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PLAY56 BC・BATTLEⅣ(Fight to The limit!)①

 そんな激闘が始まっている最中。とある三人だけはあるところでその戦いをまるでテレビ中継を見ているかのような佇まいでその光景を見ていた。


 薄暗い個室には無数の液晶画面があり、それらをすべて壁に取り付けている。おかげで物の配置に困らない。今でいうところの壁掛けテレビである。


 無数の液晶画面はうっすらと青白く光っており、薄暗い部屋に僅かな光を照らす。


 埃もひどく、長い間清掃されていない状態が液晶画面に引っ付いているそれや辺りに積もっている埃が物語っている。


 そんな不衛生の個室で、電気を点けずに男は備え付けてあった物が散乱している机に脚を乗せ、ぎしぎしと緑の木製の椅子を揺り籠の様に前後に動かし、男と他の二人はその映像を見ながらじっと言葉を発しないで――ただただ見ていた。


 男達が見ている映像は――いうなれば……、()()()()()()()()()()()()()()()……。



 ()()()()()()()()()()()



 監視カメラと言うことがわかる理由としてあげるのであれば――誰もそのカメラに気付いてじっと見る行為などしない。


 つまりはカメラの存在に気付いていないということになる。


 普通監視カメラを見つけたからとはいえ、それをじっと見つめるようなことはあまりないだろう。


 してしまえば変な人確定である。


 そんな監視映像を見ながら、男は「ふぅん」と、気怠そうに声を吐きながらふぅっと息も吐く。


 白衣を着て、オーダーメイトのスーツを着て肩から拳銃ホルダーを下げている。革製の白い靴を履いて――金色のメッシュを入れた黒髪の、吊り上がった目をして、眼鏡をかけた男――アクロマはその一室に設置された監視映像を見て、そしてその映像の中に映っているマリアン、ろざんぬ、メメトリとジンジを見て彼は一言――



「こいつ等使えねーな」と、呆れたように言葉を発した。



 まるで弱いキャラクターを操作している時、そのキャラクターの弱さに驚くくらい呆れたかのような、そんな顔をして、アクロマはその映像に映っているその四人を見てからすぐ――


「――ぶっ!」


 と、感情を小爆発させるようにして、彼は口に溜まっていた空気と唾を一気に吐き出して、吹いた。


 そして――


「あっはっはっはっはっはっはっ! これは傑作だよっ! まさか何の知名度もないプレイヤーにコテンパンにされるとか、あーははははは! 笑える! ひーっひひひひひっ! てかこんなにコテンパンにされるとか、お前等は噛ませ犬かって突っ込みたいな! なぁ。そう思わないか?」


 アクロマは背後にいる二人に向かって、隠しきれない笑みを浮かべなが聞く。


 しかし背後にいた二人は何も答えない。


 それを見たアクロマは――「はぁ……」と、今まで興奮していた感情を鎮静化させるように息を吐き、再度監視カメラの映像に映っている彼等を指をさしながらアクロマは言った。


 今でもなお、けらけらと込み上げてくる笑いを抑えきれずに、笑みを顔に出しながら、彼はその映像に映っている仲間に向かって――



「なんでこいつ等を勧誘したんだっけ? こんなに弱いとは思わなかったわ。なに? あの戦場狂いの女――型に入りたくないとか言って、結局は自分が人と違うことをして目立ちたいだけの者なんじゃねーの? オカマ男なんてあんなのただの馬鹿力じゃね? あいつ戦士なんだろ? 所属。ちゃんと所属らしいスキル使って負けろって。メメトリは魔獣の力に頼りすぎ。ジンジに至っては影の力に頼りすぎっていうか……、影の本名って『狂喜の樞人形(しんでぃちゃん)』じゃなくて『狂喜の樞人形(キル・マリオネット)』って名前なんだろ? 影に亡くなった自分の娘の名前を付けるのはさすがの俺でも無理があるわー。と言うかないってこれは」



 と言いながら、アクロマはけらけら笑いながら負けてしまった自分の仲間の罵倒を続ける。滑稽に、嘲って、彼は自分のために命を張って戦った徒党の仲間の罵倒を続けた。


 一時期ではあるが、己のために命を懸けた仲間。徒党の仲間。その仲間に対して、アクロマはその光景を見ながら、からからと笑っていたのだ。『弱い』と言って罵っていたのだ。


 監視カメラ越しであろうと、この場合は少し労いの言葉――慈悲を与えるのが普通の思考であろう。


『まぁまぁだったよ』、『よく耐えたな』、『お前にしては及第点だったよ』。などなど、いろんな言葉があるはずだ。


 だがアクロマなそんなことはしない。むしろそんな感情などないのかもしれない。


 アクロマはその光景を見ながらも、「ひーっ」と目じりに溜まった笑いの涙を指で拭いながら、彼は言う。


「ほんとこいつら弱いわー」


 そんな日常茶飯事の光景を見ていた男は、腕を組みながらそのある監視映像を見ながら、顔を顰めていた。無言で、その映像に映っている人物を睨みつけるように、苛立った表情で彼は大きく舌打ちをする。


 白衣を身に纏ったジャージ姿の黒髪の青年。肩まである髪の毛。そして常にへの字にしている口元、吊り上がった目。その顔からは人間味がない。きっと初対面の人がそれを見たら、ぞっとしてしまうような顔だ。


 そして黒いジャージに白衣。靴は緑色のプラスチック製のサンダルといった簡素な服を着ている人物――Zは、アクロマの言葉を耳に入れながらある映像を凝視して無言のまま立っている。


 そんな光景を見て、Zの隣にいた人物は――Zに向かって少し冷たい音色でこう言った。


「おい、聞いているのか? アクロマさまの話を、聞いているのか?」

「………あぁ?」


 Zは隣にいる人物に対して、鬱陶しそうに顔を顰めながら睨みを利かせる。じろりと睨んだが、隣にいた人物はZに臆することもなく、ただただ淡々と、冷たい音色でその人物はZの目をしっかりと見て、そしてアクロマの方に視線を移しながらこう言う。


「アクロマさまが聞いているんだ。答えるのが正常の思考回路だ。お前は異常だからこそ、無視ができる私はさっきまで頷いていたんだぞ? アクロマさまに対しての忠誠心が薄いんじゃないか?」


 その人物は真剣な眼差しで、アクロマとZを交互に見ながら、真剣な音色で告げる。


 それを聞いて、Zははぁっと、大きく、そして長い溜息を吐きながら彼は、その人物に向かって腕を組んで、その思考回路と人格に呆れながら彼はその人物――その女性を見た。


 褐色の肌に吊り上がった銀色の目と長い耳が印象的な銀色の長髪をツインテールにした女性。服装は黒一色の忍装束だが、袖が切り取られているデザインで、隠れやすい服装ではなく、動きやすさを重視した服装となっていて、足袋など履いていない。素足の状態でいる。口元にマスクをつけた女性を見たZは、彼女の見た目とは裏腹の異常性と依存性、そして何より、アクロマに対して脅迫概念に近いような忠誠心を見ながら、Zは女性の顔を見て、頭を乱暴にがりがりと掻きながら、Zは言う。


「うるせぇ。ちゃんと聞いていたが、答えることないだろうと思って答えなかっただけだ」


 Zは探訪な口調で言う。


 それを聞いていた女性は、すっと目を細めてからじっとZを冷たい目で見つめながら、彼女はZに向かって何かを言おうとした時――


「やめておけ。Z、そしてカゲロウ」


 アクロマは監視映像を見ながら、彼らを見ないで制止をかけた。それを聞いた女性――カゲロウははっと息を呑みながらすぐさまアクロマの背中を見るように、背筋を伸ばして敬礼しながら、彼女は張り詰めた音色で「も、申し訳ございません……っ! アクロマさまっ!」と、謝罪の言葉をかける。


 Zはそんな彼女の忠誠心を見ながら、内心彼女の性格に呆れながらアクロマのほうを見る。


 アクロマはそんな二人を見ないで、監視映像に映っている映像の数々を見ながら、今までけらけら笑っていたその表情を一瞬にして消し去ったかのように、腕を組んで再度椅子をぎしぎしと揺らしながら、彼は言う。


「俺は確かに、お前達に向かって言葉を発したが、そのことでいちいち返事をするのも面倒くさいだろう? だから必要な時だけ返事をすればいい。俺が『これこれはこうですか?』てきな疑問を言った時にだけ返事をすればいいんだ。わかったな」

「はっ」

「………おぅ」


 アクロマの言葉に対して、カゲロウは敬礼をしながらそっと頭を下げて返事をして、対照的にそっけなく返事を返したZ。その言葉を聞いていたアクロマは、Zの方を見ながら彼は、意地悪そうな笑みを浮かべ、アクロマはZを横目で見ながら――こんなことを聞いた。


「お前――今までさんざん馬鹿にしてきた弟に負けたこと、まだ悔しいんだろう?」

「っ!」


 その言葉を聞いた瞬間、Zは今までイラついていた表情を一変させて、かっと顔を赤くさせながら目を見開く。その顔を見たアクロマは、にっと笑みを浮かべながらZに向かってこう言う。


「まぁそうだろうなぁ。お前意外とプライド高いし、今までストレス解消の道具として使っていた弟に負けるって、相当心に堪えたんだろうなぁ。相当悔しかったんだろうなぁ? んん?」


 その言葉を聞きながら、Zはあの時――駐屯医療所で起こったことを思い出していた。あの時、再会した時は今までと同じように、がくがくと震えながら、自分が与える暴力に耐えるように、亀が甲羅の中に入って防御態勢をとるような蹲り方をしながら、ティズは震えていた。


 が――それが突然一変したのだ。


 今まで自分の対して震えていたティズが、自分を恐怖の対象として見ていたティズが、初めて反抗したのだ。しかも大声を上げて、自分に対して暴力を振るった。


 自分がしたことをそのまま返されたかのような衝撃。


 それを受けたZは、怒りを爆発させて戦いを挑んだ。しかし結局は負けてしまった。


 クルーザァー、ガルーラ、メウラヴダーの手によって。


 そのことを思い出しながら、Zはぎりぎりと歯を食いしばりながら口の前に持ってきた左手の親指の爪を、ガリッと人間の体で一番固い箇所――歯で爪を噛む。


 がりがりと噛みながら、その爪だけを深爪にして、彼はストレス発散を目論む。


「ううううう……っ! うううううううっっっ!」


 がりがり、むしむし、がりがり。べりべりと……、爪を一部を毟り、爪の皮を歯で剥きながら――Zは怒りを発散させながら爪を噛み続ける。


 そんな光景を視界の端で見ていたアクロマは、図星。と思いながらZを見て――


「まぁ――その発散ももうすぐできるぞ」と言って、アクロマはそっとその場で立ち上がりながら、今まで足を乗せていたその机に手をつける。映像を見ながら、彼は言う。


「もうすぐ――()()()()()()()()()……、あの小娘共が来る。だがあの小僧はあの帝国の奴のところに待機してしまったか……。来るのはあのB級の大男……。か」


 と言いながら、アクロマはある映像に映っている六人をじっと見つめる。その目はただ見ているだけの目ではない。何かを観察するような目。


 実験動物のマウスを見るような、感情のない目で、彼はZとカゲロウに向かってこう言った。見ないで言った。


「よぉし。こっちも一応作戦としてだが……、俺はあの小娘をじっくりと観察したい」


 アクロマはそっと右手を前に出しながら、人差し指を突き出し、映像に映っているその小娘の顔の輪郭にその指を添える。『きゅぅ』と、その映像に映っている少女の顔の輪郭を指でなぞった瞬間、ガラスを拭く音が室内に響く。


 それを聞きながら、アクロマは続けてこう言った。映像を見ながら、好奇心が疼いているような――不気味なくらい無邪気な笑みで……、彼は続けてこう言った。



「だから――カゲロウ。例の()()をしようと思う」



「っ! ()()ですね……っ!」


 ()()


 その言葉を聞いた瞬間、今まで冷静な顔で佇んでいたカゲロウは、突然感情が息を吹替えしたかのように、感動の笑みを浮かべながらアクロマの背中を見て聞くと、アクロマはカゲロウを見ずに「ああ」と頷く。


 その言葉を聞いた瞬間、カゲロウは嗚咽を殺すような声を上げて、つぅっと頬を伝う液体を肌で感じながら、彼女はその場で膝をついた。


 敬意を表すそれで、彼女は膝をつきながら頭を深く、深く垂らして、彼女は言う。


 アクロマと言う己の命を救ったものに対して、彼女は言う。


「あぁ……。今日はよき日です……っ! どれほど待ったことか、この日が来るのを……。とうとう私は、あなた様に恩義を返すことができる……。恩返しができる時が来たのですね……っ!」

「ああ」


 カゲロウの言葉に、アクロマは彼女のことを見ずに映像をじっと見つめながら、彼は言う。


「お前は俺のためにずいぶん忠義を尽くしてくれた。その恩返しが今こそ叶う。お前のこの世界での力を使って――()()()()()()()()()()()()()の動きを封じろ。俺はあの小娘を、Zは愚弟を。カゲロウ――お前は厄介な『CA』の奴らを処分しろ。いいか? 失敗は許されないからな……って言っても、これは完全に失敗することはない。確実に成功する術を、俺は編み出したんだ」


 アクロマは言う。無邪気さと狂気が合わさってしまった、この世にあってはいけない笑みを彼は浮かべ、そして不可解なことを口にしたのだ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を、俺は有した。ゆえに俺はどのアルケミストよりも最強。あの親父よりも強い力を編み出して、手に入れたんだ。その実験も兼ねて――ここに映っている六人を使って検証して証明してやる」


 俺が――すごいということを。


 その言葉を言った後、アクロマはばさりと白衣をはためかせながら、彼はZとカゲロウに向かってこう言う。


「行くぞ――お客人を待たせてはいけない。すぐに支度しよう」

「っは!」

「………おう」


 まるで客人をここまで呼んで来させたかのような言葉。


 その言葉を放ちながら、アクロマは二人の間を通り過ぎながらその個室を後にする。その後に続いてカゲロウも歩みを進め。Zも少し距離が開いた後で、二人の後に続いて歩みを進める。


 液晶画面の電源を切らず彼らはその個室を後にして、自分達の持ち場に歩みを進めて行く。


 初めからハンナ達のことを知っているかのような――否。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そしてその作戦を頭の中にしまいながら、アクロマは無邪気な笑みを浮かべて、これから起こるであろう己の研究の成果を発揮することに夢中になっていた。


 ――どうなるかな? どうなるかな?


 アクロマは思う。るんるんっとスキップしながら、彼は思った。


 ――()()()()()()を見た瞬間、どんな顔をするのか、楽しみだ……っ!



 ◆     ◆



 それよりも少し前に遡り――シェーラ達は……。


「っ!」

「っとお!」


 シェーラと虎次郎はとんとんっと後ろに跳びながら後退し、ボロボロになりながらも目の前で悠々とした面持ちで攻撃を続けているクサビとヘロリドを前に、二人は珍しく苦戦を強いられていた。


 さっきと同じように、彼らは苦戦を強いられていた――否、それ以上の苦戦だった。


 ――やばい……。やばい……。……一瞬思っちゃった……。勝てないかもって、思っちゃった……っ!


 シェーラは幾度となく続いているこのスパイラルに希望すら見えなくなっていた。それはなぜか。

 

 答えはあの時――クサビが放った魔法の時から遡らないといけない。


 あの時――大きな火の玉が隕石のように落ちてきたのは覚えているだろうか?


 その時、シェーラは咄嗟の判断で、自分が持っている防御詠唱――『滝の(ウォーターホール・)窓掛(カーテン)』を発動し、火でできているその攻撃を水の防御で防いだのだ。


 ゆえに炎による攻撃は防いだ。


 防いだのはいいが防戦一方では何の勝機も見込みもない。ただ時間を無駄に潰しているだけになってしまう。


 それを感じ、シェーラは即座にその詠唱を解いたと同時に駆け出す。


 虎次郎も駆け出しながら刀を抜刀しようとした。


 が――クサビは未だに「こんこん」と笑いながら肩を震わせてくつくつ笑っている。


 その光景を見ながらシェーラは多少怒りを覚えたのか、むっとした顔で剣に氷の冷気を纏わせながら彼女はとんっと低く跳躍し、まず最初に厄介なクサビ――


 ではなく。


 クサビの横を通り過ぎて、彼女は背後にいるヘロリドに向かってその剣の刺突を繰り出す。


 ヘロリドはそれを見て、自分の前に手をかざしながらこう言う。


「『魔反鏡(マジック・ミラー)』」

「っ! 『属性剣技魔法――『氷塊(ヒョドガ・)(サーベル)』ッ!」


 そんなヘロリドの言葉を聞いて、シェーラは内心悪態をつきながら刺突からすぐに斬撃に切り替えて、彼女は己のスキルを放つ。


 ひゅおおおおおっと、剣から噴き出す冷気。


 それを感じながら、彼女は二本の剣を使ってヘロリドのその目の前に現れた壁を壊すように、右手に持っていた剣でその盾に攻撃を繰り出す。


 ぎぃんっっ! と言う鉄特有の音が響く中、すぐにそれが来ることを予測していたシェーラは、即座に握手に持っていた剣から手を離す。と同時に――


 ギィンッッ! と、バリィンッ! と言う、さっきの音とは違う湾曲が混じったような音を響かせながら、シェーラが持っていた剣はヘロリドに届く前に、ガラスが割れる音と共にはじかれてしまう。


 そのままシェーラが持っていた剣はくるくると回りながら、シェーラの真後ろにある壁に向かって速度を落とすという言葉を知らないかのような速度でどんどん加速して――


 ざすりと突き刺さる。


 それを見たシェーラは、残り一本となった氷の剣を使って、無防備と化したヘロリドに向けてその剣の斬撃を繰り出そうとしていた。虎次郎もそれを見て、すぐに驚いてシェーラのことを見ようと振り向いているクサビの間合いに入りながら、彼は刀の鞘から刀を抜刀する。


 居合抜きを送り出そうとした――その時!


「んうにぃいいいいい」


 っと、ヘロリドは声を上げながらペイントの顔を笑みで歪ませ、両手を突き出しながら――スキルを連続発動させる!


「『(ツインアタック・)反射(カウンター)(ミラー)』ッ! 『(ツインアタック・)反射(カウンター)(ミラー)』ッ!」


 叫んだ瞬間、ヘロリドとクサビの前に現れた白と黄色が混ざった半透明の壁。それを見たシェーラと虎次郎は、驚きながらそれを見て、そしてそのまま攻撃する手を止めることができず、二人はその壁に向けて攻撃を放ってしまった。


 ごぉんっと言う音と、ぎぃんっと言う音。同時に奏でられる防御音。


「――!」

「――っ! おぉぉぉ!」


 その壁に向けて攻撃してしまったシェーラと虎次郎は、驚きながらもその反動に耐えるように、その反動を殺しながら押し出す。


 押して押して、押しまくって、その衝撃を受け流すのではなく、拮抗を保つようにして耐える。


「んんんんぬうううううああああああああっっ!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!」


 互いが互いに、その反動に耐えながら、自分に降りかかってこないように耐える二人。しかし――


「こん、こん、こん」


 クサビはそんな二人の行動を嘲笑うようにして、口元に手を当てながら、隠してくつくつ笑っていると、彼は両手を広げ、そしてシェーラの方向と、自分の前にあるシャーマーのスキル――『(ツインアタック・)反射(カウンター)(ミラー)』に向けて彼は――


「『豪炎(フィアガ)』と……、そうだな……。あぁこれだ。『轟雷(ギオガ)』」


 魔法スキルの最大級のそれを、己の前にある壁とシェーラの前にある壁に向けてそれを放った。


 赤い炎は――今まさに虎次郎が押さえているその壁に向けて、彼は己の前にある半透明の壁に、()()()()()()()()()()()()()()()


 黄色い雷は――今まさにシェーラは耐えて押さえているその半透明の壁に、ヘロリドを攻撃する様に放った。


「っ! え?」

「まさか――っ!」


 その光景を見た二人は、まさかと思いながらその攻撃を見て、二人はクサビがいるその方向を見て、力を抜かずに見た時、クサビはあくどい笑みを浮かべながら――


「そのまさかさ。こん、こん、こん」と、くつくつと笑ってその未来を思い描きながら笑った瞬間、豪炎(フィアガ)轟雷(ギオガ)はクサビとヘロリドの前にある壁に当たって――


 バチィン! と、跳ね返ってしまった。


 シェーラと虎次郎に向かって跳ね返り、その攻撃を受けてしまったせいで、二人は先ほど耐えていた拮抗を解いてしまい、そのまま己の攻撃を自分で受けてしまう。二重の攻撃を受けてしまったのだ。


「っ!」

「ぬぅっ!」


 自分の武器によって自分の体が傷つけられる。自分のせいで、自分にダメージが返ってくる。


 それを感じながらも、シェーラ達はずたんっ! と、冷たい床に叩きつけられ、そしてそのままくるんっと空中で一回転しながら――現在に至るということである。


 さっきからずっとこの繰り返しなのだ。


 攻撃しても、ヘロリドのスキルによって跳ね返されて、結局は自分にその攻撃が返ってしまう。物理も魔法も、すべて跳ね返されてしまう。そして攻撃担当のクサビが攻撃をしてシェーラ達を追い込む。


 これの繰り返し。


 シェーラ達は防戦一方。対してクサビ達は攻撃一方。


 完全に劣勢からのスタートで、今も劣勢継続中。


 そんな状態の中、クサビは「こん、こん、こん」とくつくつと笑いながら、シェーラ達を見てこう言う。


「どうしたんだぁい? まさかこの私に傷一つつけれずに、ここでくたばってしまうのかぁい? そんな妻んないことはやめてくれよぉ? ここから楽しくなるんだろう? ここからがメインディッシュだろう? さぁさぁさぁ。私を楽しませてくれよ。私を爆笑させてみろ。這い蹲って命乞いをするところをちゃんと目に焼き付けて大笑いしてやるからぁ――」


 死ぬなよ。


 と、クサビはシェーラ達を見下しながら言う。


 まるで自分の勝ちを確信して、相手の負ける様を拝むような目でクサビは言う。


 それを聞いていたシェーラは、つい先程――一瞬だけだったが脳裏に浮かんだ言葉を消去して彼女はそんなクサビの言葉を真っ向から否定する様に、彼女は凛々しい声でこう言った。



「――やーよ」



 その言葉を聞いた虎次郎はシェーラのその顔を見て、ふっと笑みを零しながら鞘に収まっている刀をしっかりと持ち、居合抜きの構えを再度とる。


 それを見ていたクサビはくつくつと笑いながら「こん、こん、こん」と言い――すっと目を細めた冷たい眼でシェーラ達を睨みつけ……、低い音色でこう言った。


「……早死に、したいのかな……?」


 その言葉に反論する様にシェーラと虎次郎は武器を構えながら相手を見据える。戦う姿勢を崩さず、且つと言う気持ちを持ちながら――二人は向き合ったのだった。

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