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PLAY21 それぞれの出会い⑤

 ぼとぼとと落ちていく素材を見て、ショーマは「おぉ!」と目を輝かせた。


「素材ががっぽり!」


 と言って、ショーマはグランドビックボアがいた場所に近付きながら素材をかき集めていた。


 それを見てデュランは溜息を吐き、がしゃんと少し猫背になった。


 シイナとロフィーゼはそれを見て……。


(疲れている……)


 ――疲れているのかしら?

 二人とも同じことを思って首を傾げていた。シイナはデュランを見てごくりと生唾を呑む。


(MCOでも強敵だった……『12鬼士』デュラン……。LEARNING・ROBOTのおかげなのか、自我を持っている……、NPCは本来、自我なんて持っていないのに……)


 そう思って見ていると、デュランはふっとシイナを見て……じっと頭がないそれでシイナを見た。


 シイナはそれを見てびくっと肩を震わせていると……、デュランは一言……。


「………犬人の。そう言うことか」

「?」


 シイナがデュランの言葉に対し、首を傾げて『何がですか?』と聞こうとした時……。


「もぉー。なにしてんのさショーマ」

「あ! ツグミ!」


 ひょっこりとデュランの背中から出てきたツグミを見て、ショーマはぎょっとして驚く。


 ロフィーゼとシイナは別の意味で驚いてツグミを見た。


 ツグミはショーマをデュランの人馬のところから見降ろして……、むすっとした顔でこう言った。


「てか、なに一人で逃げてんの? お陰で何とか助かったけど……、何あの状況? 迷った挙句、お母さん猪の巣穴に入ってしまったの?」

「違う違うっ! これは俺だって知らないけど、てか! なんでお前だけ楽してんの!? 俺も楽したいっ!」

「ダメですぅー。ここは僕の特等席ですぅ」

「誰の特等席でもない」


 ショーマはツグミが乗っているところに無理やり乗ろうとしていたが、ツグミがそれを手で制して押し返そうとしているところをデュランはじっと見て冷たく突っ込む。


 まるで、友達との会話のような風景に、シイナは言葉を失った。


 前にも見たことがある光景に、シイナは驚きすぎて、頭がおかしくなりそうになっていた。


 アルテットミアで、とある少女を助けた『12鬼士』最強の男と、黄色いピエロのような服を着た男もいた。


 それを見た時も、ありえないという言葉が頭に浮かんだ。


 だが、事実、テロリストの『六芒星』を倒したのも事実で、今回だってそれと同じ光景だ。


 シイナはそれを見ながら……、すっと目を細めてみる。


(あんな風に話している……。おれは、こう思っている時はいいんだけど、話すとつっかえつっかえになる……。おれは、力では役に立つかもしれないけど、結局この場でも、コミュニケーションは必要だ。だから言葉をうまく発せられないおれは……)


 そんな浮かない顔をしているシイナを見て、少しばかり心配そうに見ているロフィーゼ。


 そのまま手を伸ばしてシイナの肩に手を置こうとした時……。


「そう言えばショーマ。もしかして……」


 ツグミはじっとロフィーゼ達を見てショーマをジト目で見てから、彼は真剣な音色でこうショーマに聞いたのだ。


「……、迷惑かけたんなら謝りなさい」

「何で俺が悪い前提なんだっ!?」


 そう聞いたツグミに対し、ショーマはショックを受けた顔をして驚いて、ツグミに向かって指をさしながら――


「残念でした! 今回は俺がMVPでした! ですよね? 別嬪さんにお兄さん!」


 ショーマはくるっとロフィーゼ達を見て言ったが、二人はきょとんっとしてショーマを見ていた。


 要は聞いていなかっただけだが、ツグミはそれを見て「やっぱり迷惑かけたんじゃないかっ! 謝りなさいっ!」と言って、ツグミはシイナ達を見て申し訳なさそうに慌てながら――


「すいません! こいつ運がマイナスなくせに、すぐに首を突っ込んで」


 再度『すいませんっ』と頭をデュランの背中に乗りながら下げて言ったツグミ。


 それを見たロフィーゼは乾いた笑みを浮かべて……「いいのよぉ」と言って、シイナも首を横に振った時、シイナはふと、()()()()()()()()()()


 辺りを見回しても、何も危険なものは……。


「あれ? そう言えばマースのおっさんは?」

「ああ、そのことなんだけど……」


 とショーマとツグミが言った瞬間だった。


 ズンッと言う大きな音。それはまるで何か重い生物が地面を踏みつけたかのような音だった。


 シイナ達はそれを感じて、辺りを見回していると……。


「来ルゾッ! 構エロッ!」


 と、コーフィンが叫んだ。


 シイナは何か忘れていると思った人物はコーフィンだということに気付いてすっきりしたと同時に、シイナはショーマ達が来た方向を見た瞬間……絶句した。


 ショーマ達も……がぱっと、口をあんぐりと開いて、呆然とした。


 ロフィーゼは「あらあらぁ」と困ったように微笑みながら、冷や汗を流して、デュランはぎょっとしてグルンッと振り向きざまに槍を構えた。


 ショーマ達が来た方向から、どどどどどっと大きな音を立てて、木を薙ぎ倒すように走ってきたもう一体の魔物……。


 それは、ついさっきショーマ達が倒したグランドビックボアであった。違いがあるとすれば……。額にバツ印の傷があること、そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()というところだけで、大きさも何もかもが同じなそれだった。



「「だああああああああああああああっっっ!?」」



 ショーマとツグミは叫んだ。ツグミに至っては初めて見る魔物なので、驚きが一段と大きかった。


「今度はファザーイノシシィィイイイイイイイッッ!?」

「ファザーって何っ!? マザーいたってこと!? てかなにあのグランドボアの進化形態みたいな魔物は!」


 二人してそんな会話をしている間にも、シイナ達に向かってくるグランドビックボアは怒りに身を任せるかのように、どんどんシイナ達に近付いて走ってくる。


 それ見たシイナは、すぐに杖を構えたが、その速さは尋常ではなかった。きっと、スキルを言った瞬間に、その牙によって串刺しにされるかもしれない。


 というか串刺しにされて、食事にされる。


 そうシイナは最悪の想定を思い込んでしまい、体が委縮して震えてしまう。


 ロフィーゼはそんなシイナを見て、すぐに彼の前に立とうとしてデュランも槍を構えてスキルを放とうとし、コーフィンも銃を構えて足を封じようとしたとき……。


「これはまずい! 隻眼もまずかったけどこれもまずいって!」

「なにそれ? 隻眼がいたってことはやっぱり迷惑かけたじゃないかばかぁ!」


 ……そんな時に、この状況でも喧嘩をしているショーマとツグミに、デュランは苛立ちながら、コーフィンは銃口が僅かに揺れながら、ロフィーゼはむっとしながら、三人共同じことを思った。


 頼むから静かにしてくれ。と……。


 どんどん加速して襲いに来るグランドビックボア。


 それを見て、誰もが構えて迎え撃とうとしたとき……。


占星魔法(シャーマー・スペル)――『反射鏡(カウンター・ミラー)』ッ!」


 幼い声が聞こえたと同時に、一番後ろにいた……、一番前にいたデュランの前に、半透明な長方形の壁が出てきた。


 それを見て、デュランは「なに?」と声色に不満の声がこぼれて、ロフィーゼとシイナ、そしてショーマとツグミは、それを見て驚いた眼でそれを見た。


 どんどん加速して、そして牙を使ってデュラン達を突こうとした瞬間。


 ゴンッとデュランの前に出ていた壁に、牙の先が当たり、そしてすぐに……。


 ガァンッと、何かがぶつかったかのような、激突した衝撃音が、耳の鼓膜を震わせた。


 ショーマとツグミは耳を塞いで、目をぐっと閉じた状態で固まり、ロフィーゼとシイナはそれを見てぎょっとして驚き、デュランは少しだけ、不機嫌な雰囲気を漂わせた。


 グランドビックボアは走ってきた衝撃が返ってきたかのように、ぐらんっと後ろに傾いた。


 その時、シイナ達の間を縫うように、何かがシイナ達の後ろから出てきた。


 それは人で……。シイナは右手首のそれが目に入ったので、それを見てまた目を丸くして驚いた。


 今日になって、何回驚いたのだろう。そうシイナは思ったが、これはこれでインパクトがあることだった。なぜなら――


 その人達の右手首には、()()()()()()()()()()()()()()()()――


 そしてその三人は、武器を一斉に構えて、不意打ちをお見舞いするかのように、無防備のグランドビックボアのお腹めがけて……。


「『シールド・スタンプ』ッ!」


 一人の大男が大きな盾を持って、グランドビックボアの腹部に力いっぱい盾による突進を繰り出す。


 それを受けて、グランドビックボアは呻き声を上げながらよろっと後ろに倒れようとしていた。その光景を見て大男は後ろを見て――


「今だぜ!」


 と叫んだ瞬間……。


 だんっと小さく跳躍して、二人の人物が大剣と忍刀を手に……。


「忍法――『風纏刀(カゼマトイカタナ)』ッ!」

「『ストロングスラッシュ』ッ!」


 互いの斬撃を交互に斬りつけて、グランドビックボアの腹部に、深いバツ印を残した。


 グランドビックボアは「ブギィイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!」と叫び、そのまま黒く変色していく……。


 そして、完全に黒くなったところで……、ぼふぅんっと黒い煙と靄を出して、消滅した。


 それを見たショーマ達とシイナ達は、目を点にして呆けてしまった。


 倒した三人と、いつの間にか来ていた小さい小柄な猫耳の少女は、そのぼとぼと落ちた素材を見て、小さい少女はこう言った。


「これでクエストは終了ですか?」

「あぁ。これで特殊討伐クエストは終わりだな」


 大柄な男が腰に手を当ててやれやれと言わんばかりに言うと、痩せている蜥蜴のような顔をした男が上を見上げて……。


「しっかし、今帰るにしても……絶対に深夜だぜ?」

「ならここで泊まるか? めんどくせぇ」


 と、頭を掻きながら面倒くさそうに言うと、ふと後ろを見て、今更ながらショーマ達の存在に気付いて……。


「誰だ?」と聞いた。


 その言葉に、他の三人も、ショーマ達を見て驚いた顔をして見ていた。



 ◆     ◆



 運命とは時にいたずら好きな子供のようだと、とある冒険者は言った。


 その運命とは出会いも然り。


 この時、数奇な運命によって出会ってしまった三組と一名。


 ショーマ。ツグミ。『12鬼士』デュラン。


 ロフィーゼ、コーフィン。


 シイナ。


 そして、あっさりとグランドビックボアを倒した……。


 コウガ、ブラド、グレグル、むぃは、偶然にも、運命の悪戯ともいえる状況で、出会ってしまった。



 ◆     ◆



 それから夜になって……。


「えーっと……。マナ・ポケット『レォット』」


 ブラドは手に持っていた『収納』の瘴輝石を握り、それをばしゅっと広いところに出した。


 出てきたそれは――野営セット。


 大きなテントと寝袋。あとはカンテラなどと言った、キャンプと同じそれだが、それでも夜をしのぐには十分なものが詰まっていた。


 ブラドはそれを見てうんっと頷き――後ろを振り向いて……。


「おーい! 野営セット出したぞー! ここでキャンプしようぜ!」と、陽気な声で言った。


 それを聞いて、後ろにいた薪を持っているむぃに、大きな板や石を持っているグレグルに向かって言うと、むぃはそれを聞いて「はいですっ! これ薪です!」と言って、とことことブラドに近付いてそれを手渡すと、ブラドはおう! と言ってそれを手に取って、野営セットの近くに置く。


 それをじっと見ていたグレグルは、彼の背後でじっとその光景を見ているコウガは、むすっとした表情で、むぃとブラドを見ていたが、グレグルはそんな彼に対し……。


「お前もいい加減慣れた方がいいんじゃねえか?」と言った。


 その言葉に、コウガは「はぁ?」と苛立った音色でグレグルを見上げながら、彼はこう反論する。


「なんで俺が慣れる必要があるんだ?」

「お前、あのブラドだってあんなにフレンドリーなんだぞ?」

「あれは範囲外だろうが、餓鬼だし」

「そう言う意味じゃねえぞ。お前……」


 と言いながら、ブラドと一緒に楽しそうに話しているむぃを見て、コウガはすっと目を細めた。


 すると――


「あのぉ、この魚ぁ……。どうするのぉ?」と入ってきたのは……。


 魚を持っているコーフィンの前を歩いているロフィーゼだった。コーフィンの手元には何匹もの鮭のような肉付きがいい魚を、両手にいっぱい抱えて来たのだ。


 それを見たグレグルは「おぉ」とこれまた驚いたという顔をしてみると……。


「わぁ! すごいお魚の量です!」

「すっげぇ! 本当に釣竿なしでとりやがった!」


 むぃとブラドが、子供のように驚きながらコーフィンに駆け寄って、その魚を見ていた。


 よくよく見ると、コーフィンが釣った魚の首元には、細い血の筋ができている。丸い跡から出ているそれを見て、ブラドはコーフィンを見上げて目を点にしながら――


「……鳥マスクの癖に……、すげぇ」

「――フフンッ」

「なんか腹立つ。この仮面の裏で薄ら笑いしていやがるなこの野郎……」


 コーフィンがエビ反りになりながらふんっと仮面越しで鼻息を汽車のように吹いているそれを見て、ブラドは少しむっとした表情になりながらも言った。


 むぃはそれよりも、魚の方が気になるらしい。口から涎がタラリと出ている。


 それを見たロフィーゼは、ふと、少し遠くの岩に座っているシイナを見て、寂しい表情になったが、すぐにむぃと同じ目線になるようにしゃがんで、そして微笑みながら優しくこう言った。


「じゃぁ、これでムニエルを作りましょうかぁ。むぃちゃん手伝ってくれるぅ?」

「はいですっ!」


 むぃはびしっと挙手をして元気よく返事をする。


 それと同時に来たのは……。


「あ。おーいっす!」

「なんか、すみません……」


 森の奥から来たのは、ボロボロ状態で手つかず状態で来たショーマとツグミ。


 そんな手付かずを見てブラドは「ぶははっ!」と笑いながら……。


「お前らは収穫なしか! 何してたんだよそれ!」と腹部を抱えながら笑うと、ツグミは生気が無くなった目で、彼はこう言った。


「ショーマが足を滑らせて池ぼちゃして、それが運悪く底なし沼で、それで引っこ抜くのに時間がかかった次第です」

「なんかごめん」


 何とも不憫な。そう思いながらブラドは謝った。


 それを聞いていたグレグルやコウガも、あんまりだなと青ざめながらショーマ達を見ていた。


 それを聞いてロフィーゼはコーフィンが持っていた魚を一匹手に持ち――くるんっと一回転して妖艶に微笑みながらこう言った。


「それじゃ元気になるように、おいしく作るわぁ」


 ――これから始まることは、夕食会。


 ここでであったのも何かの運命とロフィーゼが言い、現実で言うところのオフ会のようなことをしよう。そう彼女は提案した。


 夜の交流会キャンプを――

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