PLAY74 BATORAVIA BATTLE LOYAL!FINAL(仮初の終り)⑦
一体何が起こったのだろう……? なんでこうなってしまっているの? 一体……、何がどうなっているの?
私は混乱する思考の中、目の前に広がる光景について行けず、混乱してその光景を凝視していた。
それは私だけ限定のことではない。
ヘルナイトさんもコノハちゃんもその光景を見て、言葉を失いながら目の前に広がった光景を見ていた。
まるで……、一瞬の内に何かがあったかのような激変の光景を。
一応……、頭の整理を簡単にしようと思う。
もしかしたら私の記憶に虫食いがあるかもしれないから……。
ちょっと混乱のあまりに自分の記憶に自信が持てなくなったので、確認して本当であることと、虫食いがあるかどうかを思い出そうと思っての行動である。
私は思い出す。こうなる前の出来事を――
この最下層に来てから、私はDrと、Drが詠唱で操っていたガーディアンを相手に立ち向かっていた。ヘルナイトさんとコノハちゃんと一緒に。
コノハちゃんはDrを相手に、ヘルナイトさんと私はガーディアンを相手にして戦っていた (あ、私は何もしていない……)。
苦しんでいるガーディアンを救うために、浄化をするために戦っていた私達だけど、ヘルナイトさんの手にかかればそれも呆気なく終わりを告げた。
コノハちゃんと協力をしつつ、ヘルナイトさんは自分の『宿魔祖』を使って、ガーディアンを苦しめている詠唱の核――金色のカブトムシを的確に切り刻んで解放することに成功したのだ。
瘴気を纏うガーディアンを開放して、あとは浄化だけ。
だと思っていたんだけど、私はこの戦いの最中、Drのことを見た瞬間、その浄化よりも自分の感情の方を優先するような心境に少しずつ、本当に少しずつ陥ってしまうことになる。
理由は多分、もしゃもしゃを読むことしかできない私にしかわからないことで、Drの心を見ることができる私にしかわからないDrのこの状況では不釣り合いな感情を見て、私は込み上げてくるそれを止めることがだんだんできなくなってきたから。
ガーディアンを止めて、コノハちゃんもDrに対して一発殴ることに成功したことで、Drも万事休すのような雰囲気を出しながらたじろいていた。
本心を隠すために取り繕っていたその顔を見せながら……。
そんな顔を見た私は、いてもたってもいられなくなり、私は感情任せに――Drの頬を叩いた。掌で、よくドラマで見る平手打ちを、Drに向けてした。
乾いたとてもいい音が響く中、勢いに便乗してなのかはわからない……。でも私は感情任せになってDrに詰め寄った。
なんで喜んでいるのか、なんで笑っているのか。
表面では怖がったり驚いたりしているのに、なんで心の顔は満面の笑みを浮かべたりして喜んでいるのか。と――私はDrに詰め寄りながら聞いたのだ。
ヘルナイトさんの静止を聞かずに……、私は思いのたけをぶちまけるように、感情をDrに向けてぶちまけた。
その時までは何も考えられず、冷静になることもできず私はDrに向けて言葉の鈍器を何回も、何回も叩きつけていた。自分でも押さえられないくらい、その感情を抑えることができず、私はぶつけていた。
喜びながら、笑いながら戦いの様子を見て、相手の悲しみ、怒り、苦痛、悲痛、絶望を嘲笑うように見ていたDrに対して、不快感を覚えながら……。
この人は嫌いだ。嫌な人だ。
そう思いながら私はその思いを吐き捨てるようにして怒鳴り、その言葉が切れると同時に――冷静さを取り戻した私だったけど……、それと同時に力が抜けてしまい、尻餅をついてヘルナイトさんに支えられながら茫然としていた。
二人とナヴィちゃんの声が聞こえる中……、私はやってしまったという後悔やなんであんなことをしてしまったのだろうという後悔が渦巻いて、うまく正常な思考を巡らせることができなくなっていた。二人とナヴィちゃんの声に答えることができないくらい……。
そんな私のことを見てなのか、Drは即座に行動していた。
いつの間にかなのだろうか……、Drは私に詰め寄り、私の右手首についているバングルを破壊しようとして手をかけていた。ぐっと、指に力を入れて。
うん。ここまでは記憶の誤差はない……。と思う。私自身記憶証明ができないから強くは言えないけど、それでも私が覚えている限りでは虫食いはない。と思う……。うん。
なら……ならば……。
私は目の前にいるDrのことを見る。恐る恐ると言う形で、私は見る。突然変わってしまったDrのことを見ながら……。
膝をついて、天井を見上げながらうつろな目で「ひゃは……、ひゃは……、ひゃは……」と声を漏らして笑みを零し、目から滝のような涙を流しながら老人の顔が更に老けて、百歳以上の年齢になってしまったかのような変わり果ててしまったDrのことを見ながら、私は思う。
一体、何があったのだろう……。この一瞬の間に、何があったのだろうと……。
「どういうことだ……? 何がどうなっている……?」
「おじい……、ちゃん?」
ヘルナイトさんとコノハちゃんの困惑の声が聞こえる。でもその声に反応しないDr。ただただ……、けらり、けらり……と笑う、不気味な老人しかいなかった。
セレネちゃんのことを苦しめ、いろんな人達を苦しめたDrの影はもうない。今私達の目の前にいるのは――別人と化してしまったDrだったどちら様。
一体全体なんでこうなってしまったのかはわからない。でも……、変わり果ててしまったDrは元に戻らない。一瞬だけど、私の罵倒の所為でこうなってしまったのかと思ったけど……、あの時私のバングルを掴んでいた時まではDrのままだった。それから察するにDrはそれまではDrのままだった。
けど、突然こうなってしまった。まるで――
「…………呪い」
「?」
ぽつりと、私は呟く。
その言葉にヘルナイトさんは反応したみたいだけど、私はその反応に気付くことすらできない中、身に覚えはないけど、身に覚えがあるような感覚を感じながら、私は言う。
呪い。
無気力に近いようなその言葉を口にし、ノイズと砂嵐が飛び交う記憶の断片を観賞しながら、私は言う。
今回映像は出ないけど、声だけが砂嵐越しに聞こえてきて、ひそひそと言葉を発する女の人の声が誰かに向かって、悲痛な声を上げながら言った。
『……なんで、こうなってしまったの……っ!? 私はただ……、あの子を立派な子に育てたいだけなのに……、なんでこうなってしまったのよ……っ! なんなのよ……っ! あの子を産んでから、色んなことが起こりすぎている……っ!』
あの子は――私の枷、呪いだ。
その言葉をはっきりと言うと同時に、その砂嵐もノイズも消え去り、正常な私の意識が戻る。
『あの子は私の枷、呪いだ』という言葉を頭の片隅で連呼しながら……。
「……ハンナ。大丈夫か?」
「!」
その言葉を思い出していると、ヘルナイトさんの声が頭上から聞こえてきた。
その声を聞いて、はっと現実に戻ってきた私は、頭上から聞こえてきた声に顔を上げると、ヘルナイトさんが私のことを見降ろしていて、コノハちゃんも見降ろしながらDrのことを見て、それを繰り返していた。おろおろとしながら……。
ヘルナイトさんは私のことを見降ろしながら、もう一度「大丈夫か?」と聞いてきた。
それを聞いた私は、一瞬時間が止まってしまったかのような驚きの顔を見せていたと思う。
だって、傍らで見ていたコノハちゃんが私のことを見ながら「すごい汗! びっちょりだよっ!? べちゃべちゃだよっ!大丈夫っ!?」と言う言葉を投げかけていたので、きっと私が正常ではない。心も不安定なんだと思っていたのだろう。
でも、そんな二人のことを宥めるように、私は心配しないでと言う気持ちを出しながら、控えめに微笑んでこう言った。
「だ、大丈夫です……よ」
ヘルナイトさんはそんな私の言葉を聞いて、一瞬顎を引いて黙っていた。何か言いたそうなもしゃもしゃを放っていたけど……、それとは正反対に、コノハちゃんはおどおどとした顔で私の顔を見ながら、手を大きく上下に振って――
「え、あ、えっと……っ! 嘘だ! 絶対に嘘だ! コノハにはそう見えないよっ! お姉ちゃん無理しているでしょっ! 無理駄目! 絶対だよ! だってお姉ちゃん」と言った。瞬間だった。
「オオオオゴオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!」
「「「――っ!?」」」
「きゅきぃえっ!?」
突然聞こえた轟音。ううん。これは――叫び。
その叫び声を聞いた私達は、さっきまで漂っていた不安や困惑の空気を一旦しまい込むように上を見上げる。上――それはガーディアンがいる方向で、その方向を見た瞬間、私は目を見開いてその光景を凝視してしまう。
私達の視線に広がった光景は――小さい時しょーちゃんが見ていた怪獣アニメの光景を類似している光景……、黒い瘴気を纏ったガーディアンが頭を抱えて叫びを上げつつ、周りにある秘器を壊して、壊して、壊しまくって暴れている光景。近くにいる私達にも影響を及ぼすような暴れ具合が、目の前に広がっていた。
がん、ガゴォン、どがぁ、という破壊音が聞こえると同時に、私達の近くに破壊されてしまった秘器が落ちてきた。目と鼻の先に……。
「っ!」
ヘルナイトさんはそれを見てか、私を右手でぐっと抱き寄せ、近くにいたコノハちゃんも左手で抱き寄せながら自分の懐に隠すようにぐっと抱きしめる。落下してきたそれを背にして。
「え? おじさんっ!?」
「ヘルナイトさん……っ!」
突然の行動に驚く私達だったけど……、突然ガシャァンッ! という音が鼓膜を刺激し、落ちてきたと同時にコノハちゃんは「うひゃぁ!」と言う声を上げて頭を抱えてしまう。私も驚いて頭を抱えたけど、ヘルナイトさんが守ってくれたので大したダメージはなかった。
正直……、驚いたけど……。
そんな私達のことを見降ろしながら、ヘルナイトさんはさも平然としつつ、凛とした音色で――「二人とも大丈夫か?」と聞いてきた。
それを聞いた私はあの衝撃音を聞いてしまい、衝撃の所為でびくびくしてしまったけど『大丈夫』と言うことを示すために、こくこくと頷く。
コノハちゃんもこくこくと頷きながら「大丈夫……だよっ! でも大きな音、怖かった……っ!」と、少しばかり片言めいた音色で体中をカクカクさせながら言っていた。
ヘルナイトさんはそんな私達のことを見て、一瞬だけ、本当に一瞬だけ安堵の息を吐いたと同時に、背後を見て、ガーディアンの暴れ具合を見る。ぐっと顎を引きながら――ヘルナイトさんは言った。
「ガーディアンが暴走している……。マドゥードナのリヴァイアサンと同じだ」
「リヴァさんと……っ」
ヘルナイトさんの言葉を聞いた私は、今もなお暴れているガーディアンのことを見上げて、マドゥードナで浄化したリヴァさんのことを思い出しながら、苦しみながら暴れていたリヴァさんのことを思い出しながら、私はもう声が聞こえなくなってしまったガーディアンのことを見上げる。
――私が、茫然としてしまったせいで、私が……、感情任せになってしまったせいで……、ガーディアンを苦しめてしまった……。
――私の所為で……っ!
そう思いながら、自分がしてしまった過ちを悔やみ、そして再度苦しめてしまったガーディアンのことを見上げながら、私は先ほどの気持ちを抑え込むように、この気持ちを今は出さないようにしまいながら気を引き締める。
二人のことを見て、二人やナヴィちゃんに迷惑をかけてしまったことに対して、これが終わったら絶対に謝罪しようと思いつつ、迷惑をかけてしまった分をお返ししようと決心しながら、私はぎゅっと唇を噤む。顎を引きながら――
――Drのことも心配。何が起こったのかも知りたい……。でも、今は目の前のことに集中しないといけないんだ。感情任せにならなければこうならなかったかもしれない。その謝罪も含めて、今は一刻も早い浄化をしないといけない。
――この国の仮初を壊すために、この国の真の平和にするために……。
そう思った。そう……、胸に刻む。
「暴走しているのっ!? 危ないよこれ! このままいたらコノハ達床と床と機材のサンドイッチになっちゃうっ! 一旦ここから離れた方がいいかなっ!? おじいちゃんも連れて! ねぇおじさんっ!」
コノハちゃんは驚きながらも冷静な判断を下そうと (でもアセアセしてあわあわしているので全然冷静じゃない)、いったん安全なところに行こうと提案するけど、それに対してヘルナイトさんは首を横に振り――
「今動いたら尚更危険だ。この状態で安定した走りはできない。それにガーディアンも動いているんだ。こっちが動いて踏まれるという被害は避けたい。今この場所から逃げることは死に急ぐようなことだ」
と言った。冷静な音色で、ショックを受けてしまったコノハちゃんを見ながら……。
「う~……っ! う~……っ! ならどうすればぁ……っ!?」
コノハちゃんはヘルナイトさんの言葉を聞いて、少し泣きそうになりながらもヘルナイトさんに正しい判断を乞う。
ウルウルと目を潤ませながら……。その光景を私は、この状況に慣れていないコノハちゃんのことを慰めるように、背を撫でながら「大丈夫だよ……。私何回も体験しているから、きっと何とかなるよ」と、コノハちゃんの気持ちを落ち着かせるように優しく言う。
正直な話……、私の感覚が鈍っているのか、このような状況になってもコノハちゃんのように怖がるようなことは無くなった。
自分で言うのもなんだけど……。でも怖がっているコノハちゃんはこの経験は初めてなんだ。浄化も必要なことだけど、コノハちゃんのメンタルケアも必要だ。
私は怖がってしまっているコノハちゃんのメンタルケアをしながら宥めていると……、肩に乗っていたナヴィちゃんが「きゅきゃぁっっ!」と、泣き叫んだ。
私達に何かを知らせるような声で。
それを聞いた私は驚いた目でナヴィちゃんを見たけど、それと同時にヘルナイトさんのはっと息を呑む声が聞こえたので、コノハちゃんと一緒に上を見上げた瞬間……。『ひゅっ』と、息を呑んだ。
目の前に広がった光景は、八割の黒い何かと二割程度の最下層の風景。
それを見た瞬間、私は、ガーディアンが何をしようとしているのかが予想がついた。すぐに予想がついた。そっと足を上げて、私達のことを踏みつけようとするガーディアンの足の裏を見上げながら、私とコノハちゃんは固まってしまう。
そんな固まった私達を抱えて立ち上がったヘルナイトさんは、即座にその場所から離れようとした。けど……、私達を抱えているせいか、動きがわずかに鈍かったのかもしれない……。
真相は分からない。けど事実、ガーディアンが雄たけびに近いような叫び声を上げて、勢いよく足を振り下ろして、私達のことを踏み潰そうとしてきた光景を見上げた瞬間、私は思った。
スローモーションになる世界の中、私はゆっくりになる光景を見ていく。
ブワリとくるロケット打ち上げのような風圧。そして踏み潰そうとしている足。
それは本当に小人対巨人の――小人の末路のような光景で、私はそれを思いながら、こう思った……。
――あ。まずい。このままだと私達……。
そう思い、少しでも逃げる時間を稼ごうと手をかざして……『盾』スキルの『囲強固盾』を出した。
でもガーディアンにとってすれば私のスキルは柔らかいそれと同じ。一瞬体重を乗せると同時に私が放ったそれもぐしゃりと崩れていとも簡単に壊されてしまった。
ばりばりと砕かれるスキルの壁。それを見ながら愕然としてしまうコノハちゃん。ヘルナイトさんはそのまま駆け出して避けようとしていた。けど……、ガーディアンの足はもうすでに目と鼻の先。
もうだめなのかも……。そんな諦めが一瞬頭をよぎった。
本当に一瞬だったけど、それでも私はその言葉が『諦め』が頭の中に一瞬出てきた。
瞬間――その一瞬も本当の一瞬にしてしまうような出来事が、私の目の前で起こった。
「――『必中の狙撃』ォッッ!」
□ □
声が聞こえた。
その声は私がよく聞いている声で、その声が聞こえたと同時に、それは崩れて落ちてしまった秘器の残骸を貫通し、そしてそのまま振り下ろされるガーディアンの足に向かって行く。
目にも留まらない速さで、私達に向かって振り下ろされてきた足の脛を貫通するように壁に向かっていった。
バスゥンッッ! と言う音と共に、ばらばらと落ちる小石を見上げながら、私達は固まった顔でその光景を見る。走って避けたヘルナイトさん、痛みで叫び、足を抱えて唸るガーディアンのことを同時に見ながら……。
「ふえ……? なにが……?」
驚きのあまりに、目を点にしながら鼻を啜っているコノハちゃん。
ヘルナイトさんはその光景を見て「あれは……」と驚きの声を漏らしているけど、それとは対照的に、私は口を開けた状態であんぐりとしていると……、その声は私達が降りてきたところから大きな声で響かせてきた。
その入り口を塞いでいる岩を足で蹴飛ばしてどかしながら……。
「ハンナァ! 大丈夫かぁああああーっっ!?」
と、アキにぃは叫び、私のことを見ながら片手にライフル銃を構えながら登場してきたのだ。埃まみれになりながら。
「あ、アキにぃ……っ!」
「アキ! 無事だったのかっ!」
アキにぃの登場に驚きながら、私とヘルナイトさんは驚いた音色でアキにぃのことを見ると、アキにぃは銃口を指に見立ててヘルナイトさんのことをびしり! と指さして――怒りのそれを露にしながらこう怒鳴ってきた。
「うぉらぁヘルナイトォ! 手前なにしとんじゃ! 妹危ない目に遭ってたじゃねえかっ! わかってんのか最強鬼士ぃ! ちょっとはそのチートを使えやボケェッ!」
「「………………………………」」
「ひぃぃぃぃ……っ!」
本能のままに怒りを露にするアキにぃ。
それを見ながら私は何を怒っているんだろうと首を傾げ、ヘルナイトさんはその光景を見て目を点にして驚いていたけど、コノハちゃんは私にしがみついてがくがくと体を震わせながら泣いていた……。
なんか、ごめんね……。
「たくっ……、謁見の前に行ったら輝夜がいて、『この先に華がいるから助けに行ってやれ』とか抜かしやがって……っ! 俺だってそれくらいわかっているっつうの! 俺がどれだけ……ってぇハンナァ!」
「?」
でも、アキにぃは最初はぶつぶつと何かをつぶやいていたけど、そのあと私の方を見た瞬間、血相を変えてライフル銃を構えながらアキにぃは叫んだ。私の方……、と言うか、後ろを見て……。
それを見た私は首を傾げて、アキにぃが見ている後ろを見た瞬間……。
「――っっ!!」
私は、絶句した。
コノハちゃんも、ヘルナイトさんも背後と言うよりも、目の前にいるそれを見た瞬間、いつの間にと言う困惑もあり、あの時の光景がまさか狸寝入りだったのかと言う怒りもあったけど、今は困惑の方が大きかった。
なぜ? 理由はもう簡単だ。私達は見くびっていた。
動けなかったと思っていたから、私達は甘い目で見過ごしてしまった。目の前で鉄の棒を持って、振り上げているDrのことを見て、私は困惑を顔に染めてしまい、固まってしまった。
「――っ!」
ヘルナイトさんはそれを見て、すかさずその場から離れようと小さく跳躍しようとしていたけど、Drはそれよりも早く振り下ろそうと、持っている力を振り絞って力一杯振り下ろすDr。
「ひぃっやっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!」
ヘルナイトさんではなく、私とコノハちゃんにそれを向けて、逃げる選択肢を崩すように畳み掛けてくるDr。そんな姑息な手を使うと同時に、Drは狂気に満ち溢れた笑みで、壊れてしまった笑みで、私達に向けて振り下ろそうとした。
その時だった。
「跳べぇっっ!」
「「「!」」」
また声が聞こえた。
その声は――アキにぃではない。
でも聞いたことがある声で、その声を聞いたと同時に、ヘルナイトさんはその声に従うようにその場で跳躍をする。
少し斜め後ろに飛びながら私とコノハちゃんのことをぐっと抱えて、守るように跳ぶヘルナイトさん。振り下ろされるDrの鉄の棒がどんどん私達に近づいていき、私の頭に向けて振り下ろそうとしているそれが見えた。
けど……、それが私の頭に当たることは……、あっけなく消されてしまった。
その合図を知らせてくれたのは……、あの子だった。
「――『氷河の再来』ッ!」
その言葉が最下層に響くと同時に、アキにぃがいた場所から急激な冷気が入り込み、そのあとから来た『バキバキバキバキッ!』と鳴り響く氷の波。
アキにぃはそれから急いで避けるように、「ぎゃぁ!」と叫びを上げながら跳んで避ける。でも氷の波は収まるということを知らないかのように、跳躍した私達を無視して、最下層の床に足をつけていたDrと、ガーディアンの足を凍らせて、この最下層内の温度を急激に下げていく。
床一面を真っ白い氷の湖にして、Drとガーディアンの動きを止めて……。
「ん? んんっっ!? んんんんんっっ!?」
「オオオオオオオオオッッ! オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」
Drが足元を見ながら狂喜の笑みを浮かべて驚きの声を上げ、ガーディアンは動けない足を動かそうと、体をひねらせて足の氷を壊そうとしていたけど……、氷はちょっとやそっとでは壊れない。というか……、がちがちに凍っているせいで、壊すことは容易ではないことをにおわせていた。
その光景を見て、そして声を聞いた私は、ヘルナイトさんが跳んで氷の地面に降り立つと同時に、出口の方を見た。
瞬間、アキにぃのほかにいる人達を見て、私は何時間しか会っていないけど、それでも何年かぶりの再会をしたかのような感覚を覚えて、自然とほころぶような笑みがこぼれた。
アキにぃの背後で、地面に剣を突き刺して構えているシェーラちゃんと、その背後にいる服が少し破れているキョウヤさん、なぜなのかはわからないけど武器を変えている虎次郎さんを見て――私は安堵のそれを上げる。
「シェーラちゃん! キョウヤさん! 虎次郎さんっ!」
「無事だったんだな」
ヘルナイトさんは三人のことを見て、安心したという意思表示を見せるように冷静に言うと、それを聞いていたキョウヤさんは呆れた音色で肩を竦めながら――
「全然大丈夫じゃねーけどな。こっちはこっちで大変だったんだ。って……」
と、キョウヤさんは足が凍ってしまい、動けなくなっているガーディアンのことを見上げて言葉を濁すと、手に持っている槍をしっかりと持つと、シェーラちゃんの前に虎次郎さんと一緒に立ってから続けて――まるで練習でもしていたかのような具合で、キョウヤさんの言葉を筆頭に一言ずつ、みんなが言ってきた。
「んな会話は今は野暮だな。後でにしておくわ」
「そうじゃな。儂等が何とかして動きを止めておこう」
「私はこのままの状態だと動けないから、師匠とキョウヤ。あとアキ、あんた達でなんとかしなさい」
「俺はついでかっ! と言うか人任せにするんじゃないっ!」
キョウヤさん、虎次郎さん、シェーラちゃん、アキにぃが言い終わると――キョウヤさんと虎次郎さんはダッとガーディアンに向かって駆け出す。
駈け出すと同時に、虎次郎さんはキョウヤさんより先に前に出て、虎次郎さん達に気付いたガーディアンのことを見上げながら、いつの間にか持っていた盾を手に持つ。キョウヤさんは槍を器用に両手で回しながら踊るようにガーディアンに近付いて行く。
ある言葉を口遊みながら――
「鼓舞しろ、高鳴らせろ、踊り給え」
キョウヤさんの言葉が、詠唱の言葉が最下層に響き、それを聞きながら私はコノハちゃんと一緒にヘルナイトさんの手からそっと下される。
「蜥蜴の鋼の意志、蜥蜴の確固たる戦士の魂よ」
ガーディアンは動けなくなった足を捨てるように、唯一動ける腕を振るい上げて、下にいる虎次郎さんのことを殴り潰そうと繰り出す。ブワリとくる風圧を受けながらも、虎次郎さんは手に持っている盾を使って『ガゴォンッ!』と、ガーディアンの拳を真上から受けて、斜めにして流す。
流すと同時にガーディアンの拳が氷の地面に落ちて、『ガシャァンッ!』という音を最下層に響かせた。シェーラちゃんが発動した氷が『バリバリバリッ!』と罅割れ、クレパスを作るようにずれていく。
私達はそれを受けて、崩れそうになる足場でもバランスをとりながら保とうとしたら、そのクレパスを埋めるように新しく出てきた氷が『パキパキッ』とその足場の隙間を埋めていく。
「シェーラちゃん……っ!」
私はシェーラちゃんのことを振り向きながら叫ぶと、それを聞いてなのか、シェーラちゃんは突き刺した剣を握る力を入れながら、私に向かって叫んだ。
怒りの声を。
「さっさと浄化の準備しなさいよっ! こっちも体力的に気力的にも限界なのっ! 長く持つかどうかもわからない! あんたがなにもしなかったら私達の行動も、みんなの痛みも苦しみも勝利も敗北も、塵になって無駄に終わるっ! あんた達が浄化すれば終わるの! 今は私達の心配より、浄化に専念しなさいっ! やるべきことに専念しなさい!」
シェーラちゃんの言葉を聞いた私は、まるで怒られたかのような感覚を覚えたけど、すぐにそれも消えて、脳裏に思い出されるボルドさん達、ティズ君達、セレネちゃん達、そしてボジョレオさん達のことを思い出す。
みんな……、この時のために準備をして、そして浄化にすべてを賭けてくれて、ここまで協力してくれた。
私とヘルナイトさんにしかできない唯一の切り札。
この国を救う術。
この国の仮初を壊して、野望を壊すことができる術を持っている私達のために……、みんな、傷ついてきたかもしれない。苦しい思いをしてきたかもしれない。
シェーラちゃんの言う通り、今は専念しよう。今やるべきこと――浄化に。
私はヘルナイトさんのことを見上げて、ヘルナイトさんの頷きを見て私も頷く。もう決まっていることで、少しそれが長くなってしまったけど、それでも、今日ここで終わらせないといけないんだ。
この帝国の仮初を、嘘で塗り固められた平和を、苦しい平和を終わらせるために――
「我思うはこの鼓舞の舞は我らの決意。我願うはこの意志の力を、魂を鎧に変え、我と共に踊り狂わん」
虎次郎さんの刀の攻撃と、アキにぃの怒りの銃撃がガーディアンを襲い、それを受けたガーディアンは呻き声に近いような叫びを上げて後ろに反り返るようにバランスを崩した瞬間、キョウヤさんはぐるんっと氷の上を滑るように加速して、フィギュアスケートのようにぐるんっと回り、ガーディアンに向けてその攻撃を繰り出す。
「――『志高き蜥蜴の乱舞踊ッ!』」
キョウヤさんの声と同時に、槍で切り裂いた音が最下層中に響き、まるで山彦のように何度も響いていく。
何回も何回も――その斬撃音に交じるようにガーディアンの呻きと、体中の傷がどんどん増えていく。
その光景を見た私は、すぐにその場に座り込み、胸のあたりで両手を絡めて、祈るような体制を作る。少し冷たかったけど、今はそれどころではない。コノハちゃんはその光景を見て首を傾げている。ヘルナイトさんはそんなコノハちゃんを見て「離れてくれ」と言うと、その言葉に素直に頷いたコノハちゃんは、私達の元から離れた。
それを見て、ヘルナイトさんは短剣に手をかけて引き抜く体制をとってから――私達は唱えた。
「此の世を統べし八百万の神々よ」
「この世を総べる万物の神々たちよ」
その言葉を言うと同時に、私の周りには白くて温かい空気が。ヘルナイトさんの短剣からは眩い光がこぼれだし、その光と共に、ヘルナイトさんは短剣をすぅーっと引き抜いていく。
「我はこの世の厄災を浄化せし天の使い也」
「我はこの世の厄災を断ち切る魔の王也」
白い空気を纏う私と、短剣が光る剣のようになって、どんどんその姿を露にしていく中、その光景を見ていたコノハちゃんは「おぉー!」と興奮している様子で目をキラキラさせている。けど……、私はそんな詠唱の途中でも、目の端に入ってしまったそれを見た瞬間、私は声を上げそうになった。
理由は簡単。
いつの間にかなのだろう……、コノハちゃんの背後をとっていたDrが鉄の棒を持って、コノハちゃんの頭を叩きつけようとして振り上げていたから。
足元を凍らせていたはずなのに、なぜここにいるの……っ!? と思ったけど、それはすぐにわかってしまった。
Drは近くにあった生き残っているドライヤーのような秘器を使って氷を溶かしていたのだ。そのせいで足元が濡れているけど、Drはそのおかげで動けるようになって、コノハちゃんに対して奇襲を仕掛けようとしたのだ。
それを見た私は、すぐにコノハちゃんの方を向いて言葉を発しようとした……。
けど、それをする前に、Drに攻撃を仕掛けようとしている人はもう来ていた。
「付加強化魔法――『俊足強化』」
どこからか声がした。と同時に、シェーラちゃんがいる出口の隙間から出てくるようにだっと、風を切るように駆け出す何か。
それはコノハちゃんの背後にいるDrに向かって真っすぐ。猪のように駆け出して、ヒールの音をいくつも鳴らしながら手に持っているそれを突くように構えると――その人は続けてこう言った。
「「付加強化魔法――『攻撃強化』」
その声に連動されるように、その人の体に赤い靄が纏いだし、すぐに消えて、その人が駆け出す光景を目の端で見たのか、Drははっと息を呑んで、その人がいる方向に体を向けた。けど遅かった。
振り向くと同時に、Drに向かって近付き、手に持っていたレイピアでセレネちゃんは、渾身の力を籠めるように、付加した力を加えて、Drに攻撃を繰り出す。
「はああああああああぁぁぁぁぁーっっ!!」
セレネちゃんの渾身の叫び。そして威圧。それを受けたDrは、一瞬肩を震わせてその動きを止めてしまった瞬間――
ぼっ! と言う音が出たと思った時には、Drが持っていた鉄の棒にレイピアの先を突き刺し、そのまま鉄の棒をひしゃげて、Drの顔面を巻き込む。
『めごりっ』という音が出そうな顔の歪み方をしたDrは、そのまま眼鏡を破壊され、めり込むと同時に鼻血を吹き出して、勢い負けをして空中を一瞬舞った。低い空中を舞って、そのまま吹き飛ばされるように氷の地面に『どしゃり!』と――倒れ込んだ。
私はそれを見て、驚きの顔をして固まってしまった。セレネちゃんの威圧が怖かったという理由もあるけど、その剣術を見て――不思議と、美しい。と思ってしまったから……。
「え? ん? うぎゃぁ! おじいちゃんっ! わ! お姉さん誰っ!?」
コノハちゃんは状況が呑み込めずにいると、セレネさんはコノハちゃんのことを見て――
「今は急いでいるっ! その話は後にしてくれ!」
と、荒げるような声で怒りのそれを上げると、それを聞いていたコノハちゃんは「ふぁっ! あ、はいっ!」と、素直に頷いてびしりと敬礼をする。
「……さすがお嬢様……」
遠くからアキにぃの声が聞こえた気がしたけど、その声をかき消すように、セレネさんは私のことを見て――凛々しいそれを見せながら、彼女は言った。
「やれぇっっっ!」
「…………………っ!」
その言葉を聞き、みんなのおかげでここまでこれたことに……、私はセレネちゃんやみんなに感謝をしてこくりと頷く。
そしてキョウヤさんと虎次郎さん、そしてアキにぃの迎撃にあっているガーディアンのことを見上げながら、私は祈る体制を整えながら唱える。
「我思うは癒しの光。我願うはこの世の平和と光」
「我思うは闇を断ち切る光。我願うはこの世の安息と秩序、そして永劫の泰平」
私の言葉に繋がるように、ヘルナイトさんが言うと、私はぐっと絡めた手に力を入れて祈りを強く込める。
ここまでこれたのは、みんなのおかげ。
そして――私は何もできない存在だけど、そんな存在の私のことを信じて、小さな希望を懸けてくれたみんなのために、傷を負ってまで頑張ってくれたみんなのために……。この国の人達の新しい明るい未来のために……。
私は――浄化をする。
みんなの意思を、無駄にしないために。この国の人達を明るく照らすために――
「この世を滅ぼさんとする黒き厄災の息吹を、天の息吹を以て――浄化せん」
「この世を滅ぼさんとする黒き厄災の刃を、我が退魔の剣を以て――鉄槌を食らわす」
その言葉を最後に、ヘルナイトさんは引き抜いていた短剣を真っ白い刀身の剣に変えて、それをゆっくりと回すように振るうと、ヘルナイトさんは氷の地面をものともしない足踏みで、どんっと踏むと、そのままガーディアンに向かっていき――その白い剣を横に薙ぐ。
「――『断罪の晩餐』」
刹那――ザシュッ! と言う音が最下層を震わせたと思うと、ガーディアンの体を纏っていた黒い靄が――瘴気がバッサリと斬られて、空気中に溶けてなくなっていく。
斬られた瞬間、ガーディアンは体中の傷と横にできたヘルナイトさんの斬撃の痕を押さえながらもだえ苦しむ。それを見た私は、心の中でこう思い、最後の詠唱の言葉を発した。
――すぐにその苦しみから解放するね。
「――『大天使の息吹』」
そう言うと、私はふぅっと息をガーディアンに向けて吹きかける。
吹きかけた息がどんどん形を作っていき、聖女のような微笑む天使を作り上げて、そのままするり、するりと、攻撃をするガーディアンを避けながらどんどん上に登っていき、ガーディアンの頭上で止まると、私が放った『大天使の息吹』は――ガーディアンに向けて優しく「ふぅ」と息を吹きかけた。
それを受けて、白いそれがガーディアンを覆っていき、ガーディアンは叫んだ。
びりびりと響くような声を発しながら、私達を含めた誰もが耳を塞いで目をぎゅっと閉じていると……、大天使はそのまま最下層の上……、つまりは最下層の天井に向けて顔を上げて、その上に向かって――
「ふぅー」と、優しく、その息を吹きかけた。
それを見た私は、言葉を失いつつ、一体何をしているんだろう。そう思った時……、どこからか声が聞こえた。
その声は聞いたことがない。
けど……、前にも感じたことがあるようなそれは、私の耳元でこう囁いたのだ。
(ありがとう――これで、解放された。これも、あなたのおかげ。みぃんな、感謝しているよ。ありがとう)
「!」
そう……、それはマドゥードナで感じた、クルク君のお母さんの声を聞いた時と同じそれだった。それを聞いた私は振り返ようとしたけど、それはしなかった。もう背後に気配はない。
代わりに……、帝国中に広がって、常に感じていた黒くて悲しいもしゃもしゃは、少しずつ、本当に少しずつ消えかけて、小さな光が大きな光を作りだすように、どんどん大きな明るいもしゃもしゃを出していた。
暴れていたガーディアンは眠るように膝をついて動きを止めている。
それを見上げて呆けた顔をしているセレネちゃんとコノハちゃん。
虎次郎さんはそれを見て「きれいだなぁ!」と歓喜の声を上げて、アキにぃ、シェーラちゃん、キョウヤさんはべたりと腰を落として安堵の息を吐いている。
その光景を見た私は、ほっと安堵の息を吐いて小さな声で「よかった……」と言うと、ヘルナイトさんもそれを見て、私の頭に手を置きながら、凛とした音色で「ああ。本当に良かった」と言って――続けてこう言った。
この国の戦いが終わったことを胸に刻みながら……。
「これでこの国の偽りも、今日で終わる」
「ああ。そしてここでそれも終わるんだ。お前たちの浄化の旅も」
それは唐突で、嵐の前の静けさのように、それは突然、私達の前に現れた。ガーディアンの近くで、最下層の中心のところで仁王立ちになってその人は現れた。
突然――音もなく……、現れたのだ。
ぼたぼたと、足に赤い点々をいくつも残し、赤い水溜まりを残しながら……。
私達やシェーラちゃん達が通ってきた出口を使わない。
どこから現れたのかわからない。
でもその人を見た瞬間、私達の驚きよりもヘルナイトさんの方が驚いていて、ヘルナイトさんはその人のことを見ながら――
「お前は……っ! なぜ、ここに……っ!?」
と、初めて聞くような困惑の声でヘルナイトさんは言った。
正面にいる――ヘルナイトさんやデュランさんのような人が着るような鎧なのに、錆びていてところどころボロボロになっていている。更にはその鎧の隙間からぼたぼたと零れ出る大量の血。それを見た瞬間、ボルドさん以上のホラー殺人鬼に会ったかのような感覚を覚えた。腰に差している刀は錆びてて、ところどころ綻びができている。その刀にも血がこびりついていたけど、その刀をヘルナイトさんに向けたその人はヘルナイトさんのことを見て、私達のことを見ながらこう言った。
「ああ、久しいなヘルナイト。此方のこと忘れていないだろうな? 同じ鬼士なのだから。そうだ。此方の紹介がまだだった。初めまして冒険者の方々。此方は『12鬼士』が一人。鎮魂魔王族の長にして『終焉の厄災』の通り名を持つ――ジエンドだ」
そう言ってジエンドは言う。
困惑している私達をよそに、驚愕に染めているヘルナイトさんに赤黒いもしゃもしゃ――ありったけの殺意を向けながら……。
◆ ◆
『八神』――土のガーディアン。浄化成功。
残り――四体。
これでBW編完結。そしてこれで長かったガーディアン編終了となります!




