PLAY65 BATORAVIA BATTLE LOYAL!Ⅳ(戦う理由)③
「っっ! っと!」
ボジョレヲは構えを解かずに驚きながらも冷静な心を持ってセスタと共に敵と相対した。
遅まきながらの戦闘開始だ。
迫り来る暗殺軍団団長のピステリウズはグローブの秘器の爪を急速に伸ばし、その状態のまま彼は大きく手を広げながら駆け出す。
ボジョレヲ達に向かって駆け出し、十指を大きく広げながらどんどん二人との距離を詰めていく。
それを見ていたセスタは「おっ!」と驚きながらも、片手に持っていた左右に刃がついている――まるで三日月のような形をした鎌をぐるんっと回し、彼は迫って来ているピステリウスに向けて、その鎌を向ける。
両手でしっかりと持って、横にそれを振るおうとしながら――彼は腰の捻りを酷使するようなイメージで、小さな声でこう呟いた。
否――スキルを言った。
「『状態異常呪術――『麻痺の鎌』」
と言った瞬間――セスタの鎌に纏われる黄色の靄。
それを見ていたボジョレヲははっと息を呑んで、すぐにその場から離れるように後ろに後退する。後退しながら彼はセスタのことを見て思う。
一回だけ――彼の攻撃を受けてしまった時のことを思い出しながら……、彼は思った。
――セスタのスキルの配分は鎌スキルレベル5、そして影スキル10に……、呪術スキルが8っ! つまるところ、彼の呪術に当たった瞬間、高確率で状態異常になるということっ!
――ですが、セスタの鎌の威力とリーチよりも彼が従えている影の件もあります! 迂闊に近くにいてはいけない! 巻き添えになってしまう!
そう思いながら、ボジョレヲはセスタからいち早く、そして一目散に離れていく。とんとんっと、後ろに跳んで後退しながら……、出来るだけ範囲外に向かって――
「?」
その光景を見て首を傾げて横目で見ていたピステリウズは、ボジョレヲの行動を見ながら疑念を抱いた。
――何をしているんだ……? 何故離れていく……? 共闘するんじゃないのか?
と思いながら、ピステリウズは再度セスタの方を見ると、セスタは横に構えた鎌を持ちながら、彼は目目の前を――己のことをじっと睨みつけた状態で、彼は叫ぶ。鎌のスキルを出しながら、彼は言った。
「出ておいでぇ~っ! 『陽気な南瓜道化』~ッッ!」
その言葉と同時に、セスタの足元の影から何かが這い出るように、『ゴポゴポ』と気体を排出するような音を出しながらその黒い液体がどんどんセスタの背後で、背中越しで肥大して、形を形成していく。
ごぼごぼとどろどろの黒い液体が宙を舞い、ピステリウズにその鋭く光る眼光を見せつけながら、セスタの影はどんどん形を整えて姿を現していく。
それを見て、ピステリウズはセスタ背後に出てきているそれを見た瞬間、はっとして急かしなく動かしていた足を急に止めた。
『キキッ』と言うブレーキ音を出しながら止まる。
そして見上げながら警戒心を強くして、手についている己の秘器を構えながら思った。
――あぁ……。あれは確か……、冒険者が使う『影』と言う謎の力か……。
――影と一心同体になりながら戦う……。一人なのに二対一のような感覚……。部下が言って……、そしてコテンパンな姿で俺の前に現れたな……。
――まぁ……、名前はプレートに書かれているから……、あとで見て思い出そう……。
そう思いながら、ステリウズは懐に入れている何も刻まれていないプレートを音と重さで確認し、そしてあることを認知してから彼はジャキリと伸びてしまった秘器のグローブをセスタ――の頭上にいる肥大して、そのまま凝縮されてしまった影を見て構える。
影はどんどんと形を形成し、そして色を浮き上がらせながら、セスタの影はセスタの肩に乗って――
『ケケケ』と、子供の声で陽気に笑いながらピステリウズのことを見た。
背丈で言うとむぃよりも小さく、そしてアクアカレンと同じくらいの体格の影だった。
頭は南瓜頭で、黒い布と首元には赤と白で彩られた大きめの蝶ネクタイで体を覆い、両手の白い手袋は小さな手とは不釣り合いに大きく、黒く尖っている靴も小さな体とは不釣り合いに見えてしまうようなアンバランスさを垣間見えてしまう。更に言うと、その小さな南瓜お化けが持っている武器も異様で、小さな南瓜お化けを取り囲むようにフヨフヨと浮いている武器は――黒い炎で覆われたお菓子だった。
お菓子と言う言葉で思い浮かべるのであれば……、クッキー、キャンディー、ケーキ、マフィン、ぺろぺろキャンディー等、よくハロウィンで貰いそうなお菓子が黒い炎の中に閉じ込められているかのように空中をフヨフヨと浮きながら、南瓜の影――『陽気な南瓜道化』とセスタの周りを飛び交っていた。
「南瓜か……、何なんだそれは……。まさか俺を倒すための切り札とでも言いたいのか……? それなら無駄な足掻きと思え……」
ピステリウズは『ジャキリ……』と己の黒い爪をセスタ達に見せつけながら、若芽髪で隠れた口元をにぃぃぃっと緩い弧を描くように、不気味に微笑みながら彼は言った。
「そんな燃えカス同然の食べ物で俺を攻撃しようとして……、その隙を突いて鎌の攻撃を仕掛けようとしているんだろう……? それこそ無駄な足掻きだ……。俺のこの秘器は暗殺に特化されていて……、そして他の暗器とは違った特徴を持っている……。お前も元々は暗殺者……、何だろう……? そんな小さな影でどうやって戦うんだ……? 仲間も離れてしまった……。これだと俺の圧勝となってしまうかもな……。ふひひ」
「………いんやいんやぁ~」
「?」
ピステリウズの言葉に耳を傾けていたセスタは無言のまま彼のことを見ていたが、ピステリウズの言葉が言い終わると同時に、セスタはにっと口元にゆるい弧を描きながら彼はこう言った。
負けることを恐れていないような、彼特有のマイペースな笑みで、彼はこう言った。
「そんなことないよぉ~? だって『陽気な南瓜道化』は凄く厄介なんだよぉ~。おれでもたまに制御ができないかもって思うくらい厄介なんだよ~。まぁ~、そう感じたのはこの世界がこうなってからだけど~、それでもピステリウズだっけ~?」
「! なんだ……?」
セスタはピステリウズのことを呼ぶと、呼ばれた本人は驚いた目をしてセスタのことを見たが、すぐに平静に顔を戻しながら彼は聞く。
その言葉を聞いたセスタは、笑みを崩さずにピステリウズのことを見ながら言った。
肩に乗っている『陽気な南瓜道化』のことを見ないで、『陽気な南瓜道化』がセスタの鎌を見てその方向に向かってふわりと飛ぶ光景を見ずに、彼は言った。
言った――それは……、忠告であった。
「……………あんまり冒険者のことを甘く見ていると、痛い目を見るよ?」
「?」
セスタの言葉を聞いたピステリウズは、頭に疑問符を浮かべながらセスタのことを見た瞬間、すでにその場所から移動して、セスタの鎌のところにいた『陽気な南瓜道化』は、黄色い靄で覆われているセスタの鎌に手を伸ばして、それに『ひたり』と触れた瞬間――『陽気な南瓜道化』は少年のような音色でこう言った。
否――唱えた。
『『大きなおもちゃ』』
と、『陽気な南瓜道化』が触れてそしてその言葉を言ったと同時に、セスタが持っていた鎌の刃が僅かに白く光りだし、そしてすぐに――
ドォンッッ! と、鎌の刃だけが肥大したのだ。否――わかりやすく言うと……、大きくなったのだ。
人間が持てる柄と、巨人族が使うような大きくて不釣り合いな鎌を持ちながら、セスタは構える。腰に力を入れ、踏ん張りながら、セスタは振るう体制を整えようとする。本人はさほど重くないような面持ちだ。
「ふふふ~んっ!」と陽気な笑みを浮かべて、余裕のそれを浮かべながら、彼は武器を構えている。
「っっっ! な……、あぁ……っ!? ……っっ!」
それを見て、そして絶句してしまったピステリウズは、突然大きくなってしまったセスタの鎌を見て、一瞬混乱したが、すぐにそれは解消された。と言うよりも、思い出して『そうか』と合点したのだ。
パズルのピースのように合点したことを嵌めていきながら、彼は思った。
なぜセスタが鎌を構えた途端、ボジョレヲは一目散に逃げたのか。
それは簡単な話。セスタが出す影……『陽気な南瓜道化』が使うスキルから、セスタが繰り出す攻撃を受けないように、一目散になってその場から離れたのだ。
巻き添えにならないように、その場から逃げたのだ。
「……………っ! そう言うことか……っ! 迂闊だったのは……、俺の方……っ!」
「――そぉおおおおおおれええええええええええええええええええええええ~っっっっ!」
ピステリウズはそのことに遅まきながら気付き、そしてセスタとボジョレヲのことを憎々しげに睨みつけた瞬間、セスタは今まで構えのまま止まっていた動きの時間を動かす。
要は――持っていた鎌を反時計回りに動かした。ぐるんっと腰と足、手と腕を使って、体中の筋肉を酷使しながら彼は鎌を大きく振り回した。
店を、椅子を、テーブルを巻き込むような攻撃を、ピステリウズだけに集中攻撃する様な攻撃を繰り出したのだ。
――がしゃんっ! ばぎんっ! ドガァ! べきりっ!
と、破壊音を辺りに飛ばして鳴らしながら、彼はその破壊の後悔を後にし、今はピステリウズのその鎌の攻撃を当てることに集中する。
かすれば高確率で『麻痺』になるのだ。それで体中にロープを巻き付けるか、ボジョレヲのスキルを使って手足を追って四肢部位破壊をすればセスタ達の勝利なのだ。
――神様すみません~っ! 店の皆さん家を壊してごめんなさい~! 今はこの幹部を倒すことに専念させてください~! 後でお店の人に謝っておきますからぁ~、今は戦いに専念することをお許しくださぁ~い!
セスタは心で念じながら彼は謝った。
ここにいない店員や店長も然りだが、彼が今現在謝っている存在は――神。
彼が最も裏切ってはいけない存在でもある……、バトラヴィア帝王ではない普通の神様に対して、彼は己の愚行を非礼しながら攻撃を繰り出そうとしていた。
それを見て、ピステリウズは驚いた顔をしながらピステリウズから見て左から迫りくるそれを見て、すぐに彼は歯を食いしばって、万事休すのような顔をして大きくなった鎌を見ていた。
――これでぇ~! おわりぃ~! と、セスタは大きくそれを振り回して、そして速攻で終わらせようと彼は鎌を振り回して一周回ろうとした。
が。
「――じゃなくて……。お前たちの方だ……」
ピステリウズはその顔をすぐに消し、そして右手の秘器のグローブをそっと左に突き出して、ぐっとその手を猫のように丸めた。猫の手のように人間の手を丸めながら、彼はその手を左に――しかも迫りくる鎌を見ずにそれを突き出した。
「っ!?」
セスタは驚いた顔をしてピステリウズを見たが、そう簡単にその鎌を止めることはできない。むしろ止めることなどもう遅かった。
重さを利用してのスィングなので、簡単に止めることなどできない。ゆえに動きのままに、流れに乗るように彼は動きを止めないで、そのまま……。
ガァァァンッッッ! と――
大きな大きな金属音を出しながら、セスタはピステリウズに向けて攻撃を繰り出した。びりびり来る衝撃の音波が風圧に変わり、セスタとボジョレヲ、そして『陽気な南瓜道化』の服をはためかせながら彼らに襲い掛かる。
受けながら、セスタは疑問を抱いた。
先ほどの攻撃の音と、手応えを感じながら、彼はこう思った……。伸ばしていない音色で、彼はこう思った。
――手応えがない。止められたかのような衝撃を感じた。そしてあの音は……、違う。
手応えがない。そして違う。
それが指す意味とは何なのか、それは今のセスタにはわからなかったが、ボジョレヲは金属音を聞いた時点で嫌な予感を想定しながら、彼は風圧が弱くなったと同時に、ピステリウズがいるであろうその場所をすぐに目を向け……。
「………………っ。……………っ!?」
ボジョレヲはひどく目を見開いて、そしてピステリウズがるであろうその場所を見て、彼は言葉を失ってしまった。
驚きのあまりに失ってしまった。
そのような反応をしたのはボジョレヲだけではない。鎌を振るい、手応えがないことに気付いたセスタも、その光景を見て言葉を失いながらその光景を見て言葉を失っていた。
二人が見た光景……、それは……。
「ふひひ……。ふひひ……っ。ふひひひ…………っ」
ピステリウズは無傷の状態で笑みを浮かべていた。しかもセスタの鎌を突き出した右手で――右手のグローブに嵌めていた爪で止めていたのだ。
『ガギギギッ!』と言う切削音を出しながら、それを止めていたピステリウズ。
その光景を見ていた二人は絶句し驚愕のそれでピステリウズを見た。
が……、そんな二人とは正反対に、『陽気な南瓜道化』はセスタの肩に乗りながら頭から何かを吹き出し、『ゲゲゲーッッ!』と怒りを露にしていた。
プンスコと足と手をぶんぶん振りながら、『陽気な南瓜道化』は子供のように怒りを露にしていた。
驚愕の二人と錨の影を見ていたピステリウズは、その光景を見て嘲笑いながら止めていた手とは正反対の秘器の右手で、セスタの鎌を『がしり』と掴みながら、彼は「ふひひ……」と、不気味に微笑んでこう言った。
セスタ達に向かって――形勢逆転したこの立場を使って、彼はこう言った。
「だから言っただろう……? 迂闊だったのは……、お前達……」
と言って、ピステリウズは止めていたセスタの鎌を掴んだと同時に、自由となった左手を貫手の形にして、そのまま真正面にいるセスタに向けてその手を――黒い刃がついたその手をセスタの目元に向けて、彼は鎌から素早く手を離して駆け出しながら、セスタにそれを繰り出す!
『シュンッ!』と言う空気を切る音を出しながら、彼はセスタの目を攻撃するように、暗殺者らしいやり方で、セスタを殺そうとするピステリウズ。
「………おぉ~っ! んんんんんんんんんんんんんんん~っ!?」
驚いて後ろに体を逸らそうとするセスタ。
それでも頬を深く抉る様な素早さ。到底躱すことなどできない。更に言うとこの状態になったことを後悔しながらセスタは攻撃を躱そうとした。
今更変えても遅いその躱し方をしながら……、あまりの焦りに判断が鈍ってしまったことを後悔しながら、彼は避ける。
だからと言って、間違ったからここで死を覚悟することは絶対にしなかった。
待っている人達や、先に空に行ってしまった人たちに顔を合わせることができない。
ここで死んではだめだ。
そう悟ったセスタは、必死になってピステリウズの攻撃を避けようと必死になってブリッジをするように体を逸らす、得物から手を離さないで、そのままピステリウズの攻撃を避けて、顔を元の状態に上げたと同時に頭突きを繰り出そうとして、彼は背骨に注意しながら逸らす。
逸らして、躱して、そして反撃に転換しようとした瞬間……。
――ゴシャッッ! と、鈍い音がピステリウズの脇腹から聞こえ、『メリメリ』と言う音を奏でながら彼はかふりと肺の中の空気を一気に排出した。
微量の血液と共に、それを吐き出した。
それを見たセスタは驚いた目をして通過しようとしていたピステリウズのことを見降ろす。
ピステリウズは腹部に受けた衝撃を感じ、そして続行一時的に中断を決断したのか、彼はセスタの攻撃をやめて、即座にその場から離れながら跳び退く。
空中でぐるんっと一回転しながらピステリウズはセスタから離れる。十指につけられた黒い爪を見せつけながら、暗殺者らしい狂喜の笑みを浮かべながら、彼は見た。
背中を反らしたせいで耐えることができず、そのまま元に戻ってしまった鎌を持ちながら尻餅をついて転び、そんな彼の肩にしがみついている『陽気な南瓜道化』
そしてその二人の前に立って、左手を突き出して構えているボジョレヲのことを見ながら、ピステリウズは思った。
――あの男……、異国のケンポー使いか……。
――俺の動きを見て……、且つ気配察知に長けている俺の領域に気配を殺しながら入って……、そのまま俺の懐に向けて攻撃を繰り出す……。
――かなりの使い手の様だ……。しかも強い……。おかげで肋骨何本か折れちゃったな……。ふひひ。
と思いながらピステリウズは蹴られた箇所を見て、そこから感じる僅かな痛覚を体感しながら、次に視線をボジョレヲからセスタに切り替える。尻餅をついて痛がりながら立ち上がろうとする彼を見ながら、ピステリウズは思った。
――あの男もやばいな……。秘器で止めなければ俺の首は持っていかれていた……。
――殺すつもりはなかったかもしれない……。が……、あれは危険だ……。この二人の攻撃は危険だ……。
――ケンポー使いは気配を殺しながら急接近してくる……。
――鎌の男はあの影のせいで攻撃の先があまり見えない……。
――危ないけど……、それでも……、俺の敵ではないけどね……。ふひひ……。
そう思いながら、強敵と認識したとしても、ピステリウズは負けるという被害概念がなかった。むしろそんなことはあり得ないと思いながら、彼はすっと立ち上がって、ボジョレヲのことを見てすぐ……。
ピステリウズは攻撃を再開した。
ダッッ! と、ボジョレヲに向かって一直線に駆け出し、そして右手を大きく振り上げながら迫り、ボジョレヲの前に来た瞬間――ピステリウズは開かれて切り裂く体制にしたその手を……、ボジョレヲに向けて三枚おろしにするように一気に振り下ろした。
猫が人の顔を引っ掻くように、彼は体を切り裂くように振り下ろそうとした瞬間……。
セスタの肩にしがみついていた『陽気な南瓜道化』は、そんなピステリウズのことを見て怒りを南瓜頭越しで露にしながら、フヨフヨと浮いている飴玉を動かしながら『陽気な南瓜道化』は叫ぶ。
『『あめだま弾発射』ッ!』
と言ったと同時に、『陽気な南瓜道化』が操っていた色とりどりの飴玉がピステリウズに向かって素早く発射されたのだ。
――バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッ! と発射音を出しながら、『陽気な南瓜道化』はそれをマシンガンのように発射する。
その光景を見ていたピステリウズは驚くことも逃げることもせず、むしろ攻撃を続行しながら、彼は……。
ジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキッッッ!
飴玉の弾丸をその場で切り刻んでしまったのだ。
ばらばらに、粉々に、飴の結晶を作りながら彼はそれを幾度となく切り刻む。
切り刻んで、驚いている『陽気な南瓜道化』とセスタのことを見ながら彼は内心緩く笑みを浮かべていた。
何故? それはピステリウズにしか知らない事実で、彼は暗殺軍団団長に上り詰めた理由は、彼が持っている秘器が理由だった。
――ふひひ……。無駄だよ……。そんな武器を使おうと……、どんな攻撃を仕掛けようと……、俺のこの『バランバラン怪人』はすべてを切り裂く……。
――俺が使っているこの秘器の爪には特別なものを取り付けている……。それは魔王族が最も毛嫌いをしている鉱石――封魔石……っ!
――壊せない代物を特別なもので研いだ特注の秘器……ッ! 俺にしか扱えない代物で俺とあのジジィしか知らない事実……っ! これさえあれば攻守共にできる……っ! 誰も壊せない代物を使う俺なら……、こんなこと楽勝だ……。そして……。
――帝王様のために……、何が何でも俺はこの二人の名を聞いて殺し……、そして名を刻んでやる……っ! 俺の名誉のために……、俺の戦う理由をこいつらに絶たされなうように……、ここで殺すんだ……っ!
そう思ったピステリウズは、切り刻み終えた飴の弾丸を『くしゃり』と踏みつけながら、再度ボジョレヲに向かってもう一度右腕を上げて切り刻もうとする。
「っ!」
ボジョレヲはそれを見てすぐに左手の手刀でピステリウズの左手首にそれを打ち付けて強い衝撃を与えたと同時に、右手の拳をピステリウズの右胸に向けて――彼はその拳を……。
――どんっ。
と、軽くそれを打ち付けた。
それを見て、セスタはまずいと思ったのか、鎌を支え棒のようにして立ち上がりながら、彼も戦いに参加しようとした時……。
「が……っ!? ……ば……っ!?」
ピステリウズは肺から声を出すように、野太い声を上げながら彼は咳込んだ。
その光景を見て、セスタはぎょっとした面持ちでそれを見て、ボジョレヲの冷静の中に隠れる真剣で僅かに零れる怒りのそれを見ながら、彼は驚いていた。
ピステリウズはその衝撃を受けて後ろによろけながらボジョレヲ達から離れると、ピステリウズはボジョレヲのことを見ながら、荒く苦しいような息遣いをしながら彼は聞いた。
「お……、お前……、何をした……? なんの魔法を使ったんだ……っ!?」
その言葉を聞いていたボジョレヲは、そんなピステリウズのことを見ながら……、くすりと整った顔で微笑んでから彼はこう言った。攻撃をした右手を見せつけながら、彼は言った。
「なんの、種も仕掛けもないただの拳です。それをあなたに与えただけです。ちょっとしたコツを使って強い衝撃をプレゼントしましたがね」
「コツ……ッ!? 魔法も使わないで……、あの衝撃……っ!? くそ……っ!」
ピステリウズは立ち上がり、そしてボジョレヲ達のことをじろりと睨みつけながら彼は言った。
痛みで感情の抑制が狂ってしまったかのように、彼は二人のことを指さしながらこう言った。
「お前等に負けるものか……っっ! こんなところで負けることは……、『盾』として大恥……、何の覚悟も……、何の理由もなくここに来た奴等に……、俺が負けるわけがないんだ……っ! 俺は『盾』……ッ! 勝つことこそが存在理由……。帝王様のために戦ってその罪人の魂を捧げることこそが……、俺の戦う理由……っ! 帝王様のために戦い……、己のために戦うことこそが俺の存在理由にして戦う理由なんだ……っ! 何の覚悟もなく帝国に攻め入ろうとしていた反逆者相手に……、俺が負けることなど、ありえないんだ……っ!」
ピステリウズはボジョレヲとセスタのことを指さしながら言うと、それを聞いていた二人は、無言になりながらピステリウズのことを見て、そして二人は目をすっと閉じてから――こう言った。
最初に言葉を発したのは――ボジョレヲだった。
「………何の覚悟もない。何の理由もない? それはあなたの見当違いです。私達はちゃんと帝国の野望を阻止するためにここに来たんです」
「でも~、俺達が戦う理由っていうのは~、それだけじゃないんだよな~」
セスタはボジョレヲの言葉に繋がるように言い、彼はボジョレヲの隣に歩み寄りながら続けてこう言う。
伸ばしがない音色で彼は歩みを止めて、そして鎌を肩に乗せながらこう言った。
「他にもあるからこそ……、ここで死ぬことはできない。やらないといけないからこそ死ねないんだよ」
「真実を聞くまでは――死ねないのですよ。私とセスタは特に、死ぬわけにはいかないんですよ」
二人は言う。
同じ思いを抱えているようなことを言いながら、二人は首を傾げて「……何だと……?」と言う声を上げているピステリウズに向けて、はっきりとした音色で何かを固めているかのような音色で言った。
◆ ◆
セスタとボジョレヲ。
二人は生まれも育ちも違う存在で、彼らが初めて出会った場所はこのゲームの世界。しかもこのような事態になってから初めて出会った。
何もかもが違う彼らではあったが、それでも運命に導かれるように二人は巡り合った。
同じ目的を抱えながら二人が出会った。
レンとノゥマ。そしてアクアカレンと出会いながらも彼らは探していた。
生きる意味でもあり、戦う理由となっているそれを追いながら彼らは半生を過ごしてきた……。
――これから語られるのは……、そんな接点が一つもない二人が巡り合うまでの二人の回想である……。




