなのかな? 武神卿よ」
「我々は元々はシルフィードを浄化するためにここまで来ました。ですがそこまで言うということは――我々の手はいらない。シルフィードはあなたたちが倒す。という解釈を擦ればよろしいのでしょうか。それとも……」
我々に何かをさせるために、そのようなことを言ったのですか?
そう言って、ヘルナイトさんはドラグーン王のことを見続ける。王はそんなヘルナイトさんのことをじっと無言のまま見降ろしているけど、その光景を見ていた私達は驚きながらもヘルナイトさん、そしてドラグーン王のことを交互に見ると……、ドラグーン王はにっと、不敵に笑みを浮かべると、私達のことを見て王ははっきりとした音色で、凄みがなくなったような音色で口を開く。
「ああ。武神卿の言う通り――確かに瘴気に覆われてしまったシルフィードを浄化することはできない。よって貴殿達にいなくなってほしくないのが本音だ。悪いように言ってしまい申し訳ないことをした。ああは言ったが、貴殿達がいなくなってしまえば本当にこの国の終わりを意味してしまう。そのことを考えると……此度の件に関しては本当の感謝をしているのだ。浄化をすれば対処ができることを見つけてくれたのだからな。だが弱いことは事実ではある。よって――拙僧達ボロボ空中都市は、国を守ってくれた礼として――貴殿達を鍛えようと思う」
これが――ボロボなりの恩返しだ。ここからが本番と言っても過言ではない。シルフィードを浄化したいのであれば、それ相応の力をつけてもらわんとな。
そう言うドラグーン王。はっきりとした音色で、私達に向かって言ったのだ。
お前達を鍛える。国総出で。
その言葉を聞いた瞬間、今まで俯いていたみんながそっと顔を上げて――そして各々の仲間達の顔を見ながら茫然とし、そして目を点にして固まってしまっている。私もその一人で、アキにぃやキョウヤさん、シェーラちゃんや虎次郎さんの顔を見ると、みんなも驚いたまま固まってしまったかのような顔をしていたけど、ヘルナイトさんだけは違ってて――私のことを見降ろしながら私の頭に手を『ぽふり』と置き、そして凛とした音色で――
「ハンナ――やろう。このままでは終われない。アキ、キョウヤ、シェーラ、虎次郎もそうだろう? このままでは終われないだろう。私も同じだ。ドラグーン王の言うことは真っ当かもしれないが、それでも私達にとってすれば、今回の恩返しは渡りに船だ。この恩返しを使って――強くなろう」
と言うと、それを聞いた私は、今までまとわりついていた暗い感情が一気に晴れることはなかった。けど、そのくらい感情を別の感情に変えて、言われっぱなしも嫌だ。ならばその言葉に対して言い返せるように、この恩返しを使って強くなろう。
その気持ちを込めて、私は「はい」と頷く。
柔らかいそれではなく、張りがあるはっきりとした音色で――
アキにぃ達も私と同じ結論に至ったのか――ヘルナイトさんと私のことを見て頷き、そして真っ直ぐとした目で王のことを見る。
その顔を見て――ヘルナイトさんも頷き、そして私のことを見降ろしながら頷くと……、私も頷いて、ドラグーン王のことを見上げる。
真っ直ぐな目つきで――王のことを見ながら。
それは……、エドさん達も同じで、コウガさんたちも同じだった。あ、でもしょーちゃんだけは未だにしおしおしているから、あとで説明をしないと……。
そんなことを思っていると、王は私達のその顔を見て――不敵な笑みを浮かべながら私達に聞く。
「その恩返しの内容は――この国にいるボロボの魔女から試練を受け、その試練を達成すること。簡単であろうが、それぞれの試練を請け負う魔女は少しばかり曲者。ちょっとやそっとでは達成できないと覚悟しておくといい。一つは『砂』の魔女――ラドガージャの試練。二つ目は『生物』の魔女――ファルナの試練。最後は『大気』の魔女――アルダードラの試練。この三つを完遂した時、シルフィードの浄化を任せよう」
異論はないか?
その言葉を言った瞬間、私達はまるで打ち合わせでもしていたかのように、同じタイミングで、同じ言葉を言ったのだ。こればかりは私も内心驚いていたけど……、それくらいみんなの意志は私達と同じで、王様に追われたことにより火が付いたのか、私達は王に向かって――はっきりとした音色で……
『なし!』
と言った。
それを聞いて、王は再度不敵に『にっ』と笑みを浮かべると……、王は私達のことを見降ろし、ざっと立ち上がると――王ははっきりとした音色で「よし」と言って――続けて王は言った。
「今から最初の試練――ラドガージャがいる里まで案内をする。クロゥディグル。準備をしろ」
「ははっ!」
王の言葉を聞いてクロゥさんは即座に頭を下げて、急ぎ足で謁見の間を後にする。
その光景を見た私は、ここからが本番なんだと思いながらぐっと握り拳を作る。
ここからが――本番の戦い。これからどんな強敵が来るのかわからない。けどその強敵に備えるために、私達が強くならないといけない。
それが今回の試練。
どんな試練になるかはわからないけど、絶対に乗り越えてみせる。
そう心に誓い、私は心の声で「よし」と呟いて気合を入れる。これから起きることに、どんな苦難にも耐えてみせる。その気持ちを強く持ちながら……。
でも……、私は気付いていなかった。
そんな私達の気持ちとは正反対に、苦痛で心を痛めているその人は、悔しいあまりに握り拳に力を入れて、俯いているその人は小さな声でこんなことを言っていることに私は気付いていなかった。
みんな王様の言葉には傷ついた。でもその人はもっと傷ついていた。
そのことに気付かず……。
「我は……、弱いのか……っ? 弱い……のか……?」




