PLAY31 激闘! ネルセス・シュローサⅣ(真の絶望)①
「ロフィーゼさんにアルテットミアであった犬の人と……、ブラドさんっ!」
私は三人と、あとその三人と一緒にいる『12鬼士』が一人のキクリさんを見て、驚きながらふらりと立ち上がって見ると、ロフィーゼさんは私を見て妖艶に微笑みながら……。
「ハンナちゃぁん。お久し振りぃ」と手を振って、再会を喜んでいた。
それを見て私は頭を軽く下げて「お久し振りです」と言うと……、ヘルナイトさんがキクリさんを見てふっと微笑みながら――
「久し振りだな。キクリ」
と言った。
それを聞いていたキクリさんは肩を竦めながらくすくすと微笑み……。
「そうね。団長さんは相も変わらずってところかしら。お馬さんと道化くん。あとは怠け者くんにも会ったけど……、みんな全然変わっていないわ」
「道化? お馬? 怠け者……?」
それを聞いていたアキにぃは首を傾げながら聞いて、少し考えた後、手を叩いて「あ、あぁ! そう言うことね」と一人で納得していた。
私はそれを聞いて首を傾げていたけど、すぐにその人が誰なのかが分かった。
お馬さんはデュランさん。
道化くんはトリッキーマジシャンさん (道化師=ピエロからとったのだろう) 。
怠け者はきっと……キメラプラントさん
団長さんは……ヘルナイトさん。
それを聞いて、確かにと思いながら――ヘルナイトさんを見上げる私
シェーラちゃんを突き飛ばした後、ネルセスに対してシェーラちゃんを守るように前に出て、囮になって時間を稼ごうとしていた。
従来の、メディックのような回復要因がするようなことを自らして……。
ネルセスの爪の攻撃は凄まじいもので、『強固盾』をかけてもその凄まじさのせいで罅が入ってしまうくらいネルセスの攻撃は凄まじく、……正直強かった。
でも何とかして時間を稼がないとと思った。
ジルバさんなら、きっとシェーラちゃんを抱えて安全なところに連れて行く。そう確信していたから。
ジルバさんから感じた……シェーラちゃんに対しての温かいもしゃもしゃ。あれを感じて、私は私一人で、時間を稼ごうと思ったのだ。
でも現実はそう甘くなく、あと少しで罅が完全に破壊され、『強固盾』が壊れそうになった瞬間だった。
最初こそ、よく聞こえなかったその声が……、だんだんはっきり聞こえてくるようになって、最後の声が私の耳にダイレクトに響いた。
ダイレクトに、シェーラちゃんの感情が私に伝わった。
「――大切な人達を奪わないでえええええええええええええぇぇぇっっっっ!!」
その声が辺り一面に広がり、響き渡ったと同時に……、私の背後に来たもしゃもしゃ。
それはさっきまで真っ青だったそれが、シェーラちゃんの感情と声により爆発したかのように、その水が四散して流れていく感覚だ。
それを受けて、私はそれが……、シェーラちゃんの本当の感情で、本当の気持ちで、彼女の叫びだと……。
シェーラちゃんの――心の涙だということを改めて知った。
それを受けて、私はもう一度前を見る。
それを作り、せき止めて、あろうことかここまで苦しめたのは……、今目の前で、鬼ではない。
鬼女の怒りを表したかのような怒りを見せて、私に爪が伸びた貫手を繰り出そうとしているネルセス。
それを見て、私は思った。
ここまで苦しめて、あんなひどい言葉を言って……、この人はそれでも……、自分の事、保身しか考えていない。この人には……。
優しさがない。
そう私は思い、ぐっと口を噤んで、むかむか来る感情を抑えながら私は見上げた。
ネルセスが「しねえよぉおおおそんなことおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」と言って、私を見降ろした瞬間。
ネルセスは一瞬……、私を見て――一瞬、動きを止めた。
それを見て、一体何があったのだろうと思っていたけど……、そのあとでネルセスはすぐに貫手を繰り指そうとした。
その瞬間――さっきの流れ通り……。
ヘルナイトさんが助けに来てくれて、アキにぃとキョウヤさんが来てくれて……。
ロフィーゼさん、アルテットミアで出会った人、そしてブラドさんとキクリさんが助けに来てくれた。
「? どうした?」
ヘルナイトさんは私を見降ろして、首を傾げて聞いてきた。それを聞いた私は、胸の奥からくるこそばゆさを感じて……、それを一旦しまった後――控えめに微笑みながら……。
「ううん。なんでもないです」と言った。
それを聞いたヘルナイトさんはさらに首を傾げて……、疑問の声で「そうか」と言った。
それを聞いて、キクリさんは私達を見ながら「いいわね~」と微笑みながらそう言っていた。
「久し振りと言うか……。ブラドは勘当されたのはわかるとして、何でここにいるんだ?」
すると、キョウヤさんは三人を見て聞いた。ブラドさんを一回指さしたと思った時、キョウヤさんはロフィーゼさんとアルテットミアで出会った犬の人を指さして、何気なく聞くと、それを聞いてブラドさんがキョウヤさんに抱き着くように、キクリさんのその抱擁から逃れて迫りながら――
「そうなんだよぉ! グレグルの野郎俺に『女恐怖症を治せ』って冷たく……って、なんで知ってるの? え? なんで? え?」
キョウヤさんに抱き着こうと両手を広げて向かおうとしていたのだろうけど……、キョウヤさんのその言葉を聞いて、足を止めて驚いてしまったブラドさん。
それを聞いて、「あ、あの……、おれは、初めてですよね?」と前に出てきたのは……。
「あ、アルテットミアで……」と、私がその人を見て言った。
その人は――アルテットミアでオグトとオーヴェンに向かって、スキルを発動して子供達を守っていた犬人のプレイヤーさん。その人は頭を深く下げて、おずおずとしながら――
「あ、あの……。おれはドラッカーで、犬人の亜人の、シイナです」
よろしくお願いします。と、その人――シイナさんは言った。それを聞いて私は頭を下げて「そう言えば自己紹介まだでしたね。私――ハンナって言います」と言った。
「ドラッカーか。珍しい所属だね。あ、俺はアキ。スナイパーだよ」
「オレはキョウヤ。そこにいるビビリでうるさい女恐怖症の知り合いで、ランサーだ」
「誰がビビリでうるさいだっ! 二言多いんだよっ! 女恐怖症でいいだろうがっ!」
「そこはいいのかよ。そこは直せって」
アキにぃとキョウヤさんが言うと、キョウヤさんの言葉に苛立ったブラドさんは、キョウヤさんに向かって怒鳴りながら叫ぶ。しかしキョウヤさんは流すように無視して突っ込んだ。
それを聞いて、シイナさんは「えっと……」と頬を指で掻きながら……。
「あの、三人のことは、ブラドさんやロフィさんから……、聞いています」
と、少し緊張しながら言った。
それを聞いて、アキにぃは「え?」と首を傾げていたけど、シイナさんの言葉を聞いていたキクリさんはシイナさんの背後から抱きついてきて、くすくす微笑みながら「本当よ」と言った。
そして――
「ブラドやロフィからね。あなた達の事を聞いてここまで来たの。そこにいる妹Loveくんもといアキ君は、すごい妹想いで容赦がない」
「うぉい誰だそれ言った奴」
「キョウヤくんは槍術と突込みがすごいってブラドが褒めていたわ」
「おいブラド……、あとで顔を貸せ。アキのこともお前だろう」
「お相子じゃぼけぇっ! あ、ごめんなさいっ! ちょっと待って! ごめんなさいいいいっ!」
「そしてハンナちゃんは――みんなが言っていたわ」
私に近付いて――そして顔の輪郭を指で撫でながら……、キクリさんは優しく微笑みながら言う。
「あなたは――アズールの希望。そして心優しすぎる女の子って」
久し振りに聞いた希望。
それを聞いて、今更ながら恥ずかしくなって、俯いてしまう私。
それを見て心配に思ったのか……、いつの間にか帽子の中に隠れていたナヴィちゃんが私の肩に乗って、「きゅぅ~?」と唸って私の頬にその体毛をこすりつけていた。
それを見ていたキクリさんは、そっと立ち上がって私達を見てこう言う。
「だから、シイナはあなた達の事を知っているの。あなた達は知らないと思うけど。凄いって言っていたわよ」と、肩を竦めてシイナさんを見るために振り向くキクリさん。
すると――
かつりと……、後ろから音が聞こえ、私ははっとして振り返る。
ヘルナイトさん達やキクリさんたちも、その方向を見た。
そこにいたのは……、ジルバさんに抱えられたシェーラちゃん。シェーラちゃんを見た私は、彼女の名前を呼んで駆け寄ると、彼女の肩を掴んで「大丈夫?」と心配の声をかけた。
それを聞いて、シェーラちゃんは力なく「……大丈夫、よ」と言った。
シェーラちゃんを見て驚いたアキにぃは「どうしたんだっ?」と駆け寄って、キョウヤさんもそのあとを追うようにシェーラちゃんに声をかける。
「いつもの強気な態度はどうしたんだ? まぁ……、捕まっちまったからそれはな」
そんな話を聞いても、シェーラちゃんは何も答えない……、むしろ……。
ぎゅぅ。
「?」
シェーラちゃんは、自分の肩を掴んでいた私の手を――手の甲を握り……、そのまま俯いてしまい、私の手を離さないでいた。ううん……、その手はかすかに震えている。
シェーラちゃんは……、私の手に縋る様に、私の手を求めて握っていた。
それを見て、私は彼女に寄り添いながら、彼女の後頭部にそっと頭を押し付ける。
それはまるで……、ヘルナイトさんがしてくれた時のように、安心させるために、私はシェーラちゃんの頭に、自分の頭をくっつけた。
すると……、僅かだけど震えるシェーラちゃん。
握ってくる手も震えて……、その震えが寒さによるものではないことを感じた私は、そのままの状態で、シェーラちゃんに寄り添う。私はふと、みんなの顔を見る。
その光景を見ながら、みんなが安心している笑顔を向けていることが分かった。ロフィーゼさんたちもそれを見て和んでいる。ブラドさんはシイナさんの背後に隠れながら震えていたけど……。
すると、アキにぃはその光景を見て、ロフィーゼさんに向かってとあることを聞いた。
「そう言えば、ブラドさんのせいで話がそれてしまったけど、本当にどうしてここに?」
「俺のせいみたいな言い方やめてっ! 傷つくからっ!」
そうアキにぃがロフィーゼさんに聞いた。ブラドさんはシイナさんの背中に隠れながら怒鳴りつけているけど……、あまり意味がない。あまり怖くない。
そう思いながら聞いていると……、ロフィーゼさんは「うーん」と顎に指を添えながらこう言った。
「実はぁ。クエストでねぇ……、人探しを頼まれちゃったのぉ」
「人探し? 誰?」
キョウヤさんがそう聞くと、シイナさんはブラドさんを見てから「あの……、離れてください」と言って、やんわりと離れるように促した後……、シイナさんは言った。
その最中……、ブラドさんは一向に離れなかったけど……。きっと、私達女の人がいるから、離れたくなかったんだと思う……。
シイナさんは言った。
「えっと……、アクアロイアの砂の大地の国境付近にいる人からで、冒険者、なんですけど……、その人のクエストを受けたんです……、確か、白よりの白銀の鎧に、正義感が強すぎるひとで」
ん?
なんだろう、シイナさんが言っている人相……、なんだか身に覚えがあるような……。
そう思いながらアキにぃ達を見ると、アキにぃ達も目を点にして聞いていた。ジルバさんはそれを聞いて首を傾げているだけだったけど、シェーラちゃんの傍から離れなかった。
ヘルナイトさんは考える仕草をして黙っているけど、シイナさんは続けてこう言う。
「小さい子犬を連れている……、口癖は……『正義』の……、たしかえっと」
「シイナそいつ英単語表記だったろ? 確かSKって書いて……、セイント・クラインって言う」
ブラドさんの言葉に、ロフィーゼさんが駆け寄りながら「そぉう! そうよぉ! 思い出したぁ」と言いながら、ブラドさんに近付いたけど、ブラドさんは驚きながら「近付くんじゃねぇっ!」と言って腕をぶんぶん振りながらてでガードを張っていた。
それを見ていたロフィーゼさんは頬を膨らませながら「えぇー……?」と少ししょんぼりして、シイナさんはそれを見て乾いた笑みを浮かべていた。
キクリさんとヘルナイトさん、そしてジルバさんは、突然言葉を発しなくなった私達を見て首を傾げていた。私達は、ブラドさんのその言葉を聞いて……、思い出す。
ここに来たのは――私達だけではない。
もう一人……、巻き込んでしまった……。違う。なぜか突っ込んできてしまった人がいた。
その人のことを頭に思い浮かべた瞬間……。
アキにぃとキョウヤさんは――
「「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーっっっっっ!」」
と叫んで、私も思わず「わっ!」と驚いて……、その後で「あ!」と零すと……。
「「「すっかり忘れてたっっ!」」」
思わず、叫んでしまった。
それを聞いていたロフィーゼさんは首を傾げていたけど……、ブラドさんはそれを聞いて――
「え? なにすっかり忘れていたって、もしかして知っているのっ!? あの神出鬼没って言われている人と一緒にいたのっ!?」
と慌ててキョウヤさんに近付いて詰め寄ると……、キョウヤさんは驚きながら早口になりながら――
「いたよっ! いたって言うか本当に神出鬼没だった! お風呂場にも出てきたぐらいスゴイ出現率だった! というかそいつを追っているってストーカーしてんのかよっ!」
「話聞け! 俺等はクエストで受けてその人を依頼主のところまで送り届けるだけだっ! てかなに? 今お風呂って聞こえたけど何があったっ!?」
「でも今はなんやかんやでここにいる! ここにいるけどオレ達はぐれたっ!」
「なんやかんやのところを詳しくっ!」
「すごい光景ねぇ」
「は、はい……」
そんなキョウヤさんとブラドさんのマシンガントークを聞いて、ロフィーゼさんとシイナさんは驚いていた。
私もそれを見て驚いていると……、ジルバさんは私の肩を叩いた。
私はジルバさんを見上げると、ジルバさんは私の顔を見て。
「――ありがとうネ」と言ってきた。
それを聞いて私は首を傾げていると……、ジルバさんは困ったように笑みを浮かべて「あれぇ? もしかして無意識なの~?」と言って……、まだ泣いているシェーラちゃんを見てこう言った。
「シェーラが、この子がこんな風に感情を表に出した。叫んだ。なにヨりシェーラの心を救ってくれてありがとうって言いたかったんだけど……、無意識なのかな?」
そう言ったジルバさんだったけど、私自身……、それは無意識だった。ただ本当のことを言ったまでだったので、そう改まってお礼を言われても……、と思ってしまう。
善意でしたこと。そして私が思ったことを口にした。それだけなのに……。
そう思っていると……、ヘルナイトさんは何かを思い出したのか――キクリさんに声をかけようとした時――
グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!
『っ!?』
マドゥードナ中を、ううん……。このアクアロイア中に響き渡るような、地響きのような声が、私達の耳を壊しに来た。
◆ ◆
「はぁ……」
「そうしょげるな『盾王』」
「……今は会議ではない。私のことはアルテットミア王と呼んでくれ……、アムスノーム国王」
「おおっと、失礼」
王都ラ・リジューシュ。
そこでは日夜『国王会議』が開かれ、それぞれの議題を元に話し合っていた。
しかし昨日今日となっても、結果は不安定の結果だった。
そのことについてアルテットミア王とアムスノーム王は、休憩の合間にそのことを話していた。
アルテットミア王ははぁっと溜息を吐き、それを見て慰めの言葉をかけるアムスノーム王。
しかし……、アルテットミア王の体現通り……、会議は不安定などと言う言葉では済まされない。
簡単に言うと……、結果は最悪なものばかりだった。
まず、『終焉の瘴気』の浄化の力を持っているハンナとヘルナイトのことについて、この件に関して協力を仰いでいたが……、前日保留。今日も保留……。結果として協力はできないということが決まってしまった。
次にモナ達の件に関して、異国の冒険者の中に魔王族の亜人がいたことに関して、この件に関しては『無王』が率先して情報を探ることになった。
現状は『無王』と『永王』に全てを任せる。と言う結果で決まった。
結局は……、丸投げ。誰も興味を示してくれなかった。
そのあとアクアロイアのギルド長ウェーブラが、バトラヴィア帝国のガルディガルを連れて来たことで、会議室は騒然とした。
しかしすぐにバトラヴィア王が責任を持って預かり、然るべき処遇を受けさせるとして、彼がこの会議が終わるまでの間、瘴輝石の中に閉じ込めておくということになった。
結果はごり押しで強制送還と言うことになった。
あの後で、アクアロイアの現状についての話が上がり、バトラヴィア兵がアクアロイアの住人を奴隷にしていることに関して、バトラヴィア王は悪そびれもなく、当たり前だと言わんばかりに開き直ったのだ。
事実、それは奴隷をしていることが証明されたのだが、ここでおかしなことが起こった。
アクアロイア王にこのことをいい、ここで白黒はっきりさせようとアムスノーム国王は言った時……、彼はこう言った。泣きながら震えて言った。
「い、いや……っ! 私はそのようなこと、できんっ! なにせ、私は弱い……っ! ゆえに何もできない。私には……」
その言葉を言いながら、彼はぶるぶる震えてしまい、頭を垂らしてしまった。それ以上の言葉を吐かず、それを見て、バトラヴィア王はふんっと鼻息を吹かしながら……。
「そう言うことだ。ここは『国王会議』他国のことにあまり首を突っ込まないでくれ」
と言った。
それを聞いた他の国王は……、それ以上何も言わず、腑に落ちないままその話を終わらせた。
だが、アムスノーム王は見てしまった……。違和感を覚えてしまった。
アクアロイア王の顔が……、変だったのだ。
まるで――左右対称ではない。歪な泣き顔を見せて、笑いを堪えたかのような狂気の泣き顔を見せているような……、そんな泣き顔をみんなに見せた。
――あの顔……、変じゃな。
そうアムスノーム国王は思った。
その歪な表情を垣間見たアムスノーム国王は己の培った勘を信じ……、アルテットミア王に声をかけようとした時だった。
「アムスノーム国王っ! アルテットミア王っ!」
「「?」」
突然だった。
王都の一人の兵士が二人を見つけて、がしゃがしゃと音を鳴らしながら駆け出してきたのだ。
それを見たアムスノーム国王は「なんじゃ?」と聞くと、兵士は息を整えながら彼らに聞いた。
「アクアロイア王を見かけませんでしたかっ!?」
「「??」」
その言葉を聞いて二人は首を傾げ、その返答をアルテットミア王はした。
『見ていない』と。
すると兵士はうーんっと唸りながら「どこに行ってしまったのだ……?」と言うと、それを聞いたアムスノーム王はふとアクアロイア王のあの顔を思い出し、柄にもなく不安に駆られてしまった。
――なんじゃ……?
――この胸騒ぎは。
己が培ってきた勘を信じたからか、はたまた野生の近い何かを持ってしまったのかはわからない。しかしこの時、アムスノーム国王は言いようのない不安に襲われてしまった。
アクアロイア王に対しての……、嫌な予感。
それを感じたアムスノーム国王は、兵士に聞いた。
どうかはずれてくれ。そう願いつつ……、平静を装いながら彼は聞いた。
「はて……? いったい何があったのだ?」
だが、その願いは虚しく砕け散る。
「実は……、アクアロイア王が王都におらず……」
行方知れずなのです。
その言葉を聞いて、アルテットミア王ははっと息を呑んで、アムスノーム国王は……。
――なんでこんな時に、儂の勘は的中してしまうのじゃ……。
と、頭を垂らして首を横に振った。