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PLAY86 国が抱えるもの⑥

「しゅ……、『終焉の瘴気』っ!? あの黒い稲妻が……、ですかっ?」

「! あ、ああ。聞いていなかったんだな」


 私は身を乗り出してリリティーネさんに向かって慌てた声で聞く。


 座っていたその椅子と一緒に転げそうになるくらい私は身を乗り出し、驚いているリリティーネさんのことを見て再度聞く。


「ほ、本当……、なんですか?」


 私は聞く。布で覆われているけど彼女の背後から出ている雰囲気でわかる。


 困惑と神妙が混じっているようなそれを出しながら彼女は私の言葉に対して言葉を詰まらせていた。


 きっと、知っているだろうと思って言ったら知らなかったことに驚きつつも、このことを話してもいいのかと思っているのだろう。


 そんなリリティーネさんのことを見た私は、話そうか話さないか迷っているその意志を『話す』方に曲げようと、できるだけキッと彼女のことを見つめる。


 アキにぃやシェーラちゃんがしている目力で押し通そうとして。


 うまくできているのかはわからないけど、それでも目力を使ってキッ! と見つめる。


「キィィ……ッ!」


 と、声で『キッ!』というそれが出るように付け足して……。


 恥ずかしいことをしているのは私自身が知っている。


 けれど……、こうでもしないと多分私の目力では相手を動かすことはできない。そう思ったからこそ私はぐぐーっと目を細めて、したことがない睨みをしながら私はリリティーネさんのことを見つめる。


 じぃーっと、キッ! と睨みつけるように……。



 □     □



 どれくらい時間が経ったのだろう……。長い間私は瞬きもしないでリリティーネさんのことを見つめていたかもしれない。おかげで目が急速に渇き始め、眼球が潤いを欲してきた。


 カチ。カチ。カチ。


 医務室の時計の音が室内の無音のせいでよく響き、私達の鼓膜を大きく大きく揺らす。その音を聞きながら私は現在進行形でリリティーネさんのことをキッと睨みつけていた。


 そんな私の行動とは対照的に、リリティーネさんは私のことを見て無言を徹している。と言うか……、これは、驚いて固まっている……?


 固まってしまっているならば睨んでも仕方がないのではないか? もしかしてこれって逆に怪しまれてしまうような態度なのかも……?


 今までの行いに対し、私はどうにかしてこの沈黙を破ろうと行動に移そうとした瞬間――予想外の人物が私達のこの沈黙を撃ち破ったのだ。


「話してもいいのではありませんか?」

「「!」」


 その言葉を放ったのは、意外や意外――竜人のお医者さんだった。


 竜人のお医者さんは今の今まで私に背を向けていたのに、お医者さんは私達が振り向くと同時の、くるりと振り向き、陽気に溜まっている緑色の液体を一回机の上に置くと、お医者さんは私に向かって………、ではない。お医者さんはリリティーネさんのことを見て穏やかな音色で言った。


 よぼよぼになってしまった手を膝の上に置き、老人とは思えないような背筋をぴんっとさせながら、お医者さんは言ったのだ。


「このお方とこのお方のお仲間様達は王にとっても客人であり救世主。我々ボロボの住人は二百年前から来たあの雷に頭を抱え、最初こそ怯えるように暮らしていますが、今となってすれば日常の一部と化しています。儂らご老体はよろしいのですが、これから生まれてくる未来ある者達に、あの情景を日常として植え付けたくありません。儂らが見てきた平和の空を見せてあげたい。そのためには――一刻も早い浄化、そして、真実が必要です」

「……………………」

「傷の治療は思っていた以上にかかります。もしかすると『永王』の話に間に合わないかもしれません。長い間生きてきたこの儂も、老いていくと己の力も著しく弱くなっています。以前のように塗ってすぐ治ることはないと思ってほしいです」

「………時間は?」

「なるべく早く治療を致します。ですがそれでも……、一時間お時間をいただけると嬉しいです」

「そうか……。わかった」


 お医者さんの言葉を聞いたリリティーネさんは頷き、そして私のことを見て彼女は凛々しいけど冷たい音色でこう言い放ってきた。


「今から話す。きっとこれは『永王』も話すことかもしれないが、治療の監視を任せられたからには徹底しる次第だ。ゆえにこれから私は『永王』の代わりに話ことをすべて話す」

「? 話すこと……、ですか?」

「ああ。この国に起きていること、そして……、()()()()()()()()()()()()()()()を、これから話す」

「隠してきた?」


 私は言う。リリティーネさんの言葉に対して驚きと困惑、そして、理解できないというそれが入り混じっているような音色で私はリリティーネさんに聞く。


 困惑しながらも私はお医者さんに肩を掴まれ、そのままくるりと椅子ごと回されてからお医者さんと無理やり向かい合わされる。お医者さんの「どれ――治療を再開致しますから前を向いてくださいな」と言う声が聞こえたとしても、その声に対して行動も返事もせず、私はリリティーネさんのことをずっと見つめながら、困惑の音色で聞く。


「あの……、一体何を隠しているんですか?」

「それを今から話す。だから前を向け」

「ふぇ?」


 私が聞くと、それを聞いたリリティーネさんは溜息交じりに私に言うと、それを聞いた私は首を傾げようとしたけど、その言葉を言う前に私の肩に乗せられる手。


 その手を感じると同時にくるんっと椅子ごと回転されて、そのままされるがまま私は強制的にお医者さんとにらめっこをする。顔を合わせて、じっとお互いの顔を見つめるように……。


「そうですな。まだ治療は終わっていません。あと少しで終わりますので、その間――『氷華天使』様のお話に耳を傾けてくださいな」


 と、穏やかな音色で容器に溜まっている緑色の液……じゃない。お医者さんの口から抽出された医療用の唾液をべったりと手につけながら、お医者さんは私の顔にそれをつけた手を向ける。


 内心、体を後ろに向けたい気持ちがあったけど、それを見ていたリリティーネさんは私のことを安心させるためか、背後で冷静な音色で――


「大丈夫だ。先生の治療は確かに気色悪いと思うが、竜族の中でも治療の力を持っている先生は異例の存在。しかもこの世界にないメディックの力を有し、この国の生命線となってくれた存在でもあるんだ」

「生命線……」

「まぁ見た目はかなり異常かもしれないが。腕は確かだ」

「………腕」


 そんなリリティーネさんの言葉をオウム返しのように繰り返した私だけど、正直、これを受けるというメンタルはあまりないのも事実……。


 と言うか、この緑色の液体の正体を知っているからこそ、受けたくないという拒絶が大きいのも事実なんだけど、この液体=唾液と言う事実に対して、人間としての清潔本能が警報を促している。


 でも受けないと治らないし、みんなのところに行けないという究極の選択を無意識に置いていることに、私はなんだかリリティーネさんが加虐趣味を持っているのかと思ってしまった。音色こそ淡々としているけど……、そうでないことを願いたい……。


 そんなことを思っていると、リリティーネさんは私の背後で言葉を発する。私の目の前で、べっとりとつけた緑色の液体付着の手を近づけながらにっこりと微笑んでいるお医者さんの顔と、私の困惑と諦めを尻目に……、リリティーネさんは言う。


 この国で起きていることを――



 ◆     ◆



 お前達がこの国に来た時見ただろう? あの黒い稲光を。


 あれは元々この国になかったもので、それは突然、平和だったこの国を壊すように、突然現れたんだ。


 それが出たのは今から二百年前――『終焉の瘴気』が出てから五十年経過したある日で、その日のことはよく覚えている。夏のような日差しが強く、さんさんと照らす太陽が眩しい日でもあった。


『終焉の瘴気』が出て、その巨悪の存在を見ることができないまま国は対策を練ってその進行、拡大を阻止してきた。


 魔物が出たとしても、冒険者や国の強者達が討伐をする。自然現象も冒険者にクエストとして出せばどのような状況に陥っているのかがよく分かる。


 汚い話――成す術もない私達は力がある冒険者の力がないとできないことが多くある。魔力を持っている魔女でも、力不足なのも事実。ゆえに冒険者の力を借りなければいけないほど私達の力は劣っている。冒険者の力なしでは対策なんて出来なかった。


 が……、そんな対策をしていたその時、ボロボに異変が現れたんだ。


 突如として、ボロボの上空に黒い雲と、黒い稲光が突如として現れ、国を混乱に陥れたんだ。


 お前達も見た通り……、あの黒光りの雷が落ちてきたんだ。


 国を滅ぼすように、壊滅に追い込むように、一線の光の刃と化してそれが落ちてきたんだ。


 最初にそれを受けたのは港にいた竜達。運搬の手綱を担っている竜達だ。その時の竜達はその雷を受けて……、声にもならない叫びを上げると同時に、竜達は地上の海に向かって落ちてしまった。


 今その竜達がどうなっているのかわからない。なにせ――その海域は警戒心が強いと言われている海底(オーシャンド・)蜥蜴人(リザードマン)が占領している海域であったが故、同胞達の亡骸を回収することはできなかった。


 だからその時の『弔いの儀』は天に向かう亡骸がない寂しく、虚しいものだった。


 が――その虚しさを嘲笑うように、またあれが来たんだ。


 儀式ごと壊すように、黒い稲妻は私達を殺しにかかった。まるで――私達のことを蠅のように潰すように、一掃するように、それは襲い掛かってきたんだ。


 まるで私達のことを見降ろしているかのように、それは私達がいるところに降りかかり、そして国の者達を苦しめていく。


 まるで拷問。そんな拷問が一日に一回必ず来るんだ。今回は二回だったが、それでも必ず一回殺しにかかってくる拷問だ。


 王はそのことに関してひどく頭を抱えていた。それも……、何日も、何ヶ月も、何年も、何十年も……。


 竜の血を引いている者にとって一年と言うものは些細な時間だ。そして竜は何千年も長生きする。追うであろう存在でも、人間と言う種族の年齢で言うと五十代だ。しかもまだ長生きする。それでも、王は今回のことを早急に解決しようと奮起していた。


 今だってそうだ。


 まず最初に――王は行った対策は、あの雷が来る時、空には渦巻きの雲が発生する。それを見た王はその雲が来る前に、犠牲になってしまう運搬用の竜達を遠くへ逃がす合図の笛を作った。


 お前達も見たことがある。王が持っていたあの角笛だ。


 その角笛を用いて、王は最初の課題でもあった竜達の避難を実用化することに成功した。


 あの雷が来る前に吹いたあれがそれだ。あの笛の音からは竜たちが嫌がる音が出るようになっている。それを聞いた竜達はその場から逃げるように立ち去る。それを応用したのがあの角笛だ。


 勿論、王や医師、アクルジェドさんやクロゥディグルさんも竜人だから聞いてしまえば嫌悪感を出すと思うが、ある程度耐性があるからな。逃げはしない。


 これで竜達に対する対処はできたが、問題はボロボの街の被害の縮小……、要は国の破壊を阻止する対策に対して、王はこのような案を提案したんだ。


 それが――封魔石を使った障壁だ。


 それに至る前にはいろいろと時間も気力を要した。


 王自身もこの計画に賛同をしていたが、あの時の王の顔はいつにもなく疲れていたからな、よく覚えている。そしてその計画が完遂されるまでに、長い時間を要した。


 ざっと……、百年。


 そのくらい封魔石を使った障壁の抽出は難しい事だった。


 だが、それを何とか形にすることができたのは幸運だった。奇跡と言っても過言ではない結果だった。


 ん? アムスノームの魔道具技術を使ったのかって? 


 違う。それはあくまで瘴輝石の力を増幅させることしかできないし、ましてや封魔石の力を増幅させることは到底できない。どころかそんな技術、アムスノームにはない。


 バトラヴィア帝国でも、封魔石を用いた武器……、いいや、この場合は秘器(アーツ)と言った方がいいのかな。だがそれでは封魔石が持っている本来の力を引き出すことはできない。いいや、むしろ宝の持ち腐れ。ただ固いその鉱石を爪替わりにしただけ。


 結局のところ何もできていないのが現状だった。と言うか、これは無理かもしれないと、半ば諦めかけていた。


 じゃあなんでそんなことができたのか? しかも百年前に? そんなこと簡単なことだ。別の国に頼んで作ってもらっただけだ。


 なに? そんな国がどこにあるのか知らない? はぁ……。これだから冒険者と言うものは……。少しは学習と言うものをしないのか。


 まぁ、知らないなら教えてやる。その国の名は――『魔導生産都市エルードゥ』だ。


 聞いたことがない。それは当たり前だろう。なにせこの国はもうない国であり、滅亡録に記載された国でもあるからな。


 驚くのも無理はない話だが、そのまま口を開けていると――液が口に入るぞ。相当苦い液体がな。


 さて――話を戻そう。その国は元々魔道具を生産することでも有名でもあった国で、アムスノーム以上の技術を要していた国でもあった。


 だが、その国はもう五十年以上も前に戦か何かで滅んでしまっていてな。その前に王はその国に訪問し、その技術を使った抽出魔導具を完成させようとした。


 しかしそれでも足りないところは、他国で友好関係があったマキシファトゥマ王国の者達の知恵を借りながら完成させた。それが国の周りを飛ぶあの機械と言うことだ。


 なに? 名前は何なのか? それは考えていない。なにせ『終焉の瘴気』が無くなるまでの間しか設置していない。それなのに愛着を持って名を与えるのも嫌だろう。ゆえに名前はない。強いて言うならば……、『封魔石抽出防壁盤』とだけ言っておくか……。


 ん? どうした。何か聞きたそうな顔をしているな。


 ああ。そうだな。そう言えば話の核心に入っていなかったな。


 あの黒い稲妻がどうして『終焉の瘴気』なのかと言う理由だろう?


 それは簡単な話だ。()()()()()()


 嘘などついていない。ついていると思うのならば、天族特有の感情感知を使って見てみろ。私は嘘をつくことは決していない。むしろをそれをしてしまったら、私はこの場で命を捨てる。


 そのくらい私は自分に嘘をつきたくないんだ。


 だからこそこの場で言おう。私が見た光景――それは、『終焉の瘴気』の()()だ。


『終焉の瘴気』は未知の何かだと揶揄をされていた。それはアルテットミアのギルド長から話を聞いているだろう? その欠片も保管していたんだ。そう言われて信じていても仕方がないだろう。


 だが……、私は知っている。ボロボの者達もそれを見て知ってしまったんだ。


『終焉の瘴気』がどのような存在なのか。その姿を見た瞬間――誰もが思ったんだ。


 この世の物とは思えなうような光景だと。


 そして……侮っていた。


『終焉の瘴気』と言うものは、生物でも機械でも何でもない……。





 正真正銘、怨霊そのものだった。と……。





 ()()()()()()()()()()、『終焉の瘴気』は『終焉の瘴気』なのだと、悟ってしまったんだ。





 それに気付いた瞬間、王はそれを見て悟ったらしいんだ。


 このことを公表することは避けようと。


 この件はボロボでなんとかして片付けないといけないと悟ったらしい。


 詳しいことは聞けなかった。だが王は何かを感じたのかもしれない。その王の言うことなのだから……、私達はそれに従うだけなのだが、その王でも『終焉の瘴気』を止めることはできなかった。


 結局できることと言えば……、瘴気が放つ雷を止めることしかできない。被害を最小限にすることしかできない。攻撃をしようにも攻撃が通らない。相手は攻撃をして、こっちは防ぐことしかできない。


 防戦一方で設置した『封魔石抽出防壁盤』も少しずつガタが来ている。どこも壊れているところがないという顔をしているがな……、あれは見せる用の物ではなくちゃんとした理由があるものだからな。


 現にお前達も見たはずだぞ? 何十年も、何百年もの間守ってきた所為で、最初こそ結界を張っていたにも関わらず、罅が入った。そして結果として軌道が逸れてしまい、あのような惨事になった。


 あの惨状が起きた理由は分かっている。『封魔石抽出防壁盤』がもう限界を超えていると言うこと。つまりあの雷を止めることは後少ししかできないと言うこと。もう少しで壊れるということだ。


 それが壊れてしまえば――この国はもう終り。おしまいだ。


 そんな最後にならないように、次なる対策をしないといけない。そのためにも……、貴様達にはしっかり見て、そしてその素質を確かめないといけないんだ。


 これから戦うであろう巨悪の一部を、ちゃんと倒せるかどうかを……。



 □     □



「素質……? 一部……? 倒す……?」


 長い長いリリティーネさんの話を聞いていた私は、首を傾げながら彼女がいる背後を振り向きながら聞く。


 その時、私の顔はようやくと言えばいいのかわからないけど、やっとと言った方がいいのか……、お医者さんの治療がやっと終わり、頬と顎の傷の痛みがようやく無くなると同時に、お医者さんの「終わりました」と言う言葉を聞いて、私はお医者さんに対して頭を下げてお礼を述べた後、私はリリティーネさんの話を頭の中で復習をしながら私は言葉を零す。


 一体何を言っているんだろう……。と言うか、全然『終焉の瘴気』のこと話されていないような気がする……。そんなことを思いながら私はリリティーネさんのことを見て聞くと、リリティーネさんは私のことを見て、背にしていたその体制をやめて、改めて私に顔を向けて、正面を向きながら彼女はこう言ってきた。


 胸を張り、そして腕を組みながら彼女はこう言ったのだ。


「聞いてなかったのか? その素質を確かめる。と言ったんだ」

「確かめるって……、どうやってですか?」

「戦って見極めるんだ。と言っても、それをやるのは私ではなくて、王なのだがな」

「あ、いえ……、そう言うことではなく……、私が言いたいことはそう言うことではなくて……、その素質を確かめるために戦って見極める相手とは……、一体」

「………『終焉の瘴気』。の、()()()だ」

「? ? ??」

 

 あれ……?


 今、リリティーネさんは何と言ったのだろう。私は今、聞き間違えたのだろうか……?


 ううん。そんなことはない。しっかりとはっきりとした音色で聞こえた。リリティーネさんのふざけていない大真面目な音色が響くと同時に、私はもう一度リリティーネさんが放った言葉を脳内で再生した。


『終焉の瘴気』


 の――


 ()()()


 と。


 確かにそう言っていた。


 その言葉を聞いた私は、今まで聞いたことがないような言葉を聞いてリリティーネさんのことを見ながら私は首を傾げて、意味が分からないという顔を表しながら私は聞いた。


「あの……、残り香って何ですか? 初めて聞く言葉なんですけど……」

「確かに、そんなことマースクルーヴは言っていなかったと思う。が……、残り香の件に関しては()()()()()()()()()()()なんだ。そしてこの事実は、ボロボの王と私、そして一部の人物しか知らないことであり、このことは秘匿として扱われている。つまり――話してはいけないことであり、秘密事項と言っても過言ではないことだ。これを知ってしまえば……、誰もが恐怖の日々を送ってしまうからな」

「? 判明? つい、最近……っ?」


 すると、それを聞いたリリティーネさんは、さも当たり前のように衝撃の事実をさらりとその口から零したのだ。


 私が知らない。きっとヘルナイトさんでも知らないようなことを、彼女は言ったのだ。


 あまりにも衝撃的で、誰も知らないようなことをさらりと私に告げると、その言葉の心意が一体何なのか。それを聞こうと私はリリティーネさんに向かって声を掛けようとした。


 その瞬間――


「――邪魔をする」

「「「!」」」


 声を掛けようとした瞬間、リリティーネさんの背後からぬっと、彼女以上の長身で、お医者さんと同じ鱗を持った人物が私達に向かって声を掛けてきたのだ。


 音もなく、一瞬の間に――って……、多分私あっちが話に集中し過ぎたせいで足音が聞こえていなかったのかもしれないけど……。それでもその人は、リリティーネさんの背後から声を掛けて、私のことを見て安堵のそれを吐きながらその人は言った。


「おぉ。丁度いい時に治療が完了したのだな。流石だ」

「ははっ。有難きお言葉です」


 その人は私のことを見て驚きと感謝、そして脱帽のそれを感情に表しながらその人はお医者さんに目を移して言うと、それを聞いたお医者さんは深く、深く頭を垂らして、穏やかな音色に潜む緊張の声を零しながらお医者さんは頭を下げた。


 それを聞いてか、リリティーネさんも慌てながら頭を垂らし、息を潜めながらじっと頭を下げた体制をキープすると、リリティーネさんの背後にいたその人は私のことを見て踵を返すような行動をして、横目で見ながらその人は言った。


「では、完治早々悪いが、来てほしいのだ。浄化の少女よ」

「? ど、どこに、ですか……?」

「どこか……。と言われてしまうと、言葉に迷うが……、強いて言うのであれば、こう言うであろうな」


 そう言って、私のことを横目で見ていたその人――ドラグーン王は私のことを見て威厳を持っている雰囲気で微かにほくそ笑む様な微笑みを向けてドラグーン王は言った。



「――巨悪の根城だ」



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