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PLAY78 共和国の一歩――そして新天地へ③

「何でしょうか……。すごくこそばゆいと言いますか……、歯がゆいと言いますか……、何と言えばいいのか……」

「何今更になってんだ新国王!」

「国王様ばんざーい!」

「もういいですよ……。それは」


 それからのことなんだけど――レズバルダさんの王位継承の儀は特に大きな問題もなく終り、晴れてこの国の……、バトラヴィア共和国の王様になったレズバルダさん。


 本人は最初こそその気満々の雰囲気を出していたけど、私達のことを状況を理解したのか、今まで見せなかった恥ずかしそうに顔を赤くし、そっぽを向きながらレズバルダさんはもにょもにょと何かを言っていた。


 最後まで何かを言っていた気がするけど、それも聞こえずじまい。なんて言ったんだろう……。


 そんなことを思っていると、レズバルダさんの言葉を聞いていたキョウヤさんが呆れた笑みを浮かべて頭を組みながら言い、その言葉に追撃を与えるようにコノハちゃんが満面の笑みで言った。


 二人の言葉を聞いて、レズバルダさんは更に顔を赤くして溜息交じりに言う。


 確かに大勢の人の前で一部始終を見せてしまったのだ。


 それは自分の成長記録の録画を他人に見せるようなものだから……、やっぱり恥ずかしいのかもしれない。


 そう思うとなんだか微笑ましいと言うか……、真面目に見えたレズバルダさんの人間性が見えた気がして、やっぱり微笑ましいと思ってしまった。


 すると。


「さて――これで正式にレズバルダがこの国の王になった」


 が。と言って、カカララマさんは謁見の間の段座を『ぴょん、ぴょん』と跳んで降りていき、そのまま段差の下に落ち立つとカカララマさんは私達のことを見て一言――


「しかし、これで晴れてではない。『国王会議』で他の王の認知、そして承認を得て晴れて王様になる。つまりはまだ第一段階なんじゃ」


 と言うと、それを聞いた航一さんは子供のように顔を顰め、そして大袈裟に「えーっ?」と零してから、航一さんはカカララマさんのことを見て唇を尖らせながらこう言った。


「なんだよそれーっ! 思わせぶりってことかよ。フーインキ作りってことかよ! 俺っちたちの感動返せよ。せっかく祝福モードだったってのにーっ」

「そーだそーだー! ぶーぶーぶー! コノハの感動も返せーっ!」


 唇を尖らせ、あからさまのブーイングをする航一さんとそのブーイングに便乗するコノハちゃん。


 両腕を振ってぶーぶーと唇を尖らせて言う二人の姿は、よく見るとえーっと……、その……、なんだろう……。


 その声の通りなんだけど、鳴き声通りの姿に見えそうになり、私は控えめに微笑みつつも、微笑んではいけないと思い……、堪えてへんてこな顔になっていたに違いない。多分……。


 そんな光景を見ていたズー君が二人のことを見て冷静な一言――


「豚のようにブヒブヒ言わないでください。これはこの世界のルールに則っていることだと思いますよ? ここで王になったからってすぐに仕事ができるわけじゃない。ちゃんと引継ぎをしてから仕事を」

「「豚じゃねーよっ! (豚じゃないもんっ!)」」

「ズー。そう言った事務的引継ぎはないと思うよ」


 ズー君の鶴の一声のような言葉を聞いた航一さんとコノハちゃんは、ショックを受けたかのような顔をして泣きそうな顔をしてズー君に向かって怒りを吐き捨てていたけど、それを聞いていた輝にぃは冷静な目でズー君のことを見ながら冷静な突っ込みを入れていた……。


 そんな輝にぃ達の光景を見ていた私達は、内心和むような空気を出しつつ、引きつるような目で見ていたと思うけど、私はその光景を見て和みながら微笑ましく見つめていた。


 近くでキョウヤさんの――「なんか……、すんげー既視感感じるんですけど……」と言う声が聞こえたけど、気のせいだよね……? きっと……。


「ふん。確かにそうじゃな。そこにいる魔獣の餓鬼の言う通り――王になるにはもちろん正当な承認が必要になる。今しがたやったことは砂の国に代々伝わる王位継承の儀。しかしそれはただの継承の儀。本当の王になるためにはいろいろと手続きがいるんじゃよ」


 すると、私達の和みを見てか、カカララマさんは私達のことを見て張るような声を上げて言ってきた。


 カカララマさんの言葉を聞いた私やアキにぃ達は、はっと息を呑み、すぐにカカララマさんとレズバルダさんがいる方向に目をやると、カカララマさんはため息を吐きつつ、頭をぼりぼりと掻きながら私達に向かって面倒くさそうな音色でこう言ってきた。


「一つは『国王会議』の審議で可決を獲得すること。そのためには他の王に認めてもらわねばならない。そこが重要じゃな。書面に関してはできるとしてでも、王の中には曲者もおる。アルテットミア王やボロボの王はまだいいとして、アムスノーム国王やナム王。そして天界の王にも認めてもらわんといけん。要は『国王会議』こそは正念場と言ったほうがいい」

「確かに……、あのひねくれた国王の心を動かすことは至難の業かもな……」

「ナム王が一体どんな人なのかはわからないけど……、あのおじいさんはな……」


 カカララマさんのその言葉を聞いていたキョウヤさんとアキにぃは、腕を組みつつ深刻そうな顔をして、二人同時に「うーん……」と、唸るように声を漏らす。


 二人の会話を聞いていたシェーラちゃんと虎次郎さんは、驚いた目をして体を固め、「……どんな王様なのよ……アムスノームって」と、青ざめた顔をして目を点にして聞いていた……。


 アキにぃとキョウヤさんはその言葉に対して何の返答もしなかったけど……、私もあ金ぃ達の意見には同意してしまう。


 だって、アムスノーム国王は結構性格が意地悪だから、真面目なレズバルダさん相手になんだかおちょくりそう……。そんな想像が膨らんでしまう。


 近いうちに起きそうな想像を……。


 そんなことを思っていると……。


「カカララマ様は、その関所を通って王になられたのですよね?」

「ん?」


 カカララマさんの話と、アキにぃ達の話を聞いていたレズバルダさんは徐にカカララマさんに近づき、恐る恐ると言う形でカカララマさんに本人が王になった時のことを聞くと、それを聞いていたカカララマさんはきょとんっとした顔をして、少しの間思い出すように無言になると、カカララマさんは「ああ」と言い――


「儂の王の座はちっぽけな肩書。それに儂は今の帝王もとい前帝王がまだ子供だった時に、儂は代わりとして王になった代用品じゃ。つまり儂は代わりの()。なんでもいいような存在。よく聞く代理じゃよ。そんな存在相手にあの帝王が何度も何度も王都に行き『国王会議』で儂の件を議題に出すか? つまり儂の王としてのカウントは――事実上無しじゃ」

「おいケーサツ出てこいっ! 俺たちの感動を奪い、そして言葉巧みに真面目な青少年……、じゃねえな。好青年エルフの心を弄んだ山姥(やまんエルフばぁ)がいますっっっ! 詐欺容疑で逮捕お願いしますっ!」


 カカララマさんは平然とした顔で言い、その言葉を聞いて驚きの顔を浮かべているレズバルダさんのことを見て、私達はさっきの感動が嘘のように消え去り、驚きで体を硬直させていると、キョウヤさんがカカララマさんのことを『びしりっ!』と指さし、怒りを露にしながら怒りの突っ込みを入れた。


 後頭部に怒りマークが見えているのは……、きっと気のせいではない……。


「それじゃぁ……、今のアクアロイア王はちゃんとした審議をして王になったってことか……」


 アキにぃが納得するようの腕を組みながら言うと、カカララマさんは呆れた顔をしてアキにぃのことを見ながら――


「ん? あぁその時のことは詳しくは分からんが、前帝王曰く……、アクアロイアはその時緊急事態で、その王がよからぬことをしたこともあり、その後継者を選ぶ余裕もなかったそうでの。あれは急遽と言う形だそうだ。正式な王認定はまだしていないらしい。そうしたのは王子らしいがのぉ」


 と言った。


 それを聞いていたシェーラちゃんも納得して頷きつつ、カカララマさんのことを見て思い出すようなしぐさをしながらこう独り言を零した。


「確かにあの王様捕まるほどの悪い事をしたから、後継者も後継者で感化されている可能性も高いものね。王子グッジョブよ」

「何様?」


 そんなシェーラちゃんの独り言に対して突っ込むように、キョウヤさんは彼女の後頭部を見ながら言うけど、シェーラちゃんはそんなキョウヤさんのことを無視する。


 アクアロイア王の非行は確かにひどいものだったし、シェーラちゃんの言う通り王子の行いは正しいかもしれない。王様のいない国を一般人が保つことは難しいから、急遽としては正しい選択かもしれない。


 王子……、イェーガー王子……。


「~~~~~っっっ!」

「? どうした? 腹痛か?」


 虎次郎さんが私のことを見て聞いてきたけど、私はその言葉に応えることができず俯いてその場でしゃがんでしまう。顔中を真っ赤にして、手でその顔を隠しながら……。


 腹痛じゃないけど、今この顔を見せることはできない……。


 だって、あの事を思い出したら……、イェーガー王子との会話と、あの行動を思い出してしまったら、赤くならないなんてできない。真っ赤になるしかないもの……。


 あの光景……、今思い出しても赤裸々もの……、じゃない……っ。まっかっかものだよ……っ。


 もぉ……、なんであんなことに……。


「~~~~~っ。! ?」


 でも、ふと私は頭の中に残ったしこり――じゃない。頭に突然できたしこりを感じて、きょとんっと目を点にした状態で固まり、顔中の熱が一気に引いて正常な顔の色と体温になったところで……、私はその場で立ち上がり、カカララマさんのことを見てカカララマさんのことを呼んだ。


 私の声を聞いたカカララマさんは、首を傾げながら「ん?」と声を漏らすと、私はカカララマさんに向かって今思った疑問を口にした。


 多分、みんな思っているかもしれないけど、それでも私はどうなるんだろうという疑問の方が大きかったので、率直に聞いてみる行動に移した。


「あの……、それってレズバルダさんと同じように審議に書けないといけないことなんですか? 私達が再会したときは堂々と王の責務を全うしていましたけど……」

「ああ。だろうね。なにせ急ごしらえの責務。正式な王の審議はこれから決めるからの。それに――」


 と言った瞬間、カカララマさんはすっと視線を私から逸らし、私達の後ろにある大きなドアに目を移すと、カカララマさんは杖を握る力をきゅっと強めて――にっと戦略的笑みを浮かべながら一言――


「――そろそろだね」と言った。


 それを聞いた私達は首を傾げて目を点にしていたけど、その疑問もすぐに解消されることになる。


 首を傾げて目を点にした瞬間――後ろの大きなドアが開く音を聞いて、その音がした方向にみんなと一緒に目をやった瞬間に、それは解消された。


「あ」

「お」

「え」

「うそ」

「ほほぉ?」


 大きなドアの方向に目をやった瞬間――私、アキにぃ、キョウヤさん、シェーラちゃん、虎次郎さんは声を上げてその光景に驚きを顔に出し、輝にぃ達もきっとと言うか……、私達以上に驚いているに違いない。


 ヘルナイトさんとクイーンメレブさんもその光景を見て驚いている。そしてレズバルダさんは私達以上に驚き、口を開けた状態で固まっている。


 それもそうだろう……。だって私達の目の前にいた人は――人たちは……。懐かしい面々だったからだ。本当に懐かしくて、声を出してその人達の名前を叫びたいくらい懐かしい人達だったから。


「ようやく来たか。待っておったぞ」


 カカララマさんはその人達のことを見ながら言って、ぴょんぴょんっと跳んでその場所から降りていく。その光景を見ていたドアを開いた人――ううん。正式にはドアが開いてその門を通った偉い人は、カカララマさんのことを見てこう言った。


 背後に()()()()()()()()()()()()()()()()()()――その人は言った。


「待っておったとは何事か、こちらは責務も相まって激務の毎日だったのだぞ。アクアロイアからは遠いこともあり、来るのにも一苦労であったのだ。そこは大目に見てくれてもいいのではないのか?」

「何を今更――元々平和な国出身じゃから、この国のやり方にまだついていけていないだけじゃ。そんなもん根気でなんとかせぃ」

「今期で行けるほど甘くなかったぞ……? 今回の長旅は」


 カカララマさんとその人はまるで前にあったかのような会話をしていたけど、その人は私達に気付いてはたっと驚きの顔をした後――その人は驚いて固まっている私達リヴァイヴに向かって喜びの音色でこう言ってきた。


「おぉ! 久しいなっ! その様子だと、どうやら余のクエストを見事完遂できたようだな」

「あ、は……えっと、なんでこんなところにいるんですか?」


 私は聞く。その人に向かって唖然としている顔で、驚いたその顔を隠さずに私は聞いた。


 私達の目の前で、驚きと喜びの表情を浮かべて再会したことに喜んでいるその人は私達のことを見て――「アムスノームの一件以来だな。余のことを忘れたわけではあるまいな」と聞いて来たのは……、元アムスノーム二十六代目国王もとい、アクアロイア王でもあるパルトリッヒ・ルーベントラン・ノートルダム王で、アクアロイア王は背後に四人の人達を連れて現れたのだ。


 四人の中でも一際大きい存在で、頭をすっぽりと覆えるような黒い布を纏って、そして羽織っている黒に近い紺色の鱗の蜥蜴人――ザンバードさん。


 そんなザンバードさんの布の中から『ぴょこんっ』と飛び出てくるように現れた子供。子どもと言っても頭からピコンッとした獣耳を立てて、背中から見えた二本の尻尾。くせっ毛が印象的なそばかすの少年で、毛の色は茶色のしましま模様の猫。服装はラフで、つなぎのような紺色の服に革製の靴。手には大きな手袋をしている子供――クルクくん。


 そして王様の横で胸を這って威張るように腕を組んでいる女の人――黒いミディアムヘアーで、耳が長い褐色の肌が印象的な、露出が多い白い布の服とスカートを穿いた整った顔立ちのきれいな女性。


 前見た時と違っていたから一瞬誰なのかわからなかった。でも今見たらわかる。この女性は――オヴィリィさんだ。オヴィリィさんは私達のことを見て小さく他人から見えないように小さく手を振るう。


 オヴィリィさんの横でひらひらと気怠く手を振って、にへらと表情を緩めている人間の男の人――銀色の髪を黒い髪留めを使ってオールバックにしているように見えるけど、癖毛なのか、髪留めからはみ出てだらしなく見える。と言うかすべてにおいてだらしない。顎から出ている無精ひげや口に咥えているたばこ。そして黒いフレームが印象的なメガネのレンズには指紋がこびりついている。ブラウードさんとは大違いのそれだ。着崩れしている白衣の下は白いカットシャツにだぼだぼとした黒いズボン。靴は紺色のブーツだけど、だぼだぼのズボンでそのブーツも靴に見えてしまう……。ガーディさん以上にだらしない人 (失礼だと思うけど、そうとしか言いようのないだらしなさだったから……、つい……)――ジュウゴさん。


 その人達を見た瞬間、私は驚きと喜び、そして再会と言う名の感動を顔に出して……、一言。


「お、お久しぶりです……っ!」


 と、少し水を含んでしまったような声になったけど、精一杯の言葉をかけた。


「え。え? え! ええええっ? 蜥蜴人(リザードマン)に犬人、そしてエルフに汚いおっさん! そして王様! すごい人達とお知り合いだったんだねお姉ちゃん! コノハ驚きだよっ!」

「コノハ――ちょーっと後半失礼だよ」

「汚いは普通じゃねーの?」

「カグヤさん。大の大人にも失礼ない人いました。制裁かけますか?」

「危ない展開になるからやめてくれると助かる。言葉だけでお願いするよ」


 なんだろう……、輝にぃ達のところから悍ましいと言うか……、恐ろしい会話が聞こえた気がしたけど……。


 気のせい……だよね? うん……。


 輝にぃ達のところから聞こえる声を聞きながら、きっと聞き間違いだと思いながら自分を無理矢理納得させていると……、突然私の目の前から――


「ねーちゃん久しぶりーっ!」

「ひゃぁっ!?」


 突然。本当に突然で、ザンバードさんの後ろにいたはずのクルクくんが私のところに猛ダッシュで走ってきて、私の腰回りにダイブするように抱き着いてきたのだ。


 私の腰に抱き着くと同時に、『だすんっ!』とタックルするように迫ってきたので、私は驚きの声を上げて、タックルされると同時に来た鈍い鈍痛を感じた。


 さながら……、強烈タックル。


 でもそのタックルを受けたとしても、私はその場でなんとか重心を保ちつつ、倒れずに構えていたので構えていたので、倒れることはなかったから安心。そんな私の声を聞いてか、クルク君は私の腰に抱き着きながらも私の顔を見るために顔を上げて――きょとんっと目を点にした表情で――


「ん? どうしたのねーちゃん。もしかしてあまりの感動に気ぃ失った?」と、聞いてきた。


 正直な話……、クルクくんのタックルで一瞬心臓が飛び出そうになったって言いたかったけど、それを心にしまい込み、引きつった控えめな笑みを浮かべて見降ろしてから私はこう言った。


 なるべく……、傷つけないように、悟らせないように……。


「えっと……、だ、大丈夫……、気は失っていないから。ただ突然ここに来たからびっくりしちゃって……」

「そうなんだ。あ、でも最長老は来ていないよ。会いたかったくせに、頑固に『砂の国になんぞ一生行きたくない。儂の血どころか毛先が穢れそうでたまらん』って言って。最長老もくればきっとみんな喜ぶと思っていたんだけどなー」

「うーん……。最長老の気持ちもわかるけど、きっと全員嬉しいとは思わない……かも……」


 そう言いながら、私はちらりと傍らにいるであろうアキにぃ達のことを見ると………。


「あんのくそ犬餓鬼ぃぃぃぃぃぃっっっ! ハンナにあんなにべったべったとくっつきやがってぇぇぇっ! 俺でもあんなにくっつくことなんてなかったぞぉおおおおおっっ!」

「よせよせアキッ! 大人げないことを自覚しなさいっ! そして大の大人がべったべったとか言うな! お前シスコンを通り越してやばい領域に踏み込んじまうんじゃねえのかっ!?」

「一線超えた時点であんたを屑として蔑むわ」

「儂のような男でも、()()の言葉を聞いた瞬間全身の血の温度が下がったぞ」

「うぉいそこの二人っっ! 早く助けろっ! オレ一人だときついっ! 早く助けて! ヘルプッ!」


 なんだか、危ないことになっている。一言でいうのであれば……。


 何故なのかはわからないけど、顔中を真っ赤にして目を懐柔の様に光らせて怒りのそれを表しているアキにぃを羽交い絞めにして止めているキョウヤさん。その光景を冷たい目で見るシェーラちゃん (本当に冷たい眼だった……っ)と、アキにぃの姿を見て複雑な顔をしている虎次郎さんが私の目に映り……、その光景を見た私はアキにぃに一体何があったのだろうと思いながらその光景を見ていた。


 もう一度言います……。なにがあったのだろう……。


「おいクルク。そのくらいにしておけ。困っているだろう。再会するためだけに来たわけじゃないんだ。いい加減に離れろ」

「「!」」


 そんなことを思っていると、上から声が聞こえて、私とクルク君は上を見上げて声を放った人物――ザンバードさんのことを見上げた。


 ザンバードさんは呆れた顔をしてクルク君のことを見降ろして、首根っこを掴む動作をしながら手を動かしているけど、それを見たクルク君ははっと何かを思い出したかのような顔をして、「あ! そうだね! そうだった! ごめんねーちゃん」と、あっさり私から離れて頭を手で抱えて頭をほんの少し垂らす。


 クルク君の謝罪を聞いた私は、控えめに微笑みつつ、内心助かった……。と思いながら「いいよ。大丈夫だから」と言ってクルク君のことを許す。そんな会話をしていると、ザンバードさんが私のことを見降ろし、そしていつの間にかだろうか……、近くに来ていたヘルナイトさんのことを見て――


「久しいな武神卿。ガーディアン浄化感謝する」

「ああ――」


 と言ったけど、ヘルナイトさんはふと私のことを見降ろして、私の頭にそっとその手を置きながらザンバードさんのことを見て――凛とした音色でこう言った。


「だが、ハンナの協力がなければできなった。だからこの浄化に関しての感謝は、ハンナにもしてくれると助かる」

「え? あ、えっと……」


 突然私のことを指されたので、私は唐突にふられて驚きの顔をしてワタワタしていると……、その会話を聞いていたオヴィリィさんもザンバードさんの話を聞いていたのか、そっと近づいてきて……。


「そうだよ蜥蜴ジジィ」


 と、毒を吐くように言ったオヴィリィさん。


 ザンバードさんはそれを聞いて、オヴィリィさんのことを睨みつけながら「誰がジジィだ。俺はこう見えても若い方だ」と念を押すように言うけど、オヴィリィさんはそれに畳み掛けるようにこう言ってきた。


「喧しいよおっさん。おっさんなんて歳をとればジジィなんだからいいでしょうが。心狭いな。少しはその矮小(わいしょう)な脳味噌を大きくしてしわを深くさせた後で柔らかく揉み解しなよ」

「口だけは達者なんだな……。『星』の魔女様は……っ」

「『樹』なんて燃えちまえば燃えカスだものね。こっちは応用も効くからまぁ有力と言えば有力だよ」

「おーい。二人の王様の目の前なんだけどー? ちょっとわきまえたほうがいいんじゃなーい? オーケー?」

 

 なんだろう……。オヴィリィさんとザンバードさんの間に溝を作るように浮かび上がる赤と黒いもしゃもしゃ。


 あれを見てそれが二人のことを包み込むように覆っていくと、二人の空気や雰囲気が淀み、私達がいるこの謁見の間の空間を濁していく。


 要するに――雰囲気が悪くなった。である。


 そんな二人のことを見てか、ジュウゴさんが冷や汗を流しつつも笑みを崩さないで二人に言い、そして隣にいるアクアロイア王のことを指さしながら制止をかけていたけど……、それも無駄な行動で、二人はそんなジュウゴさんのことを見ないで、今現在喧嘩勃発中の二人。


 その光景を見て私は内心――仲が悪いのかな……。犬猿の仲のように、エルフと蜥蜴人は犬猿に近いのかな……。と思っていると……。



「――おほんっ!」

 


 と、その空気を打ち壊すかのように、アクアロイア王が大きな咳き込みをして空気を変える。


 その声を聞いた私達ははっと息を呑んでアクアロイア王のことを見て、緩んでいた気持ちを張り詰める。


 アクアロイア王の近くにいたジュウゴさんもぎょっと引き攣った笑みを浮かべ、オヴィリィさんとザンバードさんは怒りの顔でアクアロイア王のことを見て、クルク君は首を傾げてその光景を見て、輝にぃ達はぎょっと驚いてアクアロイア王のことを見る。


 アクアロイア王の一声で静まり返る空間。


 まるで鶴の一声のように静まり返り、静かになったと同時にアクアロイア王はカカララマさんのことを見て言葉を発した。


「久しいな。カカララマ殿。何年ぶりかな? 『国王会議』以来か?」

「うむ。そうじゃな。その時の貴様はまだ若々しかったが、年老いたな。アムスノーム国王……いいや、今となってはアクアロイア王じゃったな」

「ああ。そうだな。カカララマ殿は変わらず、息災なくでなにより」

「ふん。そんな言い方されたら嫌味にしか聞こえないね」


 少しの間、カカララマさんとアクアロイアの会話が続く。


 短いけど、王様らしい雰囲気を醸し出しながら二人は会話を続ける。


 その会話を見ながら私達はただただ黙ることしかできなかったけど、ふと――アクアロイア王がレズバルダさんのことを見て、その手に握られている砂時計を見た瞬間アクアロイア王は目をすっと細め、カカララマさんのことを見てからこう言った。


「なるほど――彼を王にしたのか。カカララマ様らしいお考えであるが、彼が本当に王として認められるか……」

「なぁに。あ奴なら大丈夫じゃ。国のことを一番に考えている。そして儂が見定めたんじゃ。素質があると」

「うむ……。なら、もう決めたのだな?」

「ああ。継承の儀もした。まぁおまじないもかけたから――大丈夫じゃ」


 カカララマさんの言葉を聞いたアクアロイア王は一瞬だけ口を閉じてカカララマさんのことを見て、カカララマさんもアクアロイア王のことを見て少しの間黙ってしまう。


 私とヘルナイトさん、アキにぃ達もその空間に呑まれるように黙ってしまうけど……、その光景を見ていたコノハちゃんは航一さんに向かって小さな声で何かを言っていたけど、その声を聞いていた輝にぃが二人の頭に正拳を打ち込んでそのひそひそ話が終わりを告げた。


 告げると同時に、アクアロイア王はすぐにレズバルダさんのことを見て――


「ならば――その前々帝王の言葉を信じよう。新たに王になったレズバルダよ。ともに来てほしい。()()()()()()()()()()()一緒に来てもらわねばならない。そのためにここまで来たのだからな」

「! と言うことは……」

「ああ」


 と言い、アクアロイア王はレズバルダさんの言葉の心意を察して頷くと、続いて私達と輝にぃ達のことを見てアクアロイア王は言った。


「一緒に王都に来てもらう。レズバルダよ。そして武神卿一行。そなた達にも来てもらうぞ。王都にいる『創成王』と王子が話をしたいとの報告があったからな」

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