PLAY62 BATORAVIA BATTLE LOYAL!Ⅰ(開幕)②
「んん? 儂のことを知っておるのか? 儂はお前さん達と出会ったのはこれが初めてじゃが……。どこかでお会いしたかのぉ? 戦姫のご令嬢様……。と言っておいた方がいいかのぉ?」
Drはセレネさんのことを見ながら首を曲げて、そのまま回転するのではないのかというくらい首を曲げながら言う。
淡々として、そしてセレネさんのことを品定めする様に見ながらDrは聞く。
その言葉を聞いていたセレネさんは一人でその場にいながらぎりっと右拳を作り、その拳を震わせながら彼女はゆっくりとその手を動かす。
その光景を見た私は、はっとしてすぐに行動に移そうと手を伸ばす仕草をしようとした。
しようとした時……、そんな私の行動を遮るようにある人がDrに向けて声を上げたのだ。
ジャキリと――銃を構える音を出しながら……。
「――とまれ外道者。」
ダイヤさんはセレネさんから少し離れたところで銃を構えながら、鋭い眼光でDrのことを睨みつけていた。器用に左手で拳銃を構えながら。
その光景を見て、近くにいたメウラヴダーさんとティズ君がダイヤさんのことを見ながら驚いた顔をしてダイヤさんのことを見て、メウラヴダーさんはそんなダイヤさんに向かって宥めるようにして「おい……っ! 今は逆撫でするな!」と小さい声で言うけど、ダイヤさんはその言葉が耳に入っていない様子でDrのことを睨みつけながら銃を構えていた。
仁王立ちの状態で構えていた。
セレネさんはダイヤさんの声を聞いて激情しかけていたその感情を一旦押し殺し、ダイヤさんの方を振り向きながら彼の名を叫ぶと、それを聞いていたDrは「んん?」と、まるで梟のように首を動かして、首の骨を『ボキボキ』と鳴らしながら彼はこう言ってきた。
「ほほぅ? 儂のことを外道と見なすお前さん……。顔立ちやその髪の形。あとはその隻腕……」
隻腕。その言葉を言った瞬間ダイヤさんは鋭くなっているその眼光を更に鋭くさせて、拳銃の引き金に指をさし入れながらダイヤさんはDrのことを睨みつける。
じゃきりと音が鳴るその拳銃の音を聞いたDrは、ダイヤさんの顔を見てまた『ごききっ』となるくらい首を動かし、梟のように首を動かしながら彼は無表情だったその顔に彩りと言う名のそれを入れた。
笑みと言う名の――狂気の微笑みを刻むと、Drはダイヤさんのことを見ながら彼はお腹から声を出すようにしてこう叫んだ。
「そうか――そうなのか! あの時儂の交渉を断ったイギリスの『世界三大富豪』! 左翼――クゥエッゼルム家の役立たずなSPの一人か! ほほぅ! ほほぅ! よもや隻腕となった今でも儂のことを恨んで立ち向かうのかっ! ほほぅ! ほほぅ! ほほぅほほぅ! 何という執念じゃ! これはどのような感情が起伏しているのか! 気になるのぉ気になるのぉ!」
「声を聞いているだけで反吐が出そうだ……っ!」
顔を顰めてDrのことを睨みつけるダイヤさん。
心なしか拳銃が僅かに揺れた気がした。
Drの言葉を聞いて苛立ちを覚えたのは――ダイヤさんだけではない。
ルビィさんも、ガーネットさんも、フォスフォさんも、セレネさんも――赤いもしゃもしゃをDrに向けて放ちながら睨みつけている。
昨日会ったばかりで詳しいことは全然知らないけど、すごく大人らしい雰囲気と落ち着きを兼ね備えていることだけは分かっていたけど、ふわっとしている印象がなくなってしまったかのように、ルビィさんも怒りの表情をDrに向けている。
それくらい――Drに対して異常な怒りを抱いているんだ……。
そんな光景を見ていたDrは『ゴキゴキ』と鳴らしていたその首の回転をやめて、腰に当てていたその右手をすっと前に出して、その手先を指をさす形に変えて、Drはセレネさんのことを指さしながら――彼はけらり。けらりと下劣な笑みを浮かべながらこう言ってきた。
私達のことを無視して、彼はセレネさんたちに向かって彼はこう言った。
「そうかそうか。戦記のご令嬢様はクゥエッゼルム家の跡取り娘にして末裔のセレルディーネルナ・エリセル・フィーフェ・クゥエッゼルムか! なるほど面影がある! あの時出会ったのは確か何十年も前のことじゃったな! 小さかった幼稚にして無力な子供がこんなにも変わるものなのか! 時間と言うものは恐ろしいのぉ!」
「十五年前だ。貴様が私の親を屠ったのは……、十五年前だ……っ!」
Drの言葉を聞いたセレネさんは、ぎりっと歯を食いしばり憎々しい音色を口から吐き出しながら言う。
その声を聞いていたみんなは、驚いた顔をしてセレネさんを見ていたけど、私は一回聞いたことがあるのと、彼女の過去を聞いて知っていたので、それほど驚くことはなかった。
でも……私からは背中しか見れないその姿だったけど、その背中から零れだすもしゃもしゃが、私にセレネさんの心の声を知らせてくれる。感情を知らせてくれる。
Drに対する憎しみと怒りが、彼女の体を包んでいるその光景を見た私は、ぐっと胸のあたりで握り拳を作って、不安を押し殺しながらその光景を、見ることしかできなかった。
そんなセレネさんのことを見ていたDrは、平然とした顔で「そうじゃそうじゃ」と言いながらセレネさんから視線を逸らす。逸らしながらDrは――セレネさんの背後にいたルビィさんのことを指さしながら彼は言おうとしている。
本当なら……、ここで話を区切ってDrに向かって指をさしながら怒鳴ることが普通の対応なのかもしれないけど、みんなそれをしなかった。ううん……。できなかった。のほうが正しいのかもしれない。
ちらりと、私は近くにいるアキにぃやシェーラちゃん、そしてダディエルさんやクルーザァーさんたちのことを横目で見る。見ると……、アキにぃ達は冷や汗を流しながらこわばっている顔をして身構えている。
身構えているだけ。攻撃するそぶりも、止めるそぶりもできない。
みんな強張った顔のまま金縛りにあっているかのように、その場所から一歩も、一ミリも動けずにいた。
異常で異質なその光景を見て、私は再度Drのことを見て、私は思った。Drを見てこう思ってしまったのだ。
Drと言う男が……、Drと言う存在が――よくわからない。と……。
この言葉だけなら全然情報量もないけど、今目の前にいる私でも……、本当にこの『わからない』血う言葉が出てきてしまうくらい……、Drと言う存在がよくわからなかった。怖いくらいわからなかったのだ。
私がわからない。怖いと思った理由……、それは簡単な話……。
もしゃもしゃが全然見えないのだ。
Zが放っていた透明なもしゃもしゃは、空気の流れでそれが透明なもしゃもしゃだということは分かっていた。
でも――Drは違う。
今まで見たことがないような……、というか初めて見るその現象に、私は驚きを隠せずにその光景を見ていた。
出会ってから全然見えないそのもしゃもしゃを感じて、私は思わず隣にいるヘルナイトさんのマントをきゅっと掴んでしまう。震える手で、掴んでしまった……。
Drはそんな私やみんなのことを無視して、ルビィさんのことを指さしながら彼はこう言ってきた。
「お前さんも覚えておる覚えておる! あの時颯によって足を切られてしまった男女の輩じゃな!」
「あらぁ覚えておいてくれてアリガト。でも私はあなたのこと全然好きじゃないし、会いたくない気持ちが勝っていたわ。足は今でも義足だからご心配なくよ」
Drの言葉を聞いたルビィさんは、怒りを含んだ笑みを浮かべて右足をとんとんっと手で叩きながら言うルビィさん。
それを聞いていたDrは面白くないような顔をして、すぐにルビィさんから視線を逸らしながら、今度はガーネットさんのことを見て指をさしながら――彼は興奮を一旦冷ましてからこう言ってきた。
「お前さんのことはあまり覚えておらんな。というか印象が全くない。あの時は確か……、ええっと……。そうじゃ! お前さんはあの時生まれたての小鹿のようにぶるぶる震えながら固まっていたあの役立たずじゃな! そうじゃな!?」
Drはガーネットさんのことを小馬鹿にするようにぐるんっと顔を動かして首を回しながら聞くと、ガーネットさんはそれを聞いて歯を食いしばり、口の端から微量の血を零しながら、彼女は前に出ようとする。
でもその光景を見ていたフォスフォさんがガーネットさんに向かって『ヤメロッ』と制止をかける。
その声を聞いたガーネットさんはフォスフォさんのことを見上げて振り向きながら――
「止めるな! この男を殺すことこそ――あの人達の願い! 止めることは邪道!」と、独特な言い方をするガーネットさん。
しかしそれを聞いていたフォスフォさんはガーネットさんのことを見降ろしながら、ドラゴンの姿からは想像できないような冷静な振る舞いで、彼はガーネットさんに向かってこう言った。
『相手ノ言葉ニ乗セラレテハイケナイ。己ノ判断ヲ鈍ラセテシマウ、第一オ前ノ行動一ツデ姫様ヲ危険ニ晒シテシマウ。今ハ落チ着ケ。ガーネット……。今ハ己ヲ強ク保テ』
「――っ! っち!」
フォスフォさんの言葉を聞いたガーネットさんは、苛立つことがよくわかる様な舌打ちをしてからそっぽを向くと、それを聞いていたDrは口元の髭を手櫛で梳きながら、彼はフォスフォさんのことを見て「ほほぅ」と声を上げてから――
「お前さんは……。なるほど! お前さんは切り刻まれて血まみれになってしまった大男SPか! 体が硬かったからか、この世界で言うところの四肢部位破壊が出来んかったあの男か! いやはやどんな訓練をすればそんな頑丈な体を手にするのか、今にして思うと不思議じゃな! その耐久力は伊達ではないな! そしてその姿はアークドラゴン:アクアフォルム! なるほどなるほど……! MCOの種族鑑定で最も珍しい種族になるとは――お前さんは何か特別なものを持っているようじゃっ!」
『…………………………最初ニ出会ッタ時ト変ワラナイ言動ダナ』
Drの言葉を聞いていたフォスフォさんは、ドラゴンの姿の状態で威嚇の唸り声を上げる。ガーネットさんも握り拳に力を入れながらDrのことを睨みつけていた。ただじっと、動きたいという感情を押し殺すように、足をぶるぶると震わせながら耐えていた。
その光景を見て、そして言いたいことを言い終えたのか、Drはふぅっと息を吐いてセレネさん達のことを見ながら、彼は今までの興奮が嘘のように、急激にその感情を冷ましてから――彼はセレネさんたちのことを一瞥してからこう言ってきた。
「ふむ……。よもやこんな世界で、こんなところでお前さんたちと再会を果たしてしまうとは、運命と言うものは残酷と言うが、儂からしてみれば気まぐれでわがままで、何より他人の反応を面白がっているようにも見える。だからこそ運命の女神と言うものがいるのかもしれんな。運命の女神と言うものは気まぐれな性格なのやもしれん」
「…………さっきから何をごちゃごちゃと」
Drの独り言のような言葉を聞いていたクルーザァーさんは、苛立つ感情を抑えているようなくしゃり顔でDrのことを睨みつけていたけど、そんな顔を見て、そしてようやくと言うべきなのだろうか……。Drはようやくセレネさん達以外の存在に目を向けた。
セレネさん達以外の私達にようやく気付いた。の方が正しかった。
Drは首をまた梟のように『ゴキゴキ』と傾げながら、今度は私達の方に視線を向けてみる。その光景を見ていたギンロさんは小さな声で「気持ちわりぃ……」と青ざめながら見ていた。そんなギンロさんのことを無視しながら、Drは顎に手を当てながらセレネさんのことを再度見ながらこう聞いてきた。
「ほほぅ……、クゥエッゼルムの跡取り娘よ。背後にいる輩共は一体どちら様なのかのぉ? まさか親を殺した儂に対しての当てつけ……、いいやさ。儂を殺すために雇った用心棒……、か。暗殺者かの?」
その言葉を言った瞬間、私とダイヤさん達以外の顔に驚愕のそれが浮き上がって、顔と体をこわばらせていた。でも――私もそのことについて聞いたときは驚きを隠せなかった。だから驚くことは普通のことなんだ。
そして――自分がやってはいけないことをしたことをさえ平然と言うDrは……、異常なんだ。
それを聞いたボルドさんは驚きと怒りを混ぜたその表情でDrのことを睨みつけながら、彼はこう言ってきた。
「殺したって……。なんで殺したんだっ!? 二人は、セレネさんの親は何もしていないじゃないかっ!」
「いいやしたぞ。儂の商談を断った。だから面倒と見て息の根を止めたんじゃ。儂が効率よく稼げるような機会を提案し、その提案の技術をサポートしてくれと言ったのに、あ奴らはその提案を蹴った。世紀の大発明を断ったのじゃぞ? 儂と共に有名になれるチャンスを蹴った。どうもあの二人と儂はソリが合わない様じゃ」
Drは肩を竦めながら呆れるようにして言うと、それを聞いていたティズ君が、愕然とした顔をしてDrのことを見ながら、小さな声で、震えるようにこう言った。Drに聞こえないような音色でこ呟く。
「……それだけで……? そんな自分勝手な理由で……?」
「Zやアクロマが可愛らしく見えてきたぜ……っ!」
「どういう思考回路なのかは考えたくない。だが……、セレネたちのことを考えると怒りが収まらないな……。こんな外道に無慈悲なやり方で殺されてしまったと思うと……」
「虫唾が走ります。あのくそ帝王と同等に虫唾が走ります……っ! 反吐が出るっ」
ティズ君の言葉を金切りに、ガルーラさん、メウラヴダーさん、そしてティティさんが怒りの形相で武器を構えながらDrのことを睨みつけて言う。ティズ君は愕然としたまま固まっているけど……。
というか、ティティさんの言い分がシェーラちゃんの毒以上に毒のような発言だ……。でも、気持ちはわかる。きっと……、ここにいるみんなもそう言った気持ちなのだろう……。
身勝手な気分で罪のないセレネさんの親を殺し、ルビィさんたちに消えない傷を抱えさせ、セレネさんの心を深く、深く傷つけた。
その傷を垣間見ても、ううん。覚えていてその傷をえぐるようなことを言ってくるDrは……、人間として何かが欠けているのかもしれない……。
そんなことを思っていると……、Drはティティさん達の言葉を聞いた後、Drははぁっと息を吐いて髭を指で撫でながらこう言う。ティズ君達のことを見降ろすように――見下すように見ながら、Drは淡々とした口調でこう言う。
「反吐か……。虫唾か。外道か……。はてさてはてさて。お前さん達は今現在、儂に対してどんな感情抱いておるんじゃ?」
「「「「?」」」」
その言葉を聞いたティズ君達は、首を傾げながらDrのことを見たけど、Drはぐにっと髭で隠れていた矯正されている銀歯のその歯を見せびらかすように、彼はティズ君達に笑みを向けながら――黒い笑みを向けながらこう言ってきた。
「聞いておらんかったのか? お前さん達は今の儂の言動を見て、聞いて、一体どんな感情を抱いた? 嫌悪感か? 吐き気を催すような不快感か? それとも大噴火と揶揄されそうな怒りか? それともそれとも儂のことを殺したいくらいの憎悪か? はたまたは儂に対してかすかに感じた共鳴感かのぉ? いったいお前たちは一体どんな感情を抱いているのかのぉ? ううううむ、うううううむ。やはり人間の感情と言うものは大変研究のし甲斐があるっ!」
今まで私はただその光景を見ることに徹してきた。徹してきたけど……、Drのその全く見えないもしゃもしゃと、高ぶっているその感情が下がりすぎることに驚きを隠せなかった。
Drは今まさにテンションを高くしてティズ君達のことを品定めする様に、舐め回すようにして見ている。涎をだらだらと流しながら、狂喜の眼で彼はティズ君達のことを見ている。
その光景を見たティズ君達は、うっと唸ってからDrから距離をとるように、その場から抜き足差し足の要領で離れていく。そしてみんなも、セレネさん達も、そんなDrの豹変を見て、絶句して、青ざめながらDrのことを見ていた。
誰もが見たら異常と見えるその光景だけど、私はそれを見て、更に疑心を抱いてしまう。Drはあんなの興奮しているのに、感情をだしているのに、興奮しているもしゃもしゃやいろんなもしゃもしゃが全く出ていないのだ。
今までこんなことはなかった。私の目がおかしいわけでもない。近くにいたシェーラちゃんを見ても、驚いて強張って、驚いて怖がっているもしゃもしゃを見ることができる。つまりは正常……。
Drの体から出ていないもしゃもしゃも正常ということ……っ。
それを知った私はみんな以上に顔を青くさせ、Drのことを見る。Drはいまだに狂気の笑みを浮かべながらティズ君のことを見ていたけど、近くにいたのが仇になったのか、Drは私のことを視界にいれ、私に視線を移した。
ぎょろっと、金属質の眼鏡越しに私のことを見つめながら――血走った眼が私のことを捉えた。
「っ!」
私は思わずびくりと肩を震わせ、ヘルナイトさんのマントを掴んでいた手に力を入れてしまう。その光景を見てか、誰もが私とDrのことを交互に見て、アキにぃはその光景を見たと同時にライフル銃を構えながら――
「お、お前――っ! ハンナに何をしようとしているんだっ!」
「変人を曝け出して何をするのかはわからないけど、手を出そうとしたら容赦しないわよ」
アキにぃに続いてシェーラちゃんも武器を構えて迎え撃とうとしていた。それを見て、虎次郎さんは珍しく慌てた素振りで二人に向かって手を伸ばして「待てぃ! 早まるなっ!」と叫んだ瞬間……。
――ぎょろりっっ!!
と、Drの鋭くて委縮してしまいそうな眼光を、シェーラちゃんとアキにぃに向けたのだ。
それを見た二人は……。
「「――ッッッッ!!」」
ひゅっと声を漏らし、びくりと顔を強張らせながら……、Drのことを見て強張った顔のまま固まってしまった。
まるで――熊に遭遇したかのような固まり方だ。固まったままアキにぃとシェーラちゃんは動かない。
そしてDrも動かず、二人のことを睨みつけながら、怒りを露にしながら彼は二人のことを見ていた。額に浮き出ている太い血管が何よりの証拠である。
「お、おいアキ……、シェーラ?」
「どうしたの~?」
「アキにシェーラッ! 一体どうしたのだっ!?」
キョウヤさん、セスタさん、ガザドラさんが言う中、二人は一言も発さずにDrのことをじっと見つめていた。
見開かれた眼光に余裕と言う二文字はない。むしろ緊張と言う文字が、死と言う文字が二人の目に映っているようにも見えた。
ううん、思ってしまったのかもしれない。二人のもしゃもしゃから溢れんばかりに出ている恐怖が、それを警報のように知らせてくれる。
Drはアキにぃ達に向かって視線を向けていたけど、微かに見えただけでも理解できる。二人のことを見るその眼は、まさに本能のままに動く獣のように見えた。
三人の沈黙は、長く感じられた。
互いが互いの顔を見て、目を見て、微動だにしなかったのだから、はたから見ればいつまで見ているんだという光景だけど、アキにぃとシェーラちゃんはきっと、この時生きた心地などしていなかっただろう……。
もしゃもしゃと雰囲気がそれを知らせてくれる。二人の強張って、青ざめながら冷たい汗を流しているその光景を見たら、誰だって思うだろう。私のような未熟な人でもわかる。ヘルナイトさんのような熟練者でもわかる。
二人は――Drと言う存在に対して、恐怖を抱いて、屈服されかけていると……。
Drは臆して動けずにいる二人のから視線を逸らし、すぐに私の方を見た。と同時に――アキにぃは「――っぶはぁ!」と、口に溜めに溜めていた息を一気に吐き出し、シェーラちゃんは構えた状態から剣の柄をそっと、糸を失った人形のようにその手を離して………、ぶらんっと力なくその手を下ろす。
アキにぃは張り詰めていた緊張を解いて、そのまま項垂れながら荒い呼吸を繰り返し、シェーラちゃんはそのまま俯いた状態で、険しい顔をしていた。
そんな二人から零れ出す怖いと苦しい、そして悔しいというもしゃもしゃを読み取った私は、二人に向かって声を上げようとした瞬間……。
「お前さんは――興味深いな」
Drは私の目の前に現れ、そして私のことを真正面で見降ろしながら言ってきた。
その言葉を聞いた私は、私よりも背が小さいDrのことを見降ろして驚愕に顔を染め、そして驚いたと同時に、Drのことを視認した。
Drは驚いている私のことを見上げているのだけど、見下ろしているような目つきで彼は私のことを見ながら矯正されている銀歯を見せつけるようにして、私に狂気の笑みを浮かべていた。
そして――私に向かってこう言ってきた。興味津々のような音色で、もしゃもしゃが全く見ないその音色で――彼は言ってきた。
「お前さんは興味深い! 何せ感情があまりにも乏しいっ! 儂が最も欲していた人材じゃ! お前さんのことをもっと知りたい! 一体どうしたらそんなに感情が乏しくなるのか、それを知りたい! さぁさぁさぁさぁ! 一体全体どうしたらそんな風になるのか――儂に逐一教えてくれっっ!」
「――っっっ!」
言葉にできないような不快感と恐怖と、道と遭遇したかのような異常感……。
伸ばされた手を見た私は思わず委縮してヘルナイトさんの後ろに隠れてしまう。それを感じて、Drの異常性を見たヘルナイトさんはそのまま私を庇うように前に出て――
Drと面と向かって――相対した。剣も何も持たずに、無防備の状態でヘルナイトさんはDrと相対したのだ。私を――守るために……。
私はヘルナイトさんの背中越しにそれを見て、そしてあからさまに怒りを表しているDrはヘルナイトさんのことを見上げながら――無言の状態で彼のことを見上げていた。
そんなDrのことを見て――ヘルナイトさんは凛としているけど、少し怒りが含まれているような音色でDrに向かってこう言った。
 




