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PLAY03 エストゥガにて⑥

 ギルド長室から出た私達は、ギルドの受付がある大広間で話していた。


 その場所は私達が最初に目覚めたあのギルドの場所と同じなんだけど、ところどころはちゃんとエストゥガ仕様になっているらしく、イスと大きな横長テーブルは大理石なのかと言うようなアゲートのようなものが入っている石造りの家具。受付のところも大理石の様な石で作られていて、一見して見ればすごい防犯性が高そうな光景だ。


 ギルドの受付や壁周りは石で作られた大きな武器等が立てかけられていて、ぱっと見その場所は大きな種族専用の武器庫にしか見えないのも事実。


 そんな場所でも薄黄色の明かりがいくつも等間隔で天井や壁につけられていて、その光を見ていると本当に安心感が込み上げてくる。


 これはこの世界特有の魔法なのかな……。そんなことを思いながら私は今いる場所を――みんながいるその場所を見ながら話を聞いていた。


 キョウヤさんは私達のどっちかを見て、誰が私なのか。それを聞くために一旦場所を変えて話そうということになったのだ。


 本当ならあの場でもよかったのだけど、ダンゲルさんはサラマンダーの浄化のため、少し席を外すと言ってギルド長室に入れなくなってしまったのだ。


 いうなれば立ち入り禁止になってしまったということである。


 なので、今現在私達はこの場所で話をしている。


 私とモナさん、そして突っ込み疲れたエレンさんはギルドの石造り長机の椅子に座っている。他の人達は立ちながら話を聞いていた。


 なお、私達の前の石造りの長テーブルには、それぞれの冒険者免許が置かれている。身分の証明と、そして強さを確かめるそれだ。


 この自己紹介で言う事――


 それは、自分の名前と所属、種族と……。どんなスキルを持っているのか。ということである。


「それじゃ改めて……。オレはキョウヤ。蜥蜴人の亜人。ランサーだ」


 と言いながら自分を親指で指差して、笑顔で言うキョウヤさん。キョウヤさんは犬歯が見えるような笑顔で更に言う。


「槍スキルは大体覚えているし、俺の蜥蜴人の特性で、炎に強く、雷攻撃は無効。レベルは五十」

「うぉっ! スゴイ数値!」


 キョウヤさんの冒険者免許を持っていたエレンさんが驚きの声を上げて見ている。近くにいたアキにぃも驚いて見て、ララティラさんも見て、口元に手を当てて驚いていた。


「モルグの数値がえっと……、HP:9の9,002、MP:3の3,215で、武力が10★で1,479、硬力5の582、知力1の189、制力4の457、神力9の906か。器力の命中率は7の700、素早さが10★で2,956っ!? 運が7の798で……合計が65の★Ⅱだっ!」

「ほんまやっ!」


 アキにぃの驚きの言葉を聞いて、ララティラさんも驚いてそれを見る。


 キョウヤさんはあっけからんっとして首を傾げながら――「んなの、フツーじゃねえの?」と、平然と言った。


「いやいやっ! 攻撃力はともかく、素早さが尋常じゃないだろうっ!?」


 エレンさんの言葉に、キョウヤさんは「いやいや」と首を横に振って――コウガさんを見て彼は言った。


「コウガだって素早さカンストしてんだろ? 同じじゃねーの? オレこの身体だから早いって思っていたし」


 ……本当に、驚いてもいない。それを見ていた私は、少しキョウヤさんの心境を知りたいと思った……。なんとなくだけど、アキにぃとは違った大人の余裕を感じる……。


 そう思っていると、コウガさんはキョウヤさんを睨みつけて……。


「……俺でも素早さがカンストしても――数値だと1,059だからな」と、毒を吐く。


 コウガさんはエレンさんの冒険者免許を見て、「はぁん」と納得したような声を上げて言った。


「あんたは……エルフ亜種のアーチャー。レベル五十八の、命中率カンストのモルグ65の★Ⅰねぇ……」

「なんだその妙に納得したような声の上げ方は……」


 コウガさんのその声色を聞いたエレンさんは、少しムカついたようなそんな目で見る。


 コウガさんは「いんや。別に悪い意味のそれじゃねえ」と首を横に振りながら冒険者免許をエレンさんに返した。


「……人間と他種族の差が出ているなって思ってな」

「?」


 その言葉に、私は首を傾げていた。


「ん? あんたは、ララティラさん……、で良いのか?」


 グレグルさんはララティラさんの冒険者免許を手に持って、モルグを確認している。


 ララティラさんも同じように、コウガさんのカードを手に持って見ていた。それを聞いたララティラさんは「そうよ?」とグレグルさんを見上げて言う。


「何か不満な点があったかしら?」と、さっきとは違って、標準語で聞くララティラさん。グレグルさんはそれを聞いて「いや――」と相槌を打ってから……。


「あんたのモルグもスゲーなって思って……。なにせ、ウィザードで、魔力カンストの60の★Ⅰだ。俺が見た魔人族でも、きっとカンストしている奴はいなかったぜ。ダンさん……だったっけか? あんたもかなりモルグ高けーぞ」

「俺のことはダンで良いぜっ!」


 ダンさんはぐっと腕を上げて、ガハハッと笑顔で言う。それを見たグレグルさんは、頷いて「それじゃダン」と言ってから、ダンさんの冒険者免許を見て言った。


「体力と武力がカンストしている。何より水属性の攻撃もできる。戦力になるな」

「そうか! 照れるぜっ!」


 ダンさんは頭を掻きながら豪快に笑うと――


「……きっとー! サラマンダー戦になったらぁ! 魔導師の力は必要だろぅからなぁー!」


 遠くから聞こえた声に、私達はその声がした――ギルドのドアの方を見た。そこには、先ほどパトロールに行っていなくなってしまったブラドさんが、隠れるようにそこにいたのだ。


「あ、ブラドさ」


 と、私は席から立って、ブラドさんに近付こうとした時だった。近くにいたキョウヤさんは私の前に合って――焦った笑みで言う。


「だぁー! 待って待って! ブラドは女が苦手なんだよっ! 悪ぃけど、今はあんまり近づかないようにしてくれ」


 混乱も相まってだし。と、キョウヤさんは私の肩に手を置いて言う。


 説得の方がいいのかな……。ブラドさんを見ると……。


 あぁ、ドアに隠れていたのに、見えなくなっている……。


 それを見た私は、キョウヤさんを見上げて、申し訳なさそうに頭を下げて――


「はい……。御免なさい……」と謝った。


 それを聞いたキョウヤさんはよしっと言って、私の頭に手を置いて――わしわしと乱暴に撫でる。私は頭を上げる。


 すると、そこには申し訳なさそうに肩をすくめているキョウヤさんがいて――


「まぁあいつも慣れればなんとかなると思うから、そうしょげるな」


 と言った。


「あいつのカードはくす……っ! うっうぅんっ! 預かっているから、あいつの戦力も参考に出来る」


 コウガさんはいつの間にか、テーブルに置かれていない冒険者免許を懐から出して、ドヤ顔で言って見せていた。遠くから……。


「てめぇっ! なに俺の免許くすねてんだこらぁぁぁーっっ!」


 ブラドさんの怒りの声が聞こえた……。


 そんなブラドさんの声を無視して、コウガさんはブラドさんの冒険者免許を見て……。すっと目を細めた。


「……どしたコウガ」


 グレグルさんが聞くと、すっとテーブルに置かれたモナさんの冒険者免許と見比べて……。頭を振った。


 コウガさんは、重い口を開いた……。マスクでわからないけど、口を開いた。


「ブラドは……、ギルドで待機だな……」

「はぁ!?」


 コウガさんの言葉に、ブラドさんはまたドアに隠れながら顔を出して、コウガさんに向かって指をさして怒鳴る。


「なんで俺が待機だよっ! こう言う場合はパラディンのグレグルだろうがっ! 守り高けぇし! 俺の方がレベル高けーぞっ! グレグルは五十八! 俺は五十九!」

「たった一差じゃねえか。それに……、さっきグレグルのモルグ見たが、グレグルとキョウヤは採用だ」


 コウガさんはブラドさんを見て、はっきりと言う。それを聞いたブラドさんはショックを受けた顔をして――


「――なぜっっ!?」と声を荒げる。


 それを聞いて、コウガさんは冒険者免許を見て――言った。


「グレグルのモルグは攻撃と制力がカンストしている。そしてお前のモルグは……カンストなしだ。んで、ここにいる怪力女もどきの」

「怪力女って――私のことっ!?」


 コウガさんの言葉に、モナさんは自分のことを言われたのだろうと、自分を指差して驚く。私は「えっと……」と弁解の言葉を探していたけど……、何も浮かばない……。


 ごめんなさい……うぅ。


 私は心で謝る。


 それでも、コウガさんはモナさんを見て――


「こいつはレベルは低い。でも、モルグは神力カンストしている。武力、硬力、制力も高レベルだ。お前とは違ってきっと戦力になる。んで、切り札の餓鬼は絶対に同行」


 これからの流れを口頭で説明しようとした時だった。




「――ちょっと待ってください」




 突然――今まで言葉を発していなかったアキにぃが静かに声を張り上げた。コウガさんを見て、アキにぃは冷たい目で見て言う。


「今回のサラマンダーのことについて、俺は協力には感謝しています」

「? ああ」


 何を言っているのだろう。そんな顔をしているコウガさん。


 グレグルさんも、キョウヤさんもそれを見て、コウガさんと同じ心境なのだろう。


 でも、エレンさんとララティラさんと、モナさんはそれを見てなんとなくだけど……解ってしまったらしい。


 ダンさんはきょろきょろと皆を見回しているだけだけど……。


 ですが。とアキにぃは言う。そして――


「正直、俺はハンナと二人で行動したいんです。ですので、浄化も、倒すのも、俺一人で十分です」


 それはあまりにも唐突で、そして突き放すにはすごく苦しい言葉だった。それを平然と、傷つける言葉として言ったアキにぃ。


 それを聞いたエレンさん達は、目を見開いた顔をして、アキにぃを見ていた。


 怒りなどない。


「あ、アキにぃ……っ?」


 私は慌ててアキにぃを見て、そしてモナさん達に弁解しようとした。でも、その前に――


 ずぃっと、アキにぃの前に現れたのは――コウガさんだった。


 少し屈んで、まるでドラマでよく見るヤクザの睨んだ目つきで、アキにぃを睨みつけていた。


「てめぇ……、そりゃ、俺達じゃ力不足ってか……?」

「そう言うことになります」


 だんだん険悪な雰囲気が漂う……。


「思ったことを口にすることはいいことって聞くが……、お前の場合は、時と場所を考えたらどうなんだ……?」

「俺は時と場所を選んで、それで口を開いただけのことです。俺は一人でもうまくいけた。だから今回だってうまくいく」

「大層な自信家だなぁ……、おい」


 だんだん空気が、淀んでいく……。


 それを見て、流石にまずいと思った私は、すぐに間に入り込もうとした時だった……。



「あれ? ブラドくんなんでこんなところにいるんですか?」

「うぉぉっ!? エンドー!」



 ドアの方からまた声。


 今度はブラドさんの声と、もう一人聞いたことがない声だ。


 私はその声がした方を向くと、ドアの方から一人の金髪の人が顔を出した。


 肩まである少し跳ねた金髪、前髪の一部を垂れ流し、服装は黒い独特な模様をしているローブに近い服装。脚も隠れているそれだ。目元は閉じているのに、まつ毛と下まつ毛の一部が少し長い。女の人に見えるけど、男の優しい面持ちの人――エンドーさんがそこにいた。


 その人はこの場の空気を読んで、こてりと首を傾げて――


「……コウガくん。この人達が……?」

「あぁ?」


 とコウガさんは毒を吐くようにじろっとエンドーさんを睨み、そして未だに冷たい目つきで見ているアキにぃを見て……。静かに……。


「……今決裂しそうだ……」とこぼした。その声を聞いて……、エンドーさんは近くにいた私に気付いたのか……。「あぁ」と手をパンッと叩いて、私の視線に合わせるようにしゃがんで――


「君がハンナさんだね。ギルド長さんから聞いたよ。希望だってね」

「えっと……はぁ」


 そんな笑顔で言って、そして恥ずかしいことをさらりと言うエンドーさん。それを聞いた私は、少し離れながら言う。それを見たエンドーさんは「あれ? 照れたのかな?」と言いながら、今度はアキにぃを見て言った。


「君は……」

「ハンナの兄のアキです」


 エンドーさんのことを見て、淡々と言うアキにぃ。


 それを聞いたエンドーさんは、少し考える仕草をして、コウガさんを見た後……。なんとなくだけど、状況を理解したようで……。


 エンドーさんはニコッと微笑んだ後、私達に聞こえるように、笑顔でこう言った。



「なるほどなるほど。アキさん。あなたはやきもちさんなんですね?」



 その言葉に、アキにぃはぐわんっとエンドーさんを見た。驚いた顔で、エンドーさんを見て、アキにぃはエンドーさんの胸ぐらを掴み上げて何か小さい声で言っている。


 それに対してエンドーさんは笑みを絶やさずに小さい声で話していた。


「?」


 一体、何を話しているんだろう……。それと、なんでヤキモチ?


 そう私は首を傾げることしかできなかった。皆も驚きながら、目を点にしてその場で立ち尽くしている。


 けど――


「なんだなんだ? 何の話だ?」


 ダンさんだけは頭を掻きながら、面倒臭そうに言う。


 私の近くに来たモナさんも、私に近づいて、小さい声で……。


「あの人、唐突に来てすごいこと言ったね……。何が目的なんだろう……」と言った。

「さぁ……。よく、解りません」


 私はモナさんに対し、そう耳打ちをする。


 正直な話。本当にわからない。


 エンドーさん。一体どんな人なんだろう……。そして、エンドーさんから感じる……。



 どろどろとしたもしゃもしゃは――何を表しているんだろう……。



 すると――


「あはは。そうやってがっつかなーい」


 けらりけらりとアキにぃの手をそっとどかして。二、三歩後ろに下がって――エンドーさんは軽く会釈をしてから「自己紹介が遅れて申し訳ございません」と言って――


「ぼくは吸血鬼族の亜人、シャーマーのエンドーです。以後、よろしくお見知りおきを」

 と言った。


「……、吸血鬼、シャーマー……」


 私はその言葉は口ずさむ。吸血鬼族は、主に体力を吸い取って自分のHPにしてしまう種族で、シャーマーは確か……。


「シャーマーて! 属性耐性とかができるあの所属ですかっ!?」

「ええ」


 モナさんが興奮した面持ちで前に出て、エンドーさんを見て叫ぶ。それを聞いたエンドーさんは微笑みながら頷く。それを見て、聞いたモナさんは、私を見てうきうきした顔で言った。


「シャーマーがいればきっと浄化できるよっ! ダンジョンはすごく熱そうだし、これならいけるんじゃないっ!?」

「ふえ……っ。えっと……はい」


 あまりのゴリ押しの気迫に、私はこくこくと頷くことしかできなかった。でも、それを聞いたアキにぃは――


「ちょっと! 俺は一人でも……」


 と、声を荒げた。


 でも――エンドーさんはそれを聞いて、ぱんぱんっと手を叩きながら――


「はいはい。一人だとできないこともあるんです。試しに……」と言いながら、エンドーさんはちらっととある方向を見た。


 そこにいた人を見て、エンドーさんはニコッと微笑んで……。言った。


 ……、何だろう。この人が来てから、エンドーさんの空気に呑まれているような……。


 そんな空気を感じたけど、エンドーさんは言った。




「そこにいるキョウヤくんと戦ってもらえますか?」




「――はぁ!?」

「ん? オレ?」


 エンドーさんの言葉に、アキにぃはぎょっと驚いて、キョウヤさんは自分を指差して言う。それを聞いたララティラさんが「突拍子ない展開やな……」と関西の言葉で驚きの声を上げる。


「おいおいおい……、いいのかエンドー。なんで突然そんな」


 グレグルさんは呆れながらそれを聞く。するとエンドーさんは。


「今君達交渉していたんだろう? このエストゥガで暴れているサラマンダーのことについて。でもコウガくんの短気は損気君が出てきて、あろうことはヤキモチくんが現れて、てんてこ舞いな状態になっている」

「まぁ………………、合っている」

「合ってねえっ! と言うか俺のどこが短気だぁっ!」


 グレグルさんの呆れから、納得と言う顔と言葉で――コウガさんはがぁっと襲い掛かるような形相でグレグルさんに突っかかろうとする。けど、それもグレグルさんの片手の静止によって、無駄に終わる。


 エンドーさんはそれを見て、くすくすと笑いながら言った。


「だから、無理にでもわからせないといけないと思ってね……」と、ちらっとアキにぃを見る。


 アキにぃは何も言わない。ただエンドーさんを睨んで見ているだけだった。それを見て、エンドーさんは言う。


「キョウヤくん。これからここにいるエルフの人と戦ってほしいんだ。素手だけで」

「えぇっ!? マジかよぉ!」


 エンドーさんの言葉に、キョウヤさんはうへーっと前屈みになって唸る。エレンさんはそれを聞いて「なんで素手なんだ?」と聞くと、エンドーさんはたった一言――


「ハンデ」

 と、にっこりと言う効果音が出そうな笑みで、にこやかに言った。


 ……ハンデにしては、武器ありとなしでは断然キョウヤさんが負ける。そう私は思ってしまった。


 しかしアキにぃは、少し考えて――


「それは、どういった根拠があって?」と聞くと、エンドーさんははっきりとこう言ったのだ。


「一緒に行くか行かないかって言う賭けの戦いだよ。君はそこにいる妹さんと二人で、いちゃいちゃらんでぶーの浄化の旅を満喫したい。キョウヤくんの、僕達はみんなで協力して浄化をしたい。違いは歴然のはずだけど……?」


 その言葉に、アキにぃは少し考えてから……。頷いて。エンドーさんを見た。


「……いいですよ……。俺は武器を使ってもいいんですよね?」


 その言葉にエンドーさんは頷いて、キョウヤさんを見て……、申し訳なさそうに手を合わせる。


「ごめんねー。キョウヤくん」


 それに対しキョウヤさんはガジガジと掻きながら、いつものことなのだろう……。諦めたように「いいっすよぉ……。オレは別に」と言った。


「何がなんだか……、ぐちゃぐちゃだな……」


 エレンさんの呟きは誰にも聞こえなかった……。


「あ、そうだ」


 突然――エンドーさんは私を見て未だ崩さない笑みで言った。


「ギルド長からの御達しだよ。君に逢いたい人がいるって。なんでも……、()()()とか何とか言っていたような……。門の前にいるって」

「――?」

 


 □     □



 私はエンドーさんに言われた通り――エストゥガの門のところまで一人で歩いていた。


 あの時一人で行こうとした時、アキにぃは私について行こうとしたのだけど、エンドーさんに止められて私は今一人でそこに向かっている。


 一体誰なのか。


 そう思いながら歩みを進めていくと……。


 自然と何も考えずに脚が止まってしまった。


 そう。門のところに、門の柱を背にして己の手を見ているだけの人がそこにいた。


 それは――騎士のような白銀の鎧……。


 泥炭窟で助けられた……。


「あ」

「!」


 声が漏れた。と同時に、近かったからだろうか――私に気付いて、私を見る……。


 ヘルナイトが――そこにいた。

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エンドーさんの大人な対応に呑まれているʕ•ᴥ•ʔ
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