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PLAY32 激闘! ネルセス・シュローサⅤ(本当の強さ)④

「イ……イェーガー、王子……っ!?」


 その名前を聞いた瞬間、アクアロイア王の顔がざぁっと青ざめる。


 それを聞いてヘルナイトさんとキクリさんが頭を抱えて……、小さい声でヘルナイトさんは言った。


「そうだ……、あのお方は……、『創成王』の息子……、イェーガー・ラ・リジューシュ王子……っ!」

「第三王子が……、なんでこんなところに……っ?」


 キクリさんが言うとロフィーゼさんは首を傾げて「それってすごいのぉ?」と聞くと、キクリさんは頭を抱えながら「当り前よ……」と言って――


「あの王子は……、アズールの中でも『創成王』から一番近いところにいる、唯一『創成王』のお声を聞ける存在として知られている……、通称『美貌王子』……っ!」


 と言った。


 でもブラドさんはそれを聞いてびきっと青筋を立てて――「最後はいらねえよ……っ!」と言うと、キクリさんは頭を抱えて苦しそうに「思い出したんだから仕方ないでしょうが……っ!」と反論する。


 それを聞いて私は背後にいるイェーガー王子を見る。


 王子はアクアロイア王を品定めするようにじっと見た後……、静かに、冷静な口調と音色でこう言った。


「アクアロイア王。そなたに聞こう。先ほどの言動――真か、嘘か」


 その言葉に王は引き攣った笑みを浮かべて……、ぶるぶると震えながらアクアロイア王は震える口で言った。


「そ、そのようなこと……っ! あ、あり、あ、ありえませんぞ……っ! わ、私は……っ! 嵌められたのだっ! そう! あの、あの――バトラヴィア帝国に……嵌められたのだっ!」


 その言葉を聞いて事情を知っている冒険者兼プレイヤーの私達は、心にずくずくと来た怒りを抑えることしかできなかった。


 ここで言ってもいいのかもしれない。ここですべてを暴露してスカッとしてもいいのかもしれない。


 でも――さっきの表情とは打って変わってぶるぶると、まるで臆病な性格になったかのようなその動作と表情を見て私は思った。


 きっとここで誰かが怒声を浴びせるように本当のことを言っても、きっと罪を擦り付けられる。そう思うと反論もできない。結局泣き寝入りになるからできない。


 何という歯痒さ。


 何というむず痒さ。


 でもこのままこの王の思うが儘になってしまうのも、いやだ……。


 矛盾めいた感情を感じながら思っていながらも、静かに怒りを燃やしながらも、反論できない不甲斐なさを噛みしめて、私やみんなはアクアロイア王の話を聞く。


「それは……、真か?」

「ま、真ですっ! 私達アクアロイアの民は……っ! バトラヴィア帝国の奴隷化にあっていた! それはあなた方も知っているはずだっ! 私は――被害者」

「ならば」


 王子はそっとその場を離れ、背に隠していた人物を、王に見せた。


 アクアロイア王はそれを見て、言葉を失いながらその人物を見て「な、なんで……っ!」と声を零し、私が知っている顔になった。


 私達はその王子の背後にいた人物を見て……、あっと声を漏らした。


 そう、そこにいたのは……。


「この者はユワコクにいたギルドの一員だ。彼からすべてを聞いた」


 そう言って、王子はじっとアクアロイア王を見る。


 そして言った。


「アクアロイア王……。そなたが起こそうとした愚行の全容。アクアロイアの民が一丸となって、『六芒星』を匿ったこと。バトラヴィア兵を幽閉したこと。挙句の果てには冒険者二名を殺害。アクアロイアの王宮の地下室で見つけた」


 王子は懐から取り出した、束になっている用紙を見せる。


 それを見て、アクアロイア王はぐっと言葉を詰まらせて、顔を歪ませる。それを見た王子は更に続けてこう言った。


「守り神でもある『八神』様を制御しようと目論み、バトラヴィア帝国を滅ぼしてアクアロイア帝国を作り上げる。しかもその原材料となったとある魔女の体の一部も見つかった。四百六十二年の『獣人里』の一軒に関しても、当時の国王の日誌がそれを証明。それを証拠とし、ペトルデルト・イディレルハイム・ラキューシダー王十四世。そなたの王の座位をはく奪し、王都の永久監獄へと連れて行く」


 そう言って、すっと手を上げた王子。それを合図に、背後にいた兵士がアクアロイア王に向かって歩みを進める。


 それを見て、アクアロイアの兵士達は狼狽して、剣を落として逃げる人が一人、また一人。そしてどんどん恐れが多くなって、兵士達は斬首刑跡地に向かって走り出してしまった。


 アクアロイア王を残して……。


「あ、おいっ! 私を置いていくのかっ!? 私は王だぞ! 私は帝国を築き上げる一国の王様だぞっ!」


 王は声を荒げながら叫ぶ。でも――


 ばっと王子の背後から現れ、そして私達の横を通り過ぎる人物が、アクアロイア王に向かって走り――そして。


「貴様の行為に……、正義の『セ』の字もない……っ!」

「「「あ」」」

「!」


 私とアキにぃ、そしてキョウヤさんが、その人を認識した瞬間声を漏らし、ヘルナイトさんははっとしてその人を見た。


 その人は鎧姿のまま、剣も何も持たずに、ぐっと狼狽して固まってしまっているアクアロイア王に向かって、握り拳を向けて――


 怒りをぶつけるように、その人はアクアロイア王の左頬に、勢いよくその拳を入れる。


 めぎゅりと、めり込んで、回転をかけたその拳を入れて――セイントさんはこう叫ぶ。



「貴様のような悪の根源に――正義の鉄槌を下すぅ!」



 そう叫んだセイントさんは、アクアロイア王の左頬に正拳を入れて、ぶん殴ってしまった。


 それを見て、私達は茫然として見ていたけど……、ブラドさんとシイナさん、そしてロフィーゼさんはその人を見て、ぽかんっと口を開けて見ていた。


 セイントさんは、私達にはできなかったことを、簡単にしてしまった。


 アクアロイア王は、ぶん殴られて坂になっているところにずしゃしゃしゃっ! っと地面にめり込むような衝撃を受けて、左頬を大きく晴れさせて、白目をむいて、仰向けになったまま大の字になって気絶してしまう。


 それを見たアクアロイアの兵士は……「ひぃっ!」と上ずった悲鳴を上げて、急いで逃げようとした。


 けど……、一番前で逃げようとしていた人が……、叫び声を上げながら空中に投げ飛ばされる。


 そしてそのまま最後尾にいた人の背後にずしゃりと落ちて……、ぴくぴくと痙攣して意識を失う。


 それを見て、私達は再度茫然としながらそれを見て、王子はそれを見て――


「大臣。そこまでしなくてもいいぞ。捕まえるだけだ」


 と、少し呆れながら言うと、兵士の前に、一人の小柄な老人が黒いスーツを着て、白い手袋をしてその人は、すぅーっと拳法の構えをとって、王子に向かってこう叫ぶ。


「何をおっしゃいますか王子っ! この者達はアズールのやり方に背いた反逆者! みすみす情けをかけてしまっては困るのですぞいっ! ここは情けなど無用っ! さぁかかってきんしゃいっ!」


 そう言って、「ほあちゃーっ!」と挑発しながら、小さい手をくいくいっと手招きをする。


 それを見た兵士達は、おどっとしながら後ずさりする……。


「すげぇじじぃ……」


 キョウヤさんが驚きながら突っ込んだ。


 それを聞いてみんなが頷く。


 私も頷いてその光景を見ると……。


「大臣殿よ。その辺にしてくれ」と、聞き覚えがある声が聞こえた。その声を聞いて、私とアキにぃ、キョウヤさんとロフィーゼさんが振り向くと……。王子と隣り合わせになるように、その人はすっと手をかざして、高らかにこう声を張り上げた。


「反逆者に賛同した者たちよ! 今すぐ降伏しろっ!」


 その言葉を聞いて、その人物を見たアクアロイアの兵士達は、一瞬驚いて固まったけど、すぐにゆっくりとした動作で剣を地面に置いて、そのまま膝をついて、手を頭の後ろに組んだ。


 それを見て、ふんっと鼻息をふかした大臣さん。


 セイントさんはアクアロイア王の手を掴んで持ち上げる。それをセイントさんの肩の上に座って見ているさくら丸くん。


 王子はその光景を見て背後にいた兵士に何かを命令していた。


 私は王子と隣り合わせになって立っていた人物を見て……。こう声を零した……。


「なんで……、()()()()()()()……?」


 その声を聞いてか、その人は私たちを見て、「おぉ!」と言って、駆け寄ってから……。


「久しいな。アムスノームの一件以来だな。余のことを忘れたわけではあるまいな」


 そう言って、()()()()()()()()()()()()()()、パルトリッヒ・ルーベントラン・ノートルダム前国王が、アルテットミアとは違うアクアロイアで、青いマントを靡かせながら自分を指さして聞いてきた。



 □     □



 その後のこと……。


 アクアロイア王は反逆の手助けをしていたユワコクギルドのウェーブラさん以外の全員、そして手を貸していた国民全員を永久監獄へと投獄されてしまった。


 国民全員は流石にないのではと思っていたけど……、バトラヴィア帝国の民をじわじわと嬲り殺していたことが判明したので、結局は共犯として投獄されることになったらしい。


 でも、手を貸していた国民だけなので、国民の約三割は残っている状態だという。


 エレンさんとララティラさんはアルテットミアに戻ってしまった。


 せっかく再会したのに……、そう思うと少し寂しい感じになった……。でも、エレンさんシェーラちゃんと何かを話していたみたいだけど……、何を話していたのだろう……。


 そして――


 共犯であり策略によって崩壊しそうになった『ネルセス・シュローサ』は王子の言葉と、元アムスノーム国王の慈悲もあり、現在はアクアロイアの王宮地下牢に閉じ込められている。


 幹部のコココ、どんどら、アルヴレイヴは厳重な監視下のもと、地下深くの牢屋に閉じ込める運びとなり、壁を通り抜けられるフランドは、とある特殊の牢屋に閉じ込めているらしい。


 なんでもその牢屋はビカビカと光って眠れないそうだ……。光が苦手なゴーストにとってすれば生き地獄だと私は思った……。でも、助けられないから一応ごめんなさいと言っておこうと思う。


 悪者だけど……。


 ネルセスはアクアロイア王と同じ永久監獄に投獄された。もちろん――氷漬けを解いてから投獄された。


 シェーラちゃん曰く……、『氷河の再来』は彼女の合図で融けるものなので、凍らせた彼女を箱詰めにしてから解除した。


 ネルセスは状況を理解できず、鉄で作られた箱を叩きながら、アクアロイア王たちと一緒に王都に連れていかれてしまった。


 ……それとユワコクにいたユースティスとムサシは……、ギルドの地下の部屋にあった粉々になったバングルを見て……、もうこの世界にはいないことが発覚した。


 周りには血の跡がいっぱい残されていたらしい……。


 結局……アクアロイアは全土に亘って狂っていた国だということが分かった……。悲しいことを知ったとき、私は胸の奥からくる鈍痛を感じながら、私は聞いていた。


 前アクアロイア王の後任となった……、もとアムスノーム国王から、話を聞いて……。



 ◆     ◆



「まさかアムスノーム前国王がアクアロイアの新しい王になっただなんてなー」


 そう言いながらキョウヤは目の前で座っているアムスノーム前国王――否、今は新アクアロイア王に向かって腕を頭の後ろで組みながら言った。


 今現在、ヘルナイト達はマドゥードナからアクアロイアに戻って、王宮の謁見の前にて、新しく王になった元アムスノーム国王と話をしていた。


 そこにいるのはアキ、キョウヤ、シェーラ、ヘルナイト、キクリにブラド、シイナにロフィーゼとジルバ。最後に……。



 SKがそこにいた。



「なぜ私がここに? というかこれはどういう状況なのだ? これでは身動きが取れないぞ」


 SKはきょとんっとし、体にぐるぐる巻きにされている鎖を見ながら言った。


 なお、この鎖はロフィーゼの殴鐘の鎖であり、彼女は己の武器を持ったまま、まるで囚人を連れていくかのように鎖を掴んでいた。黒い笑みがSKを捉える……。


 なぜこうなったのかと言うと……、簡単な話だ。


「もうこれ以上逃げれねーようにぐるぐる巻きにすんぞっ! ロフィ! シイナ! ゴーッ!」

「お前もやれ」


 ……突っ込みはキョウヤであるが……、ブラドはSKを指さし、(水の大蛇を引き付けた時見かけて、『あれ? こいつもしかして……、こいつがSKっ!? やっべ! 俺会ってたじゃんっ! このまま知られてしまえば、ロフィのすんげぇげんこつが来るっ! ここは今知ったふりでもしておこう!』と思い至り、今の行動に至った) 彼は二人に命令をした。


 シイナはおどおどとしながらSKに『麻痺(パラライズ)』と、『足止め(レッグ・スタン)』更には『腕止め(アーム・スタン)』を付加させる。SKがずてんっと転んだと同時に、ロフィーゼが鎖を使ってぐるぐる巻きにしたということだ。


 しかし……SKがブラドを見て助けてくれたお礼を述べたせいで、ブラドはロフィーゼの拳骨を食らう羽目になってしまったが……。


 ヘルナイトはSKにズーのことを聞くと、彼はこう言った。


「起きてすぐ空が晴れたのを見た後……、どこかへ行ってしまった。行先も言わずにな……」


 その言葉を聞いて、ジルバはそっと、明後日の方向を見て、すっと目を細めていた。その目はどことなく、悲しさが含まれいる目だったが、シェーラはそれを聞いて――


「まぁ。あいつのことだから、しぶとく生き残るでしょう」と肩を竦めながら言った。


 その言葉には、どことなく確証が含まれたような言い回しだったが、ジルバはそれ以上のことを聞かずに、シェーラを見下ろして微笑んでいたとか……、いないとか……。


「……いてぇわ。やっぱり……」

「ブ、ブラドさんは、少しまっとうになった方がいいと思います……」

「シイナッ!? 最近俺に対して冷たい気がするっ!」

「気のせいです」


 と言いながらシイナは、頭に大きなこぶ (これはデフォルメ的なあれではない。本当に腫れているのだ) をつけたブラドから目を逸らして言う。それを見たブラドはシイナのその態度を見て、ショックを受けた。


 すると――


「んっんんぅっっ!」


 そんな和気藹々の光景に対して、自分の話が入らないことに不安を感じたのか……、新アクアロイア王は咳払いをした。


 それを聞いたアキ達は、新アクアロイア王……または新王を見る。すっと直立してみる。それを見て、新王はこう言った。


「鬼神卿一行に巫女卿一行。此度のリヴァイアサン浄化の件……、そして前アクアロイア王の愚行の件に関して、つらいことであったかもしれないが、よくぞ成し遂げた。褒めて遣わす」


 それを聞いたブラド達とジルバは笑みを零すが……。


 ヘルナイト、アキ、シェーラにキョウヤは浮かない顔のままだ。


 それを見て、新アクアロイア王はふぅっと息を吐いて――こう言った。


「亜人の郷……、否、『獣人里』の件を聞いたのだろう……? そこに寄ったのか?」


 そう聞くと、アキは頷き……。


()()()()にも会いました」と言った。その言葉を聞いて、キクリ達とジルバの表情に曇りが出始める。


 当たり前だ。


 魔女の血を入れた水晶玉――『八神の御魂』の原材料……。それは『泥』の魔女の血。


 つまりは――クルクの母の血を使った外道行為だったのだから、その魔女の息子に出会ったのならば……、ブラド達以上にアキ達は今回の戦いを重く受け止めているだろう……。


 それを聞いた新王は――すっと目を閉じて……。


「息子か……。実はな……、そなた達に話していなかったな」と言い、謁見の前の門を見て、新アクアロイア王は「入れ」と言った。


 その言葉と同時に、大きな門が開く。その音を聞いてアキ達は振り返ると――


 目を見開いて、その門の先にいた二人を見た。そこにいたのは――


「あ! おーい! 鬼神の鬼士さんと、魔人のおねーちゃんに蜥蜴のにいちゃーん! あとエルフの兄ちゃんも!」


 そう、クルクと最長老がそこにいたのだ。


 クルクはシェーラたちに駆け寄りながら「聞いたよ! リヴァイアサン様を浄化したんだって! すごいや! すごいよ!」とぴょんぴょんと跳ねながら、クルクは興奮したままアキやキョウヤ、シェーラの周りを飛び回る。


 それを見ていたブラド達とジルバは、そっと目を逸らして気まずく表情に出す。


 ヘルナイトはその光景を見、最長老を見て聞く。


「なぜ……、ここに?」


 そう聞くと最長老は「ぐるぅ」と唸りながらしかめた顔で――


「王子に呼ばれたのだ。ここに来いとな」と、そっけなく言う。


 それを聞いて、キョウヤはクルクを見て、ぎゅっと口を噤み、そしてクルクの名を呼んだ。なるべく平静を装って……。


 クルクはキョウヤを見て「なに?」と首を傾げる。


 それを見て、キョウヤはその場でしゃがみ、クルクの肩に手を置いて……。


「あ、あのな……」と言い、キョウヤは言葉を詰まらせる。


「?」


 クルクは更に首を傾げて、キョウヤの言葉を待つ。


 キョウヤは、どくどくと来る大きな心音に驚きながら、ふと思った。


 ――父さんは、オレにじいちゃんのことを話す時……、こんな気持ちでいたんだな……。


 クルクにもし本当のことを言えば、クルクは一体、どんな悲しい顔をするのだろう。


 そんな異常な不安を抱える。


 泣いて、なんで殺したのと罵られるのか……、なんで教えてくれなかったのと罵倒するのか……。


 簡単に言うと……、怖かった。


 キョウヤはぐっと言葉を飲み込み、そしてはぁっと息を吐いた後……。


「あのな」



「それ以上は言うな」



 キョウヤの言葉を遮ったのは――最長老だった。


 最長老の行動に驚いているプレイヤーとキクリにヘルナイト。しかし、最長老はキョウヤの肩を掴んで見下ろしたまま、彼は言った。


「これは――我々の問題だ。部外者が首を突っ込んでいい話ではない」


 だから……、クルクには儂からすべてを話す。邪魔をするな。


 そう言って、最長老はキョウヤから手を離した。


 クルクは疑問に首を傾げながらキョウヤを見て……、「どうしたの?」と聞くと、キョウヤはそれを聞いて、クルクを見てにっと笑った後……。


「いんや、タダな……、家族を大事にしろって言いたかったんだよ」と言った。


 その言葉にクルクは「んなっ!?」と素っ頓狂な声を上げて、「子ども扱いするなよ! 俺みんなより年上だし、ちゃんとピルクリ食べれるんだぞっ!」と腕を振って怒りを表した。


 ちなみにピルクリとは……、ピーマンのようなものと思ってほしい。


 それを聞いたキョウヤ達は笑いを込み上げる。そしてどっと笑う。


 その光景を見て新アクアロイア王はほっと胸を撫で下ろし、キクリとヘルナイトは互いの顔を見合わせて頷き合う。最長老はそんな風景を見て、ふと――遠い記憶を思い出した……。


 それはとある人間の魔女と、里で暮らしていた獣人達が楽しく話している風景を。


 もう二度と見れないと思っていたその風景と重ね合わせて見て、最長老は穏やかに笑みを零す。


 だが、ここで違和感があることにお気付きだろうか。




 そう、ここにはハンナがいないのだ。




 彼女はそんな穏やかな空間が出来上がっているその前から……、彼女はとあるところでとある人物と面と向かって紅茶をすすりながら話していたのだ。


 王都の第三王子――イェーガー王子と……一緒に。

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