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PLAY78 共和国の一歩――そして新天地へ④

「え?」


 アクアロイア王の言った言葉に対して驚くような声を上げたのは――もちろん私。


 突然のことで突拍子のないことを聞かされたことで私はあまりの衝撃に呆けた声を出してしまったのだけど、その感情はどうやら私だけではないようだ。


「は?」

「へ?」

「うそ?」

「ほぉ?」


 私の言葉に対して――まるで打ち合わせをしたかのような息遣いで、というか合図を送っていたかのようにアキにぃ、キョウヤさん、シェーラちゃん、虎次郎さんが声を上げ……。


「マジ?」

「わーぉ?」

「おおぉ?」

「リアリィ?」


 虎次郎さんが言い終わると同時に、輝にぃ、コノハちゃん、航一さん、ズー君が驚いた顔をして、自分の事を指さして固まっていた。


 でも、輝にぃ達のことに関しては少し気持ちがわかる気がする。


 だって、アクアロイア王は関係ない輝にぃ達に対して突然王都に連れて行くと言い出したのだから、それは困って目を点にしてしまうのは当たり前かもしれない。


 でも、アクアロイア王は本気の目をしていた。もしゃもしゃも本気で、本気で私達と輝にぃ達をレズバルダさんと一緒に王都に連れて行こうとしている。


 強制ではない。けど拒否権がない提案だった。


「『創成王』が……? これまた意外だね。いつぶりだろうか」


 すると、私達の驚きを解除するように、カカララマさんが驚いた顔をしてアクアロイア王の見上げて、続けてこう言った。


 カカララマさん自身驚いた顔をしているので、どうやらその『そうせいおう』が頼みごとをすること自体珍しいことなのだろう……。


 イェーガー王子のお父さんでもある……。


「~~~~~っ!」


 突然思い出され、そしてアクアロイアで起きた出来事を思い出すと同時に、また顔中が熱くなり、その根地を吹き飛ばすように手で扇いだ。


 手首が痛くなるくらい……、多分腱鞘炎(けんしょうえん)になるくらい私は手を動かして熱を逃がそうとした。


 内心――また思い出しちゃった……っ! もぉっ、早く忘れてーっ。と思いながら……。


 その光景を見ていたシェーラちゃんの不振の目にも気付かず、急いで顔の入りを元に戻そうと私は必死になり、その熱を逃がそうと奮起していると……、カカララマさんの言葉を聞いたアクアロイア王はそのことに関してこう返答した。


「ああ。私も初めてのことでな。アクアロイアに来た王都の兵士がこのことを伝えに来た時、顔の心境を表してしまったよ。きっと……、兄上も見たことも聞いたことがないだろうな……。王都にいる『創世王』の姿など」

「………親密が深い『英知の永王』でもその姿を見たことはあまりないだろうな……、年長のナム王からも聞いたことがないしのぉ」

「だから余も驚いているんだ。こんな時に『創成王』からの言伝(ことづて)。きっと……余の件もあるが、バトラヴィア帝国の騒動。そして――浄化の力を持った二人の存在をその目で見たいのだろう」


 長い間――誰も浄化することができなかったからな。


 そう言いながら、アクアロイア王は私とヘルナイトさんのことを見て小さく呟く。


 私はやっとのこと顔の体温が正常になったので、アクアロイア王のことを見ると、近くにいたクルク君が私とヘルナイトさんのこと見上げてにっと笑みを浮かべながら――


「人気者だね! ねーちゃん達。最長老に教えたいよ」


 と言ってきたけど、正直嬉しいと言うか……、正直な話複雑な心境だったので、私はクルク君のことを見降ろして困ったように控えめに微笑みながら――「人気……、なのかな?」と言う。


 するとアクアロイア王とカカララマさん。そしてクルク君の話を聞いていたのだろう。


 今までずっと黙っていたクイーンメレブさんが私達の近くに歩み寄りながら「はっ」と鼻で笑い、私達のことを見ながらこう言ってきた。


「人気なんじゃない。『創成王』はあんた達の実力を聞いて一目見たいだけなんだよ」

「実力………?」


 クイーンメレブさんの言葉を聞いた私は、目を点にしてクイーンメレブさんのことを見上げる。仮面が半分はがれているから、半分だけ見える素顔が私のことを見降ろしてくる。射殺すような……、鋭い眼付きで。


 私はその目を見て、僅かに肩を震わせてぎゅっと自分の手を握りしめてしまう。直感して、怖いと思ってしまったからだと思うけど……、その光景を見ていたヘルナイトさんがクイーンメレブさんのことを見て一言――


「怖がっているぞ。その目をやめろ」


 一言ヘルナイトさんはクイーンメレブさんに向かって言うと、冷静なヘルナイトさんとは対照的にクイーンメレブさんは……。


「はぁ? 別に見降ろしているだけだから大丈夫でしょうか? 先入観がありすぎ。私はそんなおぞましい目で見ていたか? えぇ?」


 冷静に対処しているヘルナイトさんとは対照的に、ヘルナイトさんに向かって威圧的な態度をとりながら睨みつけていた。


 さながら……、暴走族の女の人の目つき。テレビで見たことがあるからそんな感じの目だ……。


 私はその光景を見つつ、内心がくがくと心臓を震わせて――クイーンメレブさんって、団長さんじゃないよね……? なんでこんなに偉いんだろう……。と、訳が分からないと言わんばかりの顔で見ていたけど、ヘルナイトさんはそんなクイーンメレブさんの威圧に折れていない面持ちでこう言ってきた。


「ああ。わかっているが、それでもお前の目つきは鋭いんだ。だがお前の言葉に一理ある」

「へぇ? あんたでも理解できたんだね? いつも自分の強さに対して疑念を抱いていた青二才が」

「茶化しているみたいだが、その言葉に対して反応はできないな。反論の余地もない」

「ふん。トリッキーマジシャンやデュランとは違って……、からかいがいがない」


 そう言って、クイーンメレブさんはくるりと踵を返して、ヘルナイトさんと私に背を向けながら彼女は横顔を私達に見せつけてから溜息を吐き、続けてこう言ってくる。


「でも――『創成王』が自ら要件を言うこと自体珍しいこと。私が生きてきた中でもかなりレアなケースだからね。粗相がないように気を付けて」

「? 何を言っている? 聞いていなかったのか?」


 すると――クイーンメレブさんの話を聞いていたアクアロイア王は目を点にさせて私達のことを見ながら声を上げた。


 私とヘルナイトさんはアクアロイア王のことを見て首を傾げ、そして話をしていたクイーンメレブさんが一番驚いているような顔をして「は?」と驚いた声を上げてアクアロイア王のことを見ると、アクアロイア王はクイーンメレブさんのことを見て、さも当たり前のような顔をしてこう言ってきたのだ。




「女帝卿()ご一緒に来てほしいのだ。これも『創成王』勅令であるぞ。ちなみに――拒否権はない」




「は?」


 クイーンメレブさんは唸るように言った。


『え』に濁点がつくような濁った音色でアクアロイア王のことを苛立つ顔と混乱が混ざった顔で見ると、アクアロイア王の横にいたオヴィリィさんは「マジマジ」と頷きながら言い――さらにそれに追い打ちをかけるようにザンバードさんがこう言ってきた。


「なんでも、()()()()()()()も踏まえて話したいことがあるらしいんです。ゆえに唐突なのですが、女帝卿と武神卿一行は我々と一緒に王都に向かってほしいと」

「? これからのこと?」


 ザンバードさんの言葉を聞いて、首を傾げながら顎に手を添えるアキにぃ。


 その疑問に対しては私やキョウヤさん達も疑問に思ったことでもあり、一体何について話すのかなという好奇心もあった。


 勅令を出してまでも私達を王都に連れてきてほしいと命令する『創成王』。


 その人が一体何を考えているのか。


 何を話すのかと言う疑問が頭の中を飛び交う中――その光景を見て、自分達は関係ないと思っていたのか――輝にぃ達は徐に私達の前に現れて……。


「大変だね華も。そして秋政達もお忙しいようで。それじゃぁ僕達はこれにてお暇させていただきます」

「まーす!」

「じゃーな!」

「それではまたお会いしましょうお忙し組。シェーラはもう少し女の子らしくした方がいいですよ」


 輝にぃを筆頭に、コノハちゃん、航一さん、そしてズー君四人が手をすっと上げてさよならをするようにすごすごと早足で私達の間を縫って謁見の間を後にしようと逃げようとしていた。


 そそくさと、満面の笑みで……。輝にぃとズー君だけは冷静な表情のままだったけど……。


 そんな輝にぃの行動を見てか、アキにぃとキョウヤさん、そしてシェーラちゃんが輝にぃ達のことを見て――


「あ! てめぇっ!」

「あいつら面倒なことを全部オレ達に押し付けて逃げる気だぞっ! おい丸投げすんなこの野郎っ!」

「ズーッ! あんたに至っては余計なお世話なのよっ! 一言多いしっ!」


 血相変えながら三人は怒声を輝にぃ達に向けて浴びせた……。


 その光景を見ていた虎次郎さんだけは『仲がいいな』と言う温かい目で見ていたけど……、虎次郎さん、あれは仲がいいというそれではないと思います……。


 虎次郎さんのことを見てそんなことを思っていると、アクアロイア王は今まさにどこかへ行こうと大きなドアの近くに向かおうとしていた輝にぃたちのことを一瞥し、これも平然とした面持ちで、当たり前と言った雰囲気を出しながらアクアロイア王は輝にぃ達に向かって断言した。




「ん? そなたたちにも来てもらうぞ。もちろんこれも『創成王』直々の命令であり、拒否権もない」




「「「「え?」」」」


 断言された言葉に、輝にぃ達は目を点にして歩いた状態で固まり、アクアロイア王のことを凝視しながら目を待ちくりさせていた。


 そんな目を見ていたジューゴさんは「マジマジよ」と言って、アクアロイア王の横からそっと姿を現して、へらへらとした顔を出しながら――ジュウゴさんは私達に向かってこう言った。


「『創成王』がここにいるアクアロイア王……、と言うか、そこにいる新しい王様以外の王に言った勅令は二つ。一つは『新たな王の候補が決まったから、アズールの国王達を集めて『国王会議』を開催する』こと。もう一つは『この国を脅かしていた『終焉の瘴気』を浄化しに旅をしている冒険者一行と、()()()()()()()()()()()と話がしたい』と言うこと。ここまでオーケー?」

「……一行に、助力……?」

「助力と言うことは……、まさか」


 ジュウゴさんの言葉を聞いた私は、はっと息を呑んで考える仕草をしてから、首を傾げてジューゴさんが言った言葉を復唱する。


 その言葉を聞いた瞬間、脳裏に浮かんだこれまで戦ってきた人達の面影。親しい人達の面影。


 その面影を思い浮かんで復唱すると、ヘルナイトさんも察したのか、ジュウゴさんに向かって聞こうとした瞬間、ジュウゴさんはそっと口元に人差し指を添えて……、「しぃーっ」と、口から微風と共に音色を発した。


 その行動が示すことは――きっと行動通りのことだろう……。ここで話してしまうと何かダメなことがあるのかもしれないと思う。


 その行動を見た私は言いかけていた口をきゅっと閉じて、ヘルナイトさんもそれ以上のことを言うことはなかった。


 ジュウゴさんはそんな私達のことを見て、にっと狐特有の笑みを浮かべると……、すぐに輝にぃ達のことを見て――


「と言うことで、ここにいるお嬢ちゃん達の手助けをした君達にも来てもらうからね。これ絶対決定事項。オーケー?」


 と、へらりと笑みを浮かべて言った。


 そんなジュウゴさんの言葉を聞いて、クイーンメレブさんも察したのか、ため息を吐くと同時に頭を抱えて項垂れる。アキにぃとシェーラちゃんは輝にぃ達のことを見てにっと笑みを浮かべていたけど……、そんな二人の後頭部に拳骨をお見舞いしたキョウヤさん。


 ごちんっ! と言う音と、二人の痛がる声が聞こえると、喧嘩になりそうな声をかき消すように輝にぃがジュウゴさんのことを見て前のめりになりながら慌てて反論をしてきたのだ。


「え? えぇ……っ? ちょっと待って下さい。僕達は確かにこの帝国にいました。いも……っ! じゃなくて、ハンナにも会いましたが、僕達はその浄化? に助太刀なんてしていません。僕達は僕達の目的があってここに来ただけで、助力も何もしていませんよ」

「ん? そうなのか?」


 輝にぃの反論 (と言う名の弁論を聞いていたアクアロイア王は、ぱちくりとした顔で輝にぃのことを見ていたけど、その言葉を聞いていた航一さんとズー君も高速でコクコクと頷きながら肯定の意を示していた。


 あ……、クイーンメレブさんの睨みがすごく怖い……。秋にぃ達の苛立つ雰囲気も怖いけど、その怖さと輝にぃ達の焦りをかき消すように――ううん……。輝にぃたちのその気持ちをさらに追い打ちをかけるように、オヴィリィさんがアクアロイアの背後から現れ、ジューゴさんの横で彼女はこう言ってきた。


「でも――助力はしていないけど、少なくともその場にいたじゃん。そして、()()()()()()()()()でしょ?」


 そう言って、オヴィリィさんはすっと徐にとある人に向けて指を指しながら言う。


 指を指した人物――コノハちゃんのことを見ながら……。




「――そこにいる亜人の小娘が」




「あー! そういえば……」


 その事実を聞いたと言うか、その言葉を聞いた輝にぃとズー君は無言の顔をしてコノハちゃんのことを見て、航一さんは納得したような顔をして手をポンッと叩くと、その言葉を聞いて唖然としていたコノハちゃんは「あ!」と声を上げて、はっと何かに気付き、私のことを見てコノハちゃんは驚いた音色で言った。




「そうだ……、コノハ……、お姉ちゃんと一緒にガーディアン攻防戦をしていた。これは……助太刀だねっ!」

「何が『助太刀だね』ですか馬鹿野郎。証拠をばらばらと落とすな。満面の笑みで言っても僕らは『そうなんだー。仕方がないかー』って行きませんからね」




 何故かワクワクしている顔をして目をキラキラさせているコノハちゃんの言葉に対して、ズー君は低い音色でどす黒い突っ込みを入れた。


 相当関わりたくなかったかのような音色だ……。ズー君はああ見えて、面倒なことには巻き込まれたくない性格なのだろう……。


 コノハちゃんとズー君が喧嘩のような会話をして、航一さんがその光景を見て仲裁に入りこむ。その光景を見て、聞いていた輝にぃは呆れたように溜息を吐き、そしてアクアロイア王のことを見て、輝にぃは聞いた。


「あのぉ……。理由は分かりました。一応聞きますけど……、拒否権は」

「ない。拒否した時点でそれ相応の措置を打つつもりだと、『創成王』は言っていたからな。覚悟を決めた方がいいぞ? アルテットミアにいる冒険者達もこのことを聞いた瞬間渋々承諾はしたからな。なに――話を聞くだけでもいい。来てほしいのだ」


 猫の手も借りたい他国の愚痴を聞くだけでも――な。


 アクアロイア王は言う。


 拒否権はないけど、来てくれたらその後の判断は君達に任せるようなことを言って、来てほしいことを願い出る。


 少し……、静かな脅しが聞こえた気がしたけど、嘘だよね……? 


 話の中にあったアルテットミアにいる冒険者達のところで、私はもしかして……。と思ってアルテットミアに残っているあの人達のことを思い出し、元気にしているかな……。と思いふけっていると……輝にぃははぁっと溜息を吐き、そして頭をがりがりと掻きながら輝にぃはアクアロイア王のことを見て聞く。


「じゃぁ……、話しだけでも聞きますけど、そのあとのことはこちらの判断でします。措置を取られたくなので行きますけど」

「すまんな。『創成王』の命令は絶対でな。余でも断ることはできんのだ。それで――そちらの返答はどうなんだ?」


 輝にぃの話を聞いたアクアロイア王は軽く頭を下げて謝罪をすると、再度私達のことを見てアクアロイア王は言った。


 私達に対しても、輝にぃに対しての返答を聞くために聞いたことだと思うけど、私はその返答に迷いなんてなかった。


 と言うか、このガーディアンの浄化が終われば次の浄化に行かなければいけない。次に行く場所は久し振りに言うと思う――魔導液晶(ヴィジョレット)を見ればわかるけど、一度だけ行かなければいけないのかもしれない……。


 この世界の中心で、ジエンドが放った詠唱――『闇永の息吹』もとい……、『終焉の瘴気』の正体がわかるかもしれない……。


 そう思った私は、そっとヘルナイトさんのことを見上げる。


「あの……」

「?」

「…………………」

「? どうしたハンナ」


 この時私は、なぜかヘルナイトさんの承諾を得てから判断しようと思っていた。


 それがなぜなのかはわからないけど、私はこの時正常な判断はできるけど、その判断に自信がなかったのかもしれない。


 メグちゃんのことを助けたあの時、きっと正しい判断だったと思ったら違っていた、逆に悪化する原因を作ってしまった。


 そのこともあり、メグちゃんにかける言葉もかけることができなかった。怖くてできなかったからこそ……、私は少し――ナーバスになっていたのかもしれない。


 だから私は行動したんだ。自分の意思で決めずに、ヘルナイトさんの承諾を得るという……、まるで子供がするようなことを……。


 これは――私の心の弱さの露見と言ったほうがいいのかもしれない。


 私のことを見降ろしながらもヘルナイトさんは私の言葉を待つ。でも私は対照的に、話そうと思っているけど話せないことに驚きとむず痒さを感じてしまっていた。アキにぃ達の私の言葉を聞いてか、ヘルナイトさんの言葉を待っているみたいで、固唾を呑んで待っている。


 そんな私達のことを見てか、ヘルナイトさんは私のことをじっと見降ろし――少しの間無言になるとそっと右手を伸ばし、私の頭に『ぽふり』と手を置いて――ヘルナイトさんは言った。


 もちろん――帽子の中でぐっすりと寝ているナヴィちゃんのことを配慮して手を置いて、ヘルナイトさんは私のことを見て言った。


「言いたいことは察する。しかしこれは私の判断で決めていいものではない。君の判断に任せる。その道に――私も共に行くだけだ」


 行く場所は共に同じなのだからな。


 そうヘルナイトさんは言う。


 その言葉を聞いた私は驚いた目をしていたと思う。


 だって私自身驚いていたし、その言葉を聞いた私は一瞬見上げるそれをやめて、自分の足元を見降ろして少しの間黙ると……、私はアキにぃ達のことを見る。


 まだ不安な気持ちが拭いきれていないせいなのか、なんだか他人任せになりそうになっている自分が情けなく思えてくる。けどそんな私の気持ちを察したのか――アキにぃ達は笑みを浮かべてうんうん頷いていた。シェーラちゃんは腕を組んでそっぽを向いていたけど……。


 アキにぃ達を見て、ヘルナイトさんの言葉を聞いて、私はもう一度俯き、そしてぐっと唇を噤んで意を決する。


 後ろ向きだった気持ちの背中を前に押すように――私はアクアロイア王のことを見て言った。


「――当たり前です。行きます。王都に行き――話を聞きます。そのあとで私達も浄化のためにすぐに王都を離れると思いますが……、それでもいいですか?」


 私は言う。


 少しばかりの意を決して、その背中に押されるがままに言葉を発すると、ザンバードさん達は互いの顔を見てまんざらでもない笑みを浮かべている。アクアロイア王も私の言葉を聞いて頷き――


「そう言うと思っていたぞ。それに――いずれ()()()()()()()()()()()()()からな。いい機会だったかもしれん」

「?」


 あれ? なんだろう……。今アクアロイア王、含みのあるような言葉を放ったような……。


「おいちょっと――今行かなければいけないって言っていたけどよ……。それってどういう」

「これですべての承諾を得たな。では善は急げだ。早速行くぞ」

「おいちょっと待てっ。なんだか先読みしていたかのように話を遮ったよな? なんで遮った? なんか隠しているよな?」

「お答えくださいよ王様」

「よしでは行こうではないかっ!」

「「聞けアクアロイア王。無視するんじゃねえ(無視しないでください)」」


 そんなことをうんうん唸りながら思っていると――アクアロイア王はいつの間にか近くに来ていたレズバルダさんとカカララマさんのことを見て、よしっと意気込むように胸を張って言うと、キョウヤさんとズー君もアクアロイア王の言葉を聞いて疑問に思ったのだろう。


 詰め寄るように聞こうとしたけど無理矢理その言葉を遮られてしまい、無視するようにアクアロイア王は懐に手を差し入れて、すっと流れるように取り出した。顔に彫られている表情は期待と喜びと――楽しみ。


 もしゃもしゃもその感情を指していたので、多分アクアロイア王は楽しみなのかもしれない。


 王都で再会する――アムスノーム国王……もといお兄さんに会うことを……。


 そのもしゃもしゃを見た私は内心微笑みながら――やっぱり兄弟の再会は誰でも嬉しいよね……。と思いながら微笑ましく見ていると、アクアロイア王はその手に握られている灰色に近いような透明感のある鉱石をぐっと握りしめて――私達のことを見てから彼はこう言った。



「では行くぞ。マナイグニッション――『王都転送(ポータル・キングダム)』ッ!」



「ちょっとまだお話は(おわ)


 と、アクアロイア王の言葉を聞いていたズー君は未だに王様の言った言葉に疑問を持っていたらしく、無理矢理終わらせたアクアロイア王に向かってまだ追及していたけど……、それも虚しく消え去った。


 それもそうだろう。


 アクアロイア王が言い終わると同時に、私達の周りに白い柱が出現して、その柱の中に入っている私達を覆うように、白い柱は密度を上げて私達の方に向かって進んでいく。


 白い線で描かれた円の形が中の黒い空間を城で埋め尽くすように――白い丸を完成させるようにどんどん私達のところに向かってくる。


 先にその白い柱に入ってしまったカカララマさんとレズバルダさんは驚いた顔をしていたけど、その驚きを包み込むようにその白い柱はどんどん包み込んでいく。


 その白い光景を見て包まれてしまった二人を見て逃げようとしていたけど、運悪く逃げ遅れてしまった輝にぃ達や、驚いて逃げようとしているけど、シェーラちゃんに掴まれて逃走に失敗してしまったアキにぃ。


 その光景を見て呆れた目をしているキョウヤさんと『仲がいいな』と言う目で見ている虎次郎さん。そしてアクアロイア王と一緒に包まれていくザンバードさん達にクイーンメレブさん。


 そんな光景を見て、私は大丈夫なのかな……? と言う目で見ていたけど、ヘルナイトさんはそんな私の頭に手をそっと乗せ、そして見上げた私のことを見降ろしながらヘルナイトさんは言った。


「大丈夫だ」


 ヘルナイトさんは言った。凛とした音色で、私のことを安心させようとしている。


 その言葉を聞いた私はヘルナイトさんの温もりを感じて、さっきまであった不安な感情が一瞬和らいだ気がして、私は控えめに、少しだけぎこちないような笑みを浮かべてヘルナイトさんに向かってお礼を述べた。


「………ありがとうございます」


 その言葉を聞いてか、ヘルナイトさんのもしゃもしゃに変化が現れた――気がした。


 ヘルナイトさんの胸の辺りに現れたもしゃもしゃは――青でも赤でもない。一言で言うのならば……。


 灰色。


 今まで見たことがないような、砂のようにさらさらと流れるような灰色の砂。今まで雨とか燃えるような炎、マグマなど見たことがあるけど砂は初めてのもしゃもしゃだ。


 そのもしゃもしゃを見た私は一瞬目を疑ってヘルナイトさんのことを見上げたけど、その瞬間、私達を包み込むように襲い掛かってきた白い柱の光。


 その光は優しく、私達のことを本当に包み込むように覆っていく感触は優しいものそのもの。


 光に呑まれて消えてくような恐怖もないけど、その光に入った途端……、だんだん眠くなるような感覚に襲われ、私はそのまま白い光に包まれながら意識を失っていく……。


 白い円柱が出来上がると同時に、すっとその場所から消える光と一緒に消えて……。


 そして――

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