PLAY31 激闘! ネルセス・シュローサⅣ(真の絶望)⑤
ヘルナイトさんに抱えられ……、違う。シェーラちゃんと一緒に横抱きにされながら私達はアクアロイア王が言ったであろうその方向に向かって走っていた。
確か……斬首刑跡地。
その場所に向かいながらマドゥードナの街を見て、ブラドさん達が頑張っていることを目に見えているかのように辺りの建物を壊しながらも進んでいる大蛇三体を見て……。
「ロフィーゼさん……。シイナさん……。ブラドさん……。無事でいて」
と、小さく願って言ってしまった。
それを聞いて、後ろで走っていたキョウヤさんは私に近付きながら――
「何心配してんだよ。あいつだってああは言っても強いんだ」
そう簡単にくたばらねぇ。というか、悪運のせいで死ねないかもな。
キョウヤさんは「ははっ」と笑いながら言うと、それを聞いていたシェーラちゃんがキョウヤさんを見て――
「よくそう言えるわね。他の二人はどうなのとは言えないけど……、あの男は強いとは言い切れないわ。むしろ弱そう。いいえ、弱い」
「はっきり言うな……っ! ここにあいつがいたら悲しむぞっ!」
シェーラちゃんの言葉を聞いて、キョウヤさんはぎょっとしながら突っ込む。
でも……。
「ふふ」
私はクスッと微笑んでしまった。
それを聞いてシェーラちゃんは顔を赤くしながら「な、なによ……っ!」と私を見て慌てて聞くと、私は微笑んで言った。
「いつもの、私が知っているシェーラちゃんに戻ったね……」
よかったぁ……。
そう私が言ったのを聞いて、シェーラちゃんははたっとしながら私を見ていた。
キョウヤさんもそれを聞いて『にっ』と顔を緩めていたけど……、アキにぃはみんなの背中を見ながら走って、アキにぃは声を荒げてぜぇぜぇと息を切らしながら言った。
「い、今はそんな和やかなムードじゃないだろうがぁ……っ! 早くっ! アクアロイア王を……!」
「待て」
すると、そんなアキにぃの意思を折るように、突然ヘルナイトさんが声を上げて止まった。
「おぉっ」
「ちょっと!」
と同時に、腕の中にいた私達はぐらんっとヘルナイトさんの腕の中で落ちそうになった。
それを聞いていたヘルナイトさんは「む」と言った後、すぐに「すまない」と謝った。
私は「いいえ……」と慌てながら大丈夫と言って、シェーラちゃんも「いいわよ」と言ったけど……。
「いや! 俺は許せないから、何してんだよ二人を抱えているってのに」
「まーまーまー、落ち着けってシスコン」
アキにぃはなぜか怒りながらずんずんっと止まったヘルナイトさんに向かってたけど、キョウヤさんはアキにぃの肩を掴んで止めてから――
「で? どうしたんだ?」とヘルナイトさんを見て聞いた。
ヘルナイトさんはすっと、目の前の大きな噴水があるところを指さした。
私達が向かおうとしていた……斬首刑跡地の下にある大きな噴水のところ……、あそこがキクリさんが言っていた見晴らし噴水がある場所だと確信した私はその場所を見て……、とある人物を見て目を細める。
すると……。
見晴らし噴水に向かって走ってきている四人の存在。
一人はアムスノーム国王のようなふわふわしたマントを羽織っている、マッシュルームカットの痩せている人。その人が先陣を切って、慌てながら走って降りてきている。
後ろには二人の兵士が一人の女を抱えて……、あれ? あの人は、まさか……っ!
「ネルセス……ッ!」
シェーラちゃんがぎりっと歯ぎしりをして睨む。
それを見たヘルナイトさんは「落ち着け」と凛とした声で宥めると……、シェーラちゃんはぐっと口を噤んだ後、目を閉じて――すぅーと息を吸って、はぁーっと吐く。そして私達を見て……。
「ええ。落ち着いた」と、凛々しい声で言った。
それを聞いていたキョウヤさんは首を傾げながら「大丈夫かよ……」と心配していたけど。前にいるアクアロイア王を見て……。
「あれがアクアロイア王か……? なんだか言葉通りの王様だな……」
貧弱で弱そう……。そうキョウヤさんは言うけど、隣にいたアキにぃがとあるものを見て、そっと指をさしながらヘルナイトさんに聞いた。
「ヘルナイト。あの王様が持っているあの赤黒い水晶玉……、何だろう」
「?」
「「「?」」」
その言葉を聞いた私達は、アキにぃが指をさしている方向を凝視して見てみると……、確かにアクアロイア王の手には赤黒い水晶玉を手に持って、だんだんっと地団駄を踏みながら、目の前にいる……。
「っ!」
私は目の前を見た。
みんなも王様にいる目の前にいるものを見て……、言葉を失って驚いていた。
ヘルナイトさんだけは違った。
それを見て、ぐっと顎を引きながらそれを見て……、言った。
「リヴァイアサン……」
そう。
私達の目の前で、その美しい青と水色の鱗を光らせ、周りに浮かんでいる水の塊を浮かせながら、よく漫画で見る大きな青龍を思わせるその圧巻のある風景を見て、私たちは言葉を失ってそれを見た。
それは……、小さな人間が大きな怪獣と出くわした時の圧巻。山の上からその怪獣の横顔を見るような、そんな圧巻があった。
それを見た私達は、茫然としてその圧巻と、その水のような体の美しさを見ていると……。
ぎょろりと――リヴァイアサンの黄色い目が、私達を捉えてしまった。
「「「「あ」」」」
私達四人は、それを見てぎょっとして、そしてゆっくりとした動作でこっちを見たリヴァイアサン。
互いが互いの存在を認知した後……、動いたのはリヴァイアサン。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!」
天空に向かって咆哮を上げるリヴァイアサン。
それを見た私達は、突然来た咆哮の風圧に押されながら、その声を聞いて、その風圧を身をもって受ける。
その咆哮を受けながらも、アキにぃとキョウヤさんは何とか腕で顔を隠しながら耐え、ヘルナイトさんは私達を下ろして、そして背中に私達二人を隠した後、大剣を引き抜いて、すっと腰に添えた。
その構えはまるで……、刀を抜刀するかのような構え。
鞘に納まった刀を一気に引き抜くような、そんな構えをしていた。
それを見ていたシェーラちゃんは……、小さい声でこう言っていた。
「ジャパニーズ・イアイドウ」と……。
その声を合図に、リヴァイアサンがぐわぁっと私たちに向かって襲い掛かってきた。
それを見て、アキにぃ達が慌てながら武器を構えて応戦しようとした時……、ヘルナイトさんは刀のように持って構えた大剣を引き抜こうとしたその時……。
「――『居合・氷室』」
――しゃりんっ!
と、何かが切れる音が聞こえた。
それを聞いて、私達は辺りを見回すけど、何も起こっていないようだ。ヘルナイトさんも剣を引き抜いていない。
そ思った時だった。
ばきんっと、リヴァイアサンを覆って守るように浮いていた水の塊が……、突然凍ったのだ。
ううん。突然じゃない。
水の塊には……、斬れた後があって、その斬れた後からどんどんと凍っていったのだ。
もちろん……、リヴァイアサンの体にも、右斜め横一文字の傷口が、どんどんそこから傷口を覆うように凍っていき、最終的には……。
バギィンッと――大きな音を立てて、大きな氷塊が傷口から出現したのだ。地面から出るように、氷塊はリヴァイアサンに大きなダメージを与えた。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!?」
大きな氷塊をつけたまま、リヴァイアサンはぐわん! ぐわんっ! と動き回って飛び回りながら、痛みを感じて悶え苦しむ。
それを見ていた私達はヘルナイトさんを見ることしかできなかった。
ヘルナイトさんは私たちを見て、そして無事であることに安堵しながら、近づいてくる足音を聞いて……。
「気づかれた」と言った。
多分、あんな風に大きな攻撃を出したら、誰だって気付くと思うけど……、でもしょうがないのかな……? そう私は思ってしまった。
すると、見晴らし噴水から降りてこっちに来たのは――
「貴様らかっ! 私の実験の邪魔をする……、うん?」
そう言いながらマッシュルームカットの王様……、アクアロイア王がどたどたと駆け下りてきた。それを見たアキにぃとキョウヤさんは、武器を構えて迎え撃とうとした時、アクアロイア王はヘルナイトさんを見て、じっと目を凝らしてみていた。そしてすぐに思い出した仕草をしてから……。
「あぁ! 貴様か! 『終焉の瘴気』を消すことができなかった愚かな騎士団長っ!」
「っ」
その言葉を聞いて、ヘルナイトさんは権を握る力を強めてぐっと言葉を塞いだ。
それを見た私はアクアロイア王と思われる人にこう聞く。
「……あなたが、アクアロイア王、ですか?」
そう聞くと、王様は……。多分王様だと思うので王様 (仮) として……。私を見て顎を撫でながらこう言った。
「ほほぅ、アルテットミア王が言ってた少女とは、貴様のことをさしていたのか……、ほほぅ。ほほぅ……、なんとも可愛らしい……。アクアロイアの侍女以上の魅力がある。そこにいる魔人の少女もだ」
「っ!」
な、なぜだろう……。
アクアロイア王だと思っていた人は、本当にアクアロイア王だったことが分かった。
でも……、王は私とシェーラちゃんを見て「ぐふふ」とのどを鳴らしながら厭らしく私達を見ていた。足の先から頭のてっぺんまで…まるでねっとりと見ているようだった。
それを見て私はぞぞっと背筋を這う寒気に侵されながら、己を抱きしめてヘルナイトさんに隠れる。シェーラちゃんはその言葉を聞いてむっとしたまま――
「失せろ――くそじじぃ」と額に青筋を出して、低い音色で怒っていた。
それを聞いて、アクアロイア王は宥めるように手を添えながら「おぉ。おぉ。失敬失敬」と言って――
「いやすまないな。何分良い女子もバトラヴィアの奴隷にされてしまってな……、こちらにはいい侍女がいないのだ。しかし侍女はやはり……若いに限る。それも、それほど年を取っていなければなおいい……」
アクアロイア王は私達を見てうっとりとしていた……。
ほえええ……っ! なんだかぞぞぞぞぞっ! と寒気が……っ。
「屑王様じゃねえか……っ!」
「………ぶっ殺す」
「今の発言はグッジョブだ。オレも賛成だ」
そう言って、キョウヤさんとアキにぃは武器を構えて、アクアロイア王に突きつける。怒りの表情で。
それを聞いてアクアロイア王は「おおっと? いいのかな?」と言いながら、手に持っていた水晶玉を、上から、下からぐっと押し合うように、両手を使ってその球を掴むと……。
どぐんっと、その水晶玉から聞こえた――鼓動。
それと同時に――暴れていたリヴァイアサンがけたたましい咆哮を上げて、そして私達に向かって突っ込もうとしていた。
「っっ!?」
それを見た私は、驚いて襲い掛かってくるリヴァイアサンを見ることしかできなかった。でも……。
ぴょこんっと帽子から出てきたナヴィちゃんはふわりとその場で跳んで、体を縮こませながら力を力ませて、そして突然光ったと同時に光が肥大して、リヴァイアサンの顔をとがった爪が生えている手で押さえつけた。
ナヴィちゃんは大きく、ドラゴンの姿になってリヴァイアサンを止めた。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!」
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!」
双方の咆哮があたりに響き渡る。それを聞いて、私はみんなと一緒に耳を塞ぎながら、ナヴィちゃんを見る。
ナヴィちゃんはリヴァイアサンよりも小さい姿だけど、懸命に戦っていた。
それを見てアクアロイア王は――
「はははは! やはりすごいなっ! 魔女の血を使った『八神の御魂』は! あの瘴気に侵されたリヴァイアサンを、完全に制御しているっ!」
それを聞いて、私は王を見た……。
今…………、なんて言ったの?
制御? 御魂? 魔女の……血?
それを聞いて、私はすっとヘルナイトさんの前に出て、私はアクアロイア王に向かって、こう聞いた。みんなの焦りの制止を聞かずに、私はこう聞いた。
「あの……」
「?」
自分でも、驚くような低い声に、少し怒りを含んだ声。 それを聞いても、アクアロイア王は狂気の笑みをうかべているだけ。それを見て、私は聞いた。
「その、水晶玉って……、何なんですか?」
そう聞いた瞬間――アクアロイア王は「よくぞ聞いてくれたっ!」と言って、その水晶玉を見せびらかすように、狂喜の表情で彼はこう言った。説明した。
「これは『八神の御魂』と私が名付けた魔導具だよ! これの原材料は魔力を持った魔女の生き血を媒体にして、この水晶に留めて、私のような魔力を持っていない人間でも制御の魔法が使えるように、そして操ることができるように改良に改良を重ねた血と汗と涙の魔道具ということなのだっ! まぁ、四百六十二年前の魔女の体であるが故、少々色がくすんでいるがな」
それを聞いて、まさかと思いながら……、私は王に聞いた。
「………まさか、その魔女って……、まさか……。『獣人里』にいた……、魔女ですか……?」
「「っ!」」
「っ!」
「?」
その言葉を聞いて、キョウヤさんとシェーラちゃんがはっと息をのんで、ヘルナイトさんは気付いたのか、アクアロイア王を睨み、アキにぃだけはそのことを知らないでいるので、首を傾げていた。
それを聞いた王は――
にっと笑みを浮かべて――
「そうだ! すごいな天族の少女よっ! そうさ、『泥』の魔女の生き血を使って、この御魂が遂に完成したのだよっ!」
「――っ!」
あの時――
里は闇森人によって滅ぼされたって言っていた……。でも、それがもし……、策略としての計画で、そしてそれが今になって実っているとしたら……っ!
「おまえ……っ!」
「あんた……。クルクの母親を……っ! なんでそんなことをしてまで……っ!」
キョウヤさんとシェーラちゃんが怒りのままアクアロイア王に詰め寄る。でも王はその言葉が心に響いていないようで、小指を耳の穴に突っ込みながら、気怠い音色でこう言った。
「そういうのではない。私が使ったのは片腕だけ。他はあそこに置いてある。それにこれをしたのは先代。先代が闇森族を使って魔女を殺して他もついでに殺しただけの話だ。私ではない。私は何も悪くないであろう。前の王様はへんてこなコレクションを集めていて、その永久保存を使ってこのような制御魔導具が完成したのだ。この世界がまた平和になるのだ。逆に褒めて」
「――ふざけるな……っ!」
「っ!?」
そう言って、怒りの声を上げたのは……、ヘルナイトさんだった。
ヘルナイトさんは、アクアロイア王を睨みながら、ぎりりっと握りしめる大剣の柄が折れるのではないかというくらい握りしめて、ヘルナイトさんは言った。
凛としている、そして怒りが込められた声色ともしゃもしゃで。
「あなたに、その残された者たちの気持ちがわからないのですか……? その人を失って、それでも懸命に生きている者の気持ちが……っ! その大切な人を小さい理由で利用された者の、家族の……、遺族の者達の悲しみを……っ! お前には感じられないのか……っ! 心が……あるのか……っ!」
ヘルナイトさん……、すごく怒っている。すごく悲しんでいる……。
クルク君のために、最長老様のために……、その人のことを想って怒っている。
私達は、その言葉を聞いて、ヘルナイトさんの気持ちが伝わった。
アキにぃに説明しているキョウヤさん。そして剣を抜刀して構えているシェーラちゃん。それを見て私は、ヘルナイトさんの握りしめている手に触れた。
僅かだけど……、握りしめながら……震えていた。
それを感じて、私はヘルナイトさんの手を握りながら――アクアロイア王を見た。
アクアロイア王は首を傾げて――
「何を言っているのだ? 王のためにその体を捧ぐ。それは至極当然であろうに。それで世界が平和になれば、それでいいではないか」と、当然のように言ってのけた。
それを聞いて、私は首を横に振って……。
「違う。そんなもの……、ただのわがままです……」といった。それを聞いたアクアロイア王は「あぁ……?」と首を傾げ、苛立った顔で私を睨んだ。
それを見ても、私は言う。
言う。
「そんなの……、ただの王様特権のわがままで狂ってしまった……。闇森人も……、誰も悪くなかった。最初から……、アクアロイアは狂っていた。狂ってしまった王の犠牲になってしまった……。今日のために、こんな、くだらないことのために……っ!」
「くっ!? くくくくくくくくく……っ!」
アクアロイア王はぶるぶる震えながら、私を睨んで、そしてダンっと地団駄を踏みながら、王様は私に指をさして、唾を吐きながら王様は怒声を浴びせた。
「くだらなくないっ! このような運命のおかげで」
「二百五十年前に『終焉の瘴気』が出たんだろ……?」
キョウヤさんが低く言いながら、アクアロイア王に言う。それを聞いた王は、「へあ?」と言いながらキョウヤさんを見ると……。
「だったら辻褄が合わねえだろうが……、先代の身勝手で殺されて、滅んで……、お前の身勝手で無理矢理使われて……、結局あんたらの身勝手でこんな国になっちまってんだろうが……っ! 全部お前の邪な気持ちで、欲望でこうなっちまってんだろうがっ!」
キョウヤさんの怒りの声と表情を見て、聞いて、アクアロイア王はぎょっとしながら一歩、後ずさる。
「バトラヴィアが狂っていると思っていたけど、双方狂っていた……。助ける義理なんてない」
そう言って、冷徹に言ったアキにぃはすっと銃口をアクアロイア王に向ける。
それを見て、王は上ずった声を上げて後ずさった。
更にシェーラちゃんが――
「あんたを助けようなんて、一ミリも思えなくなったわ。あんたもここで倒す。ネルセスとともに――」
リヴァイアサンを、浄化してから――
そう言って、すっとネルセスを見たシェーラちゃん。その視線が合図となってしまったのか……。
「うぐああああああああああああああああああああああああっっっ!」
ネルセスは拘束していた兵士の腕を、伸ばした爪で切り裂く。兵士達はそれに驚きながら、吹き出すそれを止血して、ネルセスを見ると……。
ネルセスは左にいた兵士を蹴り飛ばして、崖となっているとこから突き落とした。
「うあああああああああああああああああああああっっ!」
兵士の叫びを聞いたもう一人の兵士は、がくがくと震えながらそれを見て……、委縮してしまっていた。
ネルセスはその震えている兵士の背後から詰め寄って、そのまま――
――どしゅっ!
「――がはっ!」
ネルセスの攻撃を背後から受けて、ごふりと吐き出したと同時に、ネルセスはさっきの兵士と同じように、その突き刺した出を引き抜き、そのまま崖へと突き落とした。
それを見た私は、口元を抑えながら驚く。アキにぃ達はそれを見て、静かに焦りを醸し出しながら、ネルセスを見た。
アクアロイア王はネルセスを見て……、がくがくと震えながら尻餅をついてしまう。
ネルセスは言った。ううん……、叫んだ。
「こ。ころ、ころ……、ころす。殺す殺す殺すっ! すべてを殺して! 妾の『ネルセス・シュローサ』の再建してやるっ! うひひひっ! 全員皆殺しじゃああああはははっははっ!」
あまりの豹変に私は驚きを隠せなかった。
ネルセスは笑いながら泣いて、怒っている音色で叫んで、ふらふらしながら血がついた手を拭かないで、私達に近付く。
王を見ようとしないで、そのまま逃げ腰になりながら逃げようとしていた。
それを見て私ははっとして――声を上げようとした時……。
ふわりと地面に降り立った……、大人の男女。その人達は私がよく知っている人で、さっきまで敵になって、いなくなっていた人がそこにいた。
その人達は――
「エレンさんっ! ララティラさん!」
「あ! ハンナちゃんっ!?」
「えぇ? なんでここにおるんや?」
そう言いながら、エレンさんとララティラさんは (特にララティラさんの方が驚いていた) 驚きながら私たちを見ていた。その足元では、アクアロイア王が「あわあああああああ」と、先ほどとは打って変わって絶望の表情で見上げていた。
それを見て、エレンさんとララティラさんは首を傾げていたけど……、アキにぃがエレンさんたちに向けて「逃げ道塞いでてっ!」と叫んだ。二人はそれを聞いて、更に首を傾げていたけど……。
キョウヤさんは言った。
「ハンナ! ヘルナイト! アキ! お前ら三人でナヴィに乗って行けっ!」
「!」
その言葉を聞いて、私はキョウヤさんを見て「ど、どうして……?」と聞くと、キョウヤさんは槍を構えたまま――
「こっちが済んだらすぐに跳ぶ! そうだよな? シェーラ!」と、キョウヤさんはシェーラちゃんを見て聞く。シェーラちゃんを見ると、シェーラちゃんはけらけら笑って壊れてしまったネルセスを見て……。
「そうね」と言い――
「あの女……、相当築き上げた『ネルセス・シュローサ』が大事だったみたいね……。壊されたと思ってぶっ壊れている。こんな女に、私は怖がっていた」
そう言って私に駆け寄り、シェーラちゃんはそっと、私の手を掴んだ。
そして――
「……それでも、今も怖いのは事実」
だから――と言って、シェーラちゃんは私の顔を見て凛々しい顔つきで聞く。
「あんたの勇気を、私に分けて」
私はそれを聞いて、胸の奥から込み上げてくる暖かい気持ちに混乱しながらも、それに身を任せてぎゅっとシェーラちゃんの手を掴んで――
「……僅かだけど、いい?」と、首を傾げながら聞くと、シェーラちゃんはクスッと笑って――
「十分」と言って、その手を離してくるっとネルセスを見た。
ネルセスはシェーラちゃんを見た瞬間、目の色を憎悪のそれに変えて……、奇声を上げながら彼女は言った。叫んだ。
「貴様がいたからああああっ! 貴様のせいでえええええええっ! うああああああああっ!」
「………そうね」
と言い、シェーラちゃんはすっと剣先をネルセスに向けて――凛々しい声で言った。
「そのセリフ――そっくりそのまま返すわ」
「「行けっ!/行ってっ!」」
そうキョウヤさんとシェーラちゃんが言ったと同時に、私はヘルナイトさんに抱えられ、アキにぃと一緒にリヴァイアサンが飛んでいる崖に向かって飛び降りた。
飛び降りて、その下にいるナヴィちゃんの背に乗りながらリヴァイアサンに向かって飛んでいく。
「頑張って……、キョウヤさん。シェーラちゃん」
そう私は小さく願いを込めて言う。今対峙し、そして浄化をしようとしているリヴァイアサンを目の前にして……。
◆ ◆
ハンナ&アキ&ヘルナイトとナヴィ対リヴァイアサン。
キョウヤ (エレン&ララティラ) 対アクアロイア王。
シェーラ対ネルセス。
リヴァイアサン浄化戦――開始。