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PLAY88 反撃! そして……③

 エドがそのようなことを口にしていた丁度その頃……、その光景を見ながら後方支援に徹しようとしていたハンナ達はと言うと……。



 □     □



「あんの馬鹿は何やっているんだああああああーっっっ!」


 突然――つーちゃんは大きな声を上げながら怒りが心頭したかのような真っ赤中を『残り香』相手に戦っているみんなに……ではない。未だに一体の『残り香』の首にしがみついているしょーちゃんに向かって怒声のそれで叫んだ。


 もう噴火しそうなその面持ちと音色、声量で、つーちゃんは叫んだ。


 そんなつーちゃんのことを見ながら、私とアキにぃ、リカちゃんとシリウスさんは困ったような笑みを浮かべながらつーちゃんと、遠くで怖がってしがみついているしょーちゃんのことを見てしまった。


 見てしまったというか……、目に入ってしまったの方が正しいのかもしれない。


 私達は大きな大きな『残り香』の周りを飛びながら旋回をしてヘルナイトさん達のサポートに回ろうとしていたんだけど……、それも無駄なことだったのか今となっては思ってしまう。


 だって……、今現在進行形で戦っているヘルナイトさん、キョウヤさん、シェーラちゃんに虎次郎さん、コウガさんとむぃちゃん、デュランさんにシロナさんと善さんは何の苦もなく戦っている。


 どころか『残り香』の首を着々と減らしているのだ。


 あの靄がかかっていた時は本当に強そうで怖い印象があったけど、戦って見ると見掛け倒し……で、いいのかな? 


 ヘルナイトさんの百もの首を倒したところから、私は思っていた。というか、みんな思っていたかもしれない。


 あれ? これ、後方支援の私達必要ないのでは? と……。


 そう思って私は首を横にぶんぶんっと振りつつもそんなことはないと思い、戦っているヘルナイトさん達のことを見て、きっと、これから本気を出すんだ。『残り香』が本気を出すに違いない。今までだってそうだった。


 今までだって余裕だと思っていたら奥の手を持っていてかなり大変だった時があった。


 そんな時があるんだ。きっと今回もそれだ。


 そう思った私はぐっと気を引き締めるように顎を引いて目の前を見た瞬間……、つーちゃんの叫びが木霊して、現在に至っているということ……。


 つーちゃんの叫びは怒りはこんなことでは収まらない。どころかどんどん増幅していき、膨れ上がった怒りを収めることができず、つーちゃんは未だにどこかの首にしがみついているしょーちゃんに向かって叫んだ。


「いくら何でも武器を手放すとかありえないからっ! あとお前この中で一番役立たずな立ち位置じゃないかっ! 迷惑をかけている分少しは役に立てええええええっっ!」

「おー。すごい怒り」

「異常なほどの憤りだな。これは」


 つーちゃんのまるで鬼と言ってもそれでは足りない様な怒りをしょーちゃんに向けてぶちまけているその光景を見て、リカちゃんは驚きの声を上げながら「ひぇー」と言葉を零し、それを聞いていたシリウスさんも驚きの笑みを浮かべながらあららと言葉を零す。


 そんな光景を見て、アキにぃは呆れた顔をして深いため息を吐くと、銃をそっと下しつつつーちゃんの激昂ぶりを見て……。


「異常だな」


 と小さな声で呟いた。


 でも、この時私はアキにぃの言葉を聞いてふと思った。と言うか、なんだか無意識に素思ってしまったの方が正しい。だって、突然私は思ってしまったのだ。


 あれ? それってアキにぃが言うセリフ? と……。


 なぜこう思ってしまったのかはわからないけど、そんな私達の会話を無視していたつーちゃんはしょーちゃんのことを見て次の言葉を大きな声で、怒りの音色として畳み掛ける。


「ていうかお前何もできないんだからさっさと落ちろおおおおおっっ!」

「はぁーっっっっ!? なんだとこの野郎っっ! お前馴染みに対してその言い方はねえだろうがっ!」

「いーやあるよ! あるね! だって馴染みだから言えることだからねーっっ!」

「はあああああああんっっっ!?」

「………はぁ」

 

 つーちゃんの言葉を聞いていたしょーちゃんは泣いていたそれを突然止めて、そのままつーちゃんに向かって怒鳴るように大声で叫び出した。それを聞いていたキョウヤさんは「うぉっ! うるせぇ!」と小さな声で驚いていたみたいだけど、そんな驚きをしてもキョウヤさんはキョウヤさんで、槍を鮮やかに振り回しては攻撃をしている。


 その光景を見ていたアキにぃは、驚きのそれを浮かべて「神業か……っ」と突っ込みを入れている。私は未だに二人が何とも言えないような喧嘩をしているその光景を見て、呆れたそれを浮かべながら深い溜息を吐く。


 まぁ……、誰だってここにいて、こんな会話を聞いていれば思うだろう……。


 こんなところで、そんなしょうもないことをしないで。恥ずかしい……。と。


 そう思っていると、つーちゃんとしょーちゃんの口論は冷めるどころかヒートアップしていき、私達のことなど忘れてしまったかのように言い合いを続ける。


「お前言って良い事と悪い事があるぞっ! 俺だってこんなに寛大な性格だけど怒る時は怒るんだっ! 後これは事故だっ! まだ俺の武器は――死んでいないっ!」

「死んでいないってお前の武器は生き物かっ! 武器は武器なんだよっ! てかいつショーマは寛大ってことになったんだよっ! 寛大って言うか大馬鹿でその重大さにも気づいていないだけだろうがっ! もしくは空気読んでいないケーワイ男子高校生だろうがっ! 武器も落としてしまったなぁぁんにもできないねぇっ!」

「あーっっ! 言ったな! 言ったな? ツグミ後で覚えていろや! そして……」

 

 と長くなると思っていたその口論が突然終わりを告げるかのように、しょーちゃんはつーちゃんに向かってこう叫んだ。


 必死になりながら、嘆願、懇願を擦るようにしょーちゃんは叫んだ。


「あの首のところにある俺の刀をとってっっっ!」


『?』


 しょーちゃんの唐突にして意味が分からない叫び。そして真下に向けて指を指したまま、しょーちゃんは荒げる声でもう一度、「探してっ!」と叫ぶ。


 その言葉を聞いて、私やリカちゃん、そしてシリウスさんもしょーちゃんが指を指したその方向に目をやろうと、しょーちゃんがいるところの下に向けて視線を向ける。


 アキにぃもスコープ越しにその光景を見つめ、つーちゃんは訳が分からないと言わんばかりの顔で「何言っているんだ?」という顔をしていたけど、私達は焦りつつも早く見つける一心でしょーちゃんが指を指したその方向に目を落とし、そしてよぉく目を凝らして探した。


 首を急かしなく動かし、どこにあるのかと目を凝らしながら見つめると……。


「あ」


 と、リカちゃんが移動用として乗っていたその圧縮球からにゅっと出ている、まるで望遠鏡のようなものでその光景を見て声を上げると、渡したみんなはその声を聞いて、リカちゃんが見ていた『残り香』の中腹辺りを見つめた。


 中腹辺りは上とさほど変わらないけど『残り香』の首の数が多い。そして暴れている首もあって、その光景を見ていた私は内心……、あんなところにあるの……? まるで激戦区……と思い、リカちゃんが見たものがもしかすると間違ったものではないのかと思ってしまったけれど、その考えを覆すように、私の視界に入ったそれは、私やみんなに知らせるようにきらりと光った。


 その光を見て、私やアキにぃ達は目を凝らすようにその光景を見つめると……。しょーちゃんの言う通り、それはあった。よく漫画の効果音で言うところの――ばんっ! という音が出そうなそれで、それはあったのだ。


 中腹部から伸びている『残り香』の首の付け根のところにまるで天秤のようにぶらぶらと左右に揺れている刀があったのだ。しかも鞘も同じように揺れていて、あともう少し大きく揺れてしまうとそのまま落ちてしまいそうなほど、その刀と鞘は何と言うか……絶妙なところでその体制をキープしていた。


 まさに奇跡。


 そうとしか言いようのない光景が、今私達の遠目から写り込んでいた。


「マジか……」

「絶妙だね。あれ」

「なんか振子みたーい!」

「すごい位置でふらふらしている……。なんかもうどこから突っ込めばいいのか……」


 その光景を見ていたアキにぃ、シリウスさん、そしてリカちゃんに私が各々思ったことを口にし、そしてその光景を見ながら唖然として引きつった笑みを浮かべている (シリウスさんとリカちゃんだけはニコニコしている笑顔だ)と、その光景を見ていたつーちゃんのことを見て、しょーちゃんは再度大きな声で……。


「ツグミ! 早くそれをとってくれ! できるだけ急いでっっ!」


 と叫んだ。必死の形相で、しかも無理難題ともいえるようなことを口にして――だ。


 それを聞いた私は驚きの顔をしてしょーちゃんのことを見る。当たり前だろう。


 私達は確かに後方支援をするために旋回をしながらその時を待っている。でもそれはあくまで後方支援。遠くからの支援を主にする。


 本当ならしょーちゃんの刀も取って、そのまましょーちゃんがいるその場所に向かいたいのは山々なんだけど、それはあまりにも無謀なこと。


 そして、近付くと言う事は、戦力的にも乏しい私達目掛けて『残り香』が来ることもあり得るのだ。


 それをした瞬間、狙われてしまった瞬間――私達は多分太刀打ちできないままこの旅を終えてしまうことになるかもしれない。シリウスさんやアキにぃ、つーちゃんがいれば何とかなるかもしれないけど、戦いの中で初めに弱い奴を狙うのは定石の行動。メグちゃんもそんなことを言っていたから、相手も――『残り香』もそうするに違いない。


 つまり――強い相手よりも倒せる私達のことを狙い撃ちにする。


 そのことを考えると、そんな無謀なことは避けた方がいい。つまり……、しょーちゃんの言葉に応えることができないということにもつながる。


 そのことを考えていた時、つーちゃんはしょーちゃんの言葉を聞き、そのまま手に持っている杖を目の前にかざすように振るうと――つーちゃんは突然、私やアキにぃに向かってこう言ってきた。


「大丈夫――こういう時にみんなの手を煩わせることはさせない」

「何がワサビだっ! あれ……、なんか違うような……?」

「それに、こう言ったことは僕が一番得意だし、それに――飛行の奴は持っている」


 そう言って、つーちゃんは杖を握る力を強め、そのまま空中に向けてその杖を振るった。かすかにしょーちゃんの声が聞こえた気がしたけど、気のせいだよね……? うん。


 ぶぅんっと振るうと同時にボ割と空中に浮かび上がるその魔方陣。その魔方陣に杖を掲げると、つーちゃんは叫ぶ。


 その魔方陣の向けて――


術式召喚(サモナーバインド・)魔法(スペル)――『召喚:いたずらでびる』!」


 そう叫ぶと同時に、つーちゃんが出した魔法陣がカッと光だし、その魔方陣の光に乗じてにゅっと――まるでぬかるんだ地面からその手を出すかのように出てきた紫の小さな手。

 

 その手を見た私達は驚いてその光景を見てしまったけど、すぐにその紫の手は魔方陣に手を付け、そのままぬっと顔を出すように這い上がっていく。


 きっとナヴィちゃんほどの大きさだけど、紫の小さな手足に背にある黒くて小さな翼、そして頭に生えているちっちゃい角を見せつけるように、腰から伸びている尻尾を振り振りと動かしながら、その小さな悪魔は「ケケケ」といたずらな笑みを浮かべていた。


 その小悪魔を見た時、私は記憶の箪笥を漁り、すぐに見つかったその名前を口にすると、つーちゃんは自分で召喚した『いたずらでびる』に向かって――


「あそこにある刀と鞘を上にいるショーマに届けろっ!」


 と、しょーちゃんが指を指した方向にあった刀と鞘に向けてびしりと指を指すつーちゃん。その声を聞いた『いたずらでびる』はつーちゃんの声にこたえるように「けけけ」と笑いながら頷き、そのままぴゅぅっ! と素早い飛行でその場所に向かって飛んで行く。


 すると……。


「あ」


 私は声を上げる。その『いたずらでびる』が飛んで行った方向とは違い、まるで私達に向かって飛んでくるその飛来物が、『いたずらでびる』と交差するように飛ぶ。


 本当のすれ違ったかのように飛ぶ『いたずらでびる』と、私達に向かって飛んで、そしてそのまま私達の前で大きく旋回をしながら避けたワイバーン…………ううん。この場合はエドさんを乗せた京平さんの方がいいのかな?


 そのまま私達の前で旋回をすると、そのままどこかへ飛んで行ってしまう。


 まるで――私達やみんなに危害を加えないように離れているかのような飛び方をして。


「なんだ……あいつら」

「エドと京平だー。飛んでいるー!」


 アキにぃはその光景を見ながら首を傾げて一体何がしたいんだろうという顔をしていたけど、リカちゃんはそんなこと気にも留めず、どころか飛んでいるその光景を見て楽しそうだと言わんばかりの顔で見上げている。


 二人のその言葉を聞きながら、どんどんみんなから、私達から離れていくエドさん達のことを見て、なぜみんなから離れる必要があるのか……? と思いながらその光景を見ていた。


 その時だった!


「! 危ないっっ! 伏せてっっ!」

「「「「!?」」」」


 シリウスさんの大きな慌てる声が私達の耳に入り、そのまま鼓膜を大太鼓のように大きく鼓膜が揺れると、その声に無意識に――反射的に反応して頭を手で覆ってそのまま姿勢を低くして伏せる。


 アキにぃとリカちゃん、そしてつーちゃんもその行動をとったらしくて、ナヴィちゃんの背で私達は犬の『伏せ』をするように身を屈めて、その姿勢のまま私はそっと視線をナヴィちゃんの背の体毛から景色を見るようにその目を動かすと…………。




 ――ぶぉぉぉぉぉぉっっっ!




 と、目の前に黒い何かが通り過ぎたような、そんな光景が目に映ると同時に、それが通り過ぎた後で遅まきながらに来た風が私達が来ている服と髪の毛、ナヴィちゃんの体毛を大きく揺らす。


 その風を受けながら私は息を殺すような声を上げ、うっかり口を開けて口腔内に空気が入らないようにきつく口を閉じる……。


 それでもきつく閉じた瞼からその風が入りそうになり、私はそれでもきつく目を閉じてその風に飛ばされないように、入らないようにしっかりと自分のことを守る。


 ごぉぉぉぉぉぉぉっと耳に入る豪風。その音がどれほどかかるのかと思っていたけど、案外すぐに止んで、風邪が止むと同時に私はおどおどとしながらそっと目を開け、そして屈んでいたその体を持ち上げる。


 みんなも顔を上げて、正座や片膝を立てるようにあたりを見回していたけど、とある方向を見て、すぐにみんな気付いた。


 なにせ――私達の横に……、目の前に広がる黒いそれは黒い鱗を纏った四つの首で、その首はエドさん達が向かって行ったその場所に向かって伸びていたのだ。


 まるで妖怪のように、その首はどんどんと伸びていき、そのままエドさん達を捕まえることに専念しているかのように……、それは続いていた。


 私はその光景を見て、ぐっと自分の太腿の上に乗せていたその手をぐっと握りしめ、心の中に少しだけ芽生えた不安を抱えながらその光景を見る。


 あの四つの『残り香』相手に……、エドさんと京平さんは、大丈夫なのだろうか……。と。



 ◆     ◆



 その頃、エド達とすれ違うように『いたずらでびる』の横を通り過ぎていく『残り香』の竜四体。


 まるで鬼気迫るような、異常な光景を見てしまった小さな悪魔は見かけによらず心臓をバクバクさせながらその光景を見上げる。


 見てくれから見ても悪魔と言うその姿であれど、やはり怖いものは怖い。小さいが故大きすぎるその『残り香』相手に対し、怖気づいてしまった『いたずらでびる』


 無理もないかもしれないが、ツグミが命令したこととは違い。もし『倒せ』という命令が出たのであれば、それこそ敵前逃亡をしてしまうほどの迫力、そして圧。


 それを受けた『いたずらでびる』は半分泣きべそをかきながらその場を後にし、主から受けた命令を遂行するために行動する。


 そそくさと言う形でショーマが指を指していたその場所――『残り香』の中腹まで飛んで降りていき、そのままぶらぶらと天秤のように左右に傾いている刀と鞘を小さな手と尻尾で器用に掴み、そして巻き付けながらショーマがいるところに向かって飛び、ショーマが『いたずらでびる』の存在に気付き声を掛けようとした。


 その時だった。




 ――どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっっっ!




 突如として鳴り響く轟音。その音を聞いた瞬間ショーマと『いたずらでびる』はびくりと体を震わせながら音がした上空を見上げる。


 ハンナも、アキも、ツグミも、リカも、シリウスとナヴィもその光景を見上げ――


 ヘルナイト、キョウヤ、シェーラ、虎次郎、コウガにむぃ、デュラン、シロナと善もその音を聞いて一瞬だが視界の端で見るようにその光景を見上げ、ドラグーン王もその音がした上空を見上げた。


 その時――彼らは驚きの顔を一瞬だけ浮かべた。


 戦ってる輩は今現在『残り香』相手に隙を見せることなどできない。ゆえに彼らは現在戦いながらその光景を見ることが精一杯だった。だが、その一瞬見ただけでもわかってしまった。


 そして……、その光景を見上げていた王とハンナたちは、言葉を失いながらその光景を見上げて、固まってしまう。


 エド達が飛んで行った方向から黒く光る何かを――そしてそれが当たったのかはわからないが、それでもエド達がどんで言った方向から少し離れたところで、何かが黒い煙を出しながら地上に向かって力なく落ちていくその光景を見て、王は思った。


 ――これは……、まずいぞ。と……。


 王のその心配が杞憂で終わってほしいと思う者もいるかもしれないが、現実はそんなに甘くない。どころか、そう言う心配事がなぜか予想的中してしまうような事態に陥っているなど、この状況を体験していないものからは分からない。


 分かるのは――単体であの状況を乗り切ったヘルナイトと、そして現在進行形で死ぬ思いをしながら引き付けて倒そうとが策しているエドと、その運搬をしている京平だけだった。


「……っ! とぉ! 危なっ! これ当たったら危ないよ!」

「それは移動している俺の方があぶねーべ! お前はいいよな――座っているだけなんだものっ!」

「ええーっ! その言い方ないだろう京平! 少し傷ついたよっ?」

「そうかそうか! ならお前も考えろ! この状況を! どうやって――打破するかを!」


 エドと京平は言う。灰色の雲の世界に入り込んでしまったのか、前後左右は灰色の雲で周りがよく見えない、そんな状況の中――背後から襲い掛かってくる黒い吹雪に黒い細い水の攻撃。そしていくつもの岩の射出。真っ黒い泥の攻撃を何とか躱しながら二人は言った。


 そう。彼らの背後から襲い掛かって来ているものは四体の『残り香』であり、しかもその四体はあの時――ヘルナイトに攻撃を仕掛けた竜でもあり、どういう理由なのかはわからないが、炎を吐くその一体を残して、残りの四体がなぜかエドと京平を追う形でここまで来たのだ。


 もし強敵を倒したいのであればヘルナイトやデュラン、キョウヤがいるその場所にとどまり、そして戦えばいい話なのだが、それをせず、一体はシロナと善を相手に、そして後の四体は上空に向かって飛び、どんどんみんなから離れていくエドと京平のことを追いながら攻撃を背後から繰り出していた。


 執拗に、そのまま二人のことを黒くする勢いで――だ。


 その攻撃をなんとか躱す京平と、京平のまるでないアスレチックめいた躱し方を無理矢理堪能されているエドは、少し叫びを上げながらぐるんっと回ったり、横に旋回をしながら回転を繰り出したりと、とにかく回転が多い回避の仕方をしていたので、その回転を受けながらエドは叫びを上げながら京平に訴えた。


「うごごごおおおおおおお~っ! これかなりきつい……! と言うかこんなのジェットコースターでも体験できないいいいいいっっっ! ちょっと柔らかめで~っ!」

「何が柔らかめだっ! んなことしたら俺達殺されちまうぞっ! と言うかその柔らかめってどんな感じっ!?」


 しかし、エドの訴えも虚しく、京平はそのまま旋回を繰り返し行いながら背後から迫ってきた黒い氷の息吹を避ける。若干突っ込みを入れながらだが、それでもエドはぐるぐると目を回しながらも京平のその言葉を聞いて……。


「そ、そんなぁ……、ひどくない? そんなことを言うだなんて、いつも大雑把な京平らしくないって……」


 と、若干泣きそうな音色と幻滅が混ざったかのような音色で言うと、それを聞いた京平は飛びながらも器用にエドのことを見上げて吊り上がったその目を更に吊り上がらせて「いいから早く準備しろべっ!」と怒鳴った。


 その言葉を聞いて、エドは小さな声で「分かったよ………」と言って、エドは手に持っている聖槍と聖楯を構えようと背後を見ようとした時――


 エドは背後から迫ってくる『残り香』の鬼気迫る様なその光景を見て、そして己が持っている聖槍と聖楯のことを見降ろしながら、少しの間黙ってしまった。


「? エド? どしたべ? おい」


 そんなエドの沈黙と違和感をいち早く察知した京平は、エドのことを目だけで見上げながら聞くと、その声を聴いてエドははっと息を詰まらせると同時に、飛んで回避に専念している京平のことを見降ろしながら「あ、いや……!」と言葉を詰まらせ、少しの間考えるように沈黙を貫いた後、エドは唐突に京平に向かって、自分が疑問に思っていたことを聞いた。


「あのさ……、あいつらはなんでおれ達のことを追ってくるんだろうって。唐突にそのことに対して疑問を持ったんだよね」

「はぁ? 何言ってんだエド」


 エドの疑問の言葉を聞いた京平は、呆れたように素っ頓狂な声を上げ、器用に飛びながら彼はエドに向かって続けてこう言った。


「んなも簡単だろうが。俺達のことを倒すために、殺すために追っているんだろう? 何わけわかんねえこと言ってんだおめーは」

「あ、あー……、いや。そうじゃなくてさ。京平が言いたいことだって一理あると思う。うん。確かにあると思うんだ。だってあいつら――見ている限り()()()()()()()()()()()()()()()()るところから見て、あいつらはかなり怒っている」

「ああ。きっとあの靄を壊したヘルナイトと、あの靄を完全に消滅させちまったお嬢ちゃんのことを殺す勢いで荒ぶってんだろうな。なにせあいつらさえいなければこの後もあいつらの無敵状態は安泰、もっと言えば敵の安息の桃源郷が完成しちまうからな」

「それはそうだよな。おれがもしそうならば――そうする。けど……」

 

 と言いながら、エドは背後を再度見つめ、そして攻撃を繰り出そうと自棄になっているようにも見える『残り香』四体のことを見つめながら、エドは続けて京平に向かって言った。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()って、そう思ってしまう」

「? 何言ってんだ? お前」

「よく考えてみなよ京平」


 エドが言った言葉に対して京平は首を傾げる。その顔に映った『一体何を言っているんだ?』という顔を見たエドは、京平の話を聞きながら冷静な音色で短く、そしてわかりやすく説明をした。


 現在進行形で追われている身なので、その状況の中悠長に説明などしている暇はない。そう思いながら、エドはどうにかして自分が思っていることを伝えようと短くしつつ、わかりやすく京平に向かって言葉を脳内で並べ、そして口にする。


「あいつらは確かに靄のせいで攻撃も何もできなかった。まるで鎧で守られていたかのように、おれでさえも攻撃の傷を与えることはできなかった」

「ああ」

「でも、今回ヘルナイトとハンナちゃんの頑張りがあって、靄を破ることができた」

「ああ。あの二人の力のおかげだよな」

「そうだ。でもさ……、あいつらの靄を壊して、こんな状況を作ったのはハンナちゃんとヘルナイト。悪い話だけどあの二人に攻撃が真っ先に降りかかることこそが定石なんじゃないかな?」

「まぁ、俺も『残り香』だったら、何で壊したんじゃーって怒るべな。壊した奴らに」

「だろう? でもヘルナイトは強い。ハンナちゃんのところに行かせる前に倒しているから、そこは問題ない。けどさ……」


 と言いながら――エドはちらりと再度背後から必死になって追って来ている『残り香』四体のことを見つめながら、エドはぼそりと小さい声で京平に向かって言ったのだ。


()()()()()()()()()()()――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「!」

「今の今まで無視したり、嘲笑っていた『残り香』が、鎧がなくなった途端俺たちのことを必死になって追い始めた。理由は分からない――でも……こいつらは」



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 そうエドが仮説と言う名の判断を下し、その後で証明となる言葉を言おうとした直後――




『おぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉオオオオオオオオオオォォォォォォォォォぉおオオオオオオオオオオォォォォォォォォォぉおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉがああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッっっっっッッッ!!』




『残り香』四体はけたたましい咆哮を上げると同時に、四体同時に大きな口を開けると、エド達にその口の先を向けて、狙いを定める。


 その光景を見た二人はぎょっと目をひん剥かせて一瞬反応が遅れてしまう。


 エドと京平の反応の遅さを見て隙と見たのか、四体の『残り香』はエド達に向けて、黒い泥、黒い息吹、黒い水と黒い岩の咆哮を同時に放つ!


 エド達のことをこのまま即死させるような同時攻撃。


 その同時攻撃を見て一瞬動きが止まってしまった京平はすぐに反応を取り戻し、即座に旋回をして避けようと奮起する。エドを乗せたまま避けようと奮起しようとした時……、目の前に広がる四つの元素の攻撃。


 その攻撃を目の当りにし、一瞬――脳の片隅に現れた諦めの文字を見たエドは、もう終わりだと、一瞬、本当に一瞬だが悟った。


 必死になっている京平を無下にするように、エドはもう終わりだと――その光景を見てそう確信した。


 その時だった!

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