PLAY57 BC・BATTLEⅤ(Ploy of heresy)②
「アクロマ……ッ! てめえ………っっ!」
アクロマの演技と言葉を聞いていたダディエルさんとボルドさんは怒りを露にしたかのような顔でアクロマのことを睨みつけて、クルーザァーさんはそんな光景を見ながら手をかざす準備をしている。
そんな三人を見ていたアクロマは、けらけらと笑みを浮かべてボルドさん達のことを指さしながらアクロマは言った。
「そうそう! 俺だよ? アクロマだよ? 俺のことを覚えていたんだなお前ら! 特に包帯B級男と暗殺者の男! 他にも色んな奴がいて、あ、でもあの赤髪の女はここにいないんだろう? 喧嘩別れしたんだろう? そうなるともうお前達の火力担当はもうここにはいないということになっちまうなぁ? というか俺も今お前達のことを思い出してきたよ! どんどん記憶のファイルが開かれて、脳細胞が活性化している感覚が味わっている!」
アクロマは自分の頭をがしりと掴んで髪の毛をくしゃくしゃにしながら、血走った目と狂気の眼でダディエルさん達を見つめながら彼は更にこう言った。
「そうだ……。お前達は確か、あの女を見殺しにした集団だろうっ!? そこにいるゴーグル男は知らんが、お前達のことはよぉおおおおおおく覚えているっ! だって俺が殺したんだもんな! 新作で作った銃の実験として、俺はその銃をあの女に使った! だから俺は――お前達にお礼を言いたい。ここまで来てくれた敬意を払って、俺はお前達に――特にそこにいる二人に俺はお礼がしたかったんだ。感謝がしたかったんだ」
アクロマはその場で深く、深く頭を下げながら彼は心の底から感謝をしているような雰囲気……、の演技をしながら、彼はボルドさんとダディエルさんに向かってこう言った。
驚いている私達をしり目に、アクロマは深々と頭を下げながら、彼が言う感謝の意を込めたお礼を述べたのだ。
演技がこもった感謝を――述べた。
「ありがとう。ありがとう……っ! おかげでこの銃は俺のとっておきとなった。これで俺は誰もが持っていない武器を手に入れたことが証明されたんだ。感謝感謝。感謝しかないね。お前達には。本当にありがとう。俺のために仲間を一人差し出してくれて」
「………こいつ」
アクロマの話を聞いていたヘルナイトさんは、ふつふつと静かに込み上げてくる怒りの音色を小さく吐き捨てると、アクロマを見ながら大剣を構えて、不審な動きをした瞬間斬りかかろうとしていた。
私はそれを見上げ、そしてマントをきゅっと弱々しく掴みながら、私はヘルナイトさんを見た。
鎧の甲冑だと顔の表情なんてわからない。今まで雰囲気で何となく、そしてどんどんわかってきたつもりだったけど、これだけは一目見て、そして雰囲気を一瞬感じただけでわかる。
これは――カイルの時の怒りと同じそれだ。
ヘルナイトさんは――人間が大好きで、その人達を守るために戦っていた。だからヘルナイトさんは、カイルやアクロマのように人の命を無駄にして無下にするような人を許さない。
だから――ヘルナイトさんは今……、怒っている。アクロマに対して。
そしてその怒りは……、誰もが抱くそれであり、ここにいる殆どの人がアクロマに対して憎悪に似たそれを抱いていた。特に……。
「――ふざけんなくそ野郎がぁっっっ!!」
ダディエルさんは口の端から微量の血を垂らしながら、今まで見たことがないような怒りを露に捨て、声を荒げながらアクロマに向かって怒鳴りつける。
それを聞いた私は驚きながらダディエルさんを見ると、ダディエルさんはステージの上にいるアクロマに向かって唾をべたべたとつけるように叫びながら、彼は言った。
口から零れているその血はきっと、歯を食いしばったせいで歯茎を傷つけてしまったのだろう。
そう私は思いながら、ダディエルさんから轟々と燃え広がる黒と青が混ざったもしゃもしゃを見て、ダディエルさんの魂の悲痛な叫びを聞く。
「何が『感謝』だっ!? 何が実験台を置いてっただぁっ!? なにがありがとうだぁっ!? 反吐が出る! お前のような奴が俺達と同じ人間だと思うと胸糞悪くなるっっ! お前に感謝と謝礼をされたら腸が煮えくり返りそうだっっ! あいつは……。アスカはもっともっともっともっと生きたかったはずだっっ! なのにそんな切実な願いを、お前達が壊したんだっ! おまえのその身勝手な目標のために、アスカは犠牲になっちまったんだっっ! 少しは罪悪感解かねえのかっ!? えぇぇっっっ!?」
その言葉を聞いて行く内に、轟々と燃え広がる黒と青のもしゃもしゃの中にちらりと見えた桃色のもしゃもしゃ。それはヘルナイトさんが人間が好きと言う時にでていたもしゃもしゃなんだけど……、私はその桃色のもしゃもしゃを見て、小さな声でダディエルさんの名前を呼ぶ。
本人には聞こえていないけど私は呼んだ。
聞こえていなくてもいい。そう思いながら私は呼んだのだ。ティズ君も悲しそうにダディエルさんを見て、クルーザァーさんもそんな光景を見てそっと顔を逸らし、ボルドさんはぐずっと鼻をすすりながらダディエルさんを見ている。
ヘルナイトさんもその光景を見ながら、背中にいる私の頭に手を置いて、ゆる、ゆるりと撫でる。優しく撫でながらヘルナイトさんはダディエルさんを見て、大剣を構えながら警戒を解かずに見ている。
私は……、ダディエルさんのその苦しいもしゃもしゃを見て、感じて、今までとは比べ物にならないようなそれを体で体感した。
色んな人の悲しいもしゃもしゃを、色んな人の苦しい人のもしゃもしゃを見て、感じてきたけど……、今初めて感じたダディエルさんのこのもしゃもしゃは段違い。
気持ちの質が違った。
ううん、同じだった……。あの時――ティックディックやベルゼブブさんから感じたそれと、全く同じだった。全くではないけど、青の中に桃色が混ざっているそれは――同じだった。
ベルゼブブさんの場合はその気持ちはどんどん収束していって、ダディエルさんのように黒いそれは全然放っていなかった。それはきっと――ヨミちゃんの覚悟を聞いたから、ベルゼブブさんも覚悟を決めていたのかもしれない。
でも……、ティックディックとダディエルさんは――全く同じだった。そっくりと言えるくらい同じで、苦しくて悲しくて……、何より………痛かった。
ダディエルさんはアスカさんに対して……、ティックディックはグレイシアと言う人に対して……、二人は同じ感情を抱いていた。
それはきっと、ダディエルさんのように愛する人との時間が多ければ多いほど……、その気持ちは大きくなっていくもので、私には到底理解ができないものだと思った。それは……。
心の底から愛する人を失って、その殺した人に対して異常ともいえるような憎悪。
それが爆発してしまっている。
今ダディエルさんが放っているそれがまさしくであった。そんな感情を、アクロマに対して向けて、殺意を露にしていたのだ。
ダディエルさんはアクロマを睨みつけながら、続けてこう言う。続けて言葉を荒げながらこう言ったのだ。
「お前のせいで――アスカはこんなへんてこなところで死んじまった! 本当なら、こんなところで死ぬことなんてないのに、それをお前が壊して、あいつは女としての幸せを短い時間しか味わってなかったっっ! それもこれも、お前が関わったせいで、お前のその実験で、お前のその銃で――あいつは死んじまった……っ! 俺の腕の中で、あいつは……死んだっ!」
アクロマは、黙って聞いている。
下にいるZやカゲロウも、黙って己の手を見て、震えながら言い続けているダディエルさんの話を聞いていた。
私達もダディエルさんの心の叫びを聞きながら、彼の言葉を胸に刻むように、忘れないように、私達はダディエルさんの辛く、そしてアスカさんのことを一番想っているような気持ちを感じながら、ダディエルさんの話を聞く。
ダディエルさんは言った。アクロマの事を睨みつけながら、彼はこう言った。張り上げるようにしてこう言った。
「だから――だからぁ! 俺はお前のその言葉も、人格も……、いいや。お前のすべてを許したくねえんだっっ! お前のような奴がいたから、色んな奴らが苦しんだ! アスカもを殺して、俺達から光を奪った! 自身の私利私欲のために――お前は大勢の奴らを不幸のどん底に叩き落した! その報いを受けてもらうために、俺達はここまで頑張ってきたんだっ!」
なぁ? と、ダディエルさんはボルドさんを見ながら聞くと、それを聞いていたボルドさんは、ぐっと腕で目元を拭ってから、すぐに頷く。
そしてボルドさんもそっと目を細めているアクロマを見上げながら、彼もダディエルさんの言葉に続いてこう言った。
「あなたは多大な大罪を犯してきました。色んな人の人生を滅茶苦茶にした。その償いをしてもらうために、僕達はあなたのことをずっと追い続けてきたんです。一人の仲間の無念を晴らすために、僕達は今から――」
ボルドさんは一旦口を閉じて、そしてすぅっと息を吸ってから、ボルドさんは再度アクロマのことを睨みつけるように見上げながら、彼ははっきりとした音色でこう言った。
今までのボルドさんからは想像もできないような――その音色と雰囲気で、彼はこう言った。
「――あなたを捕まえて、この世界の永久監獄に閉じ込めます。あなたの父親と一緒に」
その言葉を聞いたダディエルさんは、そっと口に針を含みながら臨戦態勢を整えてその時を待つ。
クルーザァーさんも手をかざして、ティズ君も短剣を構えて、ヘルナイトさんも体験をそっと抜刀しながら、私を背に隠しながらみんな各々武器を持って構えた。みんな――戦う気満々だった。
ボルドさんもボクシングの構えを取りながらアクロマのことを睨みつけている。包帯の顔で睨んでいるから、今までの凄みがさらに増したかのようなふんに気を醸し出している……。
私は武器なんて持っていないので、ヘルナイトさんの背中越しで手をかざすことしかできない。だから私は、ヘルナイトさんの背中越しでサポートしかできない状態にあった。
本当なら、みんなと一緒に背中を任せながら戦いたいのだけど……、メディックである以上、それはきっと叶わないだろうな……。はぁ。
そう思いながら私は、ステージの上でじっと仁王立ちになっているアクロマのことを見上げる。
アクロマはいまだにじっと私達のことを見降ろしながら無言で、すっと目を細めながら私達を見降ろしていたけど、アクロマはそのまま首を傾げながら顔をへのへのもへじのように歪ませると、すぐに頭を垂らして頭を両手で抱えながら彼は――
「うーん……、そう来るか」と言いながら、ぶつぶつ。ぶつぶつと……、突然アクロマは独り言を放ちながら一人の世界に入り込んで思案をしだしたのだ。
人の介入を許さないような……、そんな雰囲気を出しながら、アクロマはくしゃ。くしゃりと崩れていく髪の毛を指先で掻きながら、彼は小さな声でこう言った。ぶつぶつと、少し早口の小声でこう言った。
「そう来て自身の気持ちを鼓舞させるのか……。これもかなりの計算違いだな。と言うかこの展開で行くと俺の言葉に誰もが再度絶望まっしぐらだったはずだ。なのになんでこうなってしまった? うーん微妙な計算のずれのせいで修正が追い付かないな。補正作業をしてもあいつらの意思が折れることはない。第一の揺さぶりは失敗…………………」
アクロマはそっと顔を上げながら、くしゃくしゃになった髪の毛を手櫛でさらさらと整えながら、彼はふっと、顔を上げる。
その顔を見た瞬間、私はびくりと……、体を震わせてしまった。驚いて、急に……。
怖いと思ったから……。
よく怖いものを見た瞬間上ずった声を上げて悲鳴を上げてしまうあれと同じように……。
アクロマの顔を見た瞬間、私は体の奥から込み上げてきた驚き、絶句。そのあとに来た恐怖に押し潰されかけて、私は肩や指先をかたかたと震わせ、そして顔を強張らせてしまった。
みんなも、アクロマの顔を見て顔を強張らせてしまっている。ヘルナイトさんはそのままアクロマの顔を見ていた。何も動じず、ただじっと、彼から目を離さないように見ていた。
経験の差。なのかはわからない。でも私は――アクロマを見た瞬間、怖いと思ってしまった。
アクロマは顔を上げた瞬間、今まで普通だったその目を――ぎょろんっと、見開いたまま私達のことを凝視し、首を右側に微妙に傾けながら、口元をへの字にして指に絡まっていた髪の毛を取らずに、彼は私達のことを、血が流れていないような、そんな冷たくて恐ろしい目で――じぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。と、見ていた。
「………………………っ」
「………………………………う、う」
クルーザァーさんも、ティズ君も強張った顔で、青ざめながらアクロマを見て。
「……………………っ!」
「こ、怖い……っ!」
ダディエルさんはそんな顔を見ても、汗をだらだら垂らしながらも戦意を失うことなく構えを解かないでいるけど……、ボルドさんは対照的に、それを見てびくっと肩を震わせながら臆してしまっている……。
……本人も負けないくらいすごい顔なのに……。
それを見ていたダディエルさんもそう思っていたのだろう……。困惑した顔でボルドさんを見ている。でも……、そんな穏やかな空気ではない。
もしゃもしゃを感じなくてもピリピリとくる威圧を感じる。それのせいで、私はヘルナイトさんのマントから手を離せずにいた。
ううん……、このマントから手を離してしまうと……、立っていられないかもしれない。
そんな先入観からくる不安のせいで、その手を離すことができなくなってしまったのだ。
見なければいいということが最善に選択肢なのだけど……、それが思うようにできない。ううん。目を離してはだめだと……、そう直感が囁いていたんだ。
その直感に従った私は――ぎゅうっとヘルナイトさんのマントにしがみついてしまう。
すると上から私のことを呼ぶ声が聞こえた。私はその声を聞いて恐る恐る上を見上げると、ヘルナイトさんは私のことを見ず、アクロマから目を離さないで凛とした音色でこう言った。
ううん…………………。忠告をした。
「――私から離れるな」
「…………………え?」
どういうことですか? そう言いかけた瞬間……、アクロマは言った。ううん。
笑みを――声に出して零した。
「えひっ」
と――への字にしていたそれをくにっと逆への字にして、その口をそっと開いてから、長くて真っ赤な舌をべろんっと突き出しながら、彼はぎょろ目の顔で、私達をとことん見下すように、小馬鹿にしながら彼は言った。
「なぁにそれ? 暗殺者語なんて俺にはいっさい理解できましぇ~ん」
私は絶句してしまった。みんな絶句した。絶句して、頭の中が真っ白になった。
誰もが、その言葉を聞いて、その言葉を受け入れるような体制にならなかっただろう……。そして――誰もがその言葉に、憤りを感じたに違いない。
そんな私達の雰囲気を察しても、アクロマは逆撫でさせるような言葉を次々と吐いて行く。
「何? 俺を逮捕するの? 俺を逮捕するって誰が決めたのさ。俺はこの世界の基盤を作った張本人だぞ? そんな人物を捕まえるとか、お前たちは馬鹿なんですかぁ? 俺は捕まらねえし、これからもこの研究を続ける。だって俺には――やるべきことがあるんだ。そのために俺は、今ここで掴まるわけにはいかねんだよ。ぶぅぅああああああああかっっ! 第一俺はあのくそみたいな女を殺したが、そのおかげで心から感謝している奴立っていただろう? 心の底から感謝されていたじゃねえか。お前たちは憎しみしかない。が、一部は感謝。賛否両論みたいなそれなんだよ。結局俺がしたことは正しいんだ。証明もされて一石二鳥。俺は正しいことをしている。だから俺は逮捕される筋合いなんて一ミリも、一ミクロもない。と言うかお前みたいな暗殺者がそんな力説言っても、演技にしか聞こえねえっつー。の」
の。
その言葉を強調する様に、張り上げるように言った瞬間。
ピリピリしていたその口調が――突然びりっと張り詰めるようなそれに切り替わり、その言葉を聞いていた誰もが、きっとアクロマに対して、さっき以上に怒りを覚えたのだろう。
アクロマの言葉を聞いていた誰もが、その言葉の一言一言……、ううん、一文字一文字が怒りを掻き立てるような呪文を放っているかのように、どんどんみんなから怒りのもしゃもしゃがふつふつと湧き上がってきていた。
私はその感情を抱くことはなかった。
確かに何を言っているんだという憤りは感じた。
でも……、なんだろう……。怒りたいけど怒れない。まるで何かが私の感情をせき止めているような感覚を覚えた。
ゆえに――怒りを露にすることができなかった。
そんな私とは対照的に……、真っ先にその感情に身を任せるようにして動いた人物がいた。
「~~~~~~っっっ!!」
ダディエルさんはぷくぅっと頬を膨らませて、肺にいっぱいの空気を吸ってからその口に入っている武器を――投擲しようとした。
「っ! ダディ」
ボルドさんはそれを見て、すぐに止めようと声を荒げたけど、ダディエルさんはそのまま口に入れていた針を『――っぷっっ!』と、吐き出して、それをダーツのように放つ。
目にも止まらない速さで向かって来るそれは、きらりと月の光に反射して、どんどんアクロマの喉元に向かって放たれる。
アクロマはそれを見て、その歪で狂気に歪みに歪んでしまった笑みを崩さずに、彼はポケットに手を突っ込んだまま避けようとしない。ううん……。
避ける必要なんてなかったんだ。
ダディエルさんがすぐに放ったその針は、アクロマの喉元を貫くことはなかった。貫かずに、彼の目の前に現れた小型の機械によって、その攻撃を防がれてしまった。
きぃんっ! と――はじかれてしまったのだ。
『っ!?』
「え、ええっ!?」
みんながそれを見て驚き、ボルドさんはそれを見た瞬間、より一層顔を驚愕に染めながら、アクロマが操っているであろうそれを見る。ヘルナイトさんはそれを見ても、首を傾げながら「あれは一体……?」と、言葉を零していた。
私はヘルナイトさんのその言葉を聞いて、固唾を飲みながらアクロマの周りを飛び交うそれを見た。ヘルナイトさんが知らない。私達なら知っているそれを見て……、私は言葉を失いながらそれを見上げてしまう。
アクロマはそんな私達を見ながら「ひぃやっははははははははははっっっ!」と、げらげらけらけらと、哄笑しながら彼はお腹を抱えながら彼は言った。
笑い、目じりに涙を溜めながらこう言った。
「そう! そう! そうだよ――それだよ! そうだよなぁっ。 ファンタジーの世界ならこんなのがあってもいいよなぁっ!? 教えてあげるよ鬼神の騎士!」
アクロマはばっと、両手を広げながら、自分の周りを『ひゅーん』と無音で動きながら飛んでいるそれを、見せびらかすように彼は言った。
自慢げに、そして狂気の笑みを浮かべながら――彼は言った。
「これの名は――ビットだっ! 俺が開発したオーダーウェポン! 俺のことを守り、俺の矛となって攻撃をする便利すぎる武器! 誰も思いつかなかった! だから俺は凄いんだっ! そしてここにあるオーダーウェポンは総計で五機! 司令塔となるビットを壊さないと、こいつらは機能を停止しないっ! どうだ? 絶望――しただろ?」
アクロマは言う。周りを飛び交い、自分のことを守ろうとしている五機の丸くて白いフォルムで、その中心から黄色い光を放っている。
見た限りぎょろ目のようなメカメカしい存在。その存在を見ながら私達は、言葉を失いながらそれを見ていた。
「と、飛んでいる……?」
私も驚きながら、飛び交っているそれを見上げて呟く。みんなも驚きながらそれを見上げている。ヘルナイトさんはそれを見ても、理解できないような目でそれを見ていたけど……。
ただ一人、それを見て驚愕のそれでとどまりながらも、ありえない。そんな表情を浮かべながら――クルーザァーさんは、震える口で言った。
「何だこれは……! なんでこんなものを……っ?」
「決まっているだろ?」
クルーザァーさんの言葉に応えるように、彼は「えひ」と笑みを浮かべながらこう言った。歪に歪んでしまったその笑みで、彼はこう言った。
「武器一つなんて心もとないだろう? それを五つにしたかった。それがこれってことさ」
簡単にして、異常な答えになっていないような回答。至極まっとうだけど、誰もこんなことを予想していなかっただろう。誰も――それをを武器にしようとは思っても見なかっただろう……。
でも――そんな驚いて固まってしまっている私達のことを置いて行くように、一人の人物がすでにアクロマの背後にいた。それは、アクロマの前にいる私達ならすぐにわかったことだった。
簡単に言うと――
ふっと、音もなくアクロマの背後を取って、首元を締め付けようと腕を首元に回し、そのあとで背後から何かをしようとしている感情も何もない――ダディエルさんの姿がそこにあった。
それを見た私達は、はっと息を呑んでそれを見たけど、アクロマはそんなダディエルさんの行動を予測していたかのように、ぴっと――右手の人差し指を突き付けて、そのままくいっと下に向けて下ろした瞬間……。
「遅い」
その言葉が合図となったのか、近くを飛び交っていた一機のぎょろ目球体が――ダディエルさんの背後からぎゅぅんっっ! と、急加速で襲い掛かってきて、ぎょろ目球体の目の部分のところからしゅっと鋭く尖った刃を出して、そのまま突き刺そうとして急接近してくる。
「っ!?」
その気配を感じたのか、音を聞いてたのか、ダディエルさんは少し振り向いただけでその状況を理解して、そのままアクロマの背後から避けて、そして大きく舌打ちをする。歯を突き立てていたぎょろ目の球体はその動きを突然止めて、またアクロマの周りを飛び交うように行動を再開する。
ざっとダディエルさんは少し離れた場所で転げながら着地をすると、それを見ていたボルドさんはダディエルさんを見てすぐに叫んだ。
「だ、ダディエルくんっ!」
「っっっ! ちぃ! くそがぁ!」
でも、ダディエルさんはよろりと立ち上がりながらボルドさんや私達のことなんて気にもせず、アクロマのことを睨みつけながら、ダディエルさんは恨みを乗せた言葉を吐き捨てた。
それを操っているアクロマはそのまま微動だにせず、その場で仁王立ちになってギョロ目の球体を操りながらけらけらと私達のことを見ながら嘲笑っている。
嘲笑いながら、彼は自分の有利なこの状況を体感していた……。
そして、彼は下でずっと待機していた二人に向かって――こう言った。
「Z。カゲロウ。作戦を実行するぞ。いいや――」と言いながら彼は首を横に振り、彼は二人に向かってこんな言葉を告げた。
「実験開始だ。俺の言った通りに動けよ」
その言葉に、Zは「おぉ」と言い、腰から『ガキキキキキ』と言う機械音を出しながら武骨で大きな機械の両手を出して、カゲロウは口元を隠しているマスクに指を引っかけ、再度付け直す。
それを見た誰もが一度だけ臨戦態勢を解いてしまったそれをすぐに整えて構え、気持ちを切り替える。今まさに――私達に向かって攻撃を繰り出そうとしている三人を見据えながら……。
――私達の戦いが、今始まった。




