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PLAY60 出会い――そして思わぬ再会⑤

 それを聞いた私達リヴァイヴは驚いた表情をしてセレネさん達を見たけど、セレネさんの言葉に対して………、ボルドさんは申し訳なさそうな顔で「あ、あのぉ……」とおっかなびっくりに挙手をした。


 それを見たセレネさんが首を傾げながらボルドさんを見て――


「どうしたのですかボルドさん。あなたとあろうお方がそんなに震えて……、どこか体の具合でも?」


 セレネさんはボルドさんに手を伸ばしながら歩みを進めようとした時、ボルドさんはぎょっと驚きながら頭をぶんぶんっ! と左右に振ると大慌ての表情で――


「イエイエイエイエ違いますっ! そうじゃないんですっ!」


 と、ボルドさんは汗をだらだら流しながら大慌てになってセレネさんに言った。


 その光景を見ていたダディエルさん達もどことなく申し訳ないような顔をして、セレネさんから顔を逸らしている。


 セレネさん達は頭に疑問符を浮かべながらボルドさん達のことを見て、クルーザァーさん達のことを見る。


 その光景を見ていた私は一体どうしたんだろうと思い――なんであんなに怯えているんだろう……。と思いながら見てると……、ボルドさんは決心したかのように、一回深呼吸をしてからセレネさんに向かって――


「あの………、実は――アクロマを取り逃がしてしまったんです。僕等の油断で」


 と言った。


「!」


 私はそれを聞いて、はっと息を呑みながらヘルナイトさんとアキにぃ達の顔を見る。みんなも察したらしく、頷いて私のことを見降ろす。


 そう――元々ボルドさん達はアクロマを捕まえるために別々に行動していた。それは私達も知っていることで、そしてその作戦は――失敗に終わってしまった。


 仮面の男――ヘルナイトさん曰くだけど………、キョウヤさんの顔見知りらしき人がアクロマを連れて行ってしまったので彼だけ永久監獄に連れて行くことができなかった。


 Zやカゲロウ、そして他の人達は連行できたけど、アクロマだけはできなかった。


『BLACKC OMPANY』のリーダー格を捕まえることができなかった。これは相当な痛手であり、事実上これはミスということになる。


 誰のミスでもない。これは――みんなのミス。


 アクロマに勝ったという余裕が――一瞬の隙が生まれたせいで、仮面の男の強襲を許してしまった。


 だから、誰も責めたりはしない。みんな必死だった。必死に戦って、作戦を成功させようと必死になって、ボロボロになりながらもみんな頑張ったのだ。だから私は責めないし、諦めてもいない。


 だって――今私達には、一つの希望がある。


 ティズ君が恐怖を乗り越えて手に入れた――カードキーがある。


 それを使えば帝国に入れて、そしてアクロマとバロックワーズのリーダーとその仲間を拘束して、そのあとでガーディアンを浄化すれば……、きっとみんなの努力も苦しみも報われる。


 ………死んでいないけど、それでも報われる。そう私は思った。


 でも――この話を聞いただけのセレネさん達の反応は……、どうなのだろうか……。私は不安そうになりながら、自分の手をぎゅっと握りながら、セレネさん達の表情を伺う。


 ボルドさんの衝撃の言葉を聞いたセレネさん達は、驚いた顔をしてボルドさんをそして私達以外のみんなを見ていた。


 特にガーネットさんは、そんなボルドさん達 (カルバノグとワーベンド)を目だけで射殺さんばかりに睨みつけながら――彼女は小さい声で黒と赤の突き刺さるようなもしゃもしゃを出しながら「……使えない……」と罵倒した。


 それを聞いた紅さんとギンロさん、そしてリンドーさんは、顔を真っ青に染め上げながらガーネットさんのことを見て上ずった悲鳴を上げる。


 その光景を見ていたメウラヴダーさんは、ふぅっと溜息を吐いてからガーネットさんに向かってこう弁解した。


「その言い方はないだろう……。俺達だってあの時は必死だったんだ。そしてボロボロで体力も限界だった。そんな状態で追い詰めたんだぞ? 少しは労いとかはないのか?」


 そんなメウラヴダーさんの言葉を聞いていたガーネットさんは、未だに怒りを含んだ黒い表情を隠そうともせず露にしながら、彼女はメウラヴダーさんのことをぎろりと睨みつけてから、彼女は言う。



「結果論。これ全て。結果を残さない奴は――使えない」



 ガーネットさんの言葉を聞いたメウラヴダーさんは、うっと唸りながら臆してしまったかのように顔を歪ませてガーネットさんのことを見ていた。


 そしてボルドさんは「ひゃっ!」と半音高い声を上げて強張ってしまった。顔を恐怖に歪ませながら。


 私はガーネットさんの言葉を聞いて、少し怒りを覚えた。大体三十パーセントくらいの怒りを覚えたとき、私はガーネットさんのことを見ながら「あの……」と声をかける。


 ガーネットさんは私の声を聞いた途端、射殺すような視線を私に向けて、ガーネットさんはその矛先の標的を私に切り替えたのだ。


 私は言う。思ったことを言う。


「あの……、確かに、結果こそがすべてかもしれません。けど、アクロマを追い詰めて、捕まえられたかもしれなかったのは本当なんです。みんな心も体もすり減って、それでもここまで頑張ってきたんです。だから……、使えないとか言わないでほしいです」


 ガーネットさんは私の言葉を……、ううん。私自身の姿を見た途端、殺気を更に鋭く尖らせながら私のことをじろりと睨みつける。でも、私は臆することなくガーネットさんのことを見つめる。


 確かに――よくおばあちゃんやおじいちゃんが言っていた。


『結果こそがすべての時もある』と――その言葉通り……、人生は結果がすべての時もある。


 つまりはガーネットさんの言うことも然りだけど、その言い方はないんじゃないのかな。と言う私に気持ちが膨張して、今に至っているということ……。私も、メウラヴダーさんと同じ意見。それが答えだ。


 私はそっと胸に手を当てながら鼻で静かに深呼吸をする。少しでも、びくついている心を落ち着かせるために……。


 でも――


 ガーネットさんは私のことを見下すように、顔を上に向け、そして目だけを下に向けて、私のことを見ながら――顔の影を濃くして彼女は言った。




「結果どころか、何もできないやつの言葉。私は聞く耳を持たない。何もできないのだから大人しく尻尾振って強者に媚びていろ。浄化の時しか役に立たない外れ所属。お前は嫌いだ」




 思わず、絶句してしまった。ううん、ショック……だったのかもしれない。


 定かではないけど、私はガーネットさんの言葉を聞いて愕然としてしまった。


 みんなはそれを聞いて、ガーネットさんに対して何かを言っている。怒りながら言っているけど……、私は怒ることなんてできず、そのまま茫然としたまま立ち尽くしてしまった。


 倒れそうになる背中を――ヘルナイトさんが支えてくれているけど……、一瞬時間が止まったかのような感覚を、私は覚えた。


 結果どころか、何もできないやつ。何もできない。逸れ所属。


 この言葉が、私の心にグサグサと突き刺さる。


 最初の時――ここに来た時に言われた時とは比べ物にならないような痛み。ずくずく来る痛みは、私に二重の衝撃を与えながらどんどん侵食していく。


 言われて当然の言葉。でも……、今まで聞かなかった言葉に、私はきっと忘れかけていたのだ。忘れかけて、痛みすら忘れてしまっていたのかもしれない。


 こんなことで狼狽するの? と聞かれてもおかしくないことだけど、それでも、私にとって今の言葉は……、抉る様な痛みだった。


 当の本人は至極当然と言わんばかりの顔をしていたけど、それを見ていたアキにぃはすぐに銃を手に持とうとして、それを諫めて止めるキョウヤさん。


 すると――それを見ていたのか、ふぅっと困ったという顔をして溜息を吐いているルビィさんは、みんなのことを見ながら申し訳なさそうに――


「ごめんなさいねぇ。この子かなり短気で喧嘩っ早いから」


 と言いながらルビィさんはガーネットさんの頭を……、『ガツンッッ!』と叩きつける。


 それを見てしまったアキにぃやキョウヤさん達。私とヘルナイトさんもその中の一人。


 唖然としながらその光景を見て、抗議することすらできずにその光景を目に焼き付けていた。そんなアキにぃ達とは対照的に、足元で頭を抱えながらぶるぶる震えているガーネットさんを無視して、ルビィさんは私のことを見て申し訳なさそうに微笑んでからこう言う。


「ごめんなさいお嬢ちゃん。この子本当に頭が悪いのよ。感情的で……、あなたと同じメディックがこの子以上に優秀だから、僻んでのことなのかも……。気にしなくてもいいわよ。あとできつく灸をすえておくから。セレネが…………ね?」

「っ! あ、は……い」


 ルビィさんの、なんだか黒い笑みを見てしまった私は肩を震わせて、ルビィさんの言葉が目覚ましになったかのように意識を覚醒させてこくこくと頷く。


 よく見ると……セレネさんが鬼のような形相で仁王立ちになりながら頭を抱えているガーネットさんのことを睨みつけていた……。なぜだろうか……。背後から『ゴゴゴゴゴッ』と言う音が聞こえる……。それとルビィさんの黒い笑みを見て、私は委縮しながら頷いた。


 それを見ていたルビィさんは「よしよし」と言いながら、くるりと踵を返しながら、私達に向かってこう言った。ガーネットさんの首根っこを掴みながら、彼は言った。


「それに――こんなところで話すのは野暮だし……、みんなのことも紹介したいのと、あなたたちが得た情報とこっちで得た少ない情報を交換し合いたいから、一度拠点に来てほしいの。いいわよね? ()()()()()()()()()()()

「くる……ちゃん……? ぼる……ちゃ」


 シェーラちゃんはルビィさんの言葉に引っかかって、そのあだ名が誰なのかと思いながら後ろを振り返る。


 そしてシェーラちゃんやキョウヤさん、そしてアキにぃや虎次郎さんが、明後日の方向を向いているボルドさんとクルーザァーさんを見て、そしてダディエルさん達を見て、二人とガザドラさん、そしてティズ君以外のみんながほくそ笑んで笑いを堪えているところを見た瞬間、虎次郎さん以外の三人が――




「「「――ぶっ!」」」


 


 飲み物を吐き出すような声を上げて吹いた。その吹いた声を聞いてしまったダディエルさん達も『ぶっ!』と吹いて、それを聞いていたガザドラさんは「いやいや! これは笑うところではないであろうっ!?」と、驚きながら突っ込み……。


 ティズ君は首を傾げながら目を点にして――「なんでみんな笑っているんだろう……?」と、疑問の声を上げる。


 私はそんなみんなの光景を見て、そしてボルドさんとクルーザァーさんを見て、私は察してしまう。


 敢えて言わないけど……。きっとすぐにわかることだから……。


 そう思って、私はさっきまであったずくずく残ってしまった痛みに耐えていると……。


「おーい。早く来ないと日が暮れるからー。早くこっちに来てだってー」と、ノゥマさんが私達に向かって声を上げながら言う。


 それを聞いていたクルーザァーさんは、「おほんっっ!」と咳払いをしてずんずんっとノゥマさんに向かって歩みを進めながら私達のことを見ずに声を荒げながら言った。


「さ、さっさと行くぞ! 時間もないんだ」


 それを聞いていたギンロさんは、ボルドさんのことを見ながら「くくくっ。おうおうクルちゃん」と、冗談交じりに言い、それを聞いていたリンドーさんも「クルさんとボルさんについて行きますぅ……。ぷふっ!」と、吹きながら言う。


 その言葉を聞いてか、ダディエルさんはまた口の中にあった空気を一気に吐き出すように吹くと、それを聞いていたクルーザァーさんが「やめろっ」と一蹴していた。


 そんなひと悶着……、と言うか、長い悶着があった気がする。けどみんなは先に向かってしまったセレネさんの後を追うように、ルビィさんが言っていた拠点に向かおうと足を進めようとした時――


「ハンナ」

「!」


 ヘルナイトさんの声が聞こえたので、私はそっと顔を上げながらヘルナイトさんを見上げるけど、ヘルナイトさんは私の視線に顔を合わせるようにしてしゃがんでから、ヘルナイトさんは私の頭に手を置き、そして開いている手を私の肩に置きながら私に向かってこう聞いてきた。


「あの言葉を、気にしているのか?」


 ヘルナイトさんの言葉を聞いた私は、目を見開いてヘルナイトさんのことを見て、そして再発した痛みを胸の辺りで、両手の指を絡めるようにして握りしめるという応急処置でせき止める。


 その光景を見ていたヘルナイトさんは、肩に置いていたその手をゆっくりと放し、そして胸の辺りで握りしめていたその手にそっと、優しく置きながら――ヘルナイトさんは言う。


「……私みたいに力があるものが言う言葉ではない。もしかしたらより傷を大きくしてしまうかもしれない。だがハンナ――これだけははっきりと言える。君は……無力ではない。そして君はずっと、()()()()()()()()()()()()。だから君は――無力ではない」

「?」


 ヘルナイトさんは言いながら、私に手を握る手に少し力を入れる。ぐっと握りしめて、私のことを心配し、そして励まそうとしている気持ちが、もしゃもしゃが、手から流れ込んでいく。でも、私はヘルナイトさんの言葉を聞いて、首を傾げながら思った。


 私は、今の今までみんなに守られてきた。だから戦いで役に立ったことなどない。回復はしたけど、みんなのように戦って敵を倒すということは全くしてない。


 アキにぃのように、キョウヤさんのように、シェーラちゃんのように、虎次郎さんのように、私はこの手に武器など持っていない。ダディエルさんのように針ですら持ってない。無防備の状態。


 ダンさんのように殴れればいいのだけど、残念ながら私はそんなことしたくない。と言うか傷つけること自体無理だと思っている。


 役に立ちたい――けど殴るとか傷つけたくない。矛盾していると思うけど、私はみんなの役に立ちたいと心の底から思っている。本心で言うと……。



 みんなと一緒に戦いたい。これが本音。



 でも、ヘルナイトさんは私のことを見てみんなのことを支えていると言っていた。私は一体どこで、みんなのことを支えてきたのかな……。と思いながら首を傾げていると……。


「ハンナとヘルナイトー! 早く来なさーい」


 遠くからシェーラちゃんの声が聞こえた。


 それを聞いた私とヘルナイトさんは『はっ』としてシェーラちゃんがいる方向を向いて、私は「あ、うん……」と少し声を張り上げながら言うと、ヘルナイトさんも立ち上がって頭から手を離してくれたけど、私の手を握っている手だけは離さず、そのまま屈んだ状態でヘルナイトさんは私のことを見降ろしていた。


「?」


 私は首を傾げながらヘルナイトさんのことを見ていたけど、ヘルナイトさんはそんな私のことを見降ろしながら、ぐっと、握っている手に少し、ほんの少しだけ力を入れてから、ヘルナイトさんは言う。


 凛として、そして優しい音色で言う。


「無力でない。それだけは、忘れないでくれ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからハンナ――あの言葉の件に関しては、気にしない方がいい」


 ヘルナイトさんは私の手からその手を離し、いつものようにすっと背筋を伸ばした後――「行くか」と私のことを見降ろして言う。


 その言葉を聞いた私は、一瞬呆気に取られていたけど、すぐに「あ、はい……」と頷いて、シェーラちゃん達が向かった方向に向かって、急いで足を進めた。


 ヘルナイトさんの言った言葉も気になるけど、今は目の前のこと――つまりはセレネさんがいる拠点に向かって、これからのことを話し合う。そして目の前にあるバトラヴィア帝国とガーディアンを何とかする。


 それが終わった時にでもゆっくりと考えよう。


 そう私は思い、そしてみんなに追いつけるように、ヘルナイトさんと一緒に走った私だった。


 …………そして。


「……そういや、あんた達の拠点がある場所って、ここからどのくらいの距離っすか? 近いとか言いながらかなり遠くにあるとかそんな感じっすか?」

「そんなことないわ。砂地で走って二十分くらいでたどり着けるわよ」

「あ、そうなんすか……。よかった……」


 私達が追い付くまでキョウヤさんとルビィさんがこんなことを話していたことは、当然私とヘルナイトさんは知らないし、これ以上語ることはないと思う……。


 そして二十分後…………。



 □     □



「着いたぞ」


 先頭を走っていたセレネさんが止まり、そして目の前を見ながらセレネさんは言った。


 私達はその場所について、そしてその拠点を見る。前から知っているカルバノグのみんなとワーベンドのみんなは、その光景を見て懐かしむような顔をしてその拠点を見た。


「おーおー。久しい光景だな」

「と言うか変わっていないですよ」

「おぉ。吾輩は初めて来るのだが、ここが貴様らの拠点か!」

「ああ。見るからにあそこと同じようなそれだが、まぁ岩陰よりは全然ましだ」


 ギンロさんとリンドーさん。そしてガザドラさんとクルーザァーさんが言う中、その光景を見ていた私達リヴァイヴは、辺りを見回し、そしてセレネさん達が使っているその拠点を見て、私は驚きを隠せずにその光景を見ていた。


 目の前に広がるその光景は――前に見た駐屯医療所に似ているけど、テントの数はたったの二つ。白い布で覆われたテントが二つだけだったのだけど、テントの周りには食料が入った木箱に置かれているそれぞれの武器。あと小さな木箱にいは弾丸の絵が描かれているものがあった。テントの近くにはいくつもある焚火があり、そこから赤い火が『パチパチ』と音を鳴らしていた。


 それを見ていたアキにぃが、驚いた顔をしながらその光景を見て――


「よく見る戦争前夜の光景みたいだな……」と言うと、それを聞いていたノゥマさんはアキにぃの近くに来て、アキにぃの顔を見ながら彼は不敵な笑みを浮かべる。



「だろうね。近いうちに帝国に責める僕らはたぶん――()()()。はたから見れば戦争そのものかもしれないね」



「冗談きついわね」

「冗談じゃないよ。一応マジで言っている」


 ノゥマさんは少し驚いて逆に笑みを浮かべてしまうシェーラちゃんのことを見ながら、くすりと不敵な笑みを浮かべて言う。


 それを聞いて、私はぐっと唇を噤みながら、これから……、と言うか、近いうちに起きる私達がすること、そして帝国がすることを想像し、そしてぐっと目を瞑って、不安なもしゃもしゃを押し殺しながら私は首を横に振るう。


 目を背いているわけではないけど、私は今回することに対して覚悟を持って、そしてそのあと来るであろう何かに備えて、私は一人でその気持ちを固める。


 すると――私達の存在に気付いたのか、「あ」と言う陽気な声が聞こえて、その声を聞いた私達はその声がした方向を見ると――


「おぉ! セスっちか! お久だな!」


 と、ギンロさんは陽気な声と共に手を上げて言うと、その言葉と声を聞いてきたのは――ルビィさんほどの長身ではない。しいて言うならキョウヤさんより少し背が高い、薄紫の肩まであるぼさぼさな髪をした男性がそこにいた。


 黒いスーツに見えるけどどこかラフな印象を持っている服を着て、その上から青い薄いコートを羽織って……、いるのかな? 二の腕のところに引っかけるように着崩している。そして黒くて先が少し尖っている皮の靴。両手首にはベルトのようなリストバンドをしていて (バングルはそれと重なるようにつけられている)、首には鉄製の少し幅が広いチョーカーをつけている、右目に医療用の眼帯をつけている男の人がギンロさんのことを見て容器に手を振りながら……。


「おひさ~ギンロ。みんなもお久し振りの初めましてだね~」


 ふにゃりとした雰囲気を出しながら、その人は私達に近付いてアキにぃとキョウヤさん、虎次郎さんにヘルナイトさん。そして私とシェーラちゃんの手を流れるような動作で取りながら幸せそうな笑みを浮かべて「よろしくね~」と言って、その人は言った。ぶんぶん腕を振りながら言った。


「おれセスタっていうの~。一応リッパーで、『ローディウィル』の一員だよ~。よろしくね~」と言って、その人は私達と握手 (殆ど彼から無理やりしているようなもの)をする。


 アキにぃとキョウヤさんはそんな彼――セスタさんの行動を見て半分驚きながらその流れに乗せられて、驚いた顔のまま「「あ、はぁ……」」と二人は言う。


 虎次郎さんはそのセスタさんの元気の良さを見て「はっはっは!」と笑いながら虎次郎さんも自己紹介をしている。ヘルナイトさんはいつものように冷静に。


 シェーラちゃんは口元を逆三角形にして驚いて、私は呆気にとられながらセスタさんを見ていた。


 その光景を見ていたダディエルさんは、私達のことを見降ろしながら冷や汗を流して困ったように笑みを浮かべながら――


「悪いな。こいつこう見えてちょっと子供っぽいところがあるんだ」と言った。


 それを聞いた私達は、目を点にしてダディエルさんのことを見上げていると……。


「セスタ。いったい何をしているのですか? 女性と接する時は――優しくしないといけませんよ」と、どこからか声が聞こえてきた。


 その声を聞いた私達リヴァイヴはセスタさんの背後を見る。


 頭に疑問符を浮かべながら見ると、セスタさんの背後から『すたっすたっ』とまるでモデルのような歩きをしてくる顔が整っている人が出てきた。


 銀色と黄色が混ざっているような少し跳ね上がっている髪と頭にぴょこんっと出ているアンテナのようなくせっけ (アホ毛ともいわれているんだけど、ここではくせっけにしておきます……)、そして赤い中国でよく着るような服で、二の腕にはブレスレットのような装飾品をつけて、袖がすっぽりと覆われている。そして白い中国のズボンと黒い靴を履いた耳が長いなきほくろが印象的な人が一言で言えば――イケメンの人がそこにいた。


 その人はセスタさんのことを見て袖ですっぽりと隠した手をすっと前に出しながら、彼は私達に向かって歩み寄る。


「失礼しました。お初にお目にかかます。私は『ローディウィル』のリーダー。エルフのモンク――ボジョレヲと言うものです」


 エルフの人――ボジョレオさんは近付いて来る。セスタさんはそんなボジョレオさんを見てすぐに私達に方を向いてからニコーッと微笑んで「よろしくね~」と再度言いながら離れると、ボジョレオさんは最初、アキにぃ達に向かって礼儀正しく頭を下げて「お見知りおきを」と言う。

 

 そんなボジョレオさんを見たアキにぃ以外の三人は、少し呆気にとられながらも頭を軽く下げる。アキにぃはぴくぴくと引きつっている笑みを浮かべてボジョレオさんとセスタさんを見ていた。どことなく、赤いもしゃもしゃを出しているけど……、どうしたんだろう……。


 そう思っていると、ボジョレオさんは私達の前に来て、そして私達と同じ背丈になるようにしゃがんでから、にっこりと微笑んで――


「以後――よろしくお見知りおきを」と、ボジョレオさんは言う。ニコリと微笑んで、私達のことを安心させるように微笑みながら言うボジョレオさん。私はそんなボジョレオさんのことを見ながら控えめに微笑みながら内心戸惑って「よ、よろしくお願いします」と言った瞬間……。




「んのおおおおおおおおおっっっ! やっぱり無理ぃいいいいいいいいっっっっっ!!」




 シェーラちゃんが喉から出ているのかと疑わしいような怖い声を上げて青ざめながら発狂した。体中に鳥肌を立てながら――

 

 それを見た私は驚いた目をしてシェーラちゃんのことを見ながら「シェーラちゃんっ!?」と叫ぶ。


 そんなシェーラちゃんを見ていたキョウヤさんとアキにぃ、ヘルナイトさん、そして一番驚いていた虎次郎さんはシェーラちゃんに『どうしたっ?』と聞くと、シェーラちゃんは首をブンブン振りながら、彼女は言う。叫ぶ。


「本能が『無理』って言ったのよぉ! こんなイケメンの顔でスマイルを振り撒かれたら私はいやあああああ無理ぃいいいいいいっっっ! イケメンはやっぱり無理ぃいいいいいいっっっ! アキとかキョウヤは中の下だったからよかったけどおぉぉぉーっ!」

「あいつイケメン嫌いだったのか……。まぁ仕方ねえか……。あいつ誰でもあんなことをしちまうんだよな……。イケメンで天然だし」

「罪な男ですね。ですがティズと比べたら断然劣ります。そしてタイプではありません」

「えぇっ!? あたしああ言うイケメンに壁ドンされたらイチコロだって……」

「「てかシェーラの言葉に俺達 (オレ達)のハートブレイクされかけてるんだけど……?」」


 シェーラちゃんの言葉を聞いたガルーラさんとティティさんが、私達の背後でひそひそと話していると、その話を聞いていた紅さんが驚いた顔をして二人のことを見ていた。


 アキにぃはその光景を見て、びきびきと顔を引きつらせながらボジョレオさんを見て、アキにぃの行動を止めようと、キョウヤさんはアキにぃの肩を掴んで制止させていたけど、シェーラちゃんの毒の言葉を聞いて、二人はすぐに動きを止めてからシェーラちゃんのことを睨みつけていた……。


 きっと、あの時の言葉が相当堪えてしまったのかもしれない……。ドンマイ。

 

 ボジョレオさんはそんなシェーラちゃんの反応やみんなの反応を見て、驚いた目をして困ったような笑みを浮かべながら「そ、そうでしたか……? それは申し訳ないことをしました」と言いながら、ボジョレオさんは私達から距離をとって (と言うか、シェーラちゃんから距離をとって)その場から離れると、腕を組んで「うーむ、何がいけなかったのでしょうか? 普通に接したはずだったのですか……」と唸りながら言うと、それを聞いていたノゥマさんとセスタさんがボジョレオさんに歩み寄りながら――


「ボジョ……。いい加減に学んだ方がいいよ? ボジョって天然でイケメンだし」

「天然でイケメン……っ!? さっきの行動で何か悪いところがあったのでしょうか……っ!」

「そういうのは人の見解だから気にしない方がいいと思うけど……、まぁ気を付けたほうがいいんじゃないかな? その天然でやばい修羅場に発展しそうだから、治した方がいいと僕は思う」

「ボジョは本当にどんな女の人にも微笑んじゃうから、誰だって勘違いしちゃうよ~? おれは別にいいけど~、この先ボジョ本当に女の人絡みで苦労しそうだし~」

「そ、そうですか……」


 なんだか三人でひそひそと話して、セスタさんはけらけら笑うながら話していたけど、その会話の内容までは理解できなかった私。一体何の話をしているんだろう……。そしてシェーラちゃん……大丈夫かな……。


 ちらりとシェーラちゃんの方を見ると、シェーラちゃんはゆっくりと深呼吸をしながら疲れ切ってしまった顔をして項垂れている。


 私はシェーラちゃんの背中を撫でながら……「だ、大丈夫?」と言って気を紛らわそうとした瞬間……。


 ぶわりと――無風の地帯に風が舞い込んできた。


『っ!』


 私達はその風を受けながら砂から目を守ろと腕で顔を覆い、その風が止むのを待っていると……、背後からダディエルさんとメウラヴダーさんの声が聞こえてきた。


「おぉ! あいつらか」

「となると――これで全員か」

「?」


 そんな声を聞いて、私は全員? と思いながら上を見上げると――私は目を見開いて、すでに夕方となっているその空を覆う何かを凝視した。


 それはみんなも一緒で、ヘルナイトさんとガザドラさんは各々武器を手に持って戦おうとしていた。

 

 セレネさんはその光景を見て小さい声で――


「――タイミングがいいな」と言いながら上を見上げていた。


 私達に頭上に広がっている光景――それは……夕焼けの空を覆ってばっさばっさと大きな大きな翼を広げて浮いているミントグリーンの鱗を纏った……。




 ()()()()()()()()()()()()()




※ハンナが言う『ボジョレオ』さんと本人が言う『ボジョレヲ』。どっちが本当なのか……。

 それは――こうです!


 ボジョレヲ〇

 ボジョレオ×

 


 つまりハンナは間違えてボジョレヲのことを『ボジョレオ』と言っているのです。そう言った間違いは後日語ろうかなと思っていますので、ご安心を。

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