PLAY07 月夜の約束⑤
それから長い長い夜の終わりが来て――早朝になって。
「ど、どうしたんですか?」
エストゥガの門の前。
そこで私はアキにぃと一緒に、荷物をまとめてみんなと一緒にいた。
なぜか青ざめながら口元を押さえているコウガさん、グレグルさん、ブラドさんを見て私は心配そうに聞く。でもコウガさん達は……。
「「「あ、悪夢だった……」」」
「え?」
ぎょっと驚いてしまう。一体何があったんだろうと思いながら「何があったんですか?」と聞くけど、誰もそれ以上の言葉を零すことはなかった。
ところでなぜ私達がここにいるのか、なぜエストゥガの門の前にいるのか疑問に思っていただろう。それには理由があって、コウガさん達は私達の見送りをしにここに来ていたのだ。
見送り。
そう、今から私達は魔導液晶に新たに更新された情報の場所に行くことになった。
でも、行くのは私とアキにぃだけ。
エレンさん達はゴーレスさんのこともあって、しばらく様子を見ながら待機することになったらしい。
モナさんも一緒にいて、手伝いをすると言っていた。
リオナさんにこのことを伝えてとも言われているので、出発したらリオナさんがいるギルドに足を運ぼうと思う。
そしてコウガさん達はエンドーさんの件もあり(あの後ダンジョンに忘れておいて来てしまったけど、その後すぐにダンゲルさん達が連れて戻ってきた)、エンドーさんをエストゥガの地下の牢獄に入れて監視をしながらこの後の処遇をどうするか考えるらしい。
三人共、それは満場一致だった。同じ、ハコの一員として……。
そして私はとあることに気が付く。
「あれ?」
辺りを見回しても、そこにはとある人物がいない。
そう思い、私はダンゲルさんに聞こうとした時……。
「ぉおーいっ!」
遠くから声がして、その方向を見た瞬間だった。
バシンという何かを弾く音が聞こえ、そしてすたんっと私達の前に降り立ったキョウヤさんが、手に荷物を抱えてきたのだ。
さっきの音は、尻尾を弾いた時の音なのだろう……。跳躍にも使えるんだ……。うむむ。
そう思って見ていると、キョウヤさんは顔を上げて、そして立って私達を見て、聞いた。
「なに……? 急に来て」
アキにぃだけは、なんだか不満そうな顔をしている。でも、キョウヤさんは――
「あのさ、オレも一緒に同行してもいいかな?」
「ダメ」
「即答すんなっ! ちょっと聞け!」
キョウヤさんの言葉を聞いたアキにぃは、きっとコンマ一秒という速さで断ったと思う。でもキョウヤさんはそれを聞いて怒りながら聞いてとせがむ。
私はアキにぃのポンチョを引っ張って「聞いてあげよう」と言った。
すると、アキにぃは納得していないようだったけど……、それでも、話を聞くようで、キョウヤさんを見て、黙る。キョウヤさんははぁっと溜息を吐いて……、私達に言った。
「実はさ、オレ――一緒にプレイしていた友達がいるんだ」
「友達……?」
「そう。んで、そいつらとはぐれて、なんというか……。ほら、前に話しただろう? 頑固モンの奴の話。そいつなんだけどよ……、やっぱり心配なんだよなーって思って。きっとどこかにいると、オレは思う。だからこう言っちゃなんだけど……」
キョウヤさんは頭を下げて、私達に言った。
「それまでの間――オレも行動を共にさせてほしい」
それを聞いたみんなが、きょとんっと驚いてそれを見て、私も驚いて見て……。
「キョウヤ、やめとけ……、こいつと組むのはおすすめしねぇ……っ!」
「俺も同文だ。俺の年長者の勘が囁いている……っ!」
「昨日のこと、前言撤回だ……。ここにいろキョウヤ」
「決心揺らぐからやめれぃっっ!」
ブラドさん、グレグルさん、コウガさんが口元を押さえながら、哀れな人を見る目でキョウヤさんの背中を見ている。
キョウヤさんはお腹の底から声を出すように張り付けた声を上げた。
私はキョウヤさんのそれを聞いて……、同じだと思ってしまった。
私もしょーちゃんやつーちゃん。メグちゃん。みゅんみゅんちゃんのことが心配だ。今だってそうだ。
キョウヤさんも同じように心配なんだ……。
当たり前だよね……。そんな簡単なこと、わかりきっていることだと思う。
それを聞いた私は、未だに頭を下げているキョウヤさんに言った。
ううん。言おうとしたんだ。
「ダメ」
アキにぃは即答した。それを聞いていたエレンさんが、驚きながらアキにぃに聞いた。
「いやいや! 今の流れはいいよっていう流れだったと俺は思うよっ! 何で断る! 重要な上級戦士のランサーだぞっ!?」
「俺一人でもいいし、それに、負けたことに対して、俺は認めていない」
「めんどくせぇ! こいつ結構根に持つタイプだっ!」
そうエレンさんは突っ込んだ。
アキにぃはそれでも、意志を折らないで行くつもりだろう。私はそんなアキにぃを見て……。
「いやな……。正直、オレもあの不意打ちはまずいって思っちまったよ」
頭を上げないでそのままの体制で言うキョウヤさん。
頭上げてもいいのに、それでもキョウヤさんはアキにぃに言う。
「オレが背後をとった時、あの時腰を掴んで拘束しようと思っていたんだけどさ、銃をあんな風に構えられて、オレ焦って、肩掴んで必死になっちまったんだよ。だからうっかりってことがなくてほっとしたんだ……」
あー、あん時は焦った……。
そう言って溜息を吐くキョウヤさん。それを聞いたアキにぃは驚いた顔をしていた。私も驚いて、コウガさん達もエレンさん達も驚いていた。
それが指すこと。それは……。
きっと、アキにぃとキョウヤさんにしかわからない。
だからアキにぃは鼻の筋を指で掻きながらそっぽを向いて――
「ま、まぁ……俺はいいよ。同行……」と、小さい声で言った。
「「「「ちょろ」」」」
「なんて言いました?」
エレンさん達のその言葉を聞きながら、私はキョウヤさんに「頭上げてください」と言った。キョウヤさんはそっと頭を上げて、私とアキにぃを心配そうに見ている。
それを見た私は控えめに微笑んで……。
「これから、よろしくお願いします」と、言った。
それを聞いたキョウヤさんはすっと姿勢を正しくして、ぐっと唇を噤んだのかと思うと――
「――よろしく」
こうして私とアキにぃ、キョウヤさんは、一旦マースさんがいるギルドに向かって歩みを進めた。
その道中――
ヘルナイトさんと合流たけど、アキにぃはそれを見て戦闘を開始しようとしていた。
私はそれを止めて、キョウヤさんとアキにぃに浄化のことや色んな事を教える。
ヘルナイトさんも話して、二人はそれで納得し、アキにぃもそれなら仕方がないと言って、渋々の承諾だった。
泥炭窟を潜りながら、ギルドについた。
リオナさんにゴーレスさんのことを言うとリオナさんは少し複雑に落ち込み、無理に笑って「ご報告、ありがとうございます」と言った。
そして私達は次の『八神』が一体――ライジンの浄化のため、ライジンが奉られている『アムスノーム』に向かって一歩前に進む。