PLAY74 BATORAVIA BATTLE LOYAL!FINAL(仮初の終り)②
「はぁっ!?」
コノハちゃんの言葉を聞くと同時に、その光景を見たクイーンメレブさんは目の前から消えたDrがいた場所を見降ろしながら半音上げたかのような驚きの声を上げた。怒りのそれを付け加えながら……。
でも、誰もがその光景を見て驚きを隠せなかったと思う。
だって、その場所にいたはずのDrが忽然と姿を消したのだ。驚くのは無理もない。
ううん……。Drのような人なら、あんなに長い話の隙にそろりそろりと忍び足をして逃げてしまうだろう……。
これは、私達の油断……、と言うか長話の所為で逃げてしまった……、の方が正しいのかな……?
そんなことを思っていると、コノハちゃんの言葉を聞いて一番最初に言葉を放ったのは――赤い着物を着たお兄さんだった。お兄さんはコノハちゃんのことを見ながら驚きのそれで……。
「マジかよっ! いつからっ!?」
と聞くと、それを聞いていたコノハちゃんは慌てた様子でワタワタとしながら「分かんな」と言った瞬間、ある方向を見てはっと息を呑む顔をする。
そしてその方向に向けて指をさしながらコノハちゃんは大きな声で言った。
「あそこかもしれないっ! あそこ――最初あんな風じゃなかったっ!」
その声を聞くと同時に、赤い着物のお兄さんと輝にぃはコノハちゃんが指をさした方向に目をやり、クイーンメレブさんもその方向を見て私とヘルナイトさんもその方向を見た。
そしてすぐに――コノハちゃんが言った言葉をすぐに信じた。だって見た瞬間、Drはその場所から逃げたんだと確信したから。
コノハちゃんが指をさした方向にあったもの――と言うか光景は……、はたから見ても異様なそれだった。
黄金に彩られる謁見の間の王の玉座の後ろに見えるぽっかりと長方形に開いた不釣り合いな色。
私から見て右側にできたそれは、ひと一人が入れる高さになっていて、黄金に彩られた空間には不釣り合いな灰色の通路がそこにあった。
と言うか……、これはよく聞く隠し通路だ。
メグちゃん曰く、珍しい武器や換金額が高いものが置いてあるRPGでは王道のそれが、そこにあったのだ。
その隠し通路を見た瞬間、誰もが思ったに違いない。
Drはあの向こうに逃げたんだと――誰もが察したに違いない。
「あの向こうに……」
輝にぃが驚いた顔をして隠し通路の向こうを見ると、クイーンメレブさんはその隠し通路を見ると同時に、だっと飛ぶように駆け出す。
鎌を肩に背負いつつ、急速な勢いでクイーンメレブさんはその隠し通路に向かって駆け出した。
「っち!」
再度舌打ちをしながら――
「っ! 待てっ! クイーンメレブッ!」
ヘルナイトさんの静止の声が謁見の間に響き渡る。でもその言葉を聞いていないかのように、クイーンメレブさんはそのまま隠し通路に向かって駆け出していく。
とんっ! とんっ! と――飛ぶように駆け出していくその光景を見た輝にぃは驚いた面持ちでその光景を見て、すぐに輝にぃは手に持っていたそれを大きく振るって……、それをクイーンメレブさんに向けて放った。
ジャラァッ! と、鉄と鉄同士が擦り合うような音を立てて――輝にぃが持っていた武器なのかな……、長い鎖をクイーンメレブさんに向かって放つと、それはどんどんクイーンメレブさんの右足首に向かって伸びて、そのまま……。
ぐるんっと、縄を岩に括り付けるように一人でに回って、クイーンメレブさんの足に絡みつく。
それを感じ、進行できなくなったクイーンメレブさんはぎょっとした面持ちで滑り込むような止まり方をし、驚いた面持ちでクイーンメレブさんは背後で足の力が使えない状況の中、一生懸命にその鎖を引っ張っている輝にぃのことを睨みつけた。
苛立ちを加速したかのような怒りのそれを私達に晒しながら、クイーンメレブさんは大きな舌打ちと同時に――
「あんた……っ! なにいっちょ前に私を止めてんだっ?」
と、低い音色で輝にぃに向かって言った。
それを聞いた輝にぃは、無言の状態で……、ううん。力を入れているから喋る余裕なんてないんだ……。
輝にぃはぐっと肩に力を入れてさらに鎖を引っ張るけど、それを見たクイーンメレブさんは再度大きく舌打ちをすると、苛立つそれを剥き出しにしながら彼女は言った。
言った……、と言うよりも、怒りを上げた。の方がいいのかな……?
とにかく――クイーンメレブさんは言った。
「あんた……、自分が何をしたのかわかっている? あんたは今悪い芽を育てようとしてんだよ。このくそみたいな国がやろうとしていることに加担しているんだよ? わかる? その意味が」
「………わかっています」
クイーンメレブさんの言葉に、輝にぃは震える声で言ったけど、続けてクイーンメレブさんの言葉に対して否定するように、震える声で輝にぃは言った。
「でも……、あなたはあの時、あの老人を殺すつもりでいました。僕達は……、そのつもりはさらさらありません……っ! 罪を認めて償ってほしいから、それだけを誓って、降参してもらえれば、それでよかった……っ! でも、あなたは理由も何も聞かずに、異国の人を、殺す気でいた……っ! だから止めた……っ! それだけなんです……っ! ここにいるコノハも……、航一も、ズーも……っ! 死ぬことを、望んでいません……っ! だから、止めたんです」
輝にぃの言葉を聞いた私は、驚いた顔をしつつも、少しだけ安心した気持ちで、輝にぃのことを見た。いつもの輝にぃだと思いながら……、私は見ていた。
ここにきている理由は知らないけど、家族思いで優しい輝にぃに変わりはない。自分よりも他人を優先にするところも変わらない。そんな兄のことを見て、私は内心安堵の息を吐きそうになった。けど……。
その安堵の息を吐く前に、クイーンメレブさんは輝にぃに向かって鎖が巻き付いていない足を私達に向けて上げて、その状態で勢いをつけるように、床に向けてその足を踏みつけた。
カツゥンッッ! という鎧のヒールの音をたてながら、彼女は言った。
「止めた時点であんた達は加担者だって言っているんだっ! それでさえも理解できない? あんたはこのくそみたいな国を更に腐らせる行為をしているって言いたいんだよっ!」
「――っ!?」
「ひぃっ!」
「………っ!」
突然来たクイーンメレブさんの怒声。
それを聞くと同時に、輝にぃはぎょっとしたのか、肩を震わせて強張っている。
その大きな声を聞いたコノハちゃんは両耳を手で塞ぎながらぎゅっと目を瞑ってしまう。
私はその光景を見て、驚いた面持ちで前にいたヘルナイトさんの手に、きゅっと両手で握ってしがみついてしまう。
そのくらい、クイーンメレブさんの怒りが、その怒りのもしゃもしゃが怖かったから、前に感じたリョクシュとは全然違う、別格の怒りのもしゃもしゃを感じた私は、思わず怖くなってヘルナイトさんにしがみついてしまったのだ。
赤と黒が1:1の割合で混ざり合って、噴火のように吹き上がるそれを感じながら、私は口をきつく噤んでしまう。
そんな状況を見ていても、クイーンメレブさんは怒り任せに再度前に出した足を『カツンッ!』と鳴らして、クイーンメレブさんは言った。この謁見の間を見せるように、ううん……。帝国の姿を見せるように、彼女は怒りを露にしながらこう言ったのだ。
「あの老いぼれが一体何をしているのかはわからない。でもこの国の屑帝王がしていることは分かっていた! 何十年もの間調べたからね――理解できたよ。マキシファトゥマ王国の『鉄の魔人』計画を利用して、秘器を使った騎士団――秘器騎士団を大量生産! そしてアズールの支配! それをした時点で、それを企てた時点でこの国の帝王は王として、人間として死んだも同然なんだっ! この国は腐っているんだ。根元から! ドロドロと! そんな帝王に加担した輩も同等に腐っている! だから生かすことなんてしてはいけないんだっ! この場で――殺すことこそが、唯一の救いなんだよ」
私はヘルナイトさんの手にしがみつきながら、言葉を失った。
絶句して、クイーンメレブさんのことを見てしまった。
輝にぃ達も、私と同じような顔をしている。
当たり前かもしれない。
クイーンメレブさんの怒りのそれに気圧されてしまったこともあるけど……、それよりもクイーンメレブさんの言葉に、私は、輝にぃ達は困惑していた。
ヘルナイトさんもきっと、驚いているに違いない。
ヘルナイトさんは人を殺すということはしなかった。むしろそれを嫌っている。そして、人が好きだから、殺すということをしなかった。私達と一緒にいるときも、凶悪なオグトであろうと……、命を奪うようなことはしなかった。
でも……、クイーンメレブさんだけは違う。
悪は――殺すべき。生きていてもだめ。死ぬことが当たり前なんだ。
その気持ちが、私の心をどんどん不安に陥れて行く。そして空間をどんどん暗くしていく。
その空間の異常を察したのか、赤い着物のお兄さんはクイーンメレブさんに向かって大きな口を開きながら――大きな声でこう言った。
「そ、そんな極端な方法がいいのかよっ! 俺っちはそんなこと一ミリも思わねえし、死んじまったら後味悪ぃだろうがっ!」
「あぁ? 後味……? そんなの関係ないね。あんな輩は人の生死なんて深く考えていない。だからこっちも深く考えずに殺すだけさ。後味なんて知るか」
「それでも俺っちは……、俺っち達はそんなことはしたくねえっ!」
「…………………………あぁ?」
クイーンメレブさんの圧に気圧されない真っ直ぐな目で、赤い着物のお兄さんはクイーンメレブさんのことを見ながら、更に声を張り上げて言う。
そんなことをしてもだめだ。それでは解決しない。それを言うかのように、赤い着物のお兄さんは言った。
「コノハは確かにあの爺さんには恨みはあった。けどそれをしなかった! それをしたら、天国にいる母ちゃんが悲しむって言って、あえて罪を償ってもらうために、一発ぶん殴る方向に考えを変えた! 俺っちもそこで伸びている兄ちゃんのことは殺してほしくねえ! 兄ちゃんにはちゃんと罪を償って、一からやり直して、もう一度家族として迎えてやりてえんだっ! 死んじまったら気が晴れるかもしれねえ。けどそれだとダメなんだっ! ちゃんと、自分がした悪いことを――罪を償って、謝ってほしい。だから、俺っちは、コノハは殺すことをやめたんだっ! ちゃんと改心してほしいと願って、ここに来たんだっ! それを踏みにじるんじゃねえよっっ! 『12鬼士』っ!」
赤い着物のお兄さんの言葉を聞いて、クイーンメレブさんは苛立つ顔をむき出しにしてぎりっと仮面越しに歯を食いしばると、赤い着物のお兄さんのことを見降ろしながら、手に持っている鎌を振り回し、その鎌の刃から……、黒い靄をぞぞぞぞぞっ。と吹き出した。
それを見た私は、ぎょっとした顔でクイーンメレブさんを見て、それを見たヘルナイトさんもはっと息を呑んで、クイーンメレブさんのことを見ながら――
「っ! クイーンメレブッ! それを使うなっ! 落ち着けっ!」と叫んだ。
けど、クイーンメレブさんはその言葉を翻すように、鎌にどんどん纏っていく黒い靄を動かして、どんどん形を形成しながら、クイーンメレブさんは一言。
「五月蠅い」と言うと同時に――クイーンメレブさんはその黒く纏ったそれを大きく振り回す。ぐるんっと、腰を使って大きく振り回すように……、クイーンメレブさんは言った。
私達に向けて――
「――『死ノ神の怨恨鎌斬』ッ!」
その言葉が放たれると同時に、クイーンメレブさんはその鎌をその場で、誰もいない場所に向けて、ぐるんっと振り回す。振り回すと同時に、その鎌から離れるように出てきた黒いマントをすっぽり羽織り、鎌を手に持ったどくろの死神。それが突進してくるように迫ってきたのだ。
まるで死神の斬撃波だ。
ズオッ! とその鎌から出て、私達に向かってどんどん距離を詰めていくそれを見て、コノハちゃんは「ひぇっ!」と言う声を上げて、赤い着物のお兄さんは驚いた顔をして手に持っていた私の身長以上ありそうな大きな刀を構えようとすると同時に、輝にぃは驚いた状態で固まってしまう。
鎖を持った状態で、固まりながら……。
そんな最中、クイーンメレブさんが出した死神は「オオォォオオォォオ………………ッ!」と唸り声を放って、骨の手で持っていた鎌を大きく振るう。私達を、斬るように――
私はそれを見て焦る気持ちを急上昇させながら、ヘルナイトさんの背中越しに手をかざすと同時に、私は『囲強固盾』を出そうとした。
あれが一体どんな攻撃なのかはわからない。でも攻撃の名前から推測すると……、あれはきっと『闇』属性の攻撃だと思う。物理攻撃と言う確証もない。けど私は、持っている強い『盾』スキルを出そうとする。
本当だったら私がその攻撃を防ぐ『盾』スキルを持ち合わせていればよかったのかもしれない……。でも、私は『回復』に力を入れてしまったせいで、『盾』スキルに力を注ぐことができなかった。いうなれば……、ポイント不足。
でも、今はその後悔をしている暇はない。むしろそれをした時点で……、最悪の結果を招いてしまう。
それを考えた私は、後悔を振り払うように首をふるっと振って、目の前に迫ってくるそれを止めるために、私は手をかざして――そっと口を開く。
みんなのことを傷つけないで。みんなのことをこれ以上苦しめないで。そう願いながら――私は口を開いた。
「『囲強」
でも……、その前に私が動こうとした前に、動いている人がいた。
私の近くで、人差し指に集まった小さな蛍の光を、クイーンメレブさんが放った斬撃波の方に向けて放つと同時に、その光を放ったヘルナイトさんは、指を鳴らすように丸めながら、凛とした音色で――私と輝にぃ達に向けて言った。
「目を閉じろ――すぐに」
「! っ!」
私はその声を聞くろ同時に、目を閉じる。きつく目を閉じると同時に、世界が真っ黒と、少し黄色が混ざった少し暗い世界になる。煌びやかな光の所為で少し明かりが零れているような、そんな視界を閉じながら感じていた……。
そんな状態の中、ヘルナイトさんは少し間を置いてから――言う。
あの時――エディレスとクロズクメの時に使った技を。
「――『爆光』」
と言うと同時に、ヘルナイトさんは指を『パチンッ!』と鳴らすと……、瞼の世界が一瞬赤く染まりかけた。
それを見た私は驚き、すぐにきつく目を閉じて、その世界を黒くする。黒い隙間から赤いそれがかすかに零れるけど……、それでも目を守ることはできたと思う……。
遠くから「まぶし……っ!」と言う声が聞こえる。
この声は確か……赤い着物のお兄さんだ。そう思いながら未だに光り続けているそれが終わるまで目を閉じておこうと思った矢先――突然その声が謁見の間内に響いた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁーっっっ!!」
「っ!?」
突然の絶叫。
「っ!? ? ?? え、え? なに……? 何なの……? 何が起こったの……?」
それを聞いた私は、目を閉じた状態になりながら困惑してあたりを見回してしまう。きょろきょろと、目を閉じているのに見回してしまうという矛盾していることをしながら、私は混乱していた……。
絶叫を上げたのは――クイーンメレブさん。さっきの怒りの声とは全然違う。痛みに泣き叫ぶようなそんな声だった。その声を聞きながら、私は一体何がどうなっているだろうと思いながら見えない目は開けてはいけないから、聞き耳を立てて状況を察しようと、耳を澄ませる。
すると……。
「え? え? なになにっ!? 何が起こったのぉっ!? 航ちゃんカグちゃぁん! 大丈夫ぅ!?」
「コノハ動かないで! 目を閉じた状態だと危ないからっ! 僕は大丈夫だからその場所でストップ!」
「滅茶苦茶すげー音がしたような気がすんだけど……っ! どうなっちまったんだっ!? もしかして……敵襲かっ!?」
「音じゃない! これは声! 落ち着け航一!」
耳を澄ました私だけど……、聞こえるのはコノハちゃんと、輝にぃと、赤い着物のお兄さんの声だけ。輝にぃ以外の二人は凄く慌てているみたいで、ワタワタとしているそれが目を閉じてても分かるそれだった。
少しばかり……、緊迫するような空間になゴミが出たようなそれを感じたのは……、気のせい、かな?
そんなことを思っていると……。
――ひゅるんっ! ばしぃんっっ!
「ぐぅっ!」
「っ!?」
突然の叫び。その前に聞こえた紐のような物を振るう音と、それで叩く音。それが響いた瞬間クイーンメレブさんの叫び声が聞こえた。唸るような声だ。
それが聞こえたと同時に、ずたんっと転ぶ音。私は再度困惑を顔に出しながらまた矛盾な行為――目が見えないのにあたりを見回す行為をした。きょろきょろと、あたりを見回しながら。
するとそんな私の右肩に『ぽんっ』っと触れる何か。感覚からして、これは手。大きな手……。
ヘルナイトさんの手だ。
それを感じた私は、驚きの声を上げてヘルナイトさんがいる上を見上げようとした瞬間、ヘルナイトさんはまた凛とした音色で、私に向かってこう言った。目は見えないけど、声の音色から察するに、私に向けて言ったんだと思う……。ヘルナイトさんは言った。
「もう目を開けてもいいぞ」
それを聞いた私は、恐る恐ると言う形でそっと目を開けると……、目の前に映ったその光景を見て、驚いて「え……?」と声を上げてしまった。
私の目の前に広がった光景。それは輝にぃも、コノハちゃんも、赤い着物のお兄さんも目を見開き、口をあんぐりと開けてしまうような光景で、誰もが驚きを隠せない様な情景が広がっていて、その向こうには、ヘルナイトさんが大剣を水の鞭に変えて、倒れてしまい……体中からじゅうじゅうと水蒸気を出して痛みを訴えて唸っているクイーンメレブさんを巻き付けている光景。
あの死神も消えてしまっていた。
その光景を見て、私は近くにいるヘルナイトさんを見上げると、ヘルナイトさんは私のことを見降ろしながらこう言った。凛とした音色で、申し訳なさも付け加えながら、彼は言った。
「あのまま行かせてはいけないと思ったからな……。少しのあいだ動けなくしてもらおうと思っただけだ。安心してくれ、死んでいない。ただクイーンメレブは光属性が弱点だからな。光属性の魔祖術で攻撃して動けなくしただけだ」
「………………動けなく……」
私はそっとクイーンメレブさんのことを見ながら、小さな声で零す。
クイーンメレブさんは体中から水蒸気のようなそれを出しながらダメージを受けているみたいだけど、ヘルナイトさんに向けて……。
「ヘルナイトォォォォォ……ッ! こんなことをして……、ただで済むと思うなぁあああああっっっ!」
と叫んで、喚いていたけど、本当に命に別状はないみたい。その光景を見ていた私は、ほっと胸をなでおろしていたけど、ヘルナイトさんはクイーンメレブさんのことを見ながら……、小さな声で「すまないな」と言って……。
――ぐぅんっっ! と、鞭で縛り付けていたクイーンメレブさんを天井に向けて振り上げた。
まるで――釣りで引っかかったものを吊り上げるように、ヘルナイトさんはクイーンメレブさんをいとも簡単に振り上げた。持ち上げた……の方がいいかな……。
その光景を見て、私達プレイヤーは驚きのそれを向けるけど、クイーンメレブさんは驚いた顔をしてヘルナイトさんのことを見降ろす。私達のことも見降ろして……。
その光景を見上げてから、ヘルナイトさんはクイーンメレブさんに向かって……、いつの間にかだろうか――周りに飛び交っている風の刃を出しながら、ヘルナイトさんは言った。
凛としているけど、それでも諫めるような静かな怒りを乗せて――
「少しの間じっとしていろ――『鎌鼬』」と言うと、その言葉と同時に、ヘルナイトさんは大剣を持っていない手をふっと、軽く舌に向けて振るう。すると……。
ヘルナイトさんの周りを飛んでいた風の刃が、まるで意識を持ったかのように空中に飛ばされてしまったクイーンメレブさんに向かっていく。
ぐるぐるぐるぐるっ! と回転しながら、どんどん身動きが取れないクイーンメレブさんに向かっていく風の刃。それを見たクイーンメレブさんは、はっと息を呑んで、焦りを顔に出しながらヘルナイトさんが出した水の鞭を自力でほどこうとした。
体をうねらせながら――
でも……、どんどん風の刃達はクイーンメレブさんとの距離を詰めていく。
そして――
「――すまない。許せ」
ヘルナイトさんはクイーンメレブさんのことを見上げながら、小さく言うと、それと同時に、水の鞭を大剣に戻した。しゅるんっと、一瞬のうちに、水の鞭が一気に空気と同化したかのように、それがなくなったのだ。
「っ!」
「「「っ!?」」」
見上げていた私はおろか、輝にぃ達もそれを見て驚きのそれを浮かべる。
でも、一番驚いていたのはきっと……、クイーンメレブさん。
クイーンメレブさんは体に纏わりついていたそれがなくなると同時に、体に感じているであろう浮遊感を感じながら、一瞬その場で浮遊する。けど、この世界でも重力と言うものは存在し、クイーンメレブさんは浮遊することができない。
だからそのまま、どんどん下に向かって落ちて行こうとする。ふっと、下の重力に従うように落ちて行こうとした瞬間……。
「――っ!? ぐぅっ!」
クイーンメレブさんは唸り声を上げると同時に、上に向かって上って行った。
下に落ちるのではなく……、上に向かって。
そして天井に背中を『どんっ!』と当たり、クイーンメレブさんの体中に風の刃が『ドスドスッ!』と突き刺さっていく。まるで――貼り付けにするように、服にそれを突き刺して。鎧の手足首には風の刃をクロスさせて挟めるようにそれを突き刺して、クイーンメレブさんの動きを封じたのだ。
「…………っな!? これは……っ! っ! くぅ! おいヘルナイトッ! 一体何のつもりだっ?」
突然の事態。そしていつの間にか体に張り付けられている風の刃を見ながら、クイーンメレブさんはぐっぐっと体を動かしながらその刃を取り除こうとする。けど、体を動かそうとしたけど、深く突き刺さっていることもあり、体の自由が利かない。
そんな状態を見ながら、私は驚いた顔をして見上げていたけど、クイーンメレブさんは私ではなく、ヘルナイトさんに向かって声を張り上げて怒りを露にしていた。でもそんなクイーンメレブさんの怒りを素通りするように、ヘルナイトさんはクイーンメレブさんに向かって「すまない」と一言言ってから、続けてこう言った。
「お前の気持ちもわかる。この帝国を恨む気持ちもわかるが、私達は『12鬼士』だ。人をその手で殺めてしまってはいけない。私怨に心を委ねてしまってはいけないんだ」
「…………っ! 忘れてしまったくせに……、何を悠長なことをいっているんだか……っ!」
ヘルナイトさんの言葉に対して、クイーンメレブさんはぎりっと歯を食いしばるように顔を歪ませながら苛立ちを露にする。そんな声を聞いて、心の底から怒りと焦りのもしゃもしゃを感じながら、私は……。
「………………?」と、首を傾げてしまった。
首を傾げた理由。それはクイーンメレブさんから発せられるもしゃもしゃに、違和感を覚えたからだ。
確かに……、クイーンメレブさんは怒りと焦りの赤くけどいろんな色が混ざっているようなもしゃもしゃを出して、ヘルナイトさんに向けてその怒りを向けていたけど……、その色の中にある青黒いそれを感じた。
その青黒いものは、その赤に混ざるたびにどんどんと色を汚していく。まるで……、そのもしゃもしゃに飲まれてしまうかのようなそれだった。
それを感じていた私は、クイーンメレブさんのことを見上げながら、あのもしゃもしゃは一体……。と思って首を傾げたのだけど、ヘルナイトさんはそんなクイーンメレブさんに向かって――
「確かに……、私は忘れてしまった。あの『終焉の瘴気』の影響で、いろんなことを忘れた。大切な記憶も忘れてしまった。悠長と言われても仕方ないかもしれない。お前の鬼に触ってしまうかもしれない。だが……、お前がしている選択が――正しいことではない。殺して正解と言う選択肢は、正しくない選択だ」
はっきりとした音色で言ったのだ。
そして――その言葉に続くように、ヘルナイトさんは自分の胸に手を当てながら……、凛とした音色でこう言った。
「今から私は、いいや――私達は、二百五十年前に成しえなかった償いをする。だからクイーンメレブ。少しの間そのままでいてくれ」
「……………………はぁっ? 二百五十年前……っ?」
そんなヘルナイトさんの言葉を聞くと同時に、クイーンメレブさんは素っ頓狂な声を上げて、理解できないような顔を浮かべるけど、ヘルナイトさんは私のことを見降ろし、そして一言――
「行くぞ。今なら間に合う」と言って、ヘルナイトさんは私の肩と膝裏に手を通して、そのままぐっと持ち上げる。いうなれば――お姫様抱っこなんだけど……。
それを受けてしまった私は、あまりに突然の行動を受けてしまったので、「にゃっ!?」と、驚きの声を上げてヘルナイトさんの腕の中に納まってしまう。何もできずに……。びっくりした……。
驚いた私に対して「すまない」と小さな声で謝るヘルナイトさん。そしてすぐに隠し通路に向かってたっと駆け出す。クイーンメレブさんがしていた飛ぶように駆け出すそれではなく、普通に駆け出して隠し通路の入り口に入ろうとしていた。
けど――
「――待ってっ!!」
「!」
「?」
「きゅぅ?」
突然背後から声が聞こえた。
その声に反応したヘルナイトさんは、隠し通路の前で足を止めて、声がした背後を振り向く。わたしはなのもできないので、ヘルナイトさんが振り向くと同時に私も目だけでその方向を見ると……、そこにいたのは……。
「………………っ」
黒いショートヘアーのゴスロリの女の子――コノハちゃんが困惑しているけど、私達の背後に立ってきゅっと唇を噤んで立っていた。
その光景を見た私は、ヘルナイトさんの腕の中で首を傾げながら「どうしたの?」と聞くと、私の言葉を聞いてか、コノハちゃんは私達のことを見て、一度――一回深呼吸をゆっくりとする。
すーっ。はーっ。
と、心を落ち着かせるためにコノハちゃんは胸に手を当てて深呼吸をした後……、真っ直ぐな目で私達のことを見つめながら――彼女は声を張り上げてこう言った。
「こ、コノハも一緒に連れてってっ! お願いっ!」
「「!」」
それを聞いたはおろか、ヘルナイトさんも驚いた面持ちで体をわずかに揺らし、目の前にいるコノハちゃんのことを見降ろしながら――ヘルナイトさんは驚きを落ち着かせながらこう聞く。
「……なぜ、そこまで」
「なぜも何も……っ! コノハにも目的があるし、その人に対して一発殴らないと気が済まないもんっ! 『ゆうげんじっこう』ができなくなるのも嫌だし、それにこのまま他人に任せたまま終わるのも、いやなのっ! 自分の手であの人……、おじいちゃんを止めないといけないっ! そう決めたんだもんっ!」
「!」
「だからお願い! 一緒に連れてって!」
コノハちゃんの言葉を聞いた私は、ヘルナイトさんと一緒にさらに驚いた顔をしてコノハちゃんのことを見降ろした。
コノハちゃんが言うおじいちゃん――そしてそのおじいちゃんは今私達が向かう場所にいる。それを察した瞬間、私は理解してしまう。
この子が言っているおじいちゃんは――Drなのだと。
その言葉を理解すると同時に、私はコノハちゃんのことを見降ろしながら、ヘルナイトさんの腕の中でコノハちゃんに向かってこう聞いてみた。コノハちゃんが言う『止める』が……、クイーンメレブさんの言うそれと同じではない。それの確証を得るために、私は聞いてみた。
彼女から出るもしゃもしゃを見て、それは分かっていたけど、一応確認のために……。
「聞いても、いい……?」
「? うん」
私は聞く。こてりと首を傾げているコノハちゃんに向かって、私は聞いてみた。ちゃんと目を見て、真っ直ぐ見つめながら、私は聞いてみた。
「もし、そのおじいちゃんに出会ったら……、本当に殴るだけでいいと思っているの?」
「? どういうこと?」
「えっと……、今の気持ちは確かに殴るだけでいいと思っているけど……、その人に会って、そしてその人の言葉を聞いていたら、だんだん心がむしゃくしゃして、殴るだけでは気が済まなくなってしまうかもしれないって思ったの。あなたがそうだとは言っていない。けど……、少し心配になっただけ。だから聞いたの。その人に会って、殴るだけでいいと、思っているのかなって……」
私の言葉を聞きながら目を点にして見上げているコノハちゃん。
もちろん私は意地悪をしてこれを聞いているわけではない。
ただ……、この子が間違った道を行ってしまうのではないか、あの時……、ティックディックのように、カイルのことを殺そうと道を踏み外した光景が、今になってちらついてしまい、私はそれが心配になってコノハちゃんに聞いただけ。
その言葉を聞いて、コノハちゃんは私のことを見上げて、ヘルナイトさんのことも視界に入れながら、彼女ははっきりとした音色で首を……。
「うん。殴るだけ。それだけしたら、あとはおじいちゃん次第だもん」
と言って、彼女はこくりと素直に頷いた。
そして続けて……。
「コノハはただ殴るだけ。それ以上のことをしたら、お母さんも悲しむと思うから、それ以上のことはしない。だって――コノハだけの約束だから、それを破ったらハリセンボンだもん!」
「…………………………そっか」
私はコノハちゃんの言葉を聞いて、安堵と確信を得る。
この子の言葉に嘘偽りなんてない。心の底からそう思っている。そしてその心を曲げる行為もしない。そう私はもしゃもしゃを見て確信した。
そんなコノハちゃんの言葉を聞いた私はヘルナイトさんのことを見上げて、同意の頷きをする。そんな私の行動を見たのか、コノハちゃんはヘルナイトさんのことを見ながら両手をぶんぶんっと振って――慌てながら……。
「お、お願いっ! あ、違う! お願いしますっ!」と言って、頭を慌てて下げるコノハちゃん。
その光景を見ていたヘルナイトさんは、一瞬考えるような仕草をしたけど、すぐにコノハちゃんのことを見ながら、ふぅっと気を吐いて、すぐにこう言った。
「分かった……。一緒に行こう」
「――っ!」
ヘルナイトさんの言葉を聞いたコノハちゃんは、慌てるそれを一気に消して、ぱぁっと明るい笑顔を向けながら、込み上げてくる喜びを体現しようとしていた。けどそれを体現する前に、ヘルナイトさんは「ただし――」と、コノハちゃんに向かって、ほんの少しだけきつい音色で言ってきた。
それを聞いたコノハちゃんは、体現しようとしている形で固まり、ヘルナイトさんのことを見上げる。引きつった笑みを浮かべながら……。
固まったコノハちゃんのことを見降ろしながら、ヘルナイトさんは一言……。
「……今から行くところはきっと、ガーディアンと言う『八神』もいる。だからこそ――危ないと思ったらすぐにその場から離れること。それが一緒に行く条件だ」
「うんっ。コノハ約束守るよ……っ!」
コノハちゃんはヘルナイトさんの条件を聞いて、こくこくと頷きながら承諾する。目を点にして、その言葉を胸に刻むように、コノハちゃんはヘルナイトさんと私のことを見上げた。
そんなコノハちゃんの言葉を聞いて、ヘルナイトさんは「よし――」と言うと同時に、目の前に広がる地下通路の階段を見降ろそうとした時……。
「――華っっ!!」
「!」
その言葉と声を聞くと同時に、私はその声がした方向に顔を向けた。
ふっと、声がしたから振り向いたのではない。その声を聞いて、今まで混乱していたその頭がクリアになって、再度疑念に思っていたことが再燃して、その疑念と共に、私は現実世界で大切な人に目を向けた。
視線の先にいる――この世界にいないと思っていた輝にぃに目を向けて。
「ど、どしたん?」
「カグちゃん?」
傍らで驚いた目をしている赤い着物のお兄さんと驚いているコノハちゃんをしり目に、輝にぃは傷ついた足で立とうとしていた。けれど、痛みの所為で立つことができないようだ。顔を歪ませて足を見て、苛立ちのもしゃもしゃを足に向けて放ちながら、輝にぃは小さく舌打ちをしていた。
その光景を見た私は、考える暇もなく、本能に従うように、ヘルナイトさんの腕の中からすり抜けて、床に降り立った。ストンッと、靴の音を出しながら――
「ハンナッ?」
「?」
ヘルナイトさんの驚く声と、コノハちゃんの驚く声が聞こえた気がしたけど、私はその声を無視して、背後にいる輝にぃに向かって、足を進めていた。走って近づいた。
たったったったったった。と――私は輝にぃに向かって近付き、驚く赤い着物のお兄さんと輝にぃをしり目に、私は輝にぃの足の近くでしゃがむ。
「華……」
輝にぃは私に向かって声を零しているに違いない。
けど、私はそれを無視するように、怪我をしている輝にぃの足に向けて――手をかざして……。
「『小治癒』」
スキルを発動した。
その言葉に呼応するように、輝にぃの足を包み込むように、青い靄が出る。そして輝にぃの足を治していく。時間の経過と共に修復して行くように、輝にぃの足を治していく。
その光景を驚いた顔で見つめる輝にぃ。そんな顔を見ていた私は、輝にぃのことを見ないで、傷の方を見ながら、私は言う。輝にぃに向かって……。
「ねぇ輝にぃ。なんでこんなところにいるの?」
「!」
私の言葉を聞いた輝にぃは、驚いた声を上げて、体を揺らす。そして一瞬足をずっとずらしながら、無言を徹してしまう。
そんな輝にぃの足を見ながら、無言の輝にぃのもしゃもしゃを感じながら……、焦りと困惑、そして申し訳なさがどんどん溢れ出しているそのもしゃもしゃを感じながら、私は珍しい輝にぃのことを感じてこう言った。
控えめに微笑み、そして思ったことを口にしながら……、私は言った。
「言いたくない……。じゃないね。言えないこと? でいいのかな……?」
「……………………」
「言えないのならいいけど、一言『このゲームをしている』って言ってくれればよかったのに……。ちょっと悲しいな」
「……………………」
「でも、輝にぃも輝にぃなりの考えがあってここにいる。私もアキにぃもみんな、色んな目的があってここにいる。ここに来るまでの間、私だって色んな人を見てきたし、色んな悪い人にも出会ってきた。苦しさを抱えている人にも出会った。この世界の人達も良い人や悪い人、苦しんでいる人や悲しんでいる人、幸せを噛み締めている人に出会ってきた。その中にはね……、その心を隠している人もいた」
「……………………」
「輝にぃがなんでここにいるのかは喉から手が出るくらい聞きたいよ。けどね……、それは一旦保留にしておこうと思うの」
今はそれと同じくらい、大事なことをしなければいけないから。
そう言って私は輝にぃに向けて目を合わせる。
輝にぃは驚いた顔をしながら固まり、私のことをじっと見つめている。そんな顔を見た私は、なんだか珍しいなぁ。と思いながら輝にぃのことを見て、そして回復を終えると同時にすっと立ち上がって、座り込んでいる輝にぃに向けて私は言う。
腕を組み、控えめに微笑みながら――私は右の耳に髪をそっとかけて言った。
いつも私のことをアキにぃと同じくらい心配して、厳しいところもあったけど優しさもあった輝にぃに向けて、大丈夫と言うそれを示しながら……、私は言った。
「これが終わったら聞こうと思っているから――覚悟しておいてね?」
そう言って、私は驚いて固まっている輝にぃの次の言葉を聞く前に、たっと待ってくれたヘルナイトさんと、コノハちゃんのところに向かって駆け出す。
手を伸ばしているであろう輝にぃに目を向けず、これが終わったら……、浄化が終わったら聞こうという意思を強めながら、私はぐっと唇を噤んで前に駆け出す。
「ハンナ――もういいのか?」
「お姉ちゃん?」
「はい……、もう大丈夫です。ありがとうございます。そしてごめんなさい……。勝手なことをして」
待っててくれたヘルナイトさんとコノハちゃんにお礼と謝罪を述べ、そのまま私はヘルナイトさんのことを見上げて……。
「行きましょう」と言った。
それを聞いたヘルナイトさんは凛とした音色で頷きながら「ああ」と言う。コノハちゃんもそれを聞いてこくりと頷き、輝にぃ達に向かって大きく手を振りながら彼女は言う。
「カグちゃーんっっ! 航ちゃーんっっ! 行ってくるねーっ! ズーのこと頼むよーっ! ちゃんとぶん殴ってくるからーっ!」
彼女の言葉を聞いてか、赤い着物のお兄さんの「おお! 行ってこいよ! 気を付けてな!」と陽気な声が聞こえると同時に、コノハちゃんと一緒に私達は地下に向かって駆け降りる。
真っ黒な世界を駆け下りながら……、申し訳ない輝にぃのことを見ないように私達は駆け降りる。
この先にいるであろう……、Drの拘束と、ガーディアンの浄化のために……。




