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PLAY06 初陣決戦①

 回想――白船恭也編の続き。


 祖父は恭也に言った。


『お前は天賦の才を持っているっ! それも先祖が遺したであろうその血を色濃く残してなっ!』


 そう言われても、五歳の恭也にはいまいちピンッとこなかった。


 しかし祖父の言葉を聞き、恭也は思った。


 ――オレ、すげーんだ。と。


 純粋な嬉しさが込み上げ、恭也はまた来たら祖父に教えてもらおうと決めていた。


 しかし……。


 それから二週間経ったある日のこと。


 夜も深い深夜の時、大きな出来事が起きた。


 恭也はその時、寝付けなかったのか起きていた。


 夜遅くゲームもしていない、コーヒーやカフェイン類が入っている飲み物なども飲んでいない。その次の日が特別な日でもないにも関わらず、その時の恭也はなぜか寝付けなかったのだ。


 本人自身何故眠れなかったのかなどわからない。よくあるようなことでもあるのだが、それでも小さい恭也にとって、眠れないというのはストレス……、ではなく、驚きに近いものがあったが、その答えはすぐに体が知らせてくれた。


 ぶるっと震える感覚。


 その感覚を感じた瞬間、もしかしてと思い小さな体を急かしながら――急いで下に向かっていく。


 寝れなかったのはこれのせいなのかな……? と、小さい彼ながら己が眠れなかった原因を突き止めると同時に、急いで目的の場所に向かおうとしていた時、階段の近くの部屋……リビングのところから明かりが漏れていた。


 恭也は誰かいるのかな? と思い、そっとドアの隙間からそれを覗く。


 すると――


「――いい加減にしてくれっ! 父さんっ――何勝手なことを言っているんだっ!」


「!」


 今まで聞いたことがない、父の荒げた声。怒りそのものの声だ。母に怒られているときの声とは違い。その声は怒りそのものを、何かにぶつけているような、そんな声だった。


 よく見てみると、薄暗い部屋で、父はソファに座りながら誰かと電話をして話している。父が父さんというくらいなのだから、受話器の向こうはきっと、祖父だ。


 そう思った恭也は、驚かせるついでに、リビングに入ろうとした時……。


 父の言葉で、それを止めてしまった。


「恭也はまだ五歳なんだぞ!? なんで恭也をそっちで引き取るなんて言い出すんだっ!」

「?」


 恭也自身、何を言っているの? といった感じで、その場で止まってしまう。


 その間、父と、受話器越しの祖父の会話は続いていた。


「才能があるから? もうこの世は戦乱とかそんなんじゃないんだぞっ!?」

『ばかげたことをぬかすなっ!』


 今度は、受話器越しでも大きく聞こえた声。その声は間違いなく祖父の声だ。


 最初こそ驚きの顔を浮かべていたが、どんどんとこみ上げてくる混乱に身を任せながら困惑のそれを浮かべる恭也をしり目に、息子と親の――父と祖父の会話は続いていた。


『恭也こそ、わが一族の最後の血筋! 最後の希望なんじゃっ!』

「だから何度も言っているだろうっ!? あの子は普通の子なんだっ!」

『そうやって天賦の才を廃れさせる気かっ!? この軟弱者っ! お前のその日和の考えにはうんざりするっ!』

「父さんのその昔のことに固執するのも悪い癖だろうがっ! いい加減もう俺たちを巻き込まないでくれっ!」

『おいっ! 逃げる気かっ! この臆病者っ!』

「こっちのセリフだ! この縛られジジィッ!」



 延々と続いたその会話を聞いた恭也。話の中心は自分だ。今まであった感覚も父と祖父の言葉を聞いているうちに無くなっていたが、そんなの関係なかった。


 なにせ、今まで見たことがない父の怒りと、今まで聞いたことがない祖父の怒声が聞こえたのだ。驚くと同時に混乱しながら『なんで怒っているの?』と言う思考が彼の頭の中を支配し……、そして――


 少しの間、小さい恭也は考えた。


 槍の件で厳しかった祖父が褒めてくれた。いつも優しい父親。どっちを選ぶのか。


 どっちも大好きだ。でも自分のせいで、血が繋がっている父と祖父が、あんなにも罵倒していた。それを見た恭也にとって、五歳の子供にとって、苦痛でしかなかった。


 五歳ながら恭也は考え――結論として……。


 祖父と距離を置く。これが最善と思った。


 そして唐突に、知らない間に、祖父は他界していた。事故死だと聞いた。


 親はそれを恭也には教えなかった。


 彼が七歳の時、祖父は亡くなっていた。


 それを知ったのは……、十五歳の時。親の計らいなのか、それとも悲しませまいとしてのそれだったのかは、わからない。


 その時恭也は、母方の祖父の家に預けられていたので、何があったのかなど、何も知らなかった。


 だが、両親は十五歳の恭也に、とある真実を言ったのだ。


 祖父は、何者かに襲われて亡くなったと。


 それを聞かされた時、恭也は頭が真っ白になって、そして――聞いた。


 誰がそんなことをしたんだ……?


 その言葉に、両親は首を横に振っただけだったが、父が、重い口を開いて、あることを口にした。


「実はな、おじいちゃんが亡くなる一週間前……、電話が来たんだ」

「……電話……?」


 恭也は聞く。


 それを聞いた父は「ああ」と低く、後悔しているような音色で言った。


「……父さん……おじいちゃんは、急に俺に電話をかけてきたんだ。電話に出たら、突然こんなことを言い出したんだ。『もし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』って」


「え……? そんな話をしていたの? 聞いてないわっ」

「仕方がないだろう……? 最初は冗談かと思った。けど、そのあとすぐに……、あんなことになって、それで」


 両親の会話を聞いていた恭也はある言葉が頭をよぎった。


 普通の言葉だが、恭也にとってそれは重大な意味でもあった。


 ――何かに、巻き込まれた。


 そんな気がした恭也はすぐに行動に移した。


 幸い遺留品片付けもあり、家族総出で槍術道場兼、祖父の自宅の片付けに赴いた。その時恭也は祖父の遺品を片付けていた時、とある封筒を見つけた。


 それは、RCの封筒。


 中の用紙は抜かれていたが、それでも恭也は確信した。


 祖父は健康体だった。内臓年齢は体年齢を大きく下回っており、だいたい三十代くらいだった。ゆえに医療機関から来た封筒を見た恭也は思った。


 健康体であり病気と無縁でもあった祖父の元に、医療機関の封筒が来ること自体おかしい。


 つまり――この封筒の中身は医療以外の何かだと。そして続けて疑心を抱く。

 


 RCに何かあると。



 恭也は十八歳の時、すぐさまMCOにログインした。


 ログインし、蜥蜴人のランサーとして行動することになる。ランサーにした理由は祖父も槍術の師範代。そして祖父が言い残した自分を葬式に出すなという遺言は……。


 自分は何者かに狙われている。それも自分の槍の才能を知って、祖父に何かしたに違いない。


 そう確信し、恭也は敢えて囮のようにそのアバターで行動したのだ。


 祖父を狙った理由を突き止めるまで――


 そして彼は大学に入り、とある友人とMCOをプレイしていたのだが……、あのアップデートのせいで離れ離れになってしまったことはまた後日話そうと思う。


 回想――恭也編。ブラックアウト。

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