PLAY01 サヨナラリアル②
色んな説明を受けて、そして受付さんから聞いた適正の結果――天族に決まった(これは変えられない)私。
長く感じたけど、まだ残っている項目があることに落胆してしまったけど、ここっまで来たんだからやろう。
最後に決めるのは……、自分のアバターの所属、ジョブ。
心の中で小さく気合を入れた後、私は受付さんに「ジョブって、何があるんですか………?』と聞くと、受付さんは『はい』とい頷いて、また液晶パネルを出して説明を始めた。
もうこれでは、完全に授業だ。
そう思ってしまうけど、今は口に出さないでおこう。
『まず最初に、所属とはジョブ……、主にゲーム内でどのような攻撃ができるかという職業です。よく聞く者で言うと、『剣士』や『魔法使い』でしょう。橋本華様が決める者は初級所属というものです』
「初級?」
『初級所属と言うものは、簡潔に言いますと見習いと同じです。最初から熟練者になれると思っている方々も多いのですが、それは現実的にありえないです。それは物語上の展開で成り立つものであり、混同してしまう思考が理解できません』
「わ、わかりました。なんかそれ以上言うと怖いので、説明をお願いします………」
受付さんの言葉を聞きながら思ったことだけど、本当にこれ以上言ってはいけない。
そんな気がしたので、私は話を変えるために説明してほしい事をやんわりと伝える。
伝えたことを聞いた受付さんは『はい』と、さっきまでの言葉などなかったかのように説明を始める。
本当にAIなんだ。切り替えが早すぎる………。
『初級所属は大まかに六種類あります。その初級所属のレベルが上がり、一定のレベルまで上げるとジョブチェンジ――上級『所属』になることができます』
「なるほど、レベル上げて、それでまた上級の『所属』を選ぶんですね………」
『正解です。まずは『戦士』についてご説明します』
そう言って液晶パネルに出てきた『戦士』の文字。
その文字を見て、一体どんなものがあるんだろうと思いながら受付さんの話に耳を傾ける。
『戦士とは主に前衛で戦う人です。攻撃要因とも云われ、アタッカーとも言われています。その戦士が上級所属になると、七つの所属に細分化されます』
「七つも?」
『はい。一つは、剣、大剣や、レイピアなどの剣技で戦う――ソードマスター。二つは、槍を装備し、戦い、前衛後衛に置いてオールマイティに戦うことができる所属――ランサー。三つは、近接特化で己の拳で戦うスタイルのモンク。四つは、モンクとは違う近接特化の所属ですが、刀を使い、即死効果が高く、攻撃も高い異国の戦士――武士。五つは武士と同じ異国の所属ですが、後衛主体のスタイルで、攪乱やサポート、連続攻撃ができる暗殺者――シノビ。六つは大きな金槌を片手に敵に大ダメージを与えることができる、殴打のスペシャリスト――大槌士。七つは攻撃もできますが、主にサポートが主力です。遠隔の攻撃ができる後衛のアタッカー。『殴鐘』と言う特別な武器を使って戦う――トリカルディーバです』
「えっと、『戦士』が『ソードマスター』、『ランサー』、『モンク』、『武士』に『シノビ』、『大槌士』に『トリカルディーバ』ですね」
『はい。続けます』
聞いて分かったけど、初級だけ決めてくださいって言う意味が分かった気がする。確かに最初から上級を選ぼうとしても、最初から迷ってしまいそうなくらい種類がある………。
他にもあるんだよね………。覚えないと。
『次は防御の要――騎士です。前衛で防御しながら相手に攻撃できるという所属。生命線の一人とも言われていますが、上級所属になると四つに細分化されます』
「今度は四つ?」
『はい。まずは盾を使った攻撃、完全なる絶対防御を張ることができる――『パラディン』。魔法攻撃、すなわちマジックスキルを跳ね返す、吸収することができる所属――『ガーディアン』。『ランサー』とは違いますが、槍を使い遠距離の攻撃と防御ができる所属――『ヴァルギリー』。防御は『パラディン』や『ガーディアン』に比べたら劣りますが、攻撃や魔法攻撃が高い所属――『聖騎士』の四つになります』
「えっと、『騎士』が、『パラディン』、『ガーディアン』、『ヴァルギリー』で、『聖騎士』………」
『パネルにも書いていますのでご安心ください。それでは続きを始めます』
「あ」
本当だ………。受付さんの言う通り書いてある。
これを見ながら時々復習していこう………。
『次は最も人気が高い魔導師です。魔導師は前衛後衛すべてに適している所属で、魔法攻撃の火、氷、水、風、雷、土、闇、光の魔法が使える所属で上級になると六つの所属になります』
「人気があるんですね………」
『はい。上級所属の説明を始めます。まず、魔法攻撃と支援魔法・状態魔法などが得意な所属――『ウィザード』。付加魔法『付加強化魔法』が得意な所属――『エンチャンター』。状態魔法『状態異常魔法』が得意な所属――『ドラッカー』。召喚魔法『術式召喚魔法』を得意とし、契約したモンスターを召還して戦う――『サモナー』。錬成魔法『術式錬成魔法』という魔法道具を錬成し、チームのサポートを得意とする――『アルケミスト』。剣技魔法『属性剣技魔法』という、武器によって攻撃が変わる奇異な魔導士所属――『ソードウィザード』の六つです』
「なるほど、魔法って、現実では使えませんからね………。皆使いたいのかな?」
『ユーザーの思考を読み取ることはできません。ですが、統計的に申し上げると、一番人気は『ソードウィザード』です』
「ほぉ」
『魔導士』の上級所属も多い………。すごいなMCO、色んなことを考えて構成しているのかな………?
『次は『探検家』という所属です』
「探検家と言うことは………、冒険して宝を」
『いいえ、橋本華様が思い描いている『探検家』ではありません。採取や探索のスペシャリスト。感知スキルも長けている『所属』です』
「………………………」
先入観で話した結果、少し恥ずかしい思いをしてしまった………。
私一人でよかった………。これは他の人には言えないよ………。
『『探検家』は特殊なスキルを使っている『所属』ですが、上級になると五つに区分され、スタイルも変わっていきます』
「そうなんですか?」
『はい。拳銃を使い、遠距離攻撃や魔法付加の攻撃、トラップなどができる――『スナイパー』。弓矢を使い、最も感知スキルに長けている所属――『アーチャー』。素材を高めに換金し、資金を使った攻撃や武器を安く購入し戦うことができる所属――『商人』。採取と採掘、伐採に関しては一番、属性魔法の付加や属性耐性魔法を得意としている所属――『シャーマー』。現実世界では犯罪ですが、物を盗み、開かない扉の開錠や鍵つき宝箱の開錠。宝箱に化けるモンスター、ミミックを見破る所属――『シーフゥー』
の五つに分けられます』
「確かに、スタイルも変わりましたね………。探検家と言えば、そうなの、かな?」
『スタイルに関しましては私が決めたことではありませんので、お応えできません』
やっぱり、受付さんでも答えられないこともあるよね………。
すごく冷静に答えているけど、やっぱり彼女はAIなんだ………。
改めてそれを痛感した後、受付さんは説明を再開する。至極淡々と、人工音声で――
『続きまして、暗殺者という所属ですが、その前にお伝えしなければいけないことがあります』
「なんですか?」
『MCOにはクリティカル攻撃の他にも、攻撃した瞬間に骨折のように折れ、その箇所が使えなくなるという部位破壊……、『ゴア』というシステムがあります。破壊されてしまうとその箇所は動くことができず頭が破壊されてしまえば即死となりゲームオーバーとなります』
「そ、そうなんですか………」
「ご安心ください。ちゃんとそれ用のポーションも製作しています』
あまりVRの世界で聞かない様な言葉。
即死するって、それって、痛みとか、は、ないのかな………?
痛みがなくても、折れたりとか、頭に攻撃を受けたら………いやだな。
そう思いながら受付さんの説明に耳を傾ける。怖い言葉を聞いてしまったけど、ポーションがあるから大丈夫って言う問題でもないけど………聞くしかない………っ。
『先程お伝えしましたが、部位破壊と言うシステムがMCOにはあります。それが得意な所属が『暗殺者』となります』
「言葉から聞くに怖い………」
『暗殺者はソロでプレイするユーザーが多く、暗殺者は自分のもう一つのアシストシステム――『影』というシステムと一緒に戦うことが多いからです。暗殺者は四つの上級所属になることができます。ソードマスターとは違い、剣やレイピアを使い不意打ちを得意とする所属――『キラー』。モンクとは違い、部位破壊攻撃を得意とし、手刀や足刀を駆使して戦う――『スレイヤー』。浄化系の魔法に長け、少ししか回復しませんが回復スキルの同じ時間操作の死滅魔法を得意とする所属――『エクリスター』。鎌を使い広範囲の攻撃、そしてドラッカーとは違った状態異常魔法『状態異常呪術』を使える所属――『リッパー』の四つです』
ここまで色々聞いて来たけど、その中でも特にこの所属は怖いな………。
そう思いつつ、これまで出てきた所属を頭の中で思い出しつつ、液晶パネルを見て確認していく。
確認して、ようやくこれで五つ目なんだと思った時、受付さんは『最後は簡単です』と言って、液晶パネルにそれを映し出した。
そこに書かれていたものは――たった二つの言葉。
『衛生士』と『メディック』
それを見て、この二つの単語を見ながら私は受付さんに聞いた。
「これは、この所属で最後………ですか?」
『はい』
私の言葉に頷く受付さん。そしてそのままパネルを指しながら言う。
『最後にご紹介する所属は――衛生士という回復特化の所属です。攻撃が全くできない所属ですが、回復と盾の魔法、状態異常回復魔法を得意とする所属。一見すれば生命線ですが、統計的には最も人気がない所属です。調査した結果ですが、回復薬などを買えばいいという人が多数いることが判明しています。このような事実もあり、近年では衛生士を敵の囮として使うユーザーが多くいます』
「そうなんですね………」
『しかし、現在改善のために修正を行っていますのでご安心を。その衛生士の上級所属は一つ、衛生士の上を行く『メディック』となっています』
何故かわからない。
何故。私はこの所属を見て、目が離せなくなったんだろう………。
衛生士は上級になっても一つの所属しかない。
それでも目が離せなくなったのは、多分――直感だ。
『戦士』は『ソードマスター』、『ランサー』、『モンク』、『武士』に『シノビ』、『大槌士』に『トリカルディーバ』
『騎士』は『パラディン』、『ガーディアン』、『ヴァルギリー』で、『聖騎士』
『魔導士』は『ウィザード』、『エンチャンター』、『ドラッカー』に『サモナー』、『アルケミスト』、『ソードウィザード』
『探検家』は『スナイパー』に『アーチャー』、『商人』、『シャーマー』、『シーフゥー』
『暗殺者』は『キラー』、『スレイヤー』、『エクリスター』に『リッパー』
色んな種類の所属があったのに、それが一気に吹き飛んで、今私は――この所属から目が離せなくなった。
何度でも言おう。私は傷つけることが人一倍嫌いだ。
だから、私は、癒すことにしようとした。
癒すことしかできないから、私はこの所属にしようと決めた。
「あの――」
私は受付さんに言う。
パネルの項目欄をタップして、私は言った。
「私は、衛生士にします。天族で衛生士で、お願いします」
直感だけのそれだけど、私は受付さんに自分で決めたことを言うと、受付さんは一秒も待たずに『了解しました』と言って、どこから出したのか――タブレットを取り出す。
『それでは最後に、あなたのハンドルネームをお願いします』
「名前、ですか?」
『はい。MCO内で使われる名前です。タブレットに記入をお願いします」
と言って、受付さんは私にタブレットを手渡し、それを受け取って画面を見る。
画面には何もない。でもペンをしまう場所を見て、そこに収納されているペンを取り出して私は考える。
どんな名前にしようか。
ハナ………だと、自分の名前をそのままMCO内の名前にしている人多そうだし、別のクラスの子に知られない程度で、逆に今から名前を考えるのは………うーん。
うんうん唸りながら考え、結局考えに至った名前を書いてそれを受付さんに提出する。
受付さんはそれを見て、一言『登録完了しました』と言って、私を見つめて言う。
『改めまして――ようこそ『ハンナ』様。素晴らしいMCOライフを』
言い終えると、受付さんの体がどんどん白くなり、そのまま光となって消えていく。
まるで今までが幻だったかのような消え方だったから、鮮明に覚えている。
そしてそれを終えた後、ゴーグルを取って、そのままベッドにダイブして寝てしまったのも、しっかりと覚えている。
疲れもあったけど、なんだか新鮮な時間にも感じられる日。
その日――私はアバター登録を完了した。
長い長い登録準備で決まったアバターは……。
HN:ハンナ。種族:天族。所属:衛生士。
後に、衛生士からメディックになって、今に至ります――