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PLAY08 昔話ととある男③

「なるほど……、つまり、その『入国許可証』が報酬の特殊討伐クエストを受けた一人の男があまりにも弱々しそう見えたから、参戦して倒してきてほしいと……」

「ヘルナイトは天然なのかね……?」

「?」


 ギルドで一通りの道具を揃えた私達はヘルナイトさんと合流して、さっきギルドで話していたことを話す。


 するとヘルナイトさんも知っていたらしく……、違う。思い出したらしく……、ヘルナイトさんもそのことを聞いて、受付の人――ナーヴェヴァさんのお願いを聞いて、私達は今、アムスノームに行く道――目的の『緑の園』の前にダンジョン『竜の墓石』という場所を歩いている。


 エストゥガとは違う。地層が芸術のようにうねっている断崖絶壁の一本道で、歩きやすくて視界の空きもない空間の中、私は少しワクワクしながら歩いていた。


 都会にいるとこんな地層なんて見ることはないから、なんだか自然の美しさに見惚れて、こんな時にスマホがあればよかったなぁ。なんて言うことを考えながら足を次なる目的地――アムスノーム国王に向けて進めていた。


 でも――こんな場所でこんなことを考えても大丈夫なのか? と思う人もいるかもしれない。


 きっと慎重な人ならばすぐにその考えが浮かぶだろうけど、そのことに関して大丈夫だとヘルナイトさんは言っていた。


 なぜなら――ここは魔物は少し出るけどダンジョンではない。


 魔物も倒さなくても害などない魔物だらけで (ほとんどが害がある魔物ばかりだけど、たまーにいるらしい)そんなに警戒しなくてもいいということらしい。ヘルナイトさん曰く。


 だから私はスマホのことを考えながら歩むことができるのだ。と言うか……、ヘルナイトさんがいるから安心と言うこともあるのだけど……。あはは……。


 ――話を戻します。そんな中、ヘルナイトさんの言葉を聞いて、キョウヤさんは引きつった笑みを浮かべて言うと、ヘルナイトさんはきょとんっとして首を傾げている。


 なお、二人にはヘルナイトさんの記憶の件は話している。


 だから、二人共余計に詮索することはしない。


 私も、決してしない。


 記憶は、自分のペースで戻ってほしい。苦しんで思い出してほしくない……。


 何でそう思うんだろう……? はて?


 そう思いながら進んでいると、アキにぃはその地層を見て、ところどころから出ている白い骨のようなそれを見て……、「これ、竜の骨?」と言って触れる。


 ヘルナイトさんはそれを見て……。


「昔、ここでは竜同士の戦いがあったそうだ」

「お! ファンタジー」


 キョウヤさんは驚いて言うと、ヘルナイトさんは空を見上げて、その風景を思い出すかのように、語る。


「竜同士の戦いは、アズール創世記頃に起こっていた。未開拓のその土地を、竜達は決戦の場として戦いを続けていた。理由はわからないが……、ボロボ空中都市なら、その歴史がわかるかもしれない……」

「――それは、ヘルナイトもわからないほど古い歴史ってこと?」

「そうだな」

「へぇー。奥が深いなー」


 キョウヤさんは腕を頭に組んで、歩きながらその歴史に浸っていると――


 ――パァンッ!


「「「「っ!?」」」」


 突然だった。


 歩いているその先で、銃声と地面に何かが突き刺さる。


 それを見たアキにぃとキョウヤさんは武器を構えるけど、すぐに二人の足元に銃声が二つ。


 ――ぱぁんぱぁん!


「「っ!」」


 二人は驚いて動きを止めてしまう。


 私はヘルナイトさんに隠されてしまう。それはマントの中なのだけど、そっと頭に添えられた手のおかげで、恐怖は少し和らいだ。


 けど……。


 緊張はほとばしっている。


 どこから撃ってきたのかもわからない状況。


 そんなことを思っていると……。



「――動くなっ!」



 上。それも私から見て左耳。左斜め上から。


 私は左斜め上、断崖絶壁の上を見る。みんなも見る。


 すると――そこには、朝日の逆光で見えないけど、黒いシルエットから見て、テンガロハットにカーヴォーイが切るような服装。そして、手には……。


 拳銃。


 男は凛々しい声で、叫んだ。


「――お前達、何者だっ!」


 その声を聞いた私は、声を上げようとした。


 怪しいものではない。そう言おうとしたのだけど、ヘルナイトさんはそっと頭の添えた手を、ぐっと押しつけるように力を入れる。それを感じた私は上を見上げると。


 ヘルナイトさんは一指し指を口元の添えて……。


 静かに。とジェスチャーをした。


 それを見た私は、こくりと頷く。


「いきなり発砲するなっ! 危ないだろう!」


 アキにぃが声を荒げながら叫ぶと、それを聞いてなのか、上にいた男は銃をアキにぃに狙いを定め……。


「それはこっちのセリフだ」


 さぁ。と男は言う。そして……。


「――金を出せ。今すぐだ」と言う。


「はぁ!? んなもん盗賊と同じようなことしてんじゃねえかっ!」


 キョウヤさんがあまりの発言に怒りながら叫ぶと、遠くからカチッという音が。


 そして……。


 少しもたつくような行動が見えていたけど、その後すぐに響き渡った『パァン』という銃声。


 それを聞いてすぐにキョウヤさんは動いた。ただ後ろに引いて、そして避けたすれすれのところで、カツッと地面に当たる銃弾。



 ざっと地面に降りて、キョウヤさんは上を見上げる。


 上にいた男はまた慌てながらがちゃがちゃと銃に何かをしている。


 それを見てキョウヤさんは――


「……なにしてんだ? あいつ」と、呆れた音色で言う。


 それを聞いていたヘルナイトさんは、少し考えていると、キョウヤさんとアキにぃに――


「二人とも、あの男をどうするつもりだ?」


 そう聞くと、キョウヤさんは肩をすくめて、あきれながら「いや。そんな大それたことはしねーって」と言って、アキにぃは私たちの方を向かず……。


「たぶん、あれ銃に弾を入れているんだ。まぁ大丈夫だと思うよ。それにさっきの弾だって至近距離の拳銃であっても外さない距離の代物なのにはずしていたから、きっとアマチュアだ」


 だから、手は出さない。言葉で何とかする。


 そうアキにぃは言った。それをきいたキョウヤさんは、少し青ざめながら……。


「……傷つけねー程度にな……」と小さく言う。


「なんで俺=ドSって感じのそれなの?」


 アキにぃはキョウヤさんを見て、真顔でそう突っ込む。


 私はそれを聞いて、アキにぃと同じようにキョウヤさんの言葉に疑問を抱く。


 そう言っている間に、男は装填を終えて、そして銃口を私達に向けて叫んだ。


「っ! いいから、さっさと……」


 と言った瞬間だった。


 きっと、前に出たのだろう。その人は崖の近くまで来ていた。それなのに、その人は足を前に出して……、そのまま足を下に滑らせる。


 それはもう……、ずるっという音が聞こえそうな、そんなずり落ちそうな音。


「「「あ」」」


 私とアキにぃ、キョウヤさんが呆けた声をだし。


「っ! お」


 ヘルナイトさんが気付いて、何かを言おうとした時にはもう遅かった。


 その人は崖の先で、まるで漫画のように。


「うぉぉおおおおおおっ!?」


 ずり落ちたせいで片足で何とか体制を整えていたのだけど。


「っと! ほ……。ん? っとおとぉ!? うごおおおおおっ!?」


 間一髪足を元に戻したと思ってほっと一息入れていたけど、気が緩んでしまっていたんのか、だんだん前のめりになって。


「ぬぬぬぬぬううおおおおおおおおおおおっっっ!」


 なんとか爪先でその下に行かないように、エビぞりになってぶるぶる震えながら踏ん張った。


 それを見て、私達はサーカスの大目玉の緊迫した場面を見ているようで、私は内心……、『がんばれ』と応援してしまった。


 そして、次の瞬間……。


 ばこっと、足場となっていたところが、大きく欠けた。


 そして、その人は……、一瞬空中を飛んで……浮いていたように見えたけど、そのまま一直線に。崖に向かって落ちていく。


「ぎゃああああああああああああああああっっ!」

「あ、危ないっ!」


 すぐに手をかざして、スキルを使おうとした。のだけど……。


 その人の落ちるスピードが速すぎて……、スキルを言う前に、その人は崖に……。




 ゴッスッッッ!




「あびゃっ!」


 頭から落ちた。へんてこな声を上げて落ちたその人。


 い、痛そう……。そして、ごめんなさい……。


 救けたいと言った矢先に、こんなことになるなんて……。


 そんなことを思っている間にも、その人は崖を滑り落ちながら……、というか、ところどころで凸凹している岩に頭からぶつかり、「あで!」「おぶ!」「ぐぎゃ!」と叫びながら、カーリングのように滑り落ちていく……。


「お、お、おおおおおお?」

「うわー……、痛そう……」


 そうキョウヤさんとアキにぃが言っていると、ヘルナイトさんはズルズル落ちてきた人を地面に落ちる前に腰を掴んで抱えて地面に寝せる。


 私達は慌ててその人の顔を見る。


 角ばった骨に逞しいじょりじょりとした顎鬚。そして顎が分かれていて眉毛が濃い、金髪のダンディーな人だった。


 気絶をしているみたいだけど、頭のタンコブがひどいことになっている……。


「たんこぶが鏡餅のように……っ!」

「おいそれ言うなアキ。不謹慎というかオレもそう見えてきた……っ!」

「二人は何を言っているんだ」


 確かに、言われてみると……って! そんなことを思っている場合じゃないっ。


 私はすぐにその人に手をかざし――


「『小治癒(キュアラ)』」


 スキル発動と同時に、ふわりと水色の靄がその人の体を包む。


 私は体力回復をしながら、その人の体を見る。


 見たところ……、うーん。外見に異常は……。


 と思ってとあるところを見た瞬間……、私は治療を終えてそれをそっと掴んだ。


 そしてアキにぃ達に見せる。


「これ……」

「? どうしたのハンナ……? あ」

「お? それって……」


 二人はそれを見て驚きの声を上げて、ヘルナイトさんもそれを見て、「これは……」と口を零す。



 そう、その人の右手首には私達と同じような白いバングルがついていたのだ。



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